ポーラ化成工業と東京大学の共同論文が学術誌「Cell Reports」に掲載
皮膚の奥の神経が肌のシミ形成に影響、重要な働きを担う因子も同定
ポーラ化成工業では、今後も革新的な研究を進めお客さまに驚きと感動を提供する製品の提供を目指します。
掲載論文について
■雑誌名
Cell Reports
■論文タイトル
Human Sensory Neurons Modulate Melanocytes Through Secretion of RGMB
(https://doi.org/10.1016/j.celrep.2022.111366)
■著者(敬称略)
東京大学 生産技術研究所 周 小余、大崎 達哉、池内 与志穂
ポーラ化成工業 フロンティア研究所 中山 和紀、杉山 茉希、山田 麻衣子ら
■発表概要
ヒトの皮膚においてシミが特定の部位にできやすいことは知られていましたが、その理由は謎でした。一方で、シミのもととなるメラニン色素を作る色素細胞(メラノサイト)の近くには感覚神経※1が存在することが知られていました。しかし、2種類の細胞の機能的な関係はあまり調べられていませんでした。
そこで感覚神経とメラノサイトの関係に着目して詳細に調べた結果、ヒト皮膚のシミ内部では、シミのない部位に比べて感覚神経とメラノサイトの接触が増えていることが判明しました(※3,4,5)。また、メラノサイトをヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)(※6)から作製した感覚神経と一緒に培養すると、単独で培養するよりも活発に突起を伸ばすとともに、より多くの色素を作ったのです。このメカニズムを明らかにするため、ヒトiPS細胞由来の感覚神経細胞から分泌されるタンパク質を網羅的に調べたところ、RGMB(Repulsive Guidance Molecule B※7)と呼ばれるタンパク質がメラノサイトの突起伸長と色素産生を促すことを突き止めました。RGMBは、メラノサイトが色素を含む小胞を細胞外に放出する機構も活性化していました。
これらのことから、ヒトの皮膚中の感覚神経は、RGMBを分泌することでメラノサイトを活性化させることが明らかになりました。
本成果は、シミなどの皮膚の局所的な色素沈着の理解と改善法の開発などに貢献します。
【補足資料1】 神経分泌因子によるメラノサイトの活性化
神経から分泌される因子RGMBをメラノサイトに添加すると、表皮の細胞に色素を受け渡す際に使う突起を活発に伸ばすとともに、色素が多く作られることでメラノサイトが黒っぽく見えます。このことから、RGMBによりメラノサイトの働きが活性化したことが分かります。
※1 掲載論文: Three-dimensional imaging of the hyperpigmented skin of senile lentigo reveals underlying higher density intracutaneous nerve fibers. J Dermatol Sci. 2021 Apr;102(1):72-75 https://doi.org/10.1016/j.jdermsci.2021.01.010
※2 温度や感触など、肌の感覚を受け取る神経
※3 「シミの部位には神経が集まっていたことを初めて解明」 (2019年11月5日) http://www.pola-rm.co.jp/pdf/release_20191105.pdf
※4 「第 31 回国際化粧品技術者会連盟世界大会にて「シミはなぜそこにできるのか」について発表」 (2020年10月16日) http://www.pola-rm.co.jp/pdf/release_20201016_03.pdf
※5 「神経の影響によるメラノサイト活性化をヒメフウロエキスが抑制することを発見」 (2021年11月30日)
http://www.pola-rm.co.jp/pdf/release_20211130_01.pdf
※6 ヒトの細胞を培養して人工的に作られた、あらゆる組織や臓器に成長できる万能な細胞
※7 日本語訳: 反発ガイダンス分子B
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