アリックスパートナーズ、世界のデータセンター関係者480名以上を対象にした「2027年 グローバル・データセンター市場見通し」を発表
AI推論時代、データセンターの競争軸は「増設」から「再設計」と「運用の成熟」へ オペレーターの8割以上が既存施設の中・大規模な更新・再設計を予測

【2026年10月21日】 グローバル・コンサルティング・ファームであるアリックスパートナーズは、世界のデータセンター市場に関する調査レポート「2027年 グローバル・データセンター市場見通し
(2027 Global Data Center Market Outlook)」を発表しました。 本調査は、米国、カナダ、英国、フランス、ドイツ、オランダ、UAE、サウジアラビアのデータセンターエコシステムに関わる幹部480名以上を対象にしたものです。大規模クラウド事業者向けのハイパースケールや、AIインフラに特化したNeocloudなど、市場を構成する主要領域の見通しを調査しています。
生成AIの普及を背景に、データセンター需要は世界的な拡大を続けています。さらに近年、AIの活用フェーズ自体が大きく変化し始めました。これまでの「AIに大量のデータを読み込ませて高度化させる『学習』の段階」から、現在では「学習済みのAIを実際のビジネスやサービスに組み込み、ユーザーの質問に答えたり判断を下したりする『推論』の段階」へと主戦場が移りつつあります。 一方で、需要拡大の裏側では、電力・送電網の制約、冷却技術の高度化、建設遅延、規制対応、地域社会との共存など、事業者が対応すべき論点も複雑化しています。
今回の調査では、こうした市場環境の中で、データセンター市場が単なる「設備拡張」の段階から、AIを実運用する「推論時代」に対応するための施設再設計、運用成熟度、資本力、M&Aによる業界再編が問われる段階へ移りつつあることが明らかになりました。
【レポート結果サマリ】
1. AI推論時代に向け、データセンターは「増設」から「再設計」へ
データセンターオペレーターの83%が推論用シリコン(半導体チップ)の構造変化を予想し、86%が既存施設の中〜大規模な更新・再設計が必要になると回答。
2. 需要は強い一方で、先行きの見通せる期間は短期
全体の70%がデータセンター容量について強い、または中程度の価格決定力があると回答する一方、64%は需要の可視性が12か月以下(1年先までしか確信が持てない)にとどまると回答。
3. 市場の成長と同時に、選別・再編の圧力も強まる見通し
全体の64%が今後12〜18か月以内のディストレス(経営難・資金繰り悪化)の増加を予想。
62%がデータセンターのM&Aはすでに、または12か月以内に魅力的になるとみており、85%が今後2年以内にデータセンター資産のカーブアウトや売却後の再リース(セール・リースバック)といった取引に関与する意向を示す。
1. 83%が推論用シリコンの構造変化を予想、既存データセンターの再設計ニーズが高まる
AIを実際にサービスとして稼働させる「推論」のフェーズでは、データセンターの頭脳となる半導体チップ(シリコン)に求められる役割も変わってきます。データセンターオペレーターの83%は、今後の推論向けシリコンが、現在主流であるGPUとは異なる設計構造へ移行すると予想しています。
これに伴い、86%は、次世代シリコンの登場に合わせて、既存データセンターに中〜大規模なアップグレード、再設計、または置き換えが必要になると回答しました。
これまで主流だったAIの「学習」用途では、GPUを中心とした大規模な計算処理能力が重要でした。一方、今後拡大が見込まれるAIの「推論」では、メモリ制約、処理速度、低精度演算、処理の遅延を抑えることなど、AI学習時とは異なる性能が求められます。
その結果、データセンター側にも、サーバーを収容するラックあたりの電力密度、冷却方式、ネットワーク構成、施設設計の抜本的な見直しが求められます。レポートでは、2022〜2024年に整備されたGPU学習向け施設が20〜40kW級のラックを想定していたのに対し、推論向けシリコンを搭載するラックでは80〜150kW超と格段に高い電力を消費し、かつ空気ではなく液体で直接冷やす高度な冷却設備などが必要になり得ると指摘しています。
2. 価格決定力は維持される一方で、需要を見通せる期間は「12か月以下」
