韓国の大学生がシネマカメラで描く、「日本の地方都市で働く」という未来
釜山外国語大学×長崎・対馬の国際実践教育から、短編映像作品『アンニョン、長崎生活。』誕生

釜山外国語大学の学生6名が、映像制作の専門スタッフとともに長崎県対馬市・長崎市で本格的な短編映像制作に挑戦。シネマカメラを用い、助監督、撮影・照明、録音、美術・制作、記録、出演を学生自身が分担し、日本で働く韓国人の先輩との交流を起点に、「日本の地方都市で働き、暮らす未来」を描きました。
株式会社コミュニティメディアと釜山外国語大学は、国際教育連携事業「釜山外国語大学クリエイティブCAMP2026」を、2026年7月21日から26日まで長崎県対馬市・長崎市で実施しました。
参加したのは、釜山外国語大学の学生6名です。今回、学生たちが制作したのは、日本の観光地を紹介するPR映像ではありません。題材にしたのは、韓国から日本へ渡り、長崎の地方企業で働き始めた一人の若者の新社会人生活です。
研修初日には、実際に韓国から日本へ渡り、株式会社コミュニティメディアで働く先輩社員から、現在担当している仕事や、社会人生活の一日について話を聞きました。学生たちはその後、対馬・長崎で地域の人々と交流しながら、本格的な映像制作に参加。
日本で働く先輩の姿を、自分たちにとって「少し先の未来」として見つめながら、日本の地方都市で働き、暮らすとはどういうことなのかを、一つの物語として映像化しました。
その成果として完成した短編映像作品が、『アンニョン、長崎生活。』です。
2026年9月30日(水)16:00〜17:00には、釜山外国語大学 トリニティホール(D棟)117講義室において、作品上映を兼ねた成果発表会の開催を予定しています。
「日本を知る」から、「日本で働く自分を想像する」へ
クリエイティブCAMP2026では、日本IT専攻の学生たちに例年、ICT技術やAI活用をテーマに夏季研修プログラムを提供してきました。今回の短編映像作品制作の研修では、日本の文化について学ぶことや、交流そのものをゴールにはしていません。
まずはじめに学生たちに考えてもらったのは、「自分が数年後、日本で社会人として生活するとしたら、どのような毎日になるだろう」という、より具体的な未来です。
研修初日、日本で働く韓国人の先輩社員から、実際の仕事内容や一日の生活について聞くことからプログラムは始まりました。
その後、学生たちは対馬市・長崎市で地域企業や地域の人々と接し、映像制作に取り組みながら、日本で働くこと、地方都市で生活することを自分自身の問題として考えていきました。そして、その経験を単なる研修レポートではなく、一人の新社会人を主人公としたフィクションとして再構成しました。
学生たちが描いたのは、「理想化された日本」ではありません。仕事があり、知らない言葉があり、地域の人との出会いがあり、毎日の生活が積み重なっていく日本です。
文化を「体験する」だけではなく、そこで働き、暮らす未来までを想像する。今回のクリエイティブCAMPでは、文化交流→キャリア形成→共同制作→社会への発信までを一つにつなげる、日韓の国際実践教育を試みました。
学生が描いた、「日本の地方都市で働く」という選択肢
日本で働くことを考えるとき、東京や大阪などの大都市圏は必ず候補としてあがってきますが、決して選択肢は大都市だけではありません。日本各地には、それぞれ異なる歴史や文化、言葉があり、そこに暮らす人々との関係があります。今回、舞台となった長崎もその一つです。
坂道。路面電車。長崎弁。仕事中の会話。地域の人からの差し入れ。そうした何気ない日常を通して、最初は「外国から来た若者」として街を見ていた主人公が、少しずつ長崎との距離を縮めていきます。観光する街から、働く街へ。働く街から、暮らす街へ。学生たちは、一人の韓国人新社会人の物語を通じて、大都市以外の日本の地域で働き、生活するという未来を表現しました。
完成作品『アンニョン、長崎生活。』



作品概要
知らない言葉。
慣れない仕事。
生活の中で、毎日通る坂道。
