【導入事例】ダイクレ:アンカーパネル設計を形状最適化システム「RICOS Generative CAE」で自動化 〜 1週間かかっていた設計作業を 1日で完了させる仕組みを構築〜
AI とシミュレーション技術で製品設計の効率化と高付加価値化を実現する株式会社RICOS(本社: 東京都千代田区、代表取締役 井原遊、以下 RICOS)は、2024 年 4 月から株式会社ダイクレ(本社: 広島県呉市、代表取締役社長 山本貴、以下 ダイクレ)に、「自律的に製品形状を変更し、最適形状を探索するツール」である「RICOS Generative CAE」を提供しています。
今回はダイクレに、「RICOS Generative CAE」を導入してのご感想や、今後の期待についてインタビューしました。
導入の背景やコメントはこちらの記事をご覧ください: https://www.ricos.co.jp/news/ricos-generative-cae-introduced-daikure/
ユーザーインタビュー
――皆さまの業務について教えてください。
高木様: 主に FRP 製品の開発・改良をしております。FRP とはガラス繊維・炭素繊維などの繊維をプラスチックの中に入れて強度を高めた複合材料で、例えばアンカーパネル、グリーンパネルといった法面関連製品などに活用されています。
また製品開発の他に、営業や工場(製造側)からの技術的な問い合わせに対して対応する技術サービスの業務もあります。
谷川様: 私は例えば高欄や地覆といった橋梁製品、そして長スパン用グレーティング製品を主に担当しております。
その他にも、最近は特許関係や BIM/SIM 活用・3D データ化に関する業務も行っております。
――そして今回、RICOS の最適化システム「RICOS Generative CAE」をアンカーパネルの設計でご活用いただいております。まず、アンカーパネルとは、どのような製品か教えてください。
高木様: 法面の崩壊を防ぐ方法の一つにグラウンドアンカー工法という工法があります。アンカーパネルは、その工法を実施する際の受圧板として使われております。
――では、御社のアンカーパネルの特長は何でしょうか。
高木様: まず、緑化に優れているという点です。弊社のアンカーパネルは FRP と鉄のハイブリッドの製品で、FRP 部分に開放部を多く設けております。そのため、アンカーパネルがある場所にも草が生えてくるというのを大きな特長としております。
また、受圧部分に FRP を使っているため、腐食しにくいという特長もあります。
そして、加工によってサイズなどの変更にもフレキシブルに対応しやすく、現場のニーズに合わせた特殊対応が実施できることも、製品の特長の一つです。
――アンカーパネルに関する、現在の業務を教えてください。
高木様: 現在多いのは、現場ごとの特殊品の対応ですね。まず現場のニーズに応じて、解析で性能評価を行いながら設計します。そして、営業・工場のそれぞれに渡すための図面を作成するところまで、全部私が対応しております。
また、追加の型式を規格化するという業務や、お客様の立ち合いでの実験の対応も行っております。
――アンカーパネルの設計の難しさについて教えてください。
高木様: 最適な部材構成にしようとすると、複数のパラメーターを変更しながら都度シミュレーションを実行する必要があり、非常に時間がかかってしまう点が一番難しいポイントだと思っています。
また、お客様から製品の高さやアンカーを入れる角度などに指定があり制約が追加されることもあるため、それらを満たしながら設計を行わなければならない点も難しさの一つだと思います。
基本的に、1 製品の設計に実働 1 週間以上かかります。多くのパラメータを調整しながらシミュレーションで評価を行い、性能が足りなかったらやり直して、という試行錯誤の繰り返しです。どうしても期間が足りないときは、既存の類似型式で仮のお見積りを出しておいて、後から正式な設計の図面とお見積りを提出するというケースもあります。
――どのようなきっかけで RICOS との協業が始まったのでしょうか。
鈴木様: きっかけは銀行主催のマッチングイベントでした。そのときは、シミュレーションとは関係ない事業アイデアに関する協業先を探していたのですが、対象の参加企業リストの中にあった RICOS の最適化のアイデアを見て興味を持ち、面談を実施しました。
当初は、弊社のどの製品を最適化するのがよいのかという悩みもありましたが、アンカーパネルでシミュレーションを活用していたことから、RICOS の技術との相性がよいかなと思って決めました。
