ペッツファーストグループにおけるペットの遺伝子病対策への取り組みについて
重篤な遺伝子病で苦しむペットを生みださないためには
■ペットの遺伝子病とは
遺伝子病とは、ヒト同様に遺伝子が変異することにより引き起こされる病気であり、疾患原因遺伝子が親から子に引き継がれます。1960年台から増加し、毎年のように新たな遺伝子病が発見され、今では犬と猫合わせて約1,200種類にわたる様々な疾患が確認されています。犬猫種により発症の時期や症状などは様々であり、主な内訳としては骨関節疾患が最も多く、次いで神経筋疾患、眼科疾患、皮膚科疾患と続き、犬猫種問わず身体の全ての器官に起こる可能性が指摘されています。未だ判明していない遺伝子情報や機構も極めて多く、遺伝子病を完全に防ぐことは不可能であると考えられています。
遺伝子病は柴犬や豆柴の遺伝子病のGM1 ガングリオシドーシスなどの極めて致死率の高い疾患だけではなく、通常の生活には影響がごく軽微と考えられる疾患も多く、また疾患原因遺伝子を持っていたとしても、必ず発症するとは限りません。ただし症状が出なくとも、疾患原因遺伝子を持っている親同士を交配すれば、ほぼ100%子へ引き継がれてしまいます。
ブリーディング(交配と繁殖)は、従来個々のブリーダーの知見や経験、技術に基づきそれぞれの特性や性格などを丁寧に見極め、より良い子孫を生み出せると期待される親犬・猫により長年実施されてきましたが、近年の研究や検査技術の発展により、交配の段階で遺伝子病のリスクの低減が可能となりました。
今後はブリーダーはじめペット業界全体としても、特に重篤な遺伝子病の発生リスクの排除やコントロールが強く求められています。具体的には、親犬・猫の遺伝子検査を実施して、疾患原因遺伝子を持っているペット(アフェクテッド、キャリア)を繁殖から卒業させる、もしくは持っていない血統のペット(クリア)と組み合わせて、選択交配していくという方法が主となります。膨大な労力と時間がかかる地道な方法ですが、この方法が倫理的でかつ世界的なスタンダードでもあります。
■日本の遺伝子病対策の現状と課題
この数年日本では、一部のペットショップ、またはブリーダーで自主的に実施されている遺伝子病対策として、販売前の子犬・猫の検査結果のみに基づき販売流通可否の基準とする方法がありますが、遺伝子病の発生率の改善は残念ながらほとんど見られないという報告もあります。これまでペット業界では、ブリーダーと直接取引するのではなく、第三者を介した流通が多く、検査結果の該当ブリーダーへのフィードバックをする仕組みが未整備であることなどが原因と考えられます。
さらに若齢期の検査では将来の遺伝子病の発生のリスクが未だ不明瞭であること、あくまで数多くの遺伝子病のうちの数件の検査しか受けていないにもかかわらず、ペットショップの店頭であたかも「遺伝子病が発生しない」などと断定するような販売方法は飼い主へ大きな誤解を与え、その後の飼養管理に新たなリスクを生んでしまいます。(実際に最近ではトイプードルの遺伝子病が新たに発見されており、過去の検査結果だけではなく判断できない事態も発生しています。)
そもそもブリーダーが自主的に親犬・猫の検査と選択交配を実施していると謳うのであれば、ペットショップ側の検査をクリアできない子犬・猫が少なからず産み出されている事態についての説明がつきません。原因は検査精度の問題だけではなく、モラルハザードやヒューマンエラーなどのリスク、さらにペットショップの子犬・猫の検査に限らず、ブリーダーの親犬・猫検査が適正に運用されているか否かを確認する仕組みがないことも大きな原因の1つです。
またなにより、検査結果に対して販売不可となった子犬・猫のその後の処遇をほとんどのペットショップが明確にしていないことは倫理的にも解決すべき課題です。
これらの理由と、世界的なスタンダードを踏まえると、本来の目指すべき方法を実現するためには、やはり親と子両方の実地検査、もしくは検査結果を逐一確認し、一気通貫で情報を共有するとともにブリーディングへ活かすことと、さらに各種エラーを排除する仕組みを導入し、販売不可となった子犬・猫のその後の幸せな飼育環境を整える必要があります。
これを各ペットショップが責任を持って実現しながら、健全なブリーディングをサポートする仕組みを構築できれば、遺伝子病の発生率は徐々に減少していくはずであり、またこれこそが本来のペットショップの責務であると考えます。
■ペッツファーストグループの遺伝子病に対する取り組み
当社グループは、特に重篤な遺伝子病で苦しむペットを減らすための取り組みとして下記のような取り組みを実施しています。
1. 遺伝子病に対する産学協同研究
2019年より鹿児島大学 大和修教授との共同研究を進めており、柴犬や豆柴に多い 致死率の極めて高いGM1 ガングリオシドーシス(GM1)の発生しにくいブリーディング環境の研究を進めました。