韓国から日本へ渡り、長崎で新社会人としての生活を始めた一人の若者。
最初は、「外国から来た自分」と「長崎」という二つの世界の間に、少し距離がありました。
けれど、仕事をし、地域の人と話し、長崎弁に戸惑い、差し入れを受け取り、毎日同じ坂を歩いているうちに、街の風景は少しずつ変わっていきます。
観光地として眺めていた長崎が、やがて働く場所になり、暮らす場所になり、自分の日常になっていく。
『アンニョン、長崎生活。』は、日本の都市部ではなく、独自の歴史や文化を持つ地方都市を就職先として選んだ、一人の韓国人の若者の新社会人生活を描いた短編映像作品です。
これは、長崎を“外国から紹介する”ための物語ではありません。
ここで働き、ここで人と出会い、ここで一日を過ごす。
そんな日々の積み重ねの先に生まれる、「ここが、私のまち。」という感覚を描いた作品です。
日本各地には、それぞれ異なる歴史や文化、言葉があり、そこで暮らす人々との出会いがあります。大都市にはない、その土地だからこそ生まれる働き方や暮らし方もあります。
この作品には、そうした日本の地方都市の魅力を伝えると同時に、今は学生である若者たちが、少し先にある「社会人として働き、暮らす自分」を身近に想像するきっかけになってほしい、という思いを込めています。
アンニョン。
はじめまして、長崎。
そして、ここから始まる、私の長崎生活。
作品の舞台となったロケ地
作品の舞台となった、対馬・長崎の歴史あるまちなみ
本作品は、長崎県対馬市厳原町と長崎市を舞台に撮影しました。観光名所だけではなく、地域の人々が日々行き交い、長い時間の中で暮らしが積み重ねられてきた場所をロケ地として選んでいます。
対馬市では、厳原町国分の「十王小路(じょうしょうじ)」を中心に撮影。
十王小路は、江戸時代の城下町・府中(現在の厳原)の商人町の一角にあたり、1676年の宗家文書にも「十王小路北側町」「十王小路南側町」の記録が残り、かつて魚屋が並んだ通りとして知られています。現在も通りにはアーケードの屋根など、かつて商店街として賑わった面影が残っています。
茶屋町側の入口には、1905年架橋と記録される十王橋(じゅうおうばし)があり、そのたもとには「十王社」があります。十王小路周辺では毎年7月24日の地蔵盆に地域の子どもたちや住民が集まり、厳原の中心部が賑わう地域行事が受け継がれています。
一方、大町通り側には、かつて「武藤デパート(タケフジ)」がありました。同店に設置された対馬島内初のエスカレーターは、当時の島民にとって近代化を象徴する存在でもあり、買い物客だけでなく、その姿を一目見ようと多くの人々が訪れたといいます。現在の清水ビル周辺には、こうした昭和期の厳原の賑わいや商業の記憶が残されています。
長崎市では、東山手十二番館、東山手甲十三番館、出島ワーフ周辺などで撮影。
国指定重要文化財の東山手十二番館は、1868年に建設されたと推定される、東山手地区に現存する最古の洋風建築です。建設後はロシア領事館となり、その後はアメリカ領事館、宣教師住宅などとして使用されました。幕末から明治にかけて形成された外国人居留地と、長崎が近代日本の外交の舞台となった歴史を現在に伝える建築です。
隣接する東山手甲十三番館は、明治中期に建てられた外国人住宅で、昭和初期から中期にはフランス代理領事アンドレ・ブクリが居住したとされる国登録有形文化財です。現在も洋館が残る東山手一帯には、外国人居留地として各国の人々が暮らし、交流した時代の面影が残されています。
長崎とアメリカの関係を象徴する出来事の一つが、アメリカ合衆国第18代大統領ユリシーズ・S・グラントの来崎です。大統領退任後、世界各地を巡っていたグラントご一行は1879年6月、日本訪問の最初の地として長崎に到着しました。米国政府の当時の外交記録には、日本政府の賓客として迎えられ、長崎の人々からも盛大な歓迎を受けたことが記されています。その後、横浜・東京へ向かい、明治天皇との会見へとつながりました。長崎は、近代の日米交流を考える上でも重要な舞台の一つです。
