【講演会レポート】渋沢栄一の「論語と算盤」でアフター・コロナの未来を拓く 12月9日(水)20:00開催(主催:ワクセル)
今だからこそ「論語と算盤」でビジネスの活性化を
ワクセル(主宰:嶋村吉洋、2021年1月より「シマムラジュク」から名称変更)は12月9日(水)20:00-21:00、「論語と算盤」の著者である渋沢栄一の5代目子孫であり、「渋沢栄一100の訓言」などの著書を持つ実業家である渋澤健氏(シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役)の講演会を開催いたしました。
渋澤健氏より、令和の日本に共通する渋沢栄一の言葉、「論語と算盤」から学ぶ社会的課題への取り組み方、そして今の日本人がなにを大事にして動いていくべきなのかを講演いただきました。本レポートではその様子をご報告いたします。
渋澤健氏より、令和の日本に共通する渋沢栄一の言葉、「論語と算盤」から学ぶ社会的課題への取り組み方、そして今の日本人がなにを大事にして動いていくべきなのかを講演いただきました。本レポートではその様子をご報告いたします。
■講演会の概要
本講演は、次世代を担う起業家の輩出と人財育成に取り組む嶋村吉洋が主宰する、ワクセルによるオンライン講演会です。「論語と算盤」の著者である渋沢栄一の5代目子孫であり、「渋沢栄一100の訓言」などの著書を持つ実業家である渋澤健氏(シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役)が講師となりました。
今回のテーマは「渋沢栄一の『論語と算盤』でアフター・コロナの未来を拓く」です。
「資本主義の父」とも呼ばれた渋沢栄一が祖父の祖父にあたる渋澤健氏より、今回は渋沢栄一の過去の功績ではなく、今の日本、そして今後の世界を考えるにあたって重要となる渋沢栄一の言葉について講演をしていただきました。Stakeholder Capitalismとは、そして渋沢栄一の著書「論語と算盤」から読み取る日本がとるべき動きとはどんなものなのか。令和に生きる現代の日本人が大事にすべき価値観を、渋澤健氏より学びます。
■講演会の詳細
時代は"Shareholder Capitalism"から"Stakeholder Capitalism"へ
本講演は、JPモルガン・チェース銀行最高経営責任者のジェームズ・ダイモンから最近発せられたある言葉から開幕しました。
ジェームズによれば「Shareholder CapitalismからStakeholder Capitalismになる」とのことで、これからは株主だけではなく、ステークホルダーの価値向上に向けた動きが重要であるというのです。
渋澤健氏は、これは10年ほど前から話題となっている「ESG投資」と重なる動きであると説きますが、同時に渋沢栄一の言葉とも重なるところがあるといいます。
それでは、「資本主義の父」と呼ばれた渋沢栄一が残した言葉とは何なのか。
それも今この時代に通ずるものとはいったい何なのか。
渋澤健氏は、「合本主義」という言葉を挙げています。
合本主義とは「公益を追求するという使命や目的を達成するのに最も適した人材と資本を集め、事業を推進させるという考え方」のことですが、まさにこれが「Stakeholder Capitalism」であると説きます。
それが分かるのが、渋沢栄一氏の功績のひとつともいえる「銀行」です。
当時まだ日本には銀行という概念がなかったですが、渋沢栄一は「銀河は大きな河のようなものだ。銀行に集まってこない金は、溝にたまっている水やポタポタ垂れている滴と変わりない。折角人を利し国を富ませる能力があっても、その効果はあらわれない」と唱えました。これは「銀行に一滴ずつ水を集めて大河をつくってこそ力になる」という意味で、一社ではなく多くの会社が集まることで日本全体が豊かになることを示唆していました。だからこそ、渋沢栄一は500社もの会社の設立に関与したと言われているのです。
経営者が向き合うべきリスクとは?
