「宅配クライシス」 3人に1人が“仕事に余裕がなくなった”と回答する宅配ドライバーの経済現状に迫る【HMSモビリティジャーナル】

総合モビリティサービス企業であるホンダモビリティソリューションズ(以降、HMS)が、経済や環境などの社会課題の視点から、モビリティの発展とその影響価値を発信していくニュースレター「HMS モビリティジャーナル」。

本号では、2024年問題の今に迫り、その中でも私たちの身近で影響を受けている「宅配ドライバー」に焦点を当てます。物流業界の通称“2024年問題”が本格化した今、私たちの生活に最も近い物流を支えている宅配ドライバーの “経済課題”を中心に、独自インタビューや調査を踏まえて紐解いています。また、HMSが現在取り組む社会的インパクト創出の実証実験についてもご紹介しています。

今回の「HMSモビリティジャーナルLight」では、ダイジェスト版として、物流業界を支えるギグワーカーの存在や、編集部が独自で行った宅配ドライバーへの意識調査をお届けしていきます。


1.2024年問題の救世主!? シェア・サブスクサービスによる好転の兆し 

物流業界の今を支える“ギグワーカー”の存在

物流業界では人手不足が要因となり、2024年の上半期(1月~6月)の物流企業の倒産件数は27件となりました。これは前年同期のほぼ倍増、上半期としては過去最多です。一方で、日本国内のEC市場規模はこの10年で2倍以上に拡大しており、輸送需要は増加傾向です。この需要と供給の乖離により、物流業界は更に深刻な人手不足に直面しています。

人手不足に対して、物流業界ではドローンや自動配送ロボなど、様々な対策を試みています。特に注目を受けているのは、ギグワーカーへの配送委託です。ギグワーカーとは、労使契約を結ばずネット経由などで単発仕事を請け負う労働者のことです。国内のギグワーカーは2021年時点で300万人超と、コロナ前の2020年から約5倍に増えたと言われています。

ギグワークには、発注側と請け側双方のメリットがあります。発注側は、短期的に必要な労働力を、すぐに獲得することができ、請け側は自身のスキマ時間やちょっとした経験を、すぐに報酬に換えられることができます。ギグワーカーが携わる業務として多いのは、Uber Eats等のフードデリバリーサービスや、Amazon Flexなどの軽貨物配送サービスといった「ラストワンマイル」と呼ばれる領域です。 

ギグワーカーに重要な移動手段は、サブスクやシェアサービスに注目

ギグワーカーが物流業務を行う上で欠かせないものが、移動手段です。軽貨物運送業を行う場合、黒ナンバーの車両、特に軽貨物・軽乗用車両が必要となります。しかし、軽貨物車両は中古の購入でも100万円程度と高い出費となるため、車両を持っていない場合は気軽に購入し業務を行う、ということが難しくなります。これに対し、購入する必要がなく経費処理も楽な「車両のサブスク・シェアサービス」が近年注目されています。具体的なサービスをいくつか見てみましょう。

株式会社エニキャリは、個人事業主向けの中古軽貨物車両リース「K-VANリース」を2024年2月1日より開始しました。初期費用なしで最短1ヶ月の契約も可能なサービスで、ギグワークへの参入障壁を排除することを意識しているとのことです。

CBcloud株式会社が提供する配送サービスのピックゴーは、「CARRO」カーリースと提携しています。こちらは中古自動車が最短1ヶ月での納車により、迅速にギグワークを始められる点が魅力です。

HMSでは、EveryGoデリバリーという、デリバリー等を行うドライバー向けのバイクサブスクサービスを提供しています。保険やメンテナンス込みで、WEBサイト1つで申し込みまで完結できます。
特徴は、申し込みから最短3日で自宅に届くスピードです。また他サービスは、バイクが手元に届いてからデリバリー業務の申請を行うことがほとんどですが、EveryGoデリバリーではバイクの申込後すぐに、デリバリー業務を申請できるように設計されており、ユーザーが最短で業務を開始することができます。

・EveryGoデリバリーはこちら
 https://www.honda.co.jp/motor-subscription/

また、EveryGoデリバリーでは現在、軽バン車両の実証実験を行っています。より荷物を運びやすい軽バン車両サブスクの提供により、ギグワーカーが活用しやすくなり、ドライバー不足への貢献にも繋がります。

