Amazon Bedrockを活用した営業支援ツールの実証実験を実施しました
〜生成AIの社会実装加速に向けたKDDIグループの取り組み〜
概要
KDDIアジャイル開発センター株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長CEO:木暮 圭一、以下KAG)は、Amazon Bedrock(*1)を活用した営業活動支援ツール「議事録パックン」のPoC開発と評価を行いました。
背景
KDDI株式会社(以下 KDDI)とアマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社(以下 AWS)は、生成AIの社会実装の加速に向けて、スタートアップの生成AI開発や企業・自治体での生成AI活用を包括的に支援しています(*2)。
その活動の一環としてKAGで実施した本実証実験ではKDDIのソリューション営業担当の課題分析からプロダクトのコンセプト策定、議事録生成等の支援ツールの試作、またそれを用いたユーザテストを完了しています。
今回は3ヶ月という短期間のPoCにかかわらず、Bedrockの使いやすさと他のAWSファンクションとの接続のしやすさにより、高速かつ柔軟な実装が可能となり、効果の高いツール作成に成功しました。
議事録パックンのコンセプト
日々の営業活動においては、過去のアプローチや、その商談結果などの知見をもとに各個人が商談を進め、更なる提案を作成しています。この知見の原資となるのが日々の活動そのものであり、それが書き残された議事録は重要な財産となります。
しかし、営業活動を行う社員は、提案業務等が忙しく議事録の作成が負担となっていました。また、組織としても議事録の重要性は感じているものの、その活用や体系的な運用を示せていないため、効率的に有用な知見の収集には至ってないのが現状です。
そこで、下記のようにアウトプット活用の3つのステップによる営業アシスト機能の提供に取り組み、ワークフロー自体のDXを図ることにしました。
<アウトプット活用の3つのステップ>
1.取得 日々の営業活動履歴の 自動収集 |
2.蓄積・可視化 収集した知見の基盤化 および見える化 |
3. 情報活用 次のアウトプットとして 知見を再活用 |
このコンセプトの実現に向けた足掛かりとして、本PoCでは、議事録生成、日報・週報生成、提案骨子生成の3機能を試作し、評価を実施しました。
機能
1.議事録生成
会議の録音データをもとに、発話書き起こしを行い、議事録としてまとめる機能です。
特徴として、一度作成したあともユーザのプロンプト入力に応じた再生成が可能です。これにより、営業担当それぞれに応じたまとめ方への調整や、会議別の重要な観点の追加が可能になり、営業担当の負担を軽減しながらも、より効果的な議事録の生成に貢献します。
2.日報・週報生成
指定した期間内に議事録パックンで生成された内容(議事録や、提案骨子)をさらに要約し日報や週報としてまとめる機能です。
営業担当が行った活動をもとに要約するので、日報や週報など社内報告作業の手間を軽減します。
3.提案骨子生成
議事録パックンで生成した議事録や提案骨子から、次の提案に資する情報の生成を行う機能です。
今回のPoCでは、営業担当の課題に即した登録済商材の検索や、同商材の他社との機能比較、次回の提案アジェンダを生成することで、作業に不慣れな方でも資料作成の糸口を得ることが可能となります。
Bedrockの最新機能を取り入れ、営業シーンに応じた高度な生成AI活用を実現
本プロダクトではこのようなAWSアーキテクチャーを採用しています
各機能ごとの仕組みについて
◆Amazon TranscribeとBedrock Claude3 Opusを利用した議事録作成
本プロダクトは、オンラインもしくはオフラインの会議を録音・録画したデータから議事録を作成します。
まず、Amazon Transcribeを利用して録音・録画したデータから音声の書き起こしを作成します。Amazon Transcribeでは話者のラベリングが可能なため、音声データとラベリング情報とをセットでClaude3 OpusにContextとして渡すことで、議事録の参加者を会話から推論してサジェストすることができます。
次に、Amazon Bedrock Claude3 Opusを用いて議事録を作成します。Claude3 Opusは日本語生成精度が高いため、人手で作成する議事録と遜色ないレベルでの品質が担保できました。
◆社内文書のPDF化とKnowledge Bases for Amazon Bedrockによる埋め込み
一般的に社内文書はWord、Excel、PowerPointなど多岐に渡るフォーマットが存在しており、一様にベクトル化することはできません。
これらデータをRAGとして利用するべく、Word、PowerPoint(文書や図に意味のあるもの)はPDF化、Excel(表構造に意味のあるもの)はHTML化を実施し、Knowledge Bases for Amazon Bedrockを用いて、Amazon OpenSearch Serverlessにベクトルデータとして埋め込みます。この作業により、ほぼすべてのKDDI内の営業用資料をベクトルデータに変換することが出来ました。
◆Bedrock Claude3 OpusとAmazon OpenSearch Serverlessを用いたReACT Agentの構築
提案骨子生成では、作成された議事録から課題を抽出し、適切な商材を選出することに挑戦しました。
こちらではLangChainにて作成したReACT Agentを用いることで動的に情報の取得を行いました。同エージェントは提案先企業・業界の抽出、企業・業界の最新情報のWeb検索、大量の社内アセット・商材の検索を組み合わせることで、適切な商材提案を行います。社内アセットの検索にはAmazon OpenSearch Serverlessを使用しました。LLMモデルとして利用するBedrock Claude3 Opusの意図判断・日本語生成精度の高さもあり、高品質な提案骨子の作成を実現しました。