また、出島ワーフ周辺には、アジアとの交流の歴史があります。1923年に長崎―上海間の定期航路が開設され、「長崎丸」、続いて「上海丸」が就航しました。翌1924年には出島新岸壁が完成。当時、長崎から東京まで鉄道で約36時間を要した時代に、長崎と上海は海路で約26時間で結ばれていました。現在のウォーターフロントの風景の下には、長崎が海を越えてアジアと人や文化を往来させてきた歴史が重なっています。
本作品には、韓国から日本へ渡った若者が地方都市で働き、暮らしていく現在の日常とともに、欧米やアジアとの交流を長く積み重ねてきた長崎のまちなみが映り込んでいます。
シネマカメラを用い、実際の映像制作チームとして制作
本作品は、映像制作の専門スタッフによる指導のもと、参加学生がそれぞれ助監督、撮影・照明、録音、美術・制作、記録、出演などの役割を担当し、共同で制作しました。
学生が単に撮影を見学したり出演したりするのではなく、実際の映像制作現場を想定して担当を分け、一人ひとりが作品完成に責任を持つ制作体制を構築しました。
撮影ではシネマカメラ(SONYのシネマライン、FXシリーズ)を使用。助監督は撮影現場の進行を担当し、撮影・照明担当は画角やカメラワーク、映像表現について学び、録音担当は現場音声の収録を担当しました。美術・制作、記録・メイキング、出演まで、それぞれが異なる専門的な役割を担いました。
監督・脚本・編集を担う映像制作の専門スタッフと学生6名による制作チームが一つとなり、一本の短編映像作品を完成させました。
監督は、デジタルハリウッドSTUDIO出島 動画クリエイター専攻トレーナーの酒村勇輝。長崎を拠点に映像やデザインなどの分野で活動し、CMやドラマのVFX、テレビ番組のディレクター・編集などを手がけています。
脚本は、米田伊織。地域の歴史や文化、人々の日常を題材とした作品制作に取り組んでいます。
本作『アンニョン、長崎生活。』では、韓国から長崎へ渡り、働き始めた一人の若者の日常を通して、長崎を観光地としてではなく、「働き、暮らす場所」として描きました。
制作クレジット監督・脚本・編集
監督
酒村 勇輝
脚本
米田 伊織
編集
デジタルハリウッドSTUDIO出島 動画クリエイター専攻 卒業生・トレーナー陣
学生制作チーム
助監督
ジョン ヨンフン
撮影・照明
ソン ソアン
録音
イム チェヨン
美術・制作
パク ミンジュ
記録・メイキング
ウ ジヒョン
出演(主人公)
カン テフン
制作・運営スタッフ
中山 綾
平原 鈴亜
ジョン ヒョンウ
事業・教育監修
米田 利己
牧野 浩也
永野 亜季
「友好」だけで終わらない。若者が隣国で働き、暮らす未来を考える日韓交流へ
日韓交流には、文化、観光、教育、スポーツなど、これまでにもさまざまな形があります。
クリエイティブCAMPが目指すのは、それらをさらに一歩進め、若者が隣国で実際に働き、生活する未来までを具体的に想像できる交流です。
地域の人と出会う。
企業で働く人と話す。
プロフェッショナルと一緒にものをつくる。
そして、自らの経験を作品として社会へ発信する。
「交流した」という経験だけで終わらせず、その経験が学生自身のキャリアや、その後の社会との関わりにつながっていくことを目指しています。
長崎・対馬・釜山をつなぐ実践研究へ
釜山外国語大学クリエイティブCAMPは、釜山外国語大学日本語融合学部日本IT専攻と同大学特任教授であり、株式会社コミュニティメディアの米田伊織が進める実践研究におけるフィールドの一つとして位置づけています。
2026年度は、対馬市・長崎市をフィールドに、韓国の学生が地域の人々や企業と関わりながら、映像制作の専門スタッフと共同で短編映像作品を制作しました。地域に入り、人と出会い、その土地の文化や日常をどのように理解し、記録・表現することができるのかを、映像制作を通じて実践的に検討しています。
今後は、こうした地域での実践から得られた知見を、映像・デジタル表現による地域文化の記録・可視化、長崎・対馬・釜山をつなぐ日韓の地域文化研究へと発展させます。さらに、3D・空間表現、デジタルアーカイブ、デジタルツインなどの技術も活用し、地域に残る自然、歴史、文化をどのように記録し、次世代や異なる地域へ伝えていくことができるのかについて研究を進めます。
