スタートアップ拠点都市 第1期5年の検証 ── 内閣府の23指標で達成10、自治体が動か せるのは「最初の顧客」と「実証の場」だった(業界レポート Vol.7)
アーキタイプが業界レポートVol.7を公開。内閣府の拠点都市第1期を8都市圏×4年の進捗報告(実績は2023年度末時点)と47都道府県の第三者統計で検証し、物差しの不在と行政固有の機能を示した。
事業開発支援のアーキタイプ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:菅野龍彦、以下「アーキタイプ」)は、業界レポート 「スタートアップ・エコシステム拠点都市 第1期5年の検証 — 自治体が動かせるもの、動かせないもの」(Industry Report 2026 Vol.7・全47ページ)を、2026年9月15日(火)に公開しました。本レポートは無料でダウンロードいただけます。
対象は、内閣府が2020年7月に選定した「スタートアップ・エコシステム拠点都市」第1期(2020〜2025年度)の8都市圏です。各都市が内閣府に提出した年次の進捗報告(2021〜2024年度)、2025年6月に選定された第2期13拠点の拠点形成計画、厚生労働省「雇用保険事業年報」から当社が算出した47都道府県の開業率、海外の公的機関の年次報告を突き合わせました。現場の問いは「この自治体の取組は機能しているのか」「組むなら何を期待してよいのか」の二つで、本レポートはこの問いに公表資料だけで答えます。都市を採点せず、第1期の検証に範囲を限っています。なお、当社は複数の自治体・外郭団体・民間拠点の取組に参画していますが、本レポートの分析はすべて公表資料に基づき、参画先で得た非公開情報は用いていません。個別の案件にも言及していません。
■ 発見1 ── 成果を測る「共通の物差し」が存在しない
内閣府の横断比較表(8都市圏・実績は2023年度末時点・目標年は2024年度末)では、23指標のうち目標到達(達成)は10でした。到達したのはマッチング件数・創出社数・ビザ認定数などプロセスとすそ野の指標で、未到達はユニコーン・評価額・調達額などバリュエーションの指標です。ユニコーン数を目標に置いた6都市圏のうち、到達は目標を1社としていた仙台の1都市圏でした。主題はその先にあります。目標も指標も期中に動き、累計と単年では達成の見え方が変わります。資料間の数値の不整合は18件見つかりましたが、これは数字の操作ではなく自由様式・自己申告という設計の自然な帰結で、問題は不整合を検出し訂正する制度的な仕組みが第1期には存在しなかったことにあります。国の統計は商工費の内訳を持たず、投入あたりの成果は公表資料では誰にも計算できません。

■ 発見2 ── 自治体が自ら動かせるのは「最初の顧客になる」「実証の場を開く」という固有機能
アクセラレーター、補助金、拠点施設、ピッチイベントは民間にもできます。行政にしかできないのは、「買う」ことと「水道・交通・施設という行政資産を実証の場として開く」ことです。福岡市の公共調達サポート第1号案件は2件あります。衛星画像による水道管の漏水調査(2024年5月)は全国22市町村での実証を経て2025年に商用サービス「mizuiro」となり、AIによる交通量調査「MATIENCE」(2023年11月)は2026年3月、東京都が政策目的随意契約で調達しました。初回調達の実績が信用財となって、他の自治体へ横展開しています。

実証から調達・継続への転換率を自ら測って公表する自治体も3系統あります(東京都「UPGRADE with TOKYO」協働実績率94%、神戸市「Urban Innovation KOBE」継続率70%、全国版「Urban Innovation JAPAN」継続率46%。定義も母数も違うため比較はできません)。「行政の実証は死の谷に落ちる」という通念を、測っている自治体だけが数字で否定できます。2025年3月に東京都が立ち上げた「ファーストカスタマー・アライアンス」(9自治体)は、随意契約で認定した商品・サービスを自治体間で共有し、1自治体の初回調達を参加自治体全体への販路に変えました。国の調達に占める創業10年未満企業の比率も2020年度の0.83%から2023年度の1.39%へ上がり、目標は3%です。

■ 発見3 ── すそ野はストックで決まる。すそ野の第三者統計では、政策の正の効果を検出できない
厚生労働省「雇用保険事業年報」から当社が算出した47都道府県の開業率(近似値)で、政策前(FY2015〜19平均)と政策後(FY2021〜24平均・FY2020は除外)を比べると、上昇した県はありませんでした。第1期の拠点県13県の低下幅(群の単純平均−1.20ポイント)は非拠点34県(同−0.84ポイント)より大きいものの、政策前の水準と変化幅の相関は−0.878。もともと水準の高い大都市圏が拠点に指定されたため低下幅も大きいのであり、変化を説明するのは政策の有無ではなく政策前の水準、すなわち都市のストックです。
国レベルでも、特定創業支援等事業の創業者数は2014年度の5,614人から2024年度の24,772人へ4倍超に増える一方、第三者統計の開業率は中小企業白書でFY2015の5.2%からFY2023の3.9%へ下がりました。二つは別のものを測っています。ストックとは40年・6つの政策波の堆積であり、5年では動きません。

