仏縁こそ、地域に不可欠なインフラだ。― 東別院と尾張地区の地域寺院が協働する、信頼と安心の仏事マッチングシステム「東別院 つながるご法事」開始
真宗大谷派名古屋別院が提唱する、現代都市における仏縁再構築の社会実装モデル

「実家のお寺とは疎遠になってしまった」「大切な人の法事を、信頼できる人に頼みたいが、誰に相談すればいいかわからない」。
そんな都市部で増えている声に応えるため、真宗大谷派名古屋別院(東別院)では、法事を依頼したい方と地域の寺院をつなぐ新しい仕組みとして、オンライン法事予約サービス「東別院 つながるご法事」の運用を2025年7月より本格的に開始しました。本サービスは、法事を依頼したい方がパソコンやスマートフォンから簡単に申込みができるよう設計されており、どなたでもご利用いただけます。
◾️東別院 つながるご法事 紹介動画

企画・運営:真宗大谷派名古屋別院(東別院)
真宗大谷派名古屋別院(東別院)は、名古屋市中区にある真宗大谷派(本山・京都東本願寺)の別院です。江戸時代から地域に根ざしてきた歴史ある寺院であり、法要・法話などの宗教的な活動に加え、「東別院暮らしの朝市」や春・秋に開催する日本最大級の骨董市「NAGOYA ANTIQUE MARKET」などの地域交流の場を提供し、地域に開かれた寺院として親しまれています。
◾️背景と課題
【1】地域住民と寺院の関係性が失われつつある
近年、特に都市部において、いわゆる「お手次寺院」(つきあいのある寺院)との関係性が希薄化している傾向が指摘されています。これは、核家族化や都市への人口集中、世代交代による宗教意識の変化など、複合的な社会要因によるものと考えられます。
文化庁が公表した「宗教統計調査」(2024年12月時点)によれば、全国の寺院数は76,484カ寺で、2016年度と比較すると770カ寺減少しています。愛知県においても同様の傾向が見られ、2024年度の寺院数は4,517カ寺と、8年間で79カ寺の減少が確認されています。
こうした数値は、寺院の統廃合や宗教法人の解散が継続的に進行していることを示しており、仏教寺院の地域社会における存在基盤が徐々に縮小している現状を裏付けるものです。

【2】関係性の希薄化は、個人の意識にも
寺院との関係が希薄化している状況は、個人の意識にも表れています。
東別院が実施した独自アンケートによると、「お手次寺院との関係がある」と回答した人と「ない」と回答した人はおよそ半々でした。そのうち「今後も付き合いたい」と考える人は全体の25%、「関係はないが今後付き合いたい」が7%にとどまり、約70%は「付き合いたくない」と回答しています。
これは、お手次関係の意義や役割が、現代の中で再評価を迫られていることを示しています。

【3】簡略化する仏事と“仏事迷子”の広がり
こうした関係性の喪失に伴い、仏事そのものも簡略化が進んでいます。
都市部を中心に、オンライン葬儀や僧侶派遣といった“手軽に依頼できるサービス”が普及し、法事は“効率よく済ませるもの”という価値観が定着しつつあります。
一方でその裏には、
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どんな僧侶が来るか分からないまま当日を迎える不安
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意味の説明もなく淡々と読経され、気持ちが置き去りになる体験
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四十九日や一周忌のたびに、また一から依頼先を探す手間や不安
といった、“仏事迷子”ともいえる状態が広がっています。
2020年の仏教実態調査でも、「菩提寺のある層」の約4割がインターネット僧侶派遣に不安を感じているとの結果が出ており、利便性の裏で、継続的に頼れる寺院がいないことそのものが、現代の新たな不安要素になっていることが明らかです【出典:全日本仏教会 仏教実態調査2020】。
【4】求められるのは「つながりを取り戻す仕組み」
だからこそ、葬儀や法事を“単発の儀式”で終えるのではなく、最初の一回から信頼関係を築ける地域寺院とのつながりを取り戻す仕組みが、いま強く求められています。
仏縁の希薄化は、単なる宗教や儀式の問題ではありません。それは、地域社会の安心やつながりを支える土台の崩れでもあります。今こそ、それを補う仕組みが必要です。
仏縁の希薄化は、単なる宗教や儀式の問題ではなく、地域社会の安心やつながりを支える土台の崩れとも言えます。今こそ、それを補う仕組みが必要です。

