「FUJI TEXTILE MEETING」を開催しました
アーティストやクリエイターを対象に地域産業のテキスタイルと街の歴史を紹介
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FUJI TEXTILE WEEK 実行委員会は、1月27日(月)・28日(火)の2日間、山梨県富士吉田市で「FUJI TEXTILE MEETING」を開催しました。本イベントは、国内外で活躍するアーティストを対象に、富士吉田市で1000年以上の歴史をもつ繊維産業と街の歴史を紹介するもので、2021年より開催している布の芸術祭「FUJI TEXTILE WEEK」との連動企画です。2日間合わせて約30名のアーティストが参加し、工場見学や街歩きツアー、事業者によるプレゼンテーション、キュレータートークなど充実した内容となりました。また、イベント内では今年秋に「FUJI TEXTILE WEEK 2025」が開催予定であることも告知されました。「FUJI TEXTILE WEEK 2025」の詳細と参加アーティストについては決定次第、順次発表いたします。
■「FUJI TEXTILE MEETING」開催の背景
山梨県富士吉田市およびその周辺地域は、富士山の湧水を活用した染色や織物技術で知られる、1000年以上の歴史を誇る繊維産業の街です。高い技術から生まれる美しい色柄を配した繊細で上質な織物は、かつては「甲斐絹」として知られていましたが、現在は「郡内織物」、「ふじやま織り」と呼ばれ、多くの人を魅了しています。近年では、伝統技術を活かしながらも個性的なデザインを追求する事業者も増加し、地域全体で世界に向けた発信も活発化しています。
2021年からは、地域産業とアートを融合させた日本唯一の布の芸術祭「FUJI TEXTILE WEEK」を3年連続で開催。テキスタイルの新たな魅力を発見する場として、また国内外のアーティストと繊維産業との新たな交流の場として、積極的な活動を続けてきました。2024年度は今後のさらなる飛躍を目指す準備期間と位置付け、アーティストやクリエイターとの新たな関係構築のための場として本イベントを開催する運びとなりました。なお、
■イベント概要
当日参加したのは、国内外でテキスタイルを素材やモチーフとして作品制作をしたり、地域に滞在して独自のリサーチ活動を行うアーティストやクリエイター達、約30名です。イベントでは3つのテーマを設け、織物工場や富士吉田市街地、富士山へ出向いてリサーチを行い、市内の織物事業者、学芸員、ガイドなど多方面にわたる専門家の方にもご協力いただきました。
名 称 : FUJI TEXTILE MEETING
日 時 : 2025年1月27日(月)・28日(火)
会 場 : 旧山叶工場(富士吉田市下吉田2丁目16-19)および周辺地域
主 催 : 山梨県富士吉田市
企画運営 : FUJI TEXTILE WEEK 実行委員会
3つのテーマ
1)テキスタイル – 繊維産業を支えている織物工場やつくり手をめぐる
2)富士吉田市の歴史 – 繊維産業で栄えた富士吉田市の歴史が残る街並みや物語をめぐる
3)富士山を中心とする生態系 – 富士山に息づく生き物や植物をめぐる
■スケジュール
【1日目】1月27日(月)
13:05 オリエンテーション
代表挨拶:FUJI TEXTILE WEEK 事務局長 八木毅
FUJI TEXTILE WEEK 2023 キュレーター 丹原健翔
市長挨拶:(代理)富士吉田市企画部長 渡辺一史
基調講演:ふじさんミュージアム学芸員 篠原武
基調講演:山梨県産業技術センター 富士技術支援センター 五十嵐哲也
14:30 リサーチ活動
繊維産業の事業者の紹介 ゲストガイド 高須賀文子・毛利朋子・高須賀活良・森口理緒
富士吉田市街地の街歩きツアー ゲストガイド 渡辺一史
18:00 レセプション
挨拶:FUJI TEXTILE WEEK 実行委員会会長/アート展ディレクター 南條史生
19:55 終了
【2日目】1月28日(火)
10:30 リサーチ活動
「テキスタイル工場の見学:機織りと染色・整理・加工を学ぶ」 ゲストガイド 高須賀活良・森口理緒
「文化の源泉である富士山の自然を歩く」 ゲストガイド 松村岳史
15:00 キュレータートーク 南條史生×丹原健翔
16:30 閉幕
■イベントレポート
初日の様子
《オリエンテーション》
