ホーユー株式会社、藤田医科大学との共同研究成果 日本アレルギー学会学術大会/世界アレルギー機構 合同会議で当社研究員が「ベストスピーカー賞」を受賞
ホーユー株式会社(本社:愛知県名古屋市東区、代表取締役社長執行役員:水野真紀夫)は、学校法人藤田学園 藤田医科大学(本部:愛知県豊明市、理事長:星長清隆、学長:才藤栄一)医学部アレルギー疾患対策医療学講座の松永佳世子教授らとの共同研究により、ヘアカラーや化粧品、さらには食品と身近で起こりやすいさまざまなアレルギーの研究に取り組んでいます。
去る2020年9月17日(木)~10月20日(火)にweb開催された第69回日本アレルギー学会学術大会/世界アレルギー機構 合同会議2020(以下JSA/WAO※1、https://www.c-linkage.co.jp/jsawac2020/jp/index.html)のミニシンポジウム(口頭発表)部門にて食物アレルギーの研究成果の一部を発表し、「ベストスピーカー賞」を受賞しました。
去る2020年9月17日(木)~10月20日(火)にweb開催された第69回日本アレルギー学会学術大会/世界アレルギー機構 合同会議2020(以下JSA/WAO※1、https://www.c-linkage.co.jp/jsawac2020/jp/index.html)のミニシンポジウム(口頭発表)部門にて食物アレルギーの研究成果の一部を発表し、「ベストスピーカー賞」を受賞しました。
【受賞概要】
英語題目: Fish collagen as a marker for the detection of severe fish allergies
題目日本語訳:魚コラーゲンは重症の魚アレルギー症例を検出するマーカーである
受賞者: 下條 尚志(ホーユー株式会社 / 藤田医科大学)
共同演者: 中村 政志(ホーユー株式会社 / 藤田医科大学)
二村 恭子、桑原 和伸、鈴木 加余子、矢上 晶子、堀口 高彦、松永 佳世子(藤田医科大学)
大野 敏(岐阜大学)
【研究背景】
ホーユー株式会社は、ヘアカラーを中心とした商品やサービスを提供しておりますが、お客様により良い製品を安心してご使用いただくため、長年にわたり安全性向上技術や評価技術の開発に注力してまいりました。その中で、近年、藤田医科大学との産学連携により開発された独自のプロテオミクス技術※2によりタンパク質解析の高性能化を実現し、化粧品の安全性研究はもちろんのこと、即時型アレルギーの代表である食物アレルギーの研究に対しても非常に有用であることがわかりました。
アレルギーは、ご存知の通り、国民生活に多大な影響を及ぼす疾患ですが、生活環境に関わる多種多様な複合的要因によって発症し、時には重篤化もすることから、対応が難しく、その多くは根本的な解決にいたっておりません。私たちは、このプロテオミクス技術を最大限に活用することで、アレルギーの原因抗原を特定し、検査法や根本治療法に関する研究やアレルギー疾患の発症機構の解明等を進めております。
今回、研究成果の一部である魚アレルギーの研究をJSA/WAOにて発表しました。
【研究内容】
魚アレルギーは、成人の食物アレルギー発症で上位に位置し、他の食物アレルギーと比べて症状が改善されにくいと言われています。この症状には、口腔内や蕁麻疹にとどまる症例から、呼吸困難や血圧低下などのアナフィラキシーを引き起こす症例まで多岐にわたります。そして、魚アレルギーの最大の特徴として、1種類の魚で感作が成立したとしても他魚種にも同様に反応する可能性が高いということです(交差反応)。そのため、発症後は基本的に全魚種の摂食を避ける指導や、食物経口負荷試験※3により摂取可能な魚種を確認する必要があり、魚食文化を有する日本において魚アレルギー発症は患者のQOL(生活の質)を低下させてしまいます。
魚アレルギーの主な原因抗原は、魚の筋肉や皮に含まれている蛋白質の一種であるβ-パルブアルブミンやコラーゲン※4と言われています。このコラーゲンは、多くの魚にほぼ均等に存在し、また、その構造やアミノ酸配列は非常に似ていることから、上述の交差反応を引き起こす抗原として古くから知られていましたが、私たちのこれまでの研究結果の蓄積から、重症例の検出という全く新しい臨床的特徴を有する可能性が示唆されましたので、その検証を行いました。
【研究方法と結果】