◾️取り組み:単なる僧侶派遣ではない、東別院運営ならではの解決
こうした社会的な背景を受けて、東別院では、都市部における仏事のあり方や寺院との関係性の再構築に向けた新たな取り組みとして、「東別院 つながるご法事」を立ち上げました。この仕組みは、法事の読経依頼をオンラインで受け付けるシステムを導入し、利用者の希望や事情に応じて、読経を依頼できる地域の寺院をご紹介するものです。
本事業の特長は、単に利便性を高めることにとどまりません。先述したように、かつて地域社会に根付いていた「お手次関係」(家ごとに付き合いのある寺)という制度は、家族構成の変化や都市への人口集中、信仰意識の多様化といった社会的要因により、近年大きく揺らいでいます。かつては当たり前に存在していた「仏事の相談ができるお寺」「困ったときに頼れる僧侶」といったつながりが失われつつあるなかで、多くの人が「どの寺に頼めばよいかわからない」「お布施の金額が不透明で不安」といった課題を抱えています。
こうした現状に対して、「東別院 つながるご法事」は、従来型の固定的なお手次関係をそのまま再現するのではなく、現代の暮らしや価値観に合わせた“ゆるやかな関係性”の構築を目指しています。たとえば、初めて寺院と関わる方が、まずは一度の法事依頼から関係をはじめ、その後も必要に応じて相談を重ねていけるような、柔軟で継続可能なつながり方です。関係性の構築を強制することなく、個人の選択に委ねながらも、安心感と信頼が育まれる仕組みを意図しています。
また、寺院側にとっても、継続的な仏縁の機会が生まれることで、単発の依頼に終わらず、地域との関わりを回復する足がかりとなることが期待されます。特に都市部では、住職の後継者不足や檀家制度の解体が進む中で、寺院運営の持続可能性そのものが問われています。そうしたなかで、地域の人々と“仏縁の入口”をつくりなおすことは、寺院の社会的役割の再定義や、社会におけるサードプレイスの創出にもつながると考えています。
東別院はこの取り組みを、仏教寺院としての本来的な使命を果たすと同時に、現代社会における宗教と暮らしの接点を再設計する「社会的な取り組み」として位置づけています。単なる寺院内のサービスにとどまらず、地域に暮らす人々が、必要なときに安心して仏事を依頼でき、ゆるやかな信頼関係を築いていける——そんな、時代に適した新たな関係性の形を、今後も社会に開かれたかたちで継続的に提案していきます。

◾️特徴|「東別院 つながるご法事」の4つの安心

①【顔の見える安心】東別院が丁寧につなぐ、顔の見える寺院をご紹介
希望する地域や日時に応じて、真宗大谷派名古屋教区内の約100寺院から、条件に合う寺院をご紹介。寺院名や所在地などの基本情報を事前に確認し、ご納得いただいてから正式に申し込みが完了します。事前情報の開示で安心感と信頼性を重視した仕組みです。
②【初めてでも安心】東別院職員による電話サポート
初めての法事準備でも安心して進められるよう、オンライン予約フォームと東別院職員による電話フォローを組み合わせています。操作が不安な方にはステップごとに丁寧に案内し、「仏事がはじめて」の方にも寄り添った体験を提供。また、マッチングが完了した後は、担当寺院の方にお問い合わせいただければ、丁寧にご案内いたします。
③【関係性が続く安心】法事後もゆるやかな“つながり”が続く設計
法事後も、希望があれば寺院との交流や相談を継続できる体制を整えています。一度限りではない“信頼のつながり”を尊重し、次の四十九日や一周忌などに繋がりを築ける関係を大切にしていきます。
④【価格の安心】定額制で、お布施に迷わず依頼できる設計
読経依頼の費用がわかりづらいという不安に応え、「東別院 つながるご法事」では定額の懇志金(費用)を導入しています。以下の金額を目安に、安心してご依頼いただけます。
・地域のお寺、またはご自宅で実施する場合:40,000円
・東別院で実施する場合:50,000円
※地域のお寺でお斎(お食事)を実施する場合+10,000円
※いずれも「お志」として、それ以上お納めいただくことも可能です。
ご依頼の流れ(5ステップで完結)