当社グループ契約ブリーダー様123名の協力のもと、2,136 頭(2022 年 7月現在)の母犬または父犬の血液からの遺伝子検査を実施し、GM1 を産み出しにくいブリーディングを徹底することが実現しています。
その結果当社グループが扱う柴犬と豆柴に対して GM1 の発生リスクを大幅に下げることができました。
個々の遺伝子病対策を徹底することは極めて時間と労力がかかりますが、2024年には幅広い犬猫種の新たな遺伝子病に対しての研究、治療方法や緩和ケアについての研究にも積極的に取り組んでいきます。
2. 遺伝子病についての啓発活動
犬猫種ごとの固有の遺伝子病のリスクに関わる適切な情報を随時発信し、病気へ対しての理解を深めていただくことを目指します。また遺伝子病を拡げないためにも、一般の方の無計画、不用意な繁殖については控え、適齢期での避妊去勢手術を強く推奨します。
3. 契約ブリーダー様との取り組み
当社グループでは、中間業者を一切介さずに健全なブリーダー様約1,000名と直接取引を行っています。直接対話できることで、情報の共有やアドバイス、セミナーを実施し、遺伝子病を生み出しにくい健全なブリーディング活動をサポートします。また親犬・猫の遺伝性検査を徹底していただいた上で、当社内で遺伝子病が判明した場合は情報を随時共有したうえで再発防止策を講じます。毎月平均20件ほどのフィードバックを実施しています。
■代表取締役社長 正宗伸麻コメント
私たちペッツファーストグループでは、これまで遺伝子病対策に力を入れてきました。
なぜなら私たちが過去に提供したペットの中にも、残念ながら重篤な遺伝子病が発見された経験があるからです。ペットと暮らす幸せをいつも提供すること、寄り添うことが私たちの理念であるにもかかわらず、せっかくペットとの暮らしが始まった数ヶ月、数年後に発症し、またそれが原因で亡くなるという、飼い主様にとって家族を失うと同じこの上ない悲しみです。
私たちが扱うペットに不幸な遺伝子病を生み出さない未来を目指して、2019年からはペットの遺伝子病研究の第一人者でもある鹿児島大学大和教授との研究へ本格的に取り組んできました。ペッツファースト動物病院代官山高度医療センターでは遺伝子病の早期発見や早期治療ができるようなCTやMRIなどの専門的な設備や体制を積極的に導入しました。
その結果、研究も徐々に進み遺伝子病を生み出さない対策や治療方法、緩和ケアが一歩ずつ確立しています。
ただし遺伝子病は種類が幅広く、未だ判明していない分野も多く、全てに対して網羅的に対策を実施し、生み出さないことやコントロールをすることは決して簡単ではありませんが、少しずつでも改善しなければなりません。私たちが日頃扱っている犬のトイプードルやチワワ、猫のスコティッシュフォールドなどにも今後新たな遺伝子病対策や研究を進めます。
私たちのようなペットを扱う企業には常に高い倫理観が求められています。重篤な遺伝子病で苦しむペットがいなくなるための第一歩として、まずは私たちが提携ブリーダーの皆様や社内外の獣医師、検査機関と連携をすること、特に重篤な遺伝子病のリスクを常に意識すること、これまでの方法や考え方をいつも疑い、新たなルールを柔軟に導入することなど、これからも本来の意味での遺伝子病対策に取り組み、かけがえのない命に向き合う責任と重みを、お客様とも共感しながらペットライフを提供していきます。
■ペッツファーストグループ 学術部マネージャー 稲富獣医師
この10年余の間に獣医療における「遺伝子病」の注目度は飛躍的に増大しています。注目度が増大した要因は複雑ですが、検査技術の飛躍的な向上と検査コストの低下により診断可能な疾患が多くなり、品種特有の疾患すなわち遺伝性疾患が、特に人気犬猫種で多く認められるようになったことが最大の要因と推測されます。
獣医やブリーダーなどの専門家と言われる人々と同じくらい、飼い主など一般の人々の間で小動物の遺伝性疾患に対する危機感が高まり、今後、遺伝性疾患を正しく診断し、的確に対処することがますます求められます。
早くから小動物の遺伝性疾患に関する研究が行われてきたアメリカでは、企業、研究者、獣医師、ブリーダーの遺伝病に対する意識が高く、情報交換が密に行われているため、診断、研究、公開といった対応が非常に早い印象を受けます。
日本とアメリカでは伴侶動物を取り巻く環境が異なりますので、諸外国の方法をそのまま国内に取り入れても機能しない恐れがあります。
国内における伴侶動物の遺伝病には、飼い主の意向、繁殖家の考え方、公的登録事業の確立、遺伝病検査技術、臨床獣医師と研究者の連携、検査機関の協力、遺伝子情報の取り扱い、研究等に対する社会からの人的経済的支援など、多くの問題が関わり、事態を複雑化させています。
