【イベントレポート】生成AI有識者によるパネルトーク「2025年の振り返りと2026年の動向予測」

一般社団法人Generative AI Japan

 

 一般社団法人Generative AI Japan(所在地:東京都多摩市、代表理事:宮田 裕章、以下「GenAI〈読み:ジェナイ〉」)は、株式会社 日経BP(本社:東京都港区、代表取締役社長CEO:井口 哲也)と共催し「生成AI大賞2025」を開催しました。2025年12月11日(木)にTODA HALL & CONFERENCE TOKYO(東京都中央区)で行われた「Generative AI Conference 2025」では、最終プレゼンテーションと表彰式、パネルトークが実施されました。本レポートでは「2025年の振り返りと2026年の動向予測」のテーマについて、生成AIの分野で日本をリードするキーパーソンによるパネルトークの模様をお伝えします。

■    パネルトーク「2025年の振り返りと2026年の動向予測」実施概要

日時:2025年12月11日(木)※「Generative AI Conference 2025」内にて実施

登壇者:

・経済産業省 商務情報政策局 情報技術利用促進課長 兼 情報産業課 AI産業戦略室長 渡辺 琢也 氏

・日本ディープラーニング協会 理事/富士ソフト株式会社 常務執行役員 八木 聡之 氏

・東京大学次世代知能科学研究センター 准教授 医学博士 大黒 達也 氏

・一般社団法人Generative AI Japan 発起人・業務執行理事/株式会社ベネッセコーポレーション データソリューション部 部長 國吉 啓介(モデレーター)

■研究段階から社会実装へ。加速した2025年の生成AIを巡る環境

左よりモデレーターの國吉、経済産業省 渡辺氏、日本ディープラーニング協会 八木氏、東京大学 大黒氏

パネルディスカッションはGenerative AI Japan発起人で業務執行理事の國吉 啓介(ベネッセコーポレーション データソリューション部部長)がモデレーターを務めました。

まず、日本ディープラーニング協会 (以下JDLA)理事の八木氏は、2025年の大きな変化として、生成AIは一部のエンジニアが扱う研究段階から実装フェーズに進化し、最早社会インフラ化していると話しました。

さらに、AGI(Artificial General Intelligence:汎用人工知能)が浸透し、現場における利活用が進む中、2025年の5つのポイントについて説明しました。

日本ディープラーニング協会 八木氏

「第一に『VLM(Vision-Language Model:視覚言語モデル)の発展による、ロボティクスとの融合』です。私がCTOを務める富士ソフトにも『二足歩行ロボットを導入したい』といった相談が増えました。あくまで体感ですが、今年1年間だけでも約10件は増えたと思います。生成AIがロボットや自動化機器に実装されることで、自律的に判断し行動するフィジカルAIや、現実世界との相互作用で学習・行動するエンボディドAI(Embodied AI)の進化を体感しています。ソフトウェアがハードウェアの進化を追い抜き始めていると思います。

第二が『AIエージェント』です。実際の業務フローに、AIエージェントが埋め込まれて利用されるケースが増えました。こうした背景のもと、OpenAIやマイクロソフトではエンタープライズの領域を強化しています。

第三が『生成AIに対する投資の拡大』です。ソフトバンクは、OpenAIに対して、我々の想像を超える大規模な投資をしています。その累計投資額は5.3兆円にものぼります。また、エヌビディアはアブダビに対する積極的な投資も行なっており、生成AI関連の株価は世界的に上昇を続けています。

第四が『生成AIに関わるガバナンスへの対応』です。2023年に開催された第49回先進国首脳会議(G7広島サミット)では、広島AIプロセス(Hiroshima AI Process、略称: HAIP)が立ち上げられました。また、同年12月にはAIマネジメントシステムとして、ISO42001が発行されました。さらに2024年5月には、世界初の包括的なAI規制として『欧州(EU)AI規制法』が成立しています。

一方、米国では生成AIの利用に際して、著作権や肖像権侵害に関する訴訟が頻発しています。ユーザーが知らず知らずのうちに法を侵す構造的な課題が発生しているのです。生成AIのガバナンスに対して企業はどのように取り組むのか、特にISO42001については、個社の対応だけでは難しい側面があります。日本としてもAIの社会的ルールをどのように守っていくのか、考えていく必要があると思います。

第五が『人材教育面における構造変化』です。すでにAIの活用段階から『AI時代にあって、我々はいかに変化すべきか』といった段階に移行しています。例えば、SEによるコーディングが終焉を迎え、AIに代替されることはすでに目に見えています。職場でもAIの活用を軸とした教育が増えています。また、今後はマネージャーへの昇進条件としてAIスキルの習得が不可欠となると考えています」(八木氏)

■推論AIの登場と変化する潮目。規制から推進へ転換する日本のAIの状況

▲経済産業省 渡辺氏

一方、経済産業省の渡辺氏は、生成AIに関して時代の転換を感じていると話します。

「AI担当として、すでに5年間同じ部署に勤務しています。一般的に経済産業省の課長職のポストは1年〜2年で異動しますが、ChatGPTの発表後、目まぐるしく進化するAI領域に対して、継続的な取り組みが必要でした。現在は生成AIの利活用、データセンターの設置、電力供給など、生成AIに関わるサプライチェーン全体の推進を担っています。