長崎・対馬と釜山をはじめとする日韓双方の地域を研究フィールドとして、共同研究、作品制作、学生・研究者間の交流へと展開し、地域研究、デジタル技術、クリエイティブ実践を横断する研究活動を進めていきます。
クリエイティブCAMP2026 成果発表会・上映会
開催日時
2026年9月30日(水)16:00〜17:00
会場
釜山外国語大学 トリニティホール(D棟)117講義室
予定プログラム
2026年9月30日(水)16:00〜17:00、釜山外国語大学トリニティホール(D棟)117講義室において、クリエイティブCAMP2026の成果発表会および短編映像作品『アンニョン、長崎生活。』のプレミア上映会を開催します。YouTubeでの一般公開は、上映会終了後を予定しています。
1.参加学生6名による成果発表
学生一人ひとりが、自身が担当した制作ポジションについて発表します。
助監督、撮影・照明、録音、美術・制作、記録・メイキング、出演というそれぞれの立場から、研修中に学んだ映像制作スキルや、制作現場で難しかったこと、工夫したことを振り返ります。
2.短編映像作品『アンニョン、長崎生活。』本編上映
学生たちが専門スタッフと共同で制作した完成作品を上映します。
3.本編作品についての講評
映像表現、作品テーマ、制作過程について講評を行います。
4.メイキング映像上映
学生たちが実際に撮影現場で、それぞれの専門ポジションを担当しながら一本の作品を完成させていく制作過程を記録したメイキング映像を上映します。
5.メイキング映像・研修全体についての講評
完成作品だけでは見えない制作プロセスを振り返り、クリエイティブCAMP2026全体の学習成果について講評します。
完成した映像を見るだけではなく、学生が何を考え、どのような専門的役割を担い、どのような映像技術を学び、どのようなプロセスを経て一本の作品を完成させたのかまでを、学生自身の言葉で伝えることを、今回の成果発表会の重要な目的としています。
短編映像作品『アンニョン、長崎生活。』作品情報
作品名
『アンニョン、長崎生活。』
制作年
2026年
撮影地
長崎県長崎市・対馬市
作品尺
[3分9秒]
使用言語・字幕
[日本語・韓国語]
公開日
[2026年9月30日]
公開先
デジタルハリウッドSTUDIO出島 公式YouTubeチャンネル
『アンニョン、長崎生活。』
https://youtu.be/ANyauDpx8M0
※本編は、2026年10月1日(木)午前中に上記URLにて公開予定です。
なお、韓国語字幕版『アンニョン、長崎生活。』は、韓国・釜山外国語大学 日本語融合学部 日本IT専攻の公式YouTubeチャンネルにて公開されています。
https://youtu.be/NzZ9U5MQcD0
釜山外国語大学「クリエイティブCAMP2026」 開催概要
実施期間
2026年7月21日〜7月26日
開催地
長崎県対馬市・長崎市
参加者
釜山外国語大学 学部生6名
主な内容
・日本で働く韓国人社員との交流
・地域企業での研修
・映像制作に関する講義
・シネマカメラを用いた短編映像制作
・地域交流
・映像編集
・成果発表
株式会社コミュニティメディア、釜山外国語大学について
株式会社コミュニティメディア
本リリースに関する担当者:平原 鈴亜
住所:〒850-0862 長崎県長崎市出島町1番1号
TEL:095-829-5525
E-mail:social@communitymedia.co.jp
企業URL:http://www.communitymedia.co.jp/
釜山外国語大学
Busan University of Foreign Studies(BUFS)
設立:1981年
所在地:釜山広域市金井区金サム路485-65
URL: www.bufs.ac.kr
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