医師のキャリア観に関する実態調査 20~40代の約4割超が「現在のキャリアに迷いあり」

株式会社リクルートメディカルキャリア(本社:東京都千代田区、代表取締役:髙﨑 透、以下リクルートメディカルキャリア)は、医師のキャリア観に関する調査を実施しました。本リリースでは、医師免許取得時の理想像から現在の納得感、初めてキャリアを見直した時期とその理由、そしてキャリア選択で重視する点までを幅広く分析し、年代ごとの特徴を明らかにしました。

■Executive summary

免許取得当初の理想像

・「専門医として技術を高めたい」(48.0%)が最多

・20~40代では「家庭やプライベートとの両立」も高い割合を占め、生活と仕事の両立志向が強い

キャリアの見直し

・30代ではライフステージの変化を契機に見直す割合が突出して高い

・一方、50代以上では「キャリアを見直したいと思ったことはない」の割合が高くなる

現在キャリアで重視している点

・全体では「収入の高さ」(29.6%)が最多

・40代では収入の高さや家庭との両立、60代以上では健康を重視する傾向が強い

キャリアの迷い

・20~40代では約4割超がキャリアに迷いを抱えている。30代は専門医取得や勤務先選択などで将来に迷いを抱く時期であることが背景にある

近年、医師を取り巻く環境は大きく変化しています。医療需要の増大や「医師の働き方改革」による勤務環境の見直しが進む一方で、キャリア形成の道は「医局中心」にとどまらず、開業医や産業医、美容・自由診療など医師が選べるキャリアの幅が広がっています。

 こうしたなか、医師自身はどのようなキャリアを思い描き、どの時点でその方向性を見直し、また実際にどのような要素を重視しているのでしょうか。リクルートメディカルキャリアは全国の医師を対象に調査を行い、免許取得当初の理想像と現在の姿、キャリア再考の契機、さらに現時点での重視点や迷いの有無を年代別に明らかにしました。

●医師が描いた理想像 ― 専門性の追求と生活との両立を模索

免許取得当初に思い描いたキャリアプランとして最も多かったのは「専門医として技術を高めたい」(48.0%)で、続いて「家庭やプライベートと両立できる働き方をしたい」(31.0%)、「地域の基幹病院で、幅広い診療に関わる医師になりたい」(27.9%)でした。また「QOL(生活の質)を重視したキャリアを築きたい」(20.5%)も一定の割合を占め、専門性の追求と生活との両立を志向する意識が確認されました。

年代別に見ると、「専門医として技術を高めたい」は20代で60.9%と最も高く、30代以上は40%台後半で、70代でも47.8%といずれの年代でも高い割合となっています。一方、「家庭やプライベートと両立できる働き方をしたい」は20代(47.8%)、30代(43.7%)、40代(40.1%)と若手世代では40%台ですが、50代以上は低く、70代では16.4%にとどまりました。若年層では生活面の充実を重視する傾向が相対的に高いことがうかがえます。

しかし、「思い描いたキャリアプランに現在どの程度近づいていると思うか」という設問では、30~40代は専門性の追求と生活との両立を思い描くなかで、相対的に理想に近づけていないと感じる割合が高いことが分かりました。30代では「非常に近づいている」と回答した医師はわずか10.5%で、「あまり近づいていない」「全く近づいていない」の計が36.9%を占めています。40代も同様に「あまり近づいていない」「全く近づいていない」と感じる割合が合わせて41.7%に上りました。これに対して50~60代では「非常に近づいている」「ある程度近づいている」の計が高くなり、特に60代では69.3%が「非常に近づいている」「ある程度近づいている」と感じていることが分かります。

●キャリア見直しの時期とその理由 ― 若手世代は早期から課題意識

医師が初めて自身のキャリアを「見直したいと思ったタイミング」には、年代によって大きな差が見られました。

20代では約3割が見直しを検討しており、自身のキャリアに課題意識を持つ層も一定数存在します。30代では「30代前半」と回答した医師が33.3%で、「30代後半」と合わせると約4割が30代で初めてのキャリア見直しを検討していることが分かりました。40代では7割超が「キャリアを見直したいと思った」ことがあり、その時期は「30代前半/後半」と答えた医師が約半数を占めています。

一方で50代以上は傾向が異なります。「キャリアを見直したいと思ったことはない」が高くなり、50代では37.8%、60代では42.1%、70代では56.7%と過半数に達しました。また、見直しを検討した場合でもその時期は若手世代に比べて遅く、60代以上では「初めて見直したいと思ったのは40代以降」とする回答が一定数を占めています。これらの結果からは、年代によってキャリアへの向き合い方や、見直しのきっかけに違いがあることがうかがえます。