さまざまな施策を行ってきた私の経験から、2025年の3つのトピックについてお伝えしたいと思います。

第一に推論型AIの進化による業務の変質です。これまでは質問に対して回答する対話型のAIが利用されてきました。これに対して2025年は推論型のAIの進化が注目を集めました。推論によって人間のように連続的な業務の実行が可能になりました。こうした新たな能力の実装が、生成AIのさらなる普及に寄与していると考えています。

第二は生成AIに対する捉え方の変化です。2024年頃、生成AIは『危険な存在』としてリスク対応が重要視されていました。当時はEUでの流れに追随し、我が国でもAIを規制する法律が活発に議論されていました。しかし、2025年は潮目が変わり『AIの推進』がキーワードとなっています。グローバルにおける生成AIに対する見方が変わったことで、我が国でも2025年6月4日に、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(AI法)、いわゆる『AI推進法』が公布されました。一方、現在の法制度のままではさまざまな課題を抱えているため、さらなる課題解決が必要です。

第三が、先ほどの八木さんのお話にもありました『フィジカルAI』です。製造大国であり、ロボット大国と呼ばれている我が国にとって、フィジカルAIは極めてアドバンテージが高いと考えています。一方で、フィジカルAIの領域にはエヌビディアをはじめとする多くのビッグテックが参入し、米中における投資額は高まっています。我が国の勝ち筋として、フィジカルAIに対してどのように舵取りをしていくのか、大変大きなチャレンジだと感じています」(渡辺氏)

■脳科学と音楽から読み解く、人間の予測メカニズムとAIの可能性

東京大学 大黒氏

生成AIに対してアカデミックな視点から説明を行ったのは、東京大学 次世代知能科学研究センター(略称AIセンター)やケンブリッジ大学で、AIを通して人間の知能の研究を行なっている大黒氏です。ピアノを奏で、アーティストに作曲による楽曲提供も行なっている大黒氏は、「音楽を通して、人間の脳はどのように発達するのか」といった研究も続けてきました。

「人の脳には予測メカニズムがあります。これは、音楽面の人間の情動に関わっています。人は普段の生活で聞いている音楽から、次に流れるであろう音を無意識に予測しています。日本人の多くはポップミュージックを聞き慣れているので、こうした音楽をベースとした音楽の予測モデルができています。

音楽の予測モデルでは、予測誤差(次に流れる音の当たり外れ)の高低によって、人の反応が異なっています。例えば、次に流れる音が予測できる音楽や予測の不確実性が低い音楽であれば安心や安定に関わる反応が出て、予測できない音や予測不確実性が高い音楽が流れると、人は情動的に驚いた状態になります。

私はLLMにポップミュージックを学習させて予測の計算モデルを作り、予測誤差と不確実性を外部から制御することで、揺らぎのある曲を作曲しています」

大黒氏は「揺らぎのある曲は、集団的創造性としてその時代の流行曲にもなる」とも、説明します。同時代の作曲家同士で意図して共有したわけでもないのに、同様な揺らぎのパターンの曲が生まれ、しかもその揺らぎのパターンは時代とともに自然と変化していくと話します。さらに大黒氏は、人は音楽の良し悪しを言語化する前に、身体で情動を感じると話します。

「雄大な大自然を前にして、思わず大声で叫びたくなるような感情、全身からエネルギーが溢れ出るような身体感覚があると思います。私たちのそうした非言語的情動や身体的情動は、言語で可視化する前に身体感覚で感じているものです。これは『内受容感覚』と呼ばれます」

大黒氏の説明を受けて、モデレーターの國吉は教育領域でのAI研究の経験から不確実性についてコメントしました。

「子ども向けの教材制作でも、簡単すぎる問題は飽きられてしまい、難しすぎると諦められてしまいます。やる気が生まれるちょうど良い難易度の設定は、音楽の予測モデルの不確実性にも通じるものがあると思いました」(國吉)

■生成AI活用の加速と、求められる人材育成の在り方と課題

モデレーターの國吉の問いに答える八木氏(右から二人目)

続いてモデレータの國吉はAI時代の課題について、八木氏に聞きました。

「2025年にはAI駆動開発が加速しました。AI駆動開発とは、要件定義から運用保守に至るソフトウェア開発の工程に生成AIを積極的に組み込む手法です。生成AIがエンジニアを支援・補完することによって、開発の『スピード』『品質』『効率』を飛躍的に高める新しい開発スタイルです。AI駆動開発はエンジニアにとってフレンドリーな手法のため、経験が浅いエンジニアでも、容易に開発を進め、自信をつけることができます。不安を抱えて入社した新卒のエンジニアも『こんなに簡単に思い通りのプログラムを作れるのか!』と驚きます。さらに『開発が楽しい』といったフィードバックも増えています。