初日のオリエンテーションには、招待されたアーティストの他に、地域のプレイヤーも含めた約50名が会場に集まりました。冒頭、FUJI TEXTILE WEEK 事務局長 八木毅、FUJI TEXTILE WEEK 2023 キュレーター 丹原健翔が挨拶し、続く市長挨拶は富士吉田市企画部長 渡辺一史が代理として歓迎の挨拶をしました。
「富士吉田市は富士山のふもとにあり、長く芸術の源泉となってきた歴史がある。アーティストの皆様には、この機会をぜひ創作活動の糧としてほしい。」(八木)
「FUJI TEXTILE WEEKは、地域と産業を両方テーマにしているユニークな芸術祭。これまでは直接的にテキスタイルを扱うアーティストを重視していたが、今後はこの地域の場所性をアーティストとともに考えながら進めていきたいと考えている。この街で何かをやってみたいという興味をもったら、ぜひ引き続き参加してほしい。」(丹原)
「FUJI TEXTILE WEEKは、富士吉田市に移住した人々の行動力によって支えられている。そのおかげで地元住民も新たなこの街の魅力に気づくことができた。これからも全力で推し進めていきたい。同時に、衰退の一途を辿っていた繊維産業の街が、今では先進的なものづくりの街として全国から注目を集めるようになった。移住者と織物事業者が紡ぎ出した富士吉田の可能性をぜひ感じていただきたい。」(渡辺)
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基調講演では、ふじさんミュージアム学芸員 篠原武による「富士山の災害がもたらす富士吉田の街の成り立ち」、続けて山梨県産業技術センター 富士技術支援センター 五十嵐哲也による「富士吉田における繊維産業の歴史」の解説がありました。参加者からは様々な質問も飛び交い、熱心に耳を傾ける姿が見られました。
「富士山は溶岩と土石流という2つの災害をもたらしたが、これらがもたらした地形の上に富士吉田の街は形成されている。この環境があったからこそ人々の知恵が生まれ、繊維産業が発展した理由にもなっている。」(篠原)
「1000年以上続くといわれる富士吉田の織物の歴史の背景には、紀元前から繋がるシルクロードの物語があると言うこともできる。甲斐絹は江戸時代に日本でつくられるようになり、明治に入り山梨を代表する産品になるとともに、様々の技術に派生し文化を形成してきた。これからも数百年続く甲斐絹の歴史を紡いでほしい。」(五十嵐)
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《リサーチ活動》
その後のリサーチ活動では、参加アーティスト同士の自己紹介、富士吉田市とその周辺地域の織物事業者の紹介、そして今後のFUJI TEXTILE WEEK 2025の展示会場候補となる空き家やギャラリーをめぐる街歩きを行いました。織物事業者の紹介では、各社の代表が会場内に展示された生地サンプルを示しながら、自社が誇る織物や染色の技術について紹介していきました。
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街歩きでは、かつて糸や織機を扱っていた問屋、織物産業が栄華を誇っていた時代の歓楽街の跡など、産地ならではの遺構を紹介していきました。現在は空き家となったそれらの建物を、芸術祭をきっかけとして甦らせることも、FUJI TEXTILE WEEKの果たす重要な役割になっています。
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《レセプション》
初日の最後はレセプションを開催しました。FUJI TEXTILE WEEK 実行委員会会長/アート展ディレクター 南條史生による挨拶ののち、地元の女性たちや地域の飲食店から届けられた郷土料理、日本酒、富士山麓で採取したハーブティなど、食からも富士吉田の地域性を感じていただけるよう工夫を凝らし、アットホームな雰囲気で、参加者同士の会話も弾んでいました。
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2日目の様子
《リサーチ活動》
2日目の前半は、参加アーティストが2つのグループに分かれ、事前のアンケートに従って 「テキスタイル工場の見学:機織りと染色・整理・加工を学ぶ」グループと 「文化の源泉である富士山の自然を歩く」 グループとで行動。テキスタイル工場をめぐるグループは、織物工場の他に染色・整理・加工といった生地が織られた後に行う後工程の現場も見学。専門的な技術や、アナログとデジタルを巧みに使い分ける職人の姿に、関心の声が上がっていました。