■ 発見4 ── 高さは少数の個社の成否で決まる。狙って作れない
大型の資金調達やユニコーンといった「高さ」は、都市単位の集計値が少数の個社に支配されます。単年の指標を置いた都市では年により値が2倍以上振れ、累計の指標では原理的に右肩上がりになり、どちらを選ぶかは報告する側の設計判断です。全国の資金調達額が2022年の9,909億円から2025年の7,613億円へ減る中で、第2期の13拠点はバリュエーションとEXITの指標へ一斉に移動しました。それは第1期に動かなかった層への再挑戦であり、未達リスクを再生産する可能性を本レポートは転覆候補として正面から扱っています。
■ 使い方と提言 ── 「固有機能×リターン対応表」と、行政への7提言
民間実務家は自治体を「選べません」。だから本レポートは、持ち込まれた連携の入口・運転・撤退の三つで組み、相手が固有機能をどう設計しているかで期待してよいものが決まる「固有機能×リターン対応表」を収めました。最終章では自治体・外郭団体の担当者に向けて、大企業のイノベーション組織の設計知(役割・組織・評価)を行政に翻訳した7つの提言を、規律が緩みやすいのは担当者の資質ではなく設計の問題だという立場から、担当者が庁内で使える「外部の言葉」として書きました。
■ 代表コメント(アーキタイプ株式会社 代表取締役 菅野龍彦)
「8都市圏×4年分の進捗報告と47都道府県の第三者統計を突き合わせて見えたのは、自治体のエコシステム施策を礼賛も断罪もできない、という事実です。成果を測る共通の物差しがなく、すそ野は40年の堆積で決まり、高さは個社の成否で決まる。その中で確かに動き始めたのが、行政にしかできない『最初の顧客になる』『実証の場を開く』という機能でした。民間が自治体と組むなら、期待してよいものはそこに集中します。」
■ レポート概要・ダウンロード
-
タイトル: スタートアップ・エコシステム拠点都市 第1期5年の検証 — 自治体が動かせるもの、動かせないもの(Industry Report 2026 Vol.7)
-
対象: 内閣府「スタートアップ・エコシステム拠点都市」第1期(2020〜2025年度)8都市圏。第2期13拠点の拠点形成計画、47都道府県の開業率(雇用保険事業年報より当社算出)、海外公的機関5主体の年次報告を併用
-
確認時点: 2026年8月
-
データ出所: 内閣府・総務省・厚生労働省・経済産業省・中小企業庁・各自治体の公表資料、海外公的機関の年次報告(一次確認)
-
想定読者: 自治体から実証や共創の打診を受けている大企業の事業開発責任者・オープンイノベーション部門・共創拠点の運営者。あわせて自治体・外郭団体の担当者(第8章)、スタートアップ(第7章)
-
本文: 全47ページ
なお、第2期の中間評価は2028年度に予定されており、拠点都市・公共調達・スタートアップ政策の最新動向は、月次ニュースレター「アーキタイプ・マンスリーレポート」(毎月配信・無料 https://archetype.co.jp/newsletter )で継続して取り上げます。
■ Industry Report 2026 シリーズについて
アーキタイプは、業界別の新規事業・多角化戦略を一次ソースから整理する「Industry Report 2026」シリーズを順次公開しています。
-
Vol.1 半導体・電子部品 多角化戦略(増補改訂版 Ver.2)(既刊・無料DL)
-
Vol.2 農業参入・多角化戦略 実態調査(既刊・無料DL)
-
Vol.3 メディア・エンタメ業界の新規事業(既刊・無料DL)
-
Vol.4 素材・化学 新規事業・多角化戦略 実態調査(既刊・無料DL)
-
Vol.5 エネルギー・資源 新規事業・多角化戦略(既刊・無料DL)
-
Vol.6 AI新規事業(業界横断特別号)(既刊・無料DL)
-
Vol.7 スタートアップ・エコシステム拠点都市 第1期5年の検証(本日公開・無料DL)
■ 会社概要
アーキタイプ株式会社は、AIとデータを活用して日本の大企業の新規事業開発を伴走型で支援する事業開発ファームです。業界レポートシリーズでは、半導体・電子部品、農業、メディア・エンターテインメント、素材・化学、エネルギー・資源、AI新規事業と、業界ごとに「新規事業がどこで生まれ、どこで止まるのか」を一次データから分析しています。
-
社名: アーキタイプ株式会社
-
所在地: 東京都港区
-
代表者: 代表取締役 菅野龍彦
-
事業内容: イノベーション組織戦略策定/社内新規事業創出/オープンイノベーション実行支援/AI駆動型事業開発
すべての画像
- 種類
- 調査レポート
- ビジネスカテゴリ
- 経営・コンサルティング
- ダウンロード
- プレスリリース素材
このプレスリリース内で使われている画像ファイルがダウンロードできます