それでは、そんな「合本主義」や「Stakeholder Capitalism」は現代においてどんな側面でみられるのでしょうか。
渋澤健氏は「経営者は変化する時代背景に合わせていく必要がある」と説きます。
21世紀には、独り勝ちしているアメリカに対して取り残された人たちが怒りを表現したともいえる9.11(同時多発テロ)、世界で連鎖倒産する危機に見舞われたリーマン・ショック、雇用問題・差別問題など別の課題も浮き彫りにした新型コロナウィルスなど大きな危機が続きましたが、どれも格差社会や分裂社会を生んできたとします。これは日本も同じです。
そんな目まぐるしく危機が移り変わる中、経営者はどんなリスクと向き合うべきなのでしょうか。
リスクには、価格・信用・財務・フィジカル等がありますが、そのなかでもトランジション・リスクを強調して説明されています。トランジション・リスクとは「変化するリスク」のことであり、一例として「 ソーシャル・ネットワーキング・サービスの普及」が挙げられます。従来は、なにかトラブルがあっても報道さえされなければ大事には至らなかった時代が、今ではどこかで簡単にSNSで拡散し炎上してしまいます。経営者はそのリスク、つまりShareholderだけではなくStakeholderと向き合うべきだとします。
また、渋澤健氏は地球温暖化によるフィジカル・リスクにも警鐘を鳴らしています。日本では洪水や地震のほか、アメリカでは山火事が今年は大きなニュースになっていましたが、企業がフィジカルな意味でリスクを抱えている時代になっています。もはや環境問題にとどまらない、企業が向き合うリスクなのです。
格差や分裂が加速する現代、経営者はステークホルダーを広く視野に入れて動いてべき時代に入っています。
令和に読む「論語と算盤」
さて、渋澤健氏は「論語と算盤」はこの今の時代に通ずるものがあると説きます。
それは「サスティナビリティ」です。
著者の渋沢栄一は「合理的な経営」を提唱していますが、これは「その経営者1人がいかに大富豪になっても、そのために社会の多数が貧困に陥るようになることでは、その幸福は継続されない」という意味です。
また、「論語とそろばんは甚だ遠くして甚だ近いもの」という言葉からも分かるように、渋沢栄一は「正しい道理の富でなければその富は完全に永続することはできない。従って、論語と算盤という懸け離れたものを一致させることが今日のきわめて大切な務めである」とも述べています。
この「富の永続」とは、近年注目を集めている「サスティナビリティ(持続可能性)」と置き換えることが可能ではないか——渋澤健氏はそう唱えます。
算盤勘定だけでは、持続可能性は保たれません。
また、論語だけでも、持続可能性は保たれません。
二つが両輪となって未来へ進むことで、サスティナビリティは実現されるという意味で、「論語と算盤」はまさに現代の核心に迫る言葉なのです。
他にも、現代で言う「インクルージョン」のような考え方も、渋沢栄一は「富の平均的分配は空想だ」と発言していることから似た思想を感じとることが可能です。1%だけが裕福になるのではなく、99%も成果によって恩恵を授かる社会。まさにそんな社会を夢見た渋沢栄一は、実際600件もの社会的事業の設立に携わっています。
「か」の力、「と」の力
「論語と算盤」からサスティナビリティやSDGs、インクルージョンを読み取ることができますが、渋澤健氏はそれらの課題に対する日本人ならではの「力」も読み取れると説きます。
それが「か」と「と」の力です。
「か」の力とは、「~か~」といったORの意味で、組織運営において大切だと言われます。ただし、「か」の力は既に存在しているものの二つを取り上げるので、新しいクリエーションには結び付きにくいのです。
そこで、渋澤健氏は「~と~」といったANDの意味の力を挙げています。これは、一見矛盾する両者のことを指しているようで、化学反応的に組み合わさると新しい創造に繋がりやすいと言います。
特に、島国にである日本は、遠い地から海をつたって流れてきたものをピックアップして組み合わせる力に長けており、「と」の感性が豊かだとします。実際、アジアで西欧化を一番早く取り入れたのもそこに要因があるとも考えられます。
SDGsには壮大な「と」の力が問われています。
2030年まで誰一人取り残さないという人道的な目標に対して、企業は論語だけでは生きていけないですし、また、算盤だけでも実現は不可能です。本来であれば到達が難しい地点であっても、「と」の力で創造を繰り返して到達できるのではないか。論語「と」算盤をもって取り組むことが今の日本では重要なのです。
日本の経営者に不足しているもの
また、移り行く時代の中で「常識とはなにか」を考える力も大切だと言います。
渋沢栄一は『「智」、「情」、「意」の三者が権衡を保ち、平等に発達したものが完全の常識だと考える』と唱えましたが、どれか一つだけ欠けていても経営者としての視点が不足してしまいます。
