『生産部門におけるカーボンニュートラル対応』アンケート調査結果<速報>
「見える化」による現場の省エネ活動は進むも、技術革新、スキルアップとともに、サプライチェーンを巻き込んだ取り組みが今後の鍵
一般社団法人日本能率協会(会長:中村正己、JMA)は、製造業の生産部門におけるカーボンニュートラル対応の現状の取り組み状況や課題、今後の展望を明らかにするため、2021年10月4日~15日に、製造業の生産関連部門を対象に、「生産部門におけるカーボンニュートラル対応に関するアンケート調査」を実施しました。
結果について、以下のとおりご報告します。
結果について、以下のとおりご報告します。
- トピック
2. 見える化:「工場・事業所単位の見える化」は約5割が実施、実施検討まで含めると7割超に。効果に関しても、4割超は「効果がでている/効果がでる見通し」と回答。一方、取得データ活用については、実施度合が低い。
3. 生産技術革新:全体的に、見える化に比べ実施度合が低い。実施度合では、「製品の軽量化・小型化」が最多で、「設計段階からの工法見直し・改善」「設備・施設の電化」がつづく。効果に関しては、10項目中6項目で、「効果がでている/効果がでる見通し」が「効果がでていない」を上回るものの、「実施していない」が多く、今後の動向が注目される。
4. 体制/人材育成:「経営層の主導による推進体制」「部門をまたいだ推進体制」「責任と役割の明確化」は、実施検討まで含めると6割以上にのぼる。効果に関しても、約3割は「効果がでている/効果がでる見通し」と回答。一方、スキルアップのための取り組みについては、実施度合、効果度合ともに低調。
- 調査概要
調査時期:2021年10月4日~10月15日
調査対象:日本能率協会のデータベースより製造業の生産関連部門を抽出
調査方法:メール配信によるインターネット調査
回答者数:製造業169件、非製造業25件 計194件
※本調査では、生産部門の取り組みについて明らかにするため、 非製造業25件を除いて分析を行った
- 調査結果 ※小数点第2位を四捨五入
・カーボンニュートラルと聞いてイメージすることは、「再生可能エネルギーの導入」(85.2%)が最多で、次いで「省エネ活動」(68.0%)、「電力使用量やCO2排出量の見える化」(67.5%)でした。(図表1)
・全社におけるカーボンニュートラルに向けた方針展開の状況を聞いたところ、約7割が「全社方針がある」(69.8%)と回答しました。所属部門の展開状況では、「所属部門の方針に展開されている」(39.1%)が約4割となり、「企画・CSRなど主管部門の活動に留まっている」(24.9%)「どう展開されているかわからない」(5.9%)を上回りました。(図表2)
・カーボンニュートラルに取り組むメリット(自部門にとって)は、「顧客からの評価につながる」(「当てはまる」+「やや当てはまる」の計81.1%)、「地域・社会からの評価につながる」(同72.2%)となり、CSRを意識した回答が多数を占めました。一方、「雇用拡大につながる」(同30.1%)、「製造コストの低減につながる」(同36.1%)となり、経済的にはメリットを感じていない傾向がうかがえます。(図表3)
・カーボンニュートラルの取り組みにおける現在の問題(自部門での)を聞いたところ、「経済性と環境性の両立がはかれないこと」(59.8%)と最多となり、次いで「自社の技術開発が十分でないこと」(43.8%)、「サプライチェーンを巻き込んだ取り組みができていないこと」(42.0%)でした。(図表4)
2.見える化:「工場・事業所単位の見える化」は約5割が実施、実施検討まで含めると7割超に。効果に関しても、4割超は「効果がでている/効果がでる見通し」と回答。一方、取得データ活用については、実施度合が低い。
・「見える化」に関する実施状況について、測定に関する8項目、データ活用に関する4項目の計12項目で聞いたところ、測定では「工場・事業所単位のエネルギー使用量の測定」が「実施している」(49.1%)、「実施計画+実施の検討」(26.1%)となり、実施検討まで含めると7割を超えました。また、測定8項目中6項目で実施の検討以上が半数を超えました。一方データ活用では、「取得データをもとに現場の省エネ活動への展開」が「実施している」13.0%にとどまるなど、実施度合が低いことがわかりました。(図表5)
・「見える化」に関する取り組み効果の状況について、同12項目で聞いたところ、工場・事業所単位では、「エネルギー使用量の測定」については「効果がでている+でる見通し」が41.3%、「CO2排出量の測定」については「効果がでている+でる見通し」が30.0%となり、それぞれ「効果がでていない」を上回りました。一方、他の10項目はいずれも「効果がでている+でる見通し」が「効果がでていない」を下回っています。 (図表6)