データセンター容量に対する価格決定力については、調査対象者全体の70%が「強い」または「中程度」と回答しました。需要は引き続き強いと見られる一方で、全体の64%は、需要を見通せる期間が「12か月以下」にとどまると回答しています。さらに60%は、今後24カ月以内に市場で大きな混乱が起きる可能性が「極めて高い」または「非常に高い」とみており、足元の需要は強いものの、先行きに対しては慎重な姿勢が窺えます。
この背景には、データセンター投資ならではの構造的な課題があります。施設の建設や設備更新には複数年単位の巨額な投資判断が必要になる一方で、確信を持てる需要は12カ月以下と短期化しており、投資回収のタイムラインにズレが生じています。市場は成長しているものの、事業者にとっては、どの需要が持続し、どの設備投資が将来の収益につながるのかを見極める力が、これまで以上に重要になっています。
3. 小規模事業者への制約と、異業種を巻き込むM&Aの可能性
このような投資判断の難しさは、事業者の経営面にも影響を及ぼし始めています。調査対象者全体の64%は、今後12〜18か月の間に資金繰りの悪化や経営不振に直面するケース(ディストレス)が増加すると予想しています。特に50MW以下の小規模施設は、設備更新に必要な資本力や、電力・土地の余力などの面で制約を受けやすく、最新設備を持つ大手事業者に需要が集中することで二極化が進む可能性があります。
こうした環境変化を背景に、M&Aへの関心も高まっています。調査対象者全体の62%は、データセンターのM&Aがすでに魅力的、または12か月以内に魅力的になるとみています。また85%は、今後2年以内にデータ資産を切り出す「カーブアウト」や、資産を売却した後に借りて使い続ける「セール・リースバック」といった取引に関与する意向を示しました。M&Aの主要な推進要因として最も多く挙げられたのは、通信会社によるデータセンター資産の収益化(73%)でした。
さらに、回答者の82%は、今後2年以内にデータセンター事業者とエネルギー事業者(電力会社など)のM&Aが起きると予想しており、今後の業界再編は通信会社やエネルギー会社をも巻き込む広がりを見せる可能性があります。
4. 90%が建設効率に自信、一方でAI/GPU運用モデルが「高度に成熟」との回答は27%にとどまる
調査対象者全体の90%は、データセンターが資本支出の面で効率的に建設されていると回答しました。一方で、AI向けインフラに不可欠となる高密度・高発熱な計算処理を自社組織で安定的に拡張・運用できるモデルが「高度に成熟している」と回答した割合は、わずか27%にとどまりました。
これは、データセンター市場が「いかに効率よく建設するか」という段階から、「変動するAIの需要を、いかに標準化・自動化されたシステムで安定的に運用するか」という運用体制の成熟度が問われるフェーズに入っていることを示しています。
5. 総括:市場は「容量拡大」から「質的転換と適応力」の時代へ
本調査から明らかになったのは、データセンター市場が建設のスピードや容量拡大だけでは差別化しにくくなりつつあるという事実です。今後は、推論時代に対応したインフラ、変化に耐えうる資金調達構造、成熟した運営モデルを備え、先手を打って動ける事業者と、そうでない事業者との二極化が進むと考えられます。
【レポートについて】
タイトル :2027 Global Data Center Market Outlook
発行 :2026年9月
レポート本文:https://www.alixpartners.com/insights/2027-data-center-market-outlook/
※本リリースの数値は、特に記載がない限り同レポートに基づきます。
アリックスパートナーズについて
ニューヨーク本社をはじめ世界27都市に3,300名のプロフェッショナルを擁するグローバルコンサルティング会社です。コンサルティングと実業でマネジメント経験の豊富なシニアプロフェッショナルが、1981年の創業以来40年以上にわたって経験してきた2,000件以上の企業再生・ターンアラウンド案件で蓄積した収益性改善とリスクマネジメントのノウハウを駆使し、企業経営における重大局面での複雑かつ高難度な課題の解決に従事しています。企業再生、ターンアラウンドのほか、健全企業に向けた企業価値向上、クロスボーダーM&A、リスクアドバイザリーなどの分野でグローバルに多数の実績を有します。日本オフィスの設立は2005年。日本語ウェブサイトは https://www.alixpartners.com/jp/
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