原子力機構発ベンチャーのエマルションフローテクノロジーズがシリーズBにて13.5億円の資金調達を実施
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(以下、原子力機構)発のレアメタルリサイクルベンチャーである株式会社エマルションフローテクノロジーズ(茨城県那珂郡東海村、代表取締役:鈴木裕士、以下EFT)は、Value Chain Innovation Fund(運営者:Spiral Innovation Partners株式会社)をリード投資家として、既存投資家6社に新規投資家7社を迎えた計13社を割当先とする第三者割当増資を実施するとともに、日本政策金融公庫からの3億円の融資により、シリーズBラウンドにて合計13.5億円を調達いたしました。これにより、2021年4月のEFT創業以来、同年に実施したシードラウンド、2022年に実施したシリーズAラウンド、さらにNEDO助成金や日本政策金融公庫からの融資などを合わせて累計調達額は約20億円に達しました。 EFTは、今回の調達資金をもとにリチウムイオン電池のレアメタルリサイクルのための商業プラントの開発を加速するとともに、エマルションフローを普及するためのトータルサポート事業とグローバル展開の強化に取り組んで参ります。
■シリーズBラウンドの第三者割当増資引受先(下線は新規株主)
Valuechain Innovation Fund投資事業有限責任組合(運営者:Spiral Innovation Partners株式会社)
本田技研工業株式会社
リアルテックファンド4号投資事業有限責任組合
SMBCベンチャーキャピタル7号投資事業有限責任組合
三菱UFJキャピタル8号投資事業有限責任組合
ニッセイ・キャピタルサステナビリティ課題解決ファンド1号投資事業有限責任組合
株式会社MOL PLUS
静岡キャピタル9号投資事業有限責任組合
みずほ成長支援第5号投資事業有限責任組合
未来創造投資事業有限責任組合
NCBベンチャー投資事業有限責任組合
OCP2号投資事業有限責任組合
KDDI Green Partners投資事業有限責任組合(運営者:SBIインベストメント株式会社)
EFTは、原子力機構が開発した革新的な溶媒抽出技術「エマルションフロー」を活用した事業を展開するスタートアップ企業であり、2021年4月5日に設立されました。エマルションフローは、従来の溶媒抽出技術と比較して、低コストで高効率に高純度な元素分離を可能にする革新的な技術であり、レアメタルを取り巻く社会課題の解決に寄与できると期待されています。特に、資源循環事業では、エマルションフローを活用することで、廃棄されたリチウムイオン電池(LIB)などに含まれるコバルトやニッケル、リチウムといったレアメタルを低コストかつ低環境負荷で高純度に回収する技術を確立し、回収したレアメタルをハイテク産業に直接再利用する「水平リサイクル」の事業化を実現します。さらに、創業以来培ってきた革新的な技術の水平展開として、当社事業を環境ソリューションにも拡げ、レアメタルの分離回収だけでなく、工場排水に含まれる油分やPFAS(有機フッ素化合物)といった環境汚染物質の分離回収にも活用することで、資源循環と環境保全の両立と調和を実現する社会作りに貢献してまいります。
■エマルションフロー技術説明
溶媒抽出とは、物質の分離・精製手法の一つであり、互いに交じり合わない液相間における物質の分配を利用することで、目的成分のみを選択的に抽出するための技術です。従来の溶媒抽出技術では、液相どうしを「混ぜる」、「置く」、「分離する」の3工程を必要としますが、エマルションフローは単純な送液と撹拌のみで、これら3つの工程をすべて同時に行うことができる革新的な溶媒抽出技術です。そのため、エマルションフローは従来技術であるミキサーセトラーに比べると4~10倍程度の生産能力を可能とし、ゆえに従来比75%以上のダウンサイズ、そして、ランニングコストの低減を可能にします。また、コンパクトゆえにフレキシブルなプラント設計が可能なだけではなく、ナンバリングアップ方式による高いプラント拡張性を有しています。そして、連続処理が可能な多段エマルションフローにより99.99%以上の高純度化が可能であり、従来技術と比較して低コストで高効率にレアメタルの高純度精製が可能となります。一方、エマルションフローの高い油水分離能力は水相への油分の混入を防ぎ、有機溶媒の損失を低減させるだけでなく、油の混ざらないクリーンな排水を実現します。また、エマルションフローは従来技術では実現できないレベルで、極めて高い濃縮性能を有しており、単純なOA比(水相と油相の流量比)の調整だけで、数十倍を超える高濃縮が可能になります。このように、エマルションフローは単にコンパクトなだけではなく、従来技術では困難な条件で効率的な溶媒抽出を実現するなど、これまでの溶媒抽出の常識を変えるゲームチェンジャーと言えます。
■資金調達の目的
①LIBリサイクルのための商業プラント開発
当社では、LIBのレアメタルリサイクルの実現に向け、LIBに含まれるリチウム、コバルト、ニッケルといったレアメタルの分離・抽出技術の開発を進めています。これまでのプロセス開発において、各金属元素の高純度回収に成功しており、そのレアメタルを用いて作製したLIBの性能評価により、初期性能を満足することを確認して参りました。また、プラント開発においては、ラボスケールから実機スケールに至るスケールアップ開発にも着手し、その要素技術開発はほぼ完了しています。今後は調達した資金を活用し、2026年の稼働を目指す1号商業プラントの実現に向けて、スケールアップ開発のさらなる高度化に加え、これまでに開発してきた抽出プロセスを模擬できるパイロットプラントの整備を進めるなど、ラボレベルから実証レベルにフェーズアップした技術開発を進める予定です。そして、そこで得られた研究開発の成果をもとに、2025年のプラント建設の開始に向けた基本設計や詳細設計を進める計画です。
