英会話能力判定システムLANGX Speakingを 早大正規授業科目Tutorial Englishに2023年度から正式採用
早大発スタートアップ エキュメノポリス社が開発した会話AI(人工知能)技術を搭載
- 会話AIエージェント搭載型の英会話能力判定システムLANGX Speaking(ラングエックス・スピーキング)を、早大の正規科目Tutorial Englishの英語能力判定テストとして2023年度から採用することになりました。
- LANGX Speakingは早大発の研究開発型スタートアップ エキュメノポリス社が開発した会話AI技術を搭載し、これまで困難とされていたシステム・受験者間の高度にインタラクティブな英会話を通して、より正確な英会話能力判定を実現します。
- 高度な技術力が評価され、世界からも注目されるエキュメノポリス社は、世界最大級の教育分野ビジネスカンファレンスSXSW EDU Launch(2023年3月開催)に東アジア唯一のファイナリストとして選出され、同社取締役の松山氏が登壇予定です。
1.LANGX Speaking開発の背景
日本の英語教育において、英語による「コミュニケーション能力」の養成が長く重要視されながらも、その指導方法や評価方法、教材が十分でないことが長らく指摘されてきました。世界的な語学能力判定基準であるCEFR(*3)では、英語4技能(読む・書く・聞く・話す)のうち、特に「話す(Speaking)能力」は語彙の豊富さ・文法的正しさ・流暢さ・発音の良さ・インタラクティブ性・一貫性などの要素によって説明されると定義されています。このなかでも特に既存の英語能力自動判定テストが不十分と指摘されてきたのは、他者と会話するうえで重要とされる「インタラクティブ性」、「一貫性」の視点でした。これらを評価に含めずにスピーキングの能力を判定しようとする場合、テストの判定が実際のコミュニケーション能力を十分に反映していないということがわかっています。
上記のような問題に対して早大は、エキュメノポリス社の前身となる研究開発チームと連携して、次世代英会話学習支援AIの研究開発プロジェクトを開始しました。2020年初頭に起きた新型コロナウィルス蔓延を受けて、オンライン化されたTutorial English授業時の大規模な会話データを収集・分析し、研究開発プロジェクトを加速してきました。
2.LANGX Speaking導入によって実現できること
LANGX Speakingでは、会話AIエージェントInteLLA(インテラ;Intelligent Language Learning Assistant)との自然な会話を通して学習者の英会話コミュニケーション能力を判定します。早大グリーン・コンピューティング・システム研究機構 知覚情報システム研究所(所長:小林哲則 理工学術院教授)の松山洋一(まつやまよういち)主任研究員(当時)らの研究チームが開発してきたInteLLAは、対話システム技術を活用して言語学習者のレベルや理解に合わせて質問を適応的に変更し、適切にサンプルを引き出し、CEFRに準拠して学習者の言語能力を効果的に評価します。
このたびLANGX Speakingが採用された早大のTutorial English(全4レベル)は、英語スピーキング能力の育成に重点をおき、1グループ最大4名の少人数制で授業を行う正規英語科目です。2002年の開講以来、約20年にわたり、早大生の英会話力の向上の一端を担い、毎年のべ約1万人の学生が履修する早大の看板科目の一つとなっています。この受講前後での学習効果測定やクラスのレベル分けを目的とした、これまでのオンライン英語能力判定テスト(WeTEC)(*4)では主にリスニング能力と語彙・文法知識を測定対象とし、これらを基にスピーキング能力を評価してきました。今回、英語能力判定テストをLANGX Speakingに変更し、英語による対人コミュニケーションスキルを深く測る技術が導入されることによって、会話能力がより精度が高く自動判定ができるようになり、より適切なレベルでの授業履修と一層の学修効果向上が期待されます。
LANGX Speakingのテスト冒頭では、InteLLAが受験生の緊張感を和らげるような会話をしてリラックスした雰囲気をつくります。それに続いて、InteLLAは受験者に複数のインタビューをします。受験者との会話の中でInteLLAは、相槌を打ったり、返答を考えている間は待っていてくれたりします。応えに窮して会話が詰まると、別の話題に誘導し会話を展開する等、リアルな面接に近似した体験が可能です。そのうえ、回答者の発話内容から英語のレベルを読み取り、質問の難易度も自動で調整した会話を実現します。インタビューの後半では、簡単な議論対話も展開されます。
