「一人ひとりの子どもを主語にする学校教育」の実現に向けて,いま何ができるのか。その手がかりがここにある。『「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を目指して』2023年11月24日発売!
全ての子どもたちの可能性を引き出す,「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実とは。この問いに対して,当代きっての著者らが現状考えうる多様な回答を理論と実践の両側面から検討する。
奈須正裕,伏木久始 編著・A5・352頁・定価2,640円・2023年11月24日(金)発売・発行:北大路書房
全ての子どもたちの可能性を引き出す,「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実とは
2017年に改訂された教育指導要領の円滑で十全な実践化に必要な道具立てを打ち出した,2021年中央教育審議会答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して―全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現」。その中で現在もなお注目されているのが「個別最適な学び」だ。
背景には,近年における子どもの多様性の量的・質的な拡大がある。発達障害の可能性のある子ども,不登校や不登校傾向の子ども,経済的な困難を抱える子ども,海外にルーツをもつ子ども等の増加に加え,これまで十分に光が当てられることがなかった特定分野に特異な才能のある子どもについても,文部科学省はようやく本格的な検討を開始した。これらの子どもに最大限のサポートを行うのは,社会が果たすべき義務であるが,多様性はこれらの子どもたちだけの問題ではない。「特に困っていない」「何とかやれている」とされる子どもにも多様性はある。どの子もその子ならではの独自な要求や都合を抱えて教室にいる。
子どもがうまく学べないのは,子どもの側に障害があるのではなく,カリキュラムや学習環境の側に障害があるからにほかならない。一人ひとりの実情に合わせ,可能な限りカリキュラムや学習環境の側にある障害を取り除き改善を図る。いまやこれが世界のトレンドであり,ようやく日本もその方向に舵を切りはじめた。今回の「個別最適な学び」の提起は,そのような思想的枠組みのなかで理解される必要がある。
もっとも,「個別最適な学び」に連なる原理や実践の流れそのものは,近代学校に対する批判と改革の流れの中で取り組まれ議論されてきたものである。今後の展開を考えるうえで,これらに学ぶべく整理を進めることは重要な課題であろう。
一方,しばしば「個別最適な学び」と対峙するかのように語られる「協働的な学び」もまた,実は近代学校に対する批判と改革のなかで拡充を遂げてきた実践動向にほかならない。両者に共通するのは,子どもたち自身による自立的な学びの推進であり,その背後にある,すべての子どもは有能な(competent)学び手であり,適切な環境なり状況と出合いさえすれば,自ら進んで学ぼうとするし,学ぶことができるという事実認識である。
「協働的な学び」が目指すものは,単に皆で心を一つにし,力を合わせて頑張るとか,集団としてのパフォーマンスの向上を目的に個人が最大限の努力をするといったものではない。「個別最適な学び」と同様に多様性を尊重し,多様な「個」の間で互恵的な学びが生じ,一人ひとりの学びとして返っていくことを目指したものである。
「一人ひとりの子どもを主語にする学校教育」の実現に向けて
「令和の日本型学校教育」の実践創造に際しては,そのような特質をもつ「個別最適な学び」と「協働的な学び」がそれぞれに充実するとともに,両者の間に相補的で相互促進的な関係を構築することが望まれる。内容中心から資質・能力を基盤とした学力論への転換,GIGA スクール構想に伴うICT 環境の拡充など,学校教育を取り巻く状況が大きく変化するなか,それは理論的・実践的にどのように可能となるのか。また,具体的な姿はどのようなものとなるのか。もちろん,この問いに対する回答は多種多様に存在するし,むしろそれぞれの回答の背景や根拠から,私たちは未来に向けて多くの示唆を得ることができるだろう。
本書では学校教育における「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的充実を目指して,現状において考え得る多様な回答を国内外の実践や研究に広く求め,整理する。そして子どもたちの学びを豊かなものにする「一人ひとりの子どもを主語にする学校教育」の実現のために,教師が安心して学べる環境をどう整えるか。これからの時代に求められている教育実践を多様なアングルから描き出す。