2.宅配ドライバーの独自意識調査 

モビリティジャーナル編集部では、全国のドライバー709名を対象とした独自意識調査を行いました。 

※ドライバーの種別は、トラックのドライバー、バス・タクシーのドライバー、宅配便のドライバーの3種別が対象

2024年問題による急激な変化はない一方で、現場への影響は明白に 

働き方改革関連法改正が施行された2024年4月以降に、月給に変化があったかどうかを聞いたところ、「あまり変化はない」という回答が最も多く64.8%という結果となりました。

また、同調査で労働時間に関する変化も聞いたところ、同じく「あまり変化はない」が74.2%と最多でした。2024年問題が大きく取り沙汰されていたこともあり、各企業が施行前から整備や管理等の準備をしていたことで、現場への急激な変化は回避されていることが予測されます。

一方で、2024年4月前後でドライバーの仕事をする中で変化を感じることがあるかを質問したところ、最も多い回答が「ドライバーの人手が不足するようになった」でした。また、「仕事時間を細かく管理されるようになった」や「仕事に余裕がなくなった」などの回答も上位となっています。 

法改正前後は、これまでの慣習から大きく変わることで、現場では新たなルールや働き方への適応が求められます。働き方改革のための重要な改正である一方で、現場への影響は避けて通れないようです。

また、同設問の上位回答5つについて、ドライバー3種別毎に見てみました(グラフ③)。宅配便のドライバーの回答を見ると、「仕事に余裕がなくなった」と回答する割合が、他ドライバーの回答と比較して最も多くなっています。冒頭に記したEC市場の拡大等により、宅配ニーズが高まる中で、人手不足への対策や効率化が急務の領域だと推察されます。

ドライバーが期待する改善点は、経済面が最多 

ドライバーの仕事をするにあたり、改善を期待することを尋ねました。こちらも、上位5つの回答を、ドライバー3種別毎に見たものが、以下④のグラフです。「労働時間に見合った給料にしてほしい」が最多で、これは種別毎に見ても最も多い回答はすべて同じでした。実労働と報酬との不一致を感じているドライバーが多数いることが見て取れます。

 また、前段で「仕事に余裕がなくなった」との回答が突出していた宅配ドライバーは、「人を増やしてほしい」の割合が他ドライバーよりも多く、3人に1人が働き手の増加を切望しています。

 ドライバーの車両獲得のハードルが下がることが、人手不足解消の一助に 

ドライバーの雇用形態についても聞くと、トラックのドライバー、バス・タクシーのドライバーは「正社員」の割合が多い一方、宅配便のドライバーは「正社員」の割合が45.9%と半数以下となっています。また、4人に1人は「個人事業主」となっており、ギグワーカーなどが多くを占めていることが分かります。

また、ドライバーの業務に欠かせない車両の用意についても聞いてみました。全体として「会社が用意した」という回答が多いですが、一方で宅配便のドライバーの23.9%は「自分で用意した」という回答となりました。

以上から、宅配便のドライバーは、ギグワーカーなどの個人事業主や正社員以外が半数を占めており、自前で車両を用意する可能性があることが分かります。逆に言えば、車両を持っていなかったり購入できない人は、ドライバーとして働きたくても働けない状況がある可能性があります。

こういった状況下で注目されるのが、前段にお伝えした車両のサブスク・シェアリングサービスです。このようなサービスが広く普及することで、初期費用を抑えて気軽に車両を獲得できる手段が増え、ドライバーとして働くためのハードルが下がる可能性があります。車両サブスク・シェアリングサービスが、これまで働けなかった人々がドライバーとして労働する機会創出を後押しし、結果として人手不足問題にサポートするカギとなるかもしれません。

【定量アンケート調査概要】
調査名称:ドライバーの仕事についてのアンケート
調査期間:2024年8月9日~8月17日
調査対象:全国、ドライバーの仕事をしている20歳~69歳の男女
調査数 :709名
調査方法:Webアンケート
 
【参考】
https://news.yahoo.co.jp/articles/7876a80121fe295108daf3221703ec3ce096eae4
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20240306-OYT1T50121/
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210528/k10013051781000.html
https://forbesjapan.com/articles/detail/48360
https://gendai.media/articles/-/125790?imp=0
https://www.gion-deliveryservice.co.jp/keikamotsu/lease/
https://ecnomikata.com/ecnews/41949/
https://pickgo.town/partner/support/lease
https://www.honda.co.jp/motor-subscription/


■「HMS モビリティジャーナル」について

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上場
未上場
資本金
-
設立
2020年02月