②トータルサポート事業の拡大
トータルサポート事業では、レアメタルリサイクルだけでなく、金属精錬、化学、バイオ、食品、環境浄化に関連したお客様の課題に対し、それを解決するエマルションフロープロセスの開発・提案を行うとともに、それを実現するための装置・プラントの設計、製造、導入、技術ライセンス、オペレーション支援等を行っています。特に、工場等からの廃液に含まれるレアメタルやレアアースのリサイクルだけでなく、工場排水に含まれる油分、さらに、昨今大きな社会問題となりその規制強化の始まっているPFASの分離・回収など、主にエマルションフローを活用した環境ソリューション技術の普及を目指しています。今後は調達した資金を活用し、トータルサポート事業の拡大に向けた体制強化と積極的なマーケティングを進めて参ります。
③グローバル展開の強化
LIBリサイクル事業においては、アジア太平洋地域を中心としたLIBリサイクルビジネスの展開に加え、欧米へのエマルションフロー技術の普及を見据えるなど、昨年よりグローバル展開を強化しております。今後もエマルションフローのプレゼンスの向上と具体的な連携構築を実現するため、今回調達した資金を活用し、海外拠点整備を含めたグローバル体制の強化と、エマルションフロー技術の普及を目指した、幅広いグローバルマーケティングを展開して参ります。
④チーム強化
今後の事業拡大に向け、LIBリサイクル技術開発やトータルサポート事業に関わる技術者に加え、今後、技術開発フェーズから事業フェーズに移行するために必要な事業開発人材、また、IPOを見据えたコーポレート人材や海外事業展開のための人員強化を図ります。
■引受先からのコメント:
Spiral Innovation Partners株式会社 代表パートナー 岡 洋 氏
この度EFT社に出資させて頂くことになり、大変嬉しく思っております。近年のEVの爆発的な普及を受けて、今後レアメタルの需給ギャップはますます広がることが予想されており、レアメタルリサイクルの重要性が高まっています。同時に、地政学的リスクの高まりに代表されるように、経済安全保障の観点からもレアメタルリサイクルサプライチェーンを国内に構築しておくことは、国策としての重要度も上がっているように感じています。特にLIBリサイクルはClimate Techカテゴリでユニコーン企業が既に複数誕生しており、日本発のスタートアップが追随していくことは必須だと捉えています。同社は日本原子力研究開発機構発の技術でそれに挑んでおり、今回の調達資金によって商業プラント開発という新しいフェーズに突入し、社会実装に向けて一段と事業を加速していきます。同社が、LIBリサイクルにおいてAPAC地域を代表する企業になれるように、われわれもご支援をさせて頂きます。
本田技研工業株式会社 執行役常務 小澤 学 氏
EFT社はLIBのリサイクルにおいて先進的なコンセプトや技術を持つ企業です。同社のコア技術である革新的溶媒抽出技術「エマルションフロー」は、2050年サステナブルマテリアル率100%に取り組むHondaにとって有望な技術の一つになると考え、シリーズAでの出資に続き、追加出資を決定いたしました。シリーズBの資金調達完了により、同社の技術革新や事業拡大がさらに加速することを期待しています。今後もHondaは、グローバルオープンイノベーションプログラム『Honda Xcelerator Ventures』*を通じて、革新的なベンチャー企業の探索、協業、出資を推進してまいります。
* 本田技研工業株式会社の子会社であるホンダ・イノベーションズ株式会社が、グローバルに推進しているHondaのオープンイノベーションプログラム。
リアルテックホールディングス株式会社 代表取締役 永田 暁彦 氏
EFT社は創業前である2020年にリバネスが主催する茨城テックプランターで最優秀賞を受賞し、その後に弊社は会社設立のご支援、シードラウンド及びシリーズAにおける出資をさせて頂きました。これまでEFT社は、リチウムイオン電池からのレアメタル回収率の向上やスケールアップ、回収レアメタルの品質評価、プロフェッショナル人材の採用等を着実に遂行してきており、比較的小規模なプラントでも、プロセス全体において国際的にも高いコスト競争力と採算性を確保できる目途が立っています。また、国内外の事業会社各社からもその優位性について高い評価を受け、パートナーシップを拡大しています。今回、新たに同じ船に乗って頂いた強力な株主の皆様とも一丸となり、EFT社によるレアメタルに関する課題解決を全力で支援して参ります。
■EFT概要 社 名: 株式会社エマルションフローテクノロジーズ 所在地: 茨城県那珂郡東海村白方7番地5 設 立: 2021年4月5日 代表者: 鈴木 裕士 事業内容: ・リチウムイオン電池を中心としたレアメタルリサイクル事業 ・エマルションフロー技術の普及を目指したトータルサポート事業 ・エマルションフロー技術の横展開を目指した新規開発事業 公式サイト: https://emulsion-flow.tech |
■お問い合わせ先
ホームページの下記お問い合わせフォームよりお問い合わせください。
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