ウイルスの温度安定性を大きく向上させるゼラチンの新機能を発見

[酪農学園大学 萩原克郎教授との共同研究論文発表]

新田ゼラチン株式会社(代表取締役社長:尾形浩一、本社:大阪府八尾市)は、酪農学園大学(学校法人酪農学園 北海道江別市)萩原克郎教授と医療用ゼラチンを用いたウイルスの温度安定化に関する共同研究(以下、「本研究」という)を実施し、その論文がVirology Journal(ウイルス学ジャーナル)に掲載され、両者ホームページにて8月5日に同時発表したことをお知らせいたします。先端がん治療用に注目されている腫瘍溶解性ウイルス(以下、「ウイルス医薬品」という)は、超低温冷凍での保管や輸送が必要で、ウイルス医薬品による治療の普及には課題となっています。本研究成果によりゼラチンをウイルス医薬品に配合することで温度安定性を大きく改善し、冷蔵保管や輸送を実現できる可能性が示唆されました。今後、ウイルス医薬品等への効果確認を進め、同医薬品を用いたがん治療の普及に貢献したいと考えています。

 


■背景・経緯
弊社は、未来の医療への貢献を目指して、高い品質と安全性を備えたコラーゲン・ゼラチンを人工骨や人工皮膚等の医療機器製造に製品として提供しつつ、細胞治療や医薬品製造分野への新たな用途展開を探求してまいりました。現在、先進医療としてウイルス医薬品を用いた治療(以下、「ウイルス治療」という)の普及が予想されて
おり、特にがん治療に用いられる腫瘍溶解性ウイルス医薬品は、2015年に米Amgen社がFDAの承認を取得し、
その後、2021年には国内医薬品メーカーが発売を開始したばかりです。
一方、ウイルス医薬品の超低温冷凍保管や医療現場への輸送(-80℃等)が課題であるものも多く、ウイルス治療の普及には、より高い温度での保管や輸送を可能にする安定剤や製薬技術が求められています。

■共同研究論文の掲載
本論文の掲載にあたり、酪農学園大学 萩原克郎教授より、「生体由来のゼラチン成分は、食品から医療まで広く活用されています。この分子の特性を活かして、特殊な冷凍装置がなくてもウイルスが安定的に長期間保存可能となることは、医療目的としたウイルスやワクチンなど様々な分野でのウイルス利用に貢献できる可能性が期待されます。」とのコメントがありました。

 

掲載先  Virology Journal(BioMed Central社*)
*:英国を拠点とする科学的オープンアクセス出版社で、250を超える科学雑誌
(ジャーナル)を発行し、その全てをオンラインでのみ公開している。
題 名 Stability of enveloped and nonenveloped viruses in hydrolyzed gelatin
liquid formulation
[エンベロープウイルスと非エンベロープウイルスの安定性に対する加水分解ゼラチン液の効果]
著者名 酪農学園大学 獣医学類教授:萩原 克郎
新田ゼラチン株式会社 バイオメディカル部長:平岡 陽介
新田ゼラチン株式会社 同部研究員:塚本 啓司、
                Francois Marie Ngako Kadji、
                小谷 知希
掲載
URL
https://virologyj.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12985-022-01819-w


■ウイルス医薬品によるがん治療

この医薬品は、がん細胞に感染した時にだけ増殖してがん細胞を破壊できるように、遺伝子導入を行って開発されており、正常な細胞に感染しても増殖することがなく、狙ったがん組織にだけ作用し、抗がん剤等に比べると副作用等の患者の方への負担軽減が期待できます。  

 

■ウイルス医薬品の課題

保管、輸送時:     ウイルス医薬品は温度安定性が低いことが知られている。
したがって、品質に万全を期すためにマイナス80℃といった超低温で
保管、輸送することが定められている。
このような制約から、ウイルス医薬品は、大学病院など超低温冷凍設備を備える拠点病院でなければ使用できないのが現状である。
取り扱い: 遮光して解凍し、直ちに投与する。再冷凍は認められておらず、解凍後は
冷蔵で12~48時間保存できるが、超過した場合は廃棄処分するよう定められている。

■酪農学園大学との共同研究
1.  研究目的
 本研究は、医療用ゼラチンによる腫瘍溶解性ウイルス活性の温度安定化効果を確認する前段階の研究として、種々のゼラチンと数種類のウイルスを用いて、マイナス80℃から25℃の保存温度にて一定期間、ゼラチン含有物のウイルス感染性の安定化を評価するために実施しました。

 

2.  ウイルスの保存安定性試験
 性質の異なる種々のゼラチン含有試料をウイルス性状の異なる複数種と混合し、4℃、25℃及びマイナス80℃にて一定期間保存し、保存前後でのウイルス感染力価を測定し保存安定性評価を検証しました。

 

 


3.  評価、検証結果
 ゼラチン成分を混合することにより、4℃、最長で30週間にてウイルスに対して、保存安定性が確認されました。

■ウイルス医薬品の課題解決の可能性
共同研究結果により、ゼラチンをウイルス医薬品に加えて温度安定性を向上させることで冷蔵(4℃前後)での
保存や輸送を実現し、課題を解決できる可能性があることを確認しました。これにより超低温冷凍設備を持たない医療施設でもウイルス治療が可能となり、また冷蔵輸送であれば簡易な設備でウイルス医薬品を地方や、海外へと安全に運ぶことが可能となりますので、ウイルス医薬品を用いた治療の普及が期待されます。

 

 

  

■腫瘍溶解性ウイルスの売上予測

腫瘍溶解性ウイルスは、がんを根治できる医薬品として高い期待が寄せられており、今後10年で市場規模は大きく拡大することが予想されています。

  出典:国立研究開発法人日本医療研究開発機構 委託調査最終報告書(2020年3月)

 

■今後の展望

ウイルス医薬品は新しい治療薬として、今後様々な用途への使用が研究されていくと推測しています。中でも腫瘍溶解性ウイルス医薬品を用いたがん治療は、現在注目されているところであり、同治療薬を用いたがん治療の普及に貢献すべく、ゼラチンの実用化を目指して研究を継続してまいります。

■■■ 新田ゼラチンについて ■■■
1918年の創業以来100年以上、コラーゲンの“無限の可能性”を追求し、研究開発を続けてきた大手コラーゲン・ゼラチンメーカー。いつまでも元気で若々しくありたいと願う世界中の人の願いを叶えることを目指し、製品やソリューションを食品、健康食品、バイオメディカル市場に提供すると共に、コラーゲンの研究を通じて新たな価値生み出し、社会課題の解決に取組んでいます。

■■■ 酪農学園大学について ■■■

北海道での酪農発展のために農家への教育が重要との信念の下、「日本酪農の父」とも呼ばれる黒沢酉蔵
(くろさわ とりぞう)氏が1933年に北海道酪農義塾を創設したことに始まります。単独の私立大学としては日本最大のキャンパスを有し、健やかな大地が健康な人々を育む「健土健民」を理念とし、獣医師や管理栄養士をはじめ、実学と理念を習得した人材を社会へ輩出している大学です。
https://www.rakuno.ac.jp/
https://www.rakuno.ac.jp/archives/23176.html(酪農学園大学のリリース)

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