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希望の会場(東別院・各寺院・自宅等)と日にちを設定し、東別院に連絡(ウェブサイト上申込みフォームから)
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東別院より確認のご連絡(メール)
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法要を執り行うお寺をご紹介(東別院で実施も可能)
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お寺と詳細を調整し、法要を実施
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地域のお寺とお付き合い(任意)
◾️目指す社会
「東別院 つながるご法事」は、法事の利便性を高めるだけでなく、地域に暮らす人々が仏縁や宗教との関係性を見つめ直す機会を提供することを目的としています。
葬儀の先にある“その後のつながり”をどう築くか。誰に頼んだらいいかわからない、継続的な関係が築けない、そうした不安や疎外感を抱える人々に対して、東別院が新しい接点となり、安心できる仏事体験と地域とのつながりを回復する機会をつくります。
この取り組みは、東別院が目指す地域にひらかれた仏教寺院の実現に向けた実践的な取り組みのひとつです。寺院が本来持っていた“人と人との関係を支える役割”を、現代の都市の暮らしの中でどう再構築していくか。その一歩として、本事業を通じた新しい仏事の形と仏縁のあり方を提案しています。

◾️その他の東別院の取り組み
東別院では、「つながるご法事」のほかにも、地域に開かれたさまざまな取り組みを通じて、仏教と暮らしの接点を再構築する実践を行っています。
◾️毎月8・18・28日に開催される「東別院 暮らしの朝市」
地域の農産物やクラフト、食品などが並ぶ東海地方最大級の朝市。単なる買い物の場ではなく、住民同士や出店者との交流を生みます。
◾️音楽と食を通じた交流イベント「音食マーケット」(毎月12日開催)
地元ミュージシャンによる演奏と、こだわりのフードが集う小規模で温かな夕市。夕方の時間に、音と食を通じて日常の中に小さな出会いと喜びを生み出します。
◾️春・秋に開催する日本最大級の骨董市「NAGOYA ANTIQUE MARKET」
延べ280店舗以上が出店し、来場者数は2日間で1万人超を記録する日本最大級の骨董市です。
さらに、2025年9月27日(土)・28日(日)には、年に一度の特別な催しとして「東別院まつり2025」の開催を予定しています。
27日は「推し寺アイドルまつり」(Produced by メ~テレ)と題して、SKE48、TEAM SHACHI、江籠裕奈などの出演によるライブパフォーマンスが実施され、28日は「東別院盆踊り」として、伝統的な盆踊りと東別院オリジナル曲による「NEO盆踊り」の融合を展開。
らに、両日ともにキッチンカーや屋台が並ぶ「暮らしの夜市」や、バザー、キッズ・福祉コーナー、幻想的なテクノ法要なども行われ、まちとお寺が一体となって盛り上がる2日間となっています。
このように、東別院では一年を通じて多様な参画機会を設けながら、信仰にとどまらず、地域の文化・暮らし・人々のつながりを再生していく活動を継続しています。






これらの活動を通して、宗教施設としての役割にとどまらず、地域社会のつながりや賑わいの創出にも積極的に取り組んでいます。
◾️システム開発:株式会社レジスタ

「東別院 つながるご法事」は、真宗大谷派名古屋別院(東別院)と株式会社レジスタが共同で企画・運営する取り組みです。
主にシステム開発は、株式会社レジスタが担っています。レジスタは、名古屋市中区・東別院駅周辺を拠点に、「共創」をテーマとした地域密着型の事業を展開するローカルゼブラ企業です。これまで、地域課題と企業経営を接続するプロジェクトを数多く手がけてきました。地域の寺院や職人、若者、まちの空間など、多様な主体を結びつけながら、「文化・経済・暮らし」が交差するために事業を展開しています。
◾️お問い合わせ
【本システムに関するお問い合わせ】
真宗大谷派 名古屋別院(東別院)
TEL:052-321-9201
【取材・メディア関係のお問い合わせ】
本取り組みに関する取材・撮影・掲載のご相談は、下記までご連絡ください。
サービス立ち上げの背景や地域の寺院との連携、実際の利用者の声など、詳細にご紹介可能です。担当者・開発者へのインタビューのほか、システムのデモンストレーションもご希望に応じてご案内いたします。
株式会社レジスタ(広報担当)
TEL:052-339-0233
Mail:info@rgst.net
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