違う次元にあるもの、世界の流れや時代の流れをみる力。
日本の経営者はまだまだそういった「俯瞰力」に乏しいのが現状だと言われています。
これは2020年8月に発売されたボストン コンサルティング グループ著の「BCG 次の10年で勝つ経営 企業のパーパス(存在意義)に立ち還る」にも共通しているものがあると渋澤健氏は述べています。
- パーパス=Why
- ビジョン=Where
- ミッション=What
- 戦略、バリュー文化、ブランド=How
「Why」であるパーパスの部分がまさに「俯瞰してみる力」であり、なぜ自分は存在しているのかを問いかける人間力を示しています。次の10年、大事になるのはまさにWHYの力、俯瞰して物事を見る力なのです。
見える未来と見えない未来
最後に、渋澤健氏は「見える未来と見えない未来がある」と説きます。
マーク・トウェインの有名な言葉のひとつに"History doesn't repeat itself but it does rhyme"がありますが、これは「歴史は繰り返すことはない。ただしリズム感はある」という意味だといいます。つまり、周期性から未来を考えることはできるということです。
日本の近代化社会の周期性は下記の通りです。
- 1960-90 [繁栄の30年]: 高度成長、ジャパンasナンバーワン
- 1930-60[破壊の30年]:戦時→戦後
- 1900-30[繁栄の30年]:西欧社会に追いついた(日露戦争等)
- 1870-00[破壊の30年]:維新。
渋澤健氏が作成した上の周期性からも分かるように、30年ごとに繁栄と破壊のリズム感が続いているとすれば、失われた30年が経過した今、2020年から新しい時代になるという意味です。渋澤健氏はこれを以前から唱えていますが、実際に新型コロナウィルスが到来し、かつてないほどに世界が同時期にストップしました。なにかが破壊され、新しいノーマルが生まれる節目の時代なのではないか、と考えるには十分なタイミングです。
また、日本の人口動態からも「見える未来」はあります。
昭和、平成を経て、人口動態はピラミッド型からひょうたん型になっていき、そして令和には逆ピラミッドになると言われています。これが「繁栄」の時代になるののか、興味深いポイントです。
かつて大量生産で"Made in Japan"を謳歌していた日本は、アメリカ等に「バッシング」され、平成になると"Made by Japan"として活躍しました。しかし、今度は「パッシング」されたので、今後は"Made with Japan"が大事になると渋澤健氏は説きます。
世界の途上国が求めているもの。それぞれの国が抱えている社会的な課題。
期待すべき「見える未来」とは、今の若者が社会に繋がっていると実感し、SDGsを大事にしながら経済成長も応援し、そしてMade with Japanを創造することではないか。
渋谷健氏はそんなスイッチを入れるのは僕ら自身であるとし、本講演を締めくくりました。
■渋澤健氏プロフィール
シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役、コモンズ投信株式会社取締役会長。
複数の外資系金融機関でマーケット業務に携わり、2001年にシブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業し代表取締役に就任。07年にコモンズ株式会社(現コモンズ投信株式会社)を創業、08年に会長に就任。
経済同友会幹事、UNDP(国連開発計画)SDG Impact運営委員会委員、東京大学社会連携本部シニアアドバイザー、等。著書に「渋沢栄一100の訓言」、「SDGs投資」、「渋沢栄一の折れない心をつくる33の教え」、他。
■SOCiAL BUSiNESS COMMUNiTY「ワクセル」
ワクセルは未来を切り拓く人たちが集まり、世の中のワクワクでいっぱいにし、これからの社会を創るためのソーシャルビジネスコミュニティとして、持続可能な社会づくりや事業輩出のための活動、講演会を開催してまいります。ワクセルは自律した人たちが集まった上下の関係のない横のつながりのコミュニティです。
ワクセル公式HP(主催:嶋村吉洋)
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ワクセル公式HP(主宰:嶋村吉洋)
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【注意事項】
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主宰 :嶋村吉洋
本拠地 :東京都渋谷区恵比寿4-20-3恵比寿ガーデンプレイスタワー18階
コンタクト:contact@waccel.com
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