ペッツファーストグループは、グループ内で所有する幅広いリソースを活用し、関連諸機関と緊密に連携しながら、伴侶動物の遺伝子病問題に取り組んで参ります。
■鹿児島大学 共同獣医学部 大和修教授 コメント
遺伝専門の獣医師として、これまでに30以上の犬猫に関する遺伝子病研究を行ってまいりました。その中で、特に危険視されていた柴犬の遺伝子病「GM1ガングリオシドーシス(GM1)」の豆柴コロニーにおける調査の必要性を認識し、ペッツファーストと共同研究を始めました。
ペッツファーストが採取した豆柴の検体を解析した結果、わずかではありますがキャリアの親犬が存在することが判明し、GM1の発生を未然に防ぐことができました。遺伝子病は発生時の迅速な調査と予防の繰り返しが不可欠であり、今回の共同研究においてキャリアの発見とブリーディングコントロールを実施したことで、キャリアを有する親犬の増加を回避し、犬舎内だけでなく豆柴コロニー全体へのGM1の拡大を未然に防ぐことができました。これは非常に重要な成果であります。
両親犬の遺伝子検査は最も効率的な遺伝子病の予防手段ですが、ペット販売業界でこれを実践しているのは恐らく日本ではペッツファーストだけです。今後も検査結果に基づいた繁殖管理下で生まれた健康な子犬を販売することで、この遺伝子病予防アプローチの妥当性を証明していくことを期待しています。
また、遺伝子病の解析スピードは急速に進展しており、新たに重要な遺伝子病が発見されつつあります。今後もペッツファーストと協力し、重要な遺伝子病に対する研究と予防策の開発を進め、健全な繁殖環境の構築に貢献してまいります。
【プロフィール】
名前:大和修 教授
経歴:鹿児島大学 共同獣医学部 教授
1998年にGM1ガングリオシドーシスの最初の柴犬症例を発見して以来、長年の研究を経て全国規模の同疾患の予防に貢献。犬猫における多くの遺伝子疾患に関する研究を実施する。
researchmap ID: 1000200110
ORCID: 0000-0002-4430-5645
■豆柴ブリーダー 廣田さん
親犬全頭のGM1検査を行っていただきました。検査結果は全頭クリアで、生まれた子犬たちの血統書にもGM1陰性と分かりやすく記載してもらえるようになったため、ペットを迎える飼い主さまからも信用を得られるようになったのが一番良かったことです。
また、ペッツファーストの獣医さんに訪問してもらい血液を直接採取してくれるので、私たちブリーダーが唾液を採取し行う遺伝子検査よりも精度が段違いに高いことは言うまでもありません。特に、他の関係機関にペッツファーストの獣医師が目の前で直接血液採取したことを伝えると、他では得られない信頼感が生まれます。
ペッツファーストが業界に先駆けてGM1の検査を行ったこと、そして私の所属する団体が血統書への記載を始めたことは大きな成果であると思います。
来年母犬になる予定の豆柴がいるので、その子にもぜひGM1の検査を受けさせてほしいです。そして、GM1以外の遺伝子病についても研究を進めていただき、検査できる日が来ることを心待ちにしています。
■会社案内
【会社名】ペッツファーストホールディングス株式会社
【所在地】〒153-0063東京都目黒区目黒1-24-12 オリックス目黒ビル9F
【資本金】1億円
【代表者】代表取締役社長 正宗伸麻
【会社名】ペッツファースト株式会社
【所在地】〒153-0063東京都目黒区目黒1-24-12 オリックス目黒ビル9F
【資本金】1億円
【代表者】代表取締役社長 正宗伸麻
【設立】2008年4月
【従業員数】1,117名(うち獣医師69名 ※業務委託含む 愛玩動物看護師53名)2023年11月末時点
【その他】
●公益財団法人日本補助犬協会と連携し12頭の聴導犬と1頭の介助犬を育成しユーザーへ提供
●動物病院URL(https://pfirst-ah.jp/)
●ニュースレターアーカイブページ(https://www.pfirst.jp/newsletter.html)
<本掲載関連記事>
・vol.1 ペットの命を守るための取り組み〜売れ残ったペットはどうなるのか
・vol.3 ペッツファースト初の医療センター「ペッツファースト動物病院 代官山高度医療センター」を開院
・vol.4 「ペッツファースト動物病院 福岡大野城医院」開院〜なぜ動物病院を拡大するのか〜
●マンスリーペットレポート(https://www.pfirst.jp/protected_monthlyreport.html)
■お問い合わせ先
【本掲載内容について】
ペッツファースト株式会社 広報部
電話番号 03-6417-3503/E-mail pr@pfirst.jp
担当者 粕谷・西河
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