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富士山を歩くグループは、富士山1合目付近を散策し、吉田胎内樹型や北口本宮冨士浅間神社など、火山がもたらすダイナミックな自然の姿や富士山信仰の歴史を観察しました。
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《キュレータートーク》
2日目の後半は、FUJI TEXTILE WEEK 実行委員会会長/アート展ディレクター 南條史生とFUJI TEXTILE WEEK 2023 キュレーター 丹原健翔によるキュレータートークを行いました。テーマは主に今後のFUJI TEXTILE WEEKの展開について、ともにイベントの本質的な発展を願う立場から、参加者とも意見交換しながら議論を交わしました。
「これまでのFUJI TEXTILE WEEKはあまり準備期間がなかったが、今回はプレイベントとしてこのような機会を持つことができた。富士山の生態系や街の歴史も見ていただいた上で、アーティストの皆さんのアイディアも借りながら、今後は直接的なテキスタイルだけではない表現も模索していきたい。」「誰に向けてどんな価値を提案する芸術祭なのか、短期的な集客に捉われず常に考えていくことが大切。」(丹原)
「今日もこの街には富士山を見るためにたくさんの観光客が訪れているが、この街の産業はテキスタイル。芸術祭が産業を育てること、街を育てることに繋がってほしい。」「アーティストと事業者と街の人々とが集まってコミュニティが育ってほしいと思っている。それは長い目で見ると、この街を支える基盤になる。」(南條)
参加者からも
「染色工場を見学し、最新機器にとらわれないものづくりの姿にクリエイティビティを感じた。行政もとても前向きで積極的なことに驚いた。ぜひこれからも関わりを持っていきたい。」(参加アーティスト)
「濃厚な2日間だった。普段はひとりで作品づくりをしているが、今回のように多くの人が集まってひとつのものを作り上げていく雰囲気が富士吉田にはあると感じた。」(参加アーティスト)
「自身は普段宗教性のある作品づくりをしているが、富士山が持つ宗教性や神秘性にも驚いたが、布をつくる現場にも僧侶の袈裟に通じる点を感じて興味深かった。」(参加アーティスト)
「普段はビジネスの視点で仕事をしているが、このような機会を通じて一段高い次元で地域を見ることで、地域がよりよくなっていくのではないかと感じた。」(織物事業者)
などの意見があがっていました。
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ご協力いただいた織物事業者
有限会社田辺織物
TENJIN Factory
光織物有限会社
富士山生地加工合同会社
フジチギラ株式会社
舟久保織物
株式会社前田源商店
株式会社槙田商店
丸幸産業株式会社
宮下織物株式会社
武藤株式会社 MUTO Co.,Ltd.
Watanabe Textile
富士吉田織物共同組合
(五十音順)
ご参加いただいたアーティスト
相澤 安嗣志
青柳 菜摘
安野谷 昌穂
Alessandra Corazzini
円造
大木 もと子
川尻 優
小泉 かな
小金沢 健人
佐藤 公哉
佐藤 光葉
柴田 まお
Sveinung Unneland
Seung-eon Yi
Sophie Bonnet-Pourpet
中崎 透
野口 竜平
長谷川 彰宏
齋藤 帆奈
Peto
増田 拓史
Martina Latorre
緑川 雄太郎
宮田 明日鹿
横手 ありさ
(五十音順・敬称略)
「FUJI TEXTILE WEEK 2025」の詳細と参加アーティストについては決定次第、順次発表いたします。
本イベントに関する広報用画像はこちらのリンクからダウンロードいただけます。
プロジェクトに関するお問い合わせ
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FUJI TEXTILE WEEK 事務局
Web :https://fujitextileweek.com
SNS :https://www.instagram.com/fujitextileweek
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