一方で、フレンドリーになった開発には新たな課題が生まれています。新卒のエンジニアが、開発の基礎や基本をしっかり学ばず、一足飛びに開発を進められるため次のステージに進む際に行き詰まってしまうのです。AI駆動開発だけでは『ソフトウェアとは何か』を理解することは難しく、原理原則の理解が不足しているため、AIに振り回されることになってしまうのです。

八木氏は続けて「生成AIをマネージできる長期的な人材教育が必要」だと話します。

「本来であれば、AIはツールだと考えています。AI駆動開発をコントロールしたり、レビューしたりすべき立場のエンジニアが、AIに先を越されている状態は新たな課題です」

一方、経済産業省の渡辺氏は「AIを使い倒す人材育成」が必要だと話します。

「先進国、特に米国との比較において、我が国は生成AIの活用をさらに促進する必要があります。経済産業省では、利活用に取り組む人材育成が推進されるように取り組みを進めています。こうした取り組みには、組織のトランスフォーメーションとの両軸対応が不可欠です。データセンターなどのインフラの投資回収の試算においても効率化を進める必要があります。人と生成AIの本質的な関係性や利活用による付加価値創出はもちろん大切でありながら、まずは利活用を進めることが大切だと感じています」(渡辺氏)

一方、東京大学の大黒氏は人間の持つ不確実性の視点からコメントしました。

「人が本来持つ、創造性の基盤となるような『不確実性への知的好奇心』について改めて見直す必要があると考えています。現在のAIは人にとって最適な情報を提供し続けています。人間は価値観をAIにコントロールされるのではなく、『これで良いのだろうか』といった問いを立てることを再認識することが必要ではないでしょうか」(大黒氏)

■2026年への展望―フィジカルAI、人間の強み、そして"暇"の価値

「フィジカルAI」について展望を語る渡辺氏(右)

最後にモデレーターの國吉は、2026年の展望について各登壇者に聞きました。

まず、経済産業省の渡辺氏は、フィジカルAIに注力することを挙げました。

「生成AIには取り組むべき領域が多々ある中、1つ挙げるとすれば『フィジカルAI』です。日本発のアニメーションにおいて、日本のロボットは世界中に知られるコンテンツです。また、製造業において、日本のロボット技術は世界に冠たる実績と信頼を提供してきました。こうした現場のデータを活用して、どのような信頼できるフィジカルAIを育てていくのか。経済産業省として、その点に注力していきたいと考えています」(渡辺氏)

続いて八木氏からは進化する生成AIの活用と共存、ガバナンスについて話がありました。

「個人的な展望ですが、生成AIに勝つためにはどうすべきかを考えていきたいと思います。先ほど生成AIによるシステム開発についてお話ししたように、これだけ生成AIが進化した状況では、生成AIにコントロールされるのではなく、人間がコントロールする側だと。そのためには我々人間も変化していくことが必要です。大黒先生のお話にもありましたが、人間は予期せぬ局面やハプニングに直面します。ビジネスでは、そうしたイベントに臨機応変に対応してきた経験があります」(八木氏)

八木氏は予測不能なことに対して、生成AIを適切にコーディネイトすることが、人間の勝ち筋であり、これからも探究していきたいと話しました。

最後に大黒氏は、異なる視点からこれからの展望を述べました。

「生成AI時代には視点の転換が必要」と話す大黒氏

「AIに勝つために、人間は”暇”になる必要があると思います。テクノロジーが進化し、人間の仕事を代替しながらも、なぜこんなにも忙しいのか。こうした疑問を一旦問い直す必要があるのではないでしょうか。忙しいことが評価される価値観を捨てる普及活動をしたいと思います。私たちは忙しさありきのマインドセットに埋没しています。

でも実のところは、『人は本来暇である。暇だから色々なことをやり出して、寝る間も惜しんでやってみたいこと、好きなことをたくさんしているにすぎず、義務として『忙しい必要はない』と考えることも可能ではないでしょうか。視点の転換を図っても良いと思います。私も最近、たくさん働きながら暇だなと思えるようになりました。働くことと暇であることは同時並行的に存在しうる気がしています」(大黒氏)

最後にモデレーターの國吉が、「パネルトークを通して、幅広い関係者の活動の蓄積が、生成AIの有効な利活用につながり、社会課題の解決にも貢献できることがうかがえました」と一連の議論を総括しました。

【Generative AI Japan概要】

産学連携にて生成AIの活用の促進やルール・ガイドラインの整備、提言などを行い、日本の産業競争力を高めることを目指し2024年1月に発足。代表理事は慶應義塾大学医学部の宮田裕章教授が務め、理事・顧問には学術界や先端企業の有識者らが就任、80社が会員として加盟。(2025年12月時点)

名称 : 一般社団法人 Generative AI Japan
登記日 : 2024年1月9日
代表理事 : 宮田 裕章
所在地 : 東京都多摩市落合1丁目34番
URL : https://generativeaijapan.or.jp/

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会社概要

一般社団法人Generative AI Japan

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URL
https://generativeaijapan.or.jp/
業種
財団法人・社団法人・宗教法人
本社所在地
東京都多摩市落合 1丁目34番地
電話番号
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代表者名
宮田 裕章
上場
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資本金
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設立
2024年01月