次に、初めてキャリアを「見直したいと思った理由」を見ていきます。

最も多かったのは「ライフステージ(育児・介護・結婚など)の変化」(32.8%)、続いて「労働時間や当直が負担になった」(29.2%)で、いずれも生活や勤務環境に直結する要因が上位を占めました。また「キャリアに将来性が感じられなかった」(21.8%)や「年収への不満」(18.8%)も一定の割合を占め、経済的要素や将来像の不透明さがキャリア再考の背景となっていることが分かります。

さらに年代別に見ると特徴が一層明確になります。

「ライフステージの変化」を理由に挙げた割合は30代で57.1%と突出して高く、40代でも36.2%に上りました。先述の通り、現在30~40代の医師が初めてキャリアを見直した時期は「30代」の割合が高く、まさにライフステージの変化が集中する時期にキャリア見直しの意識が高まったことがうかがえます。

一方、「労働時間や当直がきつかった」「年収への不満」といった勤務条件を理由にした割合は、20代でいずれも50.0%、30~40代でも3割前後でした(20代はn数僅少のため参考値)。過酷な勤務や将来への不安が、若手世代において初めてのキャリア再考の契機となったと考えられます。これに対し50代以上では両項目とも割合が低く、勤務条件を理由に「初めて」キャリアを見直そうとした医師は相対的に少数でした。

●現在のキャリア選択で重視されるもの ― 「収入」「健康」「家庭との両立」に年代差

医師たちは実際にキャリアを選ぶ際、どのようなことを重視しているのでしょうか。最も多くの医師が選んだのは「収入の高さ」(29.6%)でした。続いて「自身の健康」(27.5%)、「家庭との両立が可能か」(26.6%)、「労働時間」(25.8%)、「勤務地・通勤距離」(22.1%)が上位に並びました。全体としては、安定した勤務条件の下でプライベートと調和を保ちながら、長く健やかにキャリアを積んでいきたいという意思が浮かび上がります。

先述した全体傾向を踏まえ、各重視ポイントについて年代別に見ていきます。

最も多くの医師が重視したのは「収入の高さ」でしたが、この項目はどの年代でも一定の割合を占め、特に40代(36.7%)、50代(34.1%)では他の年代よりも高い傾向が見られました。家庭や教育費など、経済的な責任が増す時期に重視されやすいと考えられます。

一方で「自身の健康」を重視する割合は年代が上がるにつれて高くなっており、20~30代では2割未満にとどまる一方、60代では32.2%、70代では38.8%に達しました。長年の勤務を経て健康がキャリアの持続可能性に直結することを強く意識する姿が浮かび上がります。

また、「家庭との両立が可能か」を重視する割合は30~40代で顕著に高く、30代では34.5%、40代では41.8%が選択しています。これは結婚や子育て、介護といったライフイベントが集中する時期と重なることから、生活との調和を求める傾向が特に強まっているものと考えられます。

●キャリアの迷いは20~40代で顕著 ― 年代に応じた支援が不可欠

キャリア選択における重視点が年代によって異なる一方で、実際に「自分のキャリアに迷いを感じているか」についても年代ごとに大きな差が見られました。

20代では「迷いを感じている」「どちらかといえば迷いを感じている」を合わせて39.1%、30代では45.9%と、約4割以上の医師が何らかのキャリアへの迷いを抱いています。特に30代は「どちらかといえば迷いを感じている」が35.6%と最も高く、専門医取得や勤務先選択、またライフステージの変化など将来を左右する決断が重なる時期であることが背景と考えられます。40代でも40.7%が迷いを感じており、管理職や中堅としての役割が増えるなかで、改めて自身のキャリアの方向性を見直す姿が浮かび上がります。

一方で、50代以上では「迷いを感じていない」の割合が高くなり、特に60代(54.2%)、70代(71.6%)では半数以上がキャリアに「迷いを感じていない」ことが分かりました。長いキャリアを経て自分なりの道を確立した医師が多く、迷いが少なくなる傾向があると考えられます。

これらの結果から、特に20~40代にかけては、自身のキャリアに迷いを抱えている割合が相対的に高く、何らかの形でサポートを求めていることが推察されます。一方で、50代以上は「迷いを感じていない」の回答割合が高いものの、それは支援が不要ということではないのかもしれません。むしろこれまでの経験を活かした働き方や、ライフステージに即したサポートを必要としている可能性があります。