藤田医科大学ばんたね病院(総合アレルギー科:矢上晶子教授)を受診された複数の魚アレルギー症例を対象に、採取された血清と魚由来抗原を反応させ、その解析結果を問診・検査情報と照合して調査しました。
加熱した魚の皮と筋肉中からコラーゲンを抽出し(図1)、魚アレルギー症例の血清中IgE抗体とコラーゲンとの反応性をELISA法※6により評価しました。その結果、重症の魚アレルギー症例7例中6例(85.7%)がコラーゲンに反応していることがわかりました(図2)。一方で、β-パルブアルブミンは7例中4例(57.1%)のみでした(データ未掲載)。
【まとめ】
今回の結果から、魚アレルギーの重症例の多くが魚コラーゲンに感作していることがわかりました。魚コラーゲンを検査することで魚アレルギー症例の中で重症化する人とそうでない人を判別できる可能性を確認しました。一方で、なぜ重症例の多くがコラーゲンに感作されていたのか、そのメカニズム解明については今後の課題です。ホーユーは、今後も引き続き、プロテオミクス技術をはじめとしたアレルギー研究を推進し、アレルギー疾患の解明や発症の予防に貢献できるよう努めてまいります。
※1 WAO
WAOは1951年に設立され、世界中の103の地域および国のアレルギー学会と臨床免疫学会メンバーで構成される国際的な傘下組織です。今回、日本アレルギー学会と合同の学術会議がweb形式で開催され、ミニシンポジウム(英語)142題、ポスター(英語)460題、ポスター(日本語)159題が登録されました。
ベストスピーカー賞は、アクセス数の多かった演題の中から、学会プログラム委員会メンバーがカテゴリーごとに優秀な演題を選出し、発表者に送られる賞です。
※2 プロテオミクス技術
生物の重要な構成要素である蛋白質を総合的に解析する技術です。食物中に存在する蛋白質をできるだけ多く分離してアレルギー症例血清と反応することで、多くの抗原を検出することが可能となります。
※3 食物経口負荷試験
原因食物の確定診断、安全に摂取できる量の決定、または耐性獲得の診断のために、アレルギーが確定しているか疑われている食品を単回または複数回に分割して摂取させ、症状の有無を確認する試験。
※4 コラーゲン
様々な生物に存在するタンパク質の一つで、主に皮膚、骨、血管に含まれています。また、コラーゲンは原料として化粧品や菓子の原料として、また、医薬品の安定剤としても使用されています。魚アレルギー症例のうち、約3割が魚由来コラーゲンに感作されていると言われています。
※5(ゲル)電気泳動法
電流による「ふるい効果」でゲル内を通過させ、電荷や分子量などの特性に応じて分離させる実験手法。これにより、コラーゲンのみが抽出できているかを調べることができます。
※6 ELISA法
試料中に含まれる抗体や抗原を検出する実験手法。抽出コラーゲンをプラスチックプレートに貼り付け、症例血清中のIgEを混ぜます。このIgEを検出する特殊な試薬を用いることで、コラーゲンに対する反応性を検出します。
英語題目: Fish collagen as a marker for the detection of severe fish allergies
題目日本語訳:魚コラーゲンは重症の魚アレルギー症例を検出するマーカーである
受賞者: 下條 尚志(ホーユー株式会社 / 藤田医科大学)
共同演者: 中村 政志(ホーユー株式会社 / 藤田医科大学)
二村 恭子、桑原 和伸、鈴木 加余子、矢上 晶子、堀口 高彦、松永 佳世子(藤田医科大学)
大野 敏(岐阜大学)
【研究背景】
ホーユー株式会社は、ヘアカラーを中心とした商品やサービスを提供しておりますが、お客様により良い製品を安心してご使用いただくため、長年にわたり安全性向上技術や評価技術の開発に注力してまいりました。その中で、近年、藤田医科大学との産学連携により開発された独自のプロテオミクス技術※2によりタンパク質解析の高性能化を実現し、化粧品の安全性研究はもちろんのこと、即時型アレルギーの代表である食物アレルギーの研究に対しても非常に有用であることがわかりました。
アレルギーは、ご存知の通り、国民生活に多大な影響を及ぼす疾患ですが、生活環境に関わる多種多様な複合的要因によって発症し、時には重篤化もすることから、対応が難しく、その多くは根本的な解決にいたっておりません。私たちは、このプロテオミクス技術を最大限に活用することで、アレルギーの原因抗原を特定し、検査法や根本治療法に関する研究やアレルギー疾患の発症機構の解明等を進めております。