執筆者紹介
《編著者紹介》
奈須正裕(なす・まさひろ)
現在:上智大学総合人間科学部教授。
主著:『個別最適な学びの足場を組む。』(単著)教育開発研究所,2022年
『「資質・能力」と学びのメカニズム』(単著)東洋館出版社,2017年
伏木久始(ふせぎ・ひさし)
現在:信州大学学術研究院教育学系教授。
主著:『信州発・大学版「総合学習」の展開』(編著)信州教育出版社,2012年
『山と湖の小さな町の大きな挑戦』(共著)学文社,2017年
《執筆者紹介》(執筆順,執筆担当)
奈須正裕(なす・まさひろ) はじめに,第1章~第3章
編著者紹介参照。
荒瀬克己(あらせ・かつみ) 刊行に寄せて
現在:独立行政法人教職員支援機構理事長。
伏木久始(ふせぎ・ひさし) 第4章,おわりに
編著者紹介参照。
大豆生田啓友(おおまめうだ・ひろとも) 第5章
現在:玉川大学教育学部教授。
加藤幸次(かとう・ゆきつぐ) 第6章
現在:上智大学名誉教授。
佐野亮子(さの・りょうこ) 第7章
現在:東京学芸大学非常勤講師。
松村暢隆(まつむら・のぶたか) 第8章
現在:関西大学名誉教授。
金田裕子(かねた・ゆうこ) 第9章
現在:宮城教育大学大学院教育学研究科准教授。
白水 始(しろうず・はじめ) 第10章
現在:国立教育政策研究所初等中等教育研究部総括研究官。
涌井 恵(わくい・めぐみ) 第11章
現在:白百合女子大学人間総合学部准教授。
宇佐見香代(うさみ・かよ) 第12章
現在:埼玉大学教育学部教授。
坂本明美(さかもと・あけみ) 第13章
現在:山形大学地域教育文化学部准教授。
堀真一郎(ほり・しんいちろう) 第14章
現在:学校法人きのくに子どもの村学園理事長・学園長。
浅野大介(あさの・だいすけ) 第15章
現在:農林水産省輸出・国際局参事官(新興地域グループ長)。
※元:経済産業省サービス政策課長・教育産業室長。
堀田龍也(ほりた・たつや) 第16章
現在:東北大学大学院情報科学研究科教授,東京学芸大学大学院教育学研究科学長特別補佐/教授。
主な目次
はじめに【奈須正裕】
刊行に寄せて 【荒瀬克己】
第1章 「令和の日本型学校教育」と一斉指導の原理的問題 【奈須正裕】
第2章 多様性に正対し,自立した学習者を育む教育の創造 【奈須正裕】
第3章 一体的な充実を実現する2つの在り方 【奈須正裕】
第4章 互恵的に深化・発展する個別最適な学びと協働的な学び 【伏木久始】
第5章 幼児教育から見た個別最適な学びと協働的な学び 【大豆生田啓友】
第6章 個別化・個性化教育の推進 【加藤幸次】
第7章 個が自律的に学ぶ授業づくり 【佐野亮子】
第8章 才能・2E教育の観点からの個別最適な学びと協働的な学び 【松村暢隆】
第9章 協同的な学習における子どもの学びと育ち 【金田裕子】
第10章 協調学習とは何か 【白水 始】
第11章 多様な学び方を許容できる協同学習 【涌井 恵】
第12章 奈良の学習法に見る個別最適な学びと協働的な学び 【宇佐見香代】
第13章 フレネ教育に見る個別的・個性的な学びと協同的な学び 【坂本明美】
第14章 一人ひとりがみんなと自由に 【堀 真一郎】
第15章 経済産業省「未来の教室」プロジェクトが目指してきたもの 【浅野大介】
第16章 ICTが拓く個別最適な学びと協働的な学びの新たな地平 【堀田龍也】
書誌情報
【書 名】「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を目指して
【著 者】奈須正裕,伏木久始 編著
【定 価】2,640円(本体2,400円+税10%)
【判 型】A5判 352頁
【発 行】株式会社北大路書房
【発売日】2023年11月24日
【コード】ISBN:978-4-7628-3238-3 C3037
【概 要】全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実とは。本書ではこの問いに迫るために,当代きっての著者たちが、現状において考えうる多様な回答を理論と実践の両側面から検討する。「一人一人の子供を主語にする学校教育」の実現に向けて,いま何ができるのか。その手がかりがここにある。
【商品ページ】
https://www.kitaohji.com/book/b635158.html
【Amazonでのご購入はこちらから】
北大路書房
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像