実際に自由回答設問では、「メンター・相談体制の強化」「情報の提供」「学び直しやスキルアップの支援」「勤務体制や制度の見直し」など、多岐にわたるキャリア支援ニーズが寄せられました。

■今、医師に必要な「キャリア支援」についてのフリーコメント

<メンター・相談体制の強化>

・医師が必要だと思えば相談できる体制(男性/57歳)

・信頼できるメンターの存在など(男性/69歳)

・問題が起こった時に相談できる環境にあるかどうか。結局は人間関係の形成が大切と考えます(男性/58歳)

<情報の提供>

・いろいろな働き方をしている医師がいて、それぞれのメリット・デメリットを教えてもらえると不安が減ると思う(女性/57歳)

・モデルケースの提示(女性/27歳)

・ネット上の表面上の情報ではない生きた情報(男性/56歳)

・働き方のニーズに合った職場の紹介(女性/52歳)

・自分が持っている専門性が市場でどれほど価値があるのかを教えてもらえると、医局に所属する以外の働き方が検討できる(男性/38歳)

<学び直しやスキルアップの支援>

・もう少し簡単に参加できるセミナーや講習会(女性/28歳)

・学び直しの支援(男性/46歳)

・スキルアップ支援(男性/68歳)

・継続的な指導体制(男性/70歳)

<勤務体制や制度の見直し>

・女性医師のキャリアアップのための勤務体制の工夫(女性/37歳)

・専門医制度に縛られないキャリアの積み方の支援(女性/44歳)

・男女問わず、産休育休制度の充実(男性/48歳)

<その他>

・自分のライフプランに合った働き方への支援(男性/66歳)

・キャリアアップに必要な金銭的な支援(男性/43歳)

●医師のキャリアは多様な選択肢を描ける時代へ。多層的支援が鍵

医師のキャリアは、時代やライフステージに応じて多様な選択肢を描けるものへと変化してきました。

 しかし、選択肢が広がったからこそ、新たな課題や迷いが生じ、それぞれに合った支援が求められていることが明らかになりました。医師が自らのキャリアに納得感を持ち、安心して働き続けられる環境を整えるためには、社会や医療機関がこうした声を丁寧に拾い上げ、多層的な支援を実現していくことが不可欠です。

解説:リクルートメディカルキャリア 営業統括部長 高野 潤

2011年リクルートメディカルキャリア入社。医師・看護師・薬剤師の人材紹介事業マネジャー、人事マネジャーを経験し2021年より現職。統括部長として医師領域の求職者側・採用者側の両営業部署を管轄し、業界動向や転職マーケット情報に通じる。

調査概要

調査方法:インターネット調査

調査対象:株式会社マクロミルのモニターに登録している全国の医師

有効回答数:873人

調査実施期間:2025年8月4日(月)~2025年8月12日(火)

調査機関:株式会社マクロミル

≪調査結果を見る際の注意点≫

図表内の%の数値は小数第2位で四捨五入しているため、差分や合計値において、単純計算した数値と一致しない場合があります。

リクルートメディカルキャリアについて

1979年の創業以来、リクルートメディカルキャリアは、「医師」「薬剤師」を募集している医療関係施設に人材を紹介するサービスを提供しています。医師が医師として働きつづけ、充実した人生を送れるよう、医師の方のキャリアアップ、キャリアチェンジ、ワークライフバランスなどに応じて仕事・職場情報を提供し、転職をサポート。医療機関様に対しては、安定的な医師採用を実現するためのお手伝いをしています。 

詳しくはこちらをご覧ください。

リクルートメディカルキャリア:https://www.recruit-mc.co.jp/

リクルートグループについて

1960年の創業以来、リクルートグループは、就職・結婚・進学・住宅・自動車・旅行・飲食・美容などの領域において、一人ひとりのライフスタイルに応じたより最適な選択肢を提供してきました。現在、HRテクノロジー、人材派遣、マーケティング・マッチング・テクノロジーの3事業を軸に、60を超える国・地域で事業を展開しています。リクルートグループは、新しい価値の創造を通じ、社会からの期待に応え、一人ひとりが輝く豊かな世界の実現に向けて、より多くの『まだ、ここにない、出会い。』を提供していきます。 

詳しくはこちらをご覧ください。 

リクルートグループ: https://recruit-holdings.com/ja/  

リクルート:https://www.recruit.co.jp/

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会社概要

URL
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業種
サービス業
本社所在地
東京都千代田区九段北1丁目14-6 九段坂上KSビル
電話番号
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代表者名
髙﨑 透
上場
未上場
資本金
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設立
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