今回、研究成果の一部である魚アレルギーの研究をJSA/WAOにて発表しました。
【研究内容】
魚アレルギーは、成人の食物アレルギー発症で上位に位置し、他の食物アレルギーと比べて症状が改善されにくいと言われています。この症状には、口腔内や蕁麻疹にとどまる症例から、呼吸困難や血圧低下などのアナフィラキシーを引き起こす症例まで多岐にわたります。そして、魚アレルギーの最大の特徴として、1種類の魚で感作が成立したとしても他魚種にも同様に反応する可能性が高いということです(交差反応)。そのため、発症後は基本的に全魚種の摂食を避ける指導や、食物経口負荷試験※3により摂取可能な魚種を確認する必要があり、魚食文化を有する日本において魚アレルギー発症は患者のQOL(生活の質)を低下させてしまいます。
魚アレルギーの主な原因抗原は、魚の筋肉や皮に含まれている蛋白質の一種であるβ-パルブアルブミンやコラーゲン※4と言われています。このコラーゲンは、多くの魚にほぼ均等に存在し、また、その構造やアミノ酸配列は非常に似ていることから、上述の交差反応を引き起こす抗原として古くから知られていましたが、私たちのこれまでの研究結果の蓄積から、重症例の検出という全く新しい臨床的特徴を有する可能性が示唆されましたので、その検証を行いました。
【研究方法と結果】
藤田医科大学ばんたね病院(総合アレルギー科:矢上晶子教授)を受診された複数の魚アレルギー症例を対象に、採取された血清と魚由来抗原を反応させ、その解析結果を問診・検査情報と照合して調査しました。
加熱した魚の皮と筋肉中からコラーゲンを抽出し(図1)、魚アレルギー症例の血清中IgE抗体とコラーゲンとの反応性をELISA法※6により評価しました。その結果、重症の魚アレルギー症例7例中6例(85.7%)がコラーゲンに反応していることがわかりました(図2)。一方で、β-パルブアルブミンは7例中4例(57.1%)のみでした(データ未掲載)。
【まとめ】
今回の結果から、魚アレルギーの重症例の多くが魚コラーゲンに感作していることがわかりました。魚コラーゲンを検査することで魚アレルギー症例の中で重症化する人とそうでない人を判別できる可能性を確認しました。一方で、なぜ重症例の多くがコラーゲンに感作されていたのか、そのメカニズム解明については今後の課題です。ホーユーは、今後も引き続き、プロテオミクス技術をはじめとしたアレルギー研究を推進し、アレルギー疾患の解明や発症の予防に貢献できるよう努めてまいります。
※1 WAO
WAOは1951年に設立され、世界中の103の地域および国のアレルギー学会と臨床免疫学会メンバーで構成される国際的な傘下組織です。今回、日本アレルギー学会と合同の学術会議がweb形式で開催され、ミニシンポジウム(英語)142題、ポスター(英語)460題、ポスター(日本語)159題が登録されました。
ベストスピーカー賞は、アクセス数の多かった演題の中から、学会プログラム委員会メンバーがカテゴリーごとに優秀な演題を選出し、発表者に送られる賞です。
※2 プロテオミクス技術
生物の重要な構成要素である蛋白質を総合的に解析する技術です。食物中に存在する蛋白質をできるだけ多く分離してアレルギー症例血清と反応することで、多くの抗原を検出することが可能となります。
※3 食物経口負荷試験
原因食物の確定診断、安全に摂取できる量の決定、または耐性獲得の診断のために、アレルギーが確定しているか疑われている食品を単回または複数回に分割して摂取させ、症状の有無を確認する試験。
※4 コラーゲン
様々な生物に存在するタンパク質の一つで、主に皮膚、骨、血管に含まれています。また、コラーゲンは原料として化粧品や菓子の原料として、また、医薬品の安定剤としても使用されています。魚アレルギー症例のうち、約3割が魚由来コラーゲンに感作されていると言われています。
※5(ゲル)電気泳動法
電流による「ふるい効果」でゲル内を通過させ、電荷や分子量などの特性に応じて分離させる実験手法。これにより、コラーゲンのみが抽出できているかを調べることができます。
※6 ELISA法
試料中に含まれる抗体や抗原を検出する実験手法。抽出コラーゲンをプラスチックプレートに貼り付け、症例血清中のIgEを混ぜます。このIgEを検出する特殊な試薬を用いることで、コラーゲンに対する反応性を検出します。
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