InteLLAを用いたインタラクティブな会話を通して収集した発話データを用いて、語彙の豊富さ・文法的正しさ・流暢さ・発音の良さ・インタラクティブ性・一貫性の6つの側面から、受験者のスピーキング能力を自動判定します。受験者はLANGX Speakingの受験を通して、自身のレベルを確認できると共に、英語スピーキングにおける自身の強み・弱みを把握することができ、以降の英語学習に役立てることができます。
LANGX Speakingは、早大Tutorial Englishでの導入を皮切りに、今後、他大学、小中高校(GIGAスクール)、英会話スクール等への導入が見込まれており、早大発の言語AI技術が、教育DX化を推進し、英会話学習者の学びの効率化をもたらすことが期待されています。
3.世界が注目する早大発スタートアップ エキュメノポリス
InteLLAをコアとする高度な技術をもとに、松山氏は、大学研究者から起業家へと転身し、2022年5月、早大発の研究開発型スタートアップ エキュメノポリス社を設立。早大の産学連携のエコシステム「早稲田オープン・イノベーション・エコシステム(*5)」を活用し、研究成果の早期実用化をめざしてきました。エキュメノポリス社は、設立から間もないにもかかわらず、すでにEdTech分野で世界から注目を集めています。世界最大級のビジネスカンファレンスSXSW2023(サウスバイサウスウエスト2023)(*6)に先駆けて2023年3月6日から開催される教育分野に特化したイベントSXSW EDU2023のスタートアップ・ピッチコンペティション「SXSW EDU Launch」では、同社は東アジアから唯一、ファイナリストに選出。松山氏が登壇しLANGX Speakingのリリースを世界に発表する予定です。
早大では、産学連携、ベンチャーの育成、研究人材の育成、知財の創出・活用を体型的に行う「早稲田オープン・イノベーション・エコシステム」の実現のため、産学連携の体制整備を2019年から推進しています。さらに2020年からは早大発の研究技術シーズをもとにした事業化の支援も強化してきました。スタートアップ創出を通じて、早大発の研究成果の早期社会実装を目指すことは当然のこと、松山氏のような卓越した研究力を有するポスドク研究員のキャリアの選択肢の一つとしても、今後も、スタートアップ創出を力強く支援してまいります。
【英会話能力判定エージェントシステム InteLLAの開発】
InteLLAの実証研究は2020年度に採択をうけた国⽴研究開発法⼈ 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「⼈と共に進化する次世代⼈⼯知能に関する技術開発事業」の「⼈と共に成⻑するオンライン語学学習⽀援AIシステムの開発」の事業として行われています(プロジェクトサイト:https://www.teai-waseda.jp/)。知覚情報システム研究所(鈴木駿吾 次席研究員、髙津弘明 次席研究員、佐伯真於 研究助手、新井雄也 研究助手、松山洋一 客員主任研究員)を中心として、教育・総合科学学術院 澤木泰代教授、早稲田大学グローバルエデュケーションセンター 近藤悠介准教授らが専門家の立場から英会話教育と言語テスト設計の検討し、株式会社早稲田大学アカデミックソリューションが英会話コンテンツや実験環境の提供を担っています。
当該技術はこれに先立ち、2021年12月、英国の大学評価機関のクアクアレリ・シモンズ(QS)社と米国ペンシルベニア 大学ウォートン校(MBA)とが主催する世界最大級の教育イノベーションのアワードとして世界的に有名なQS-Wharton Reimagine Education Award 2021(*7)において、Learning Assessment Category(能力判定部門)においてBronze賞(銅賞)を受賞しています(早稲田大学プレスリリース https://www.waseda.jp/top/news/77513)。
エキュメノポリス社
名称:株式会社エキュメノポリス(Equmenopolis, Inc.):
事業概要:会話AIエージェントプラットフォーム開発、およびそのアプリケーションの開発
設立:2022年5月2日 所在地:東京都新宿区西早稲田一丁目22番3号
代表取締役:松山洋一(早大グリーン・コンピューティング・システム研究機構 客員主任研究員)
URL:https://www.equ.ai/ お問い合わせ:https://www.equ.ai/ja/contact/