協業開始前は既存品の改良を行う想定でしたが、特殊品の設計業務が大変であったこともあり、RICOSさんとの議論を通じて、既存品の改良と特殊品設計の自動化の両方を目指して、ツール開発をお願いする方針となりました。
――RICOS Generative CAE とこれまでのツールとの違いをお聞かせください。
高木様: 一番衝撃だったのは、数字を入れたら形を勝手に考えてくれるところでした(笑)。
もともと使っていたツールでは、シミュレーションを行うためのメッシュを自分で作成する必要があり、製品の形状を変更するごとにメッシュ作成の作業が発生していました。特に、製品の高さが変わるなど根本的な変更の際には、メッシュを作り直すだけで 2 時間ほどかかっていました。そのような作業が不要になるというのは、すごく衝撃的でした。また、そのような作業時間がなくなることで、手作業よりも大幅に試行回数が増やせることも魅力的です。
――RICOS Generative CAE を使ってみての感想をお聞かせください。
谷川様: 現在は、要望に対する条件を決めるのに 10 〜 15 分、ツールへの入力に 5 分ほど、作業としては 20 分ほどで完了しています。あとは最適化の計算を 1 日半くらい待つだけで、最適な図面が出てきています。これまでの作業と比べて、大幅に工数が削減できたのは非常に嬉しいです。
また、工数削減だけでなく、お客様に設計案やお見積りを提出するまでの時間が短縮できることや、お客様のご要望に最大限応える設計案がお出しできるようになることも、大きなメリットだと思っております。
――RICOS の対応に関する感想や、今後期待する点をお聞かせください。
鈴木様: ゆくゆくは、弊社の他の製品も RICOS の強度計算・最適化システムで対応できるようにツールの追加機能開発に取り組んでいただければと思っています。
谷川様: 次の段階では、計算書や、標準図などに対する開発に取り組みたいです。
高木様: そのような書類、図面などの作成に半日ほどかかるため、その作業の自動化に関して是非とも一緒に取り組ませていただければと思っております。
RICOS Generative CAE について
■RICOS Generative CAE の特長
・製品形状の“量産可能な範囲内”での変更案を、自動で提案
・提案された形状変更後の性能を自動で評価
・より高性能(最適)な形状を特定
■RICOS Generative CAE を開発した背景
製造業の設計・シミュレーション業務において、CAEツールの利用は広く一般的に行われています。しかし、扱う人の技術習熟度や、シミュレーションの計算時間の問題等から、必ずしも利用が十分に行われているとは言えません。
結果として、製造販売に至るまでに十分な回数の設計変更/性能検証のトライアンドエラーが出来ず、製品が求める性能を十分に引き出せていない問題が起きている、と弊社は考えております。
■RICOS Generative CAE について
上記のような課題に対し、弊社では「自動で設計を変更、性能検証ループを多数(数十万回以上)行い、より良い形状を探索・提案するシステム(Generative CAE)」の開発を進めています。
本システムは “量産可能性” を一つのファクターとして内包しており、結果として、量産に耐えうる形状の中でより良い性能の形状案を提案する仕組みとなっています。
弊社は、RICOS Generative CAE と、AI-CAE ツールである RICOS Lightning※ のアプリケーション等を用いて、より多くの製造業企業・エンジニアの皆様が持つ課題『開発リードタイムの短縮化や設計・シミュレーションにおけるコストの低減、製造業における AI /デジタル活用』のサポートを行っていきたいと考えております。
※流体解析の結果を高速に予測する AI-CAE ツールで、高速・高精度なだけでなく、複雑なメッシング作業が不要であり習熟も容易です。自動車メーカー含む複数の企業に導入いただいており、現在は熱流体や混相流への適用も可能となっております。
■会社情報
株式会社ダイクレ
所在地:広島県呉市築地町1番24号
TEL:0823-21-1331
FAX:0823-25-7790
会社HP:https://www.daikure.co.jp
アンカーパネルの製品ページ:https://www.daikure.co.jp/slope/p28178/
株式会社RICOS
所在地:東京都千代田区丸の内二丁目3番2号
代表:代表取締役 井原 遊
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