中高生と親の腋窩多汗症に対する認識調査の論文が日本臨床皮膚科医会雑誌に掲載されました
- 子供の汗の悩みに約3割の親は気付けていない -
原発性局所多汗症は国内のガイドライン*2において、「温熱や精神的な負荷、またそれらによらずに大量の発汗がおこり、日常生活に支障をきたす状態」と定義されており、特にワキの下(腋窩)に生じる場合、原発性腋窩多汗症といいます。わが国における原発性腋窩多汗症の有病率は5.75%*3と20人に1人が原発性腋窩多汗症を有するといわれており、加えて腋窩の多汗症状を意識し始めた時期は「中高生」という回答が最も多く4割以上を占めていると報告*4されています。
今回の調査は、ワキ汗が多いことに対する親子の認識の違いについて実態を把握するため、中高生(子)の腋窩多汗症患者214名、自身の中高生の子供で腋窩に汗が多いと認識している母親(親)215名を対象にインターネットアンケートを実施しました。主な調査結果は以下のとおりです。
○「ワキ汗が多いこと」で悩んでいる割合は、子と母親で約3割のギャップがある
・子が「かなり悩んでいる/悩んでいる」と回答した割合は、90.7%、
「(子が)かなり悩んでいると思う/悩んでいると思う」と回答した母親の割合は、65.6%
・「特に心配していることはない」と回答した子の割合は、1.9%、
「(子が)特に心配していることはない」と思ったと回答した母親の割合は、23.7%
○「ワキ汗が多いこと」を認識しても、医療機関の受診は 約4~5人に1人と少ない
・「ワキ汗が多いこと」に対して、医療機関を受診した/させた割合は、子で20.1%、母親で26.0%
・医療機関を受診していない人で、「皮膚科で適切な診断・治療を受けられること」を知らない割合は
子で71.3%、母親で91.2%。
・「治療を受けられること」を知ったことで「治療したい/させたい」割合は、子で65.5%、母親で63.5%
○医療機関を「受診しない理由」・「受診するきっかけ」は、子と母親で異なる
・医療機関を受診しない最も多い理由は、子は「お金がかかるので、親に言い出しにくいから」が46.8%、
母親は「ワキ汗で医療機関に行くのは大げさだから」で28.9%
・受診するきっかけで多い理由は、子は「治療費が安ければ」が56.8%、「親のすすめがあれば」が52.9%、
母親は「子供からの訴えがあれば」が79.0%、「治療費が安ければ」が30.6%
■調査監修医師のコメント
池袋西口ふくろう皮膚科クリニック 院長 藤本智子先生
腋窩多汗症(ワキ汗)は QOL の低下*5や発汗により不安を誘発*6することが報告されています。
本調査では「ワキ汗が多いことで悩んでいる割合(子が悩んでいることを親が認識している割合)」は子で90.7%、母親で65.6%とギャップがあり、子の汗の悩みに気付けていない親がいる現状が示されました。「ワキ汗が多いこと」を認識していても、医療機関への受診率、そして「ワキ汗が医療機関で治療できること」の認知率が共に低い結果でした。
しかし、当事者である子もその親も、正しい治療の情報を提供すれば医療機関への受診意欲はあり、受診のきっかけとして相手の気持ちを大事にして各々の訴えを待っている状態であるため、ワキ汗に関しても、中高生などの若年者にも届く疾患啓発が必要であり、更に親子間でのオープンなコミュニケーションが重要と考えます。
ワキ汗の患者さんの中には、汗が原因で精神的な悩みを抱える患者さんもいるので、治療を始めるだけで多汗症に加え、精神的な悩みも解決できる可能性があります。現在は治療の選択肢が広がっているので、ぜひ医療機関での治療を考えてみて欲しいと思います。
■調査概要:中高生の腋窩多汗症に対する認識調査
実施期間 | 2022年9月21日 ~ 9月26日 |
調査方法 | インターネット調査 |
調査対象 | 【中高生】 【母 親】 HDSSスコアについて Hornbergerの診断基準について 1)最初に症状がでるのが25歳以下であること、2)対称性に発汗がみられること 3)睡眠中は発汗が止まっていること、4)1 週間に1回以上多汗のエピソードがあること、5)家族歴がみられること、6)それらによって日常生活に支障をきたすこと |
有効回答数 | 中高生 214名 性 別:男子18.2%, 女子 81.8% 年 代:中学生 13.1%, 高校生 86.9% 重症度:HDSS3 75.2%、HDSS4 24.8% 母親 215名の回答した子の内訳 性 別:男子49.3%, 女子 50.7% 年 代:中学生 50.7%, 高校生 49.3% |
■腋窩多汗症(ワキ汗)の 疾患啓発プロジェクト「相談しませんか。”ワキ汗”のコト」「#ワキコト」
腋窩多汗症(ワキ汗)で悩む方が自分らしく安心して生活できる社会をつくるために、科研製薬は疾患啓発プロジェクト「相談しませんか。”ワキ汗”のコト」を進めています。
具体的には、腋窩多汗症(ワキ汗)について広く知っていただき、悩む方が相談しやすく適切な治療を受けられる環境づくりに取り組んでいます。ワキ汗の情報・サポートサイト「ワキ汗治療ナビ」による病院検索及び科研製薬公式YouTubeチャンネルの開設、そして今回の親子の認識調査もそのプロジェクトの一環です。
科研製薬は、ワキ汗に対する新たな情報を提供することで、より多くの患者さんのクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献してまいります。
ワキ汗治療ナビ URL:https://wakiase-navi.jp/
科研製薬公式YouTubeチャンネル
URL:https://www.youtube.com/channel/UCRnu_dzwctVjmclVGAhs0Og
以上
1 藤本智子ほか:中高生の腋窩多汗症に対する認識調査 中高生患者と母親を対象としたインターネットアンケート調査. 日臨皮会誌 2023:40(2), 170-180. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jocd/40/2/40_170/_article/-char/ja
2 日本皮膚科学会ガイドライン:原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版
3 Fujimoto T, et al. Epidemiological study and considerations of primary focal hyperhidrosis in Japan: from questionnaire analysis. J Dermatol. 2013; 40(11): 886–90.
4 藤本智子ほか:腋窩多汗症の患者意識調査 インターネットアンケート調査608人の結果報告.日臨皮会誌 2022:39(3), 431-439.
5 Hamm H, et al. Primary focal hyperhidrosis: disease characteristics and functional impairment. Dermatology 2006; 212(4): 343-353.
6 Ogawa S, et al. Association of primary focal hyperhidrosis with anxiety induced by sweating: A cross-sectional study of Japanese university students focusing on the severity of hyperhidrosis and site of sweating. J Dermatol. 2023; 50(3):364-374.
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