早大リサーチイノベーションセンター 統括所長 柴山知也(早大理工学術院 教授) コメント
本学の知財を活用した、早大発研究開発型スタートアップであるエキュメノポリス社が、確実に歩みを進めつつあることを大変うれしく思います。これからも多くの早大発の研究成果の社会実装が加速され、世界をリードしていくことを期待しつつ、同社の事業成長を大学として支援し続けてまいります。同社に続く研究成果の社会での活用がこれからも続々と生まれてきます。早大のアントレプレナーシップにご期待ください。
株式会社 エキュメノポリス 代表取締役 松山洋一氏 コメント
私自身、学生時代に早大で導入当初のTutorial Englishを受講して、異なる背景を持つ相手を理解し自分の伝えたいことを相手に適切に伝える能力を獲得したことこそ、研究者として起業家としてグローバルにキャリアを歩む原点となりました。時を経て今、我々の開発する最新の会話AI技術がこのプログラムに組み込まれていくということに、運命を感じずにはいられません。若い学生たちとの会話を通して、AIも日々成長していくでしょう。早大のキャンパスから、世界をリードする教育イノベーションの試みが始まります。
4.用語解説
*1:早稲田大学アントレプレナーシップセンター:
- 早稲田大学の組織の一つ。教員、学生、校友を対象とした教育・研究成果からうまれた起業支援を行うことを目的に2001年に設立。
所在地:〒169-0051 東京都新宿区西早稲田1-22-3早稲田大学19-3号館
URL: https://www.waseda.jp/inst/entrepreneur/ E-mail:wep@list.waseda.jp
*2:早稲田大学グローバルエデュケーションセンター(GEC)
- 早稲田大学の組織の一つ。全学部・研究科の学生に向けて、学問を学ぶために必須な「アカデミック・ライティング」「英語」「データ科学」「数学」「情報」のスキルを身につける基盤教育や言語・リベラルアーツ教育を提供することを目的に、2014年に設立。
所在地:〒169-8050 東京都新宿区西早稲田1-6-1早稲田キャンパス1号館3階
URL:https://www.waseda.jp/inst/gec/
*3:CEFR
- 欧州評議会が2001年に公開した「外国語の学習・教授・評価のためのヨーロッパ言語共通参照枠(Common European Framework of Referenceの略)」のこと。言語の枠や国境を越えて、外国語の運用能力を同一の基準で測ることが出来る国際標準。日本でも2020年改訂の学習指導要領においてCEFRについて言及されている。
- WeTEC(Web-based Test for English)は株式会社早稲田大学アカデミックソリューションが運営する、早大生の英語コミュニケーション能力を測定するオンラインテスト。約60分程度の試験時間でIRT(項目応答理論)に基づいたCAT(コンピュータ適応型テストシステム)を用いて、能力測定を行う。
- 「世界で輝くWASEDA」の実現に向けた研究推進の一環として、グローバルなオープンイノベーション環境を創造する「早稲田オープン・イノベーション・バレー構想」を推進中。産学連携、ベンチャーの育成、研究人材の育成、知財の創出・活用を体型的に行う、社会に有益な持続的イノベーションエコシステムの実現をめざしている。https://www.waseda.jp/inst/weekly/feature/2020/10/05/78642/
- 毎年3月にアメリカ合衆国テキサス州オースティンで開催されるビジネスイベント。最先端テクノロジーの祭典、スタートアップの登竜門と位置づけられる。2007年にTwitter、2011年にAirbnb、2012年にはPinterestなどがSXSWにおいて表彰され、それを契機に世界の注目を浴びることになったことでも有名。
- 英国の大学評価機関のクアクアレリ・シモンズ(QS)社と米国ペンシルベニア 大学ウォートン校(MBA)とが主催する世界最大級の教育イノベーションのアワードとして世界的に有名。AIやVR/AR、Eラーニング、能力判定等、複数の部門から構成されます。主なスポンサーにGoogle Cloud、Amazon Web Services、IBM、Microsoft、Salesforce等が名を連ね、過去にはハーバード大学、MIT、カーネギーメロン大学等の海外有力大学の研究や世界的に有名な教育アプリ等が受賞している。
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