3.生産技術革新:全体的に、見える化に比べ実施度合が低い。実施度合では、「製品の軽量化・小型化」が最多で、「設計段階からの工法見直し・改善」「設備・施設の電化」がつづく。効果に関しては、10項目中6項目で、「効果がでている/効果がでる見通し」が「効果がでていない」を上回るものの、「実施していない」が多く、今後の動向が注目される。
・「生産技術革新」に関する実施状況について、10項目で聞いたところ、「製品の軽量化・小型化」では「実施している」(19.5%)、「実施計画+実施の検討」(37.3%)となり、実施検討まで含めると5割を超えました。次いで「設計段階からの工法見直し・改善」「設備・施設の電化」がつづき、いずれも実施検討まで含め5割を超えました。一方、10項目中9項目で「実施している」が10%未満にとどまり、見える化と比較し、全体的に実施度合が低いことがわかりました。(図表7)
・「生産技術革新」に関する取り組み効果の状況について、同10項目で聞いたところ、6項目が「効果がでている+でる見通し」が「効果がでていない」を上回るものの、いずれの項目でも「実施していない」が最多であり、今後の動向が注目されます。(図表8)
4. 体制/人材育成:「経営層の主導による推進体制」「部門をまたいだ推進体制」「責任と役割の明確化」は、実施検討まで含めると6割以上にのぼる。効果に関しても、約3割は「効果がでている/効果がでる見通し」と回答。一方、スキルアップのための取り組みについては、実施度合、効果度合ともに低調。
・「体制/人材育成」に関する実施状況について、推進体制に関する6項目・スキルアップに関する4項目の計10項目で聞いたところ、推進体制では、「経営層(部門長・工場長)主導による推進体制がある」「部門をまたいだ推進体制がある」「取り組みに関する責任と役割を明確にしている」の3項目で、「実施している」がそれぞれ26.0%、21.3%、20.7%と、2割を超えました。「実施の検討」まで含めると、いずれの項目も6割以上にのぼっています。一方、スキルアップでは、4項目とも「実施している」が6%未満、「実施の検討」まで含めても、4割程度でした。(図表9)
・「体制/人材育成」に関する取り組み効果の状況について、同10項目で聞いたところ、推進体制に関する5項目で「効果がでている+でる見通し」が「効果がでていない」を上回り、スキルアップに関する1項目で「効果がでている+でる見通し」が「効果がでていない」を上回りました。スキルアップの取り組みは、実施度合、効果度合とも低く、今後の課題となることが推察されます。(図表10)
- 結果を受けての総括コメント
2.生産技術革新については、取り組む企業は全体的に少ないものの、効果を見込んでいる企業が多いことがわかり、これからの動向が注目されます。
3.推進体制を見ると、多くの企業で経営層の主導、部門連携を意識している一方、人材育成面で見ると、スキルアップのための予算策定、具体的な育成体系化はほとんどの企業で行われておらず、次のステップとして、具体的なスキルアップの仕組みづくりが課題であると思われます。
4.さらに将来に向けた取り組みの方向性として、自社内での活動に加え、サプライチェーンを巻き込んだ取り組みがあり(Scope3の展開)、関心度合も高いことがわかりました。また、他者の事例や動向についての共有を求める声も多くありました。
以上を踏まえ、製造業の経営革新や人材育成を支援する日本能率協会では、今後、企業に向けて、事例共有や、課題・取り組みについての議論の促進、企業間、部門間の連携支援、人材育成・スキルアップのための支援を行い、日本製造業全体のカーボンニュートラル達成に向けた活動を行っていきます。
- 回答者属性(N=169)
■業種
・自動車等輸送機器(23.7%)
・化学(11.8%)
・機械部品・電子部品(10.1%)
・電機・家電(10.1%)
産業機械、医薬品・食料・飲料、一般機械、金属 他
■従業員数
・従業員数1,000人以上の会社規模:半数以上
・1万人以上の規模の企業からの回答が最多
■所属部門
・生産部門(50.9%)
・開発部門(14.2%)
・経営・企画(14.2%)
調達、品質、他
■役職
・課長(マネジメント層)以上で約7割
・事業部長・部長クラス、課長クラスからの回答が
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