開発機能のより詳しい情報はこちらをご覧ください。
「生成AIで営業の工数削減!「議事録パックン」のアーキテクチャ紹介」
PoC結果
今回のPoCを実際に前線で活躍する営業担当に利用してもらい、生成内容や作業時間の短縮効果、業務改善効果について、評価をまとめました。
議事録生成について
ポジティブコメント |
・そのまま営業日報に使えるレベル。 ・想像以上。まさに今まで手作業やっているので、一気に稼働が減り助かる。 項目ごとに的確にまとめてくれる。 ・日報自動化に納得感がある。普段、日報の質にばらつきを感じているのでこの自動化で均一化され、有用な情報源になりうる。 ・議事録生成が出来れば、部内の横展開もしやすく、業務品質は上がると思う。 |
ネガティブコメント |
・会議の録音を対先にお願いしづらい、案件上オフレコのときがある。 ・議事録の生成に時間がかかっている。裏で自動でやってくれればよい。 ・壁打ちで修正を掛けられるのは便利だが、できれば1回で出してくれればより楽になる |
時間短縮・業務改善について |
・1件あたり10〜30分程度の短縮につながる ・みんなの議事録をまとめる作業負担が減る分、情報共有する意識変化につながり、知見・ノウハウの横展開がしやすくなる |
提案骨子生成について
ポジティブコメント |
・お客様のところに行けるレベル。各商材がどんな課題を解決してくれるかもまとまっている。 ・どういう提案組み立てようかな、という検討に使える。 ・思ったより細かく出てきた。比較表はそのまま資料に貼って使えそう。 |
ネガティブコメント |
・(提案資料なので)パワーポイントで出力されることを期待した ・生成に時間がかかっている。ある程度型が決まっている場合は自分で作成したほうが早そう。 ・利用する場面・ニーズがあまり想像できない。 |
時間短縮・業務改善について |
・作業あたり10分〜30分程度の短縮につながる、社内事例と合わせて出せれば1時間程度の短縮もできそう ・提案商材検索に時間がかからなくなり、どう提案するかに力を割くことができるようになりそう |
日報生成について
ポジティブコメント |
・複数案件まとめられるのがよい ・自分の振り返りに使えそう ・日報の作成漏れが無くなりそう |
ネガティブコメント |
・(報告のフォーマットに合わせるため)文字数制限をかけられるとよい、もっと短くてよい ・(お客様との議事録が日報代わりにグループ内共有に利用されているので)あまり使わないかもしれない。 |
時間短縮・業務改善について |
・10分~1時間と、短縮可能想定はばらついた ・日報作成漏れ、登録漏れが無くなり、知見をしっかりと残せるようになることに期待 |
プロダクト全体を通して
信頼度 |
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ポジティブコメント |
・記載に概ね満足。 ・議事録生成はサマライズされており自分の書いているものと近くてしっくり。 |
ネガティブコメント |
・提案内容の真偽がわからなかった。 ・提案骨子についての ファクトリサーチは必要になる。 ・発散している会議ではどうなるだろうか? |
満足度 |
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ポジティブコメント |
・使うことで(業務改善に)プラスにしかならない ・そのまま使えるような情報の粒度、結構細かく答えてくれた |
ネガティブコメント |
・活用方法に工夫の必要な機能もあった ・お客さんの生の声や感情も重要だったりするが、このようなツールを使うと拾えなくなりそう。 |
以上の通り、議事録パックンについて、概ね好評を得られました。特に、議事録生成機能は非常に高い実用性を確認できました。
また、各機能について営業活動中の作業にかける時間短縮につながり、他の作業に時間をかけられるようになると期待が見込まれました。
一方、提案骨子生成については利用イメージがまだ十分につけられておらず、営業現場の作業実体に即した機能深堀りが必要です。また、日報・週報生成については検証内で十分な活動履歴が蓄積できておらず具体性を伴う評価が出来なかったこともあり、継続した検証および、文字数制限・システム連携等の具体利用シーンを想定した作りこみが必要であることがわかりました。
今後の改善
営業現場で利用いただき、フィードバックをもらいながら、営業担当の目線に立った機能改善をアジャイルに実施していきます 。
KDDI・KAG・AWSの今後の取り組み
生成AIの分野においても、AWSらしい開発者フレンドリーな、アイディアを即カタチにできる機能が提供されていることを確認できました。
KAGは今後もKDDI・AWSと連携し、生成AI社会時代への道を開くべく、新機能のパイロットとなる 魅力的なプロダクト開発を行っていきます。
(*1)基盤モデルによる生成 AI アプリケーションの構築 - Amazon Bedrock - AWS
https://aws.amazon.com/jp/bedrock/
(*2) KDDI、生成AIの社会実装に向けAWSと連携 | KDDI News Room
https://newsroom.kddi.com/news/detail/kddi_pr-974.html
■KDDIアジャイル開発センター株式会社の概要
会社名:KDDIアジャイル開発センター株式会社
主な事業内容:アジャイル開発事業及び保守事業
設立年月日:2022年5月12日
本店所在地:東京都港区虎ノ門一丁目17番1号
代表取締役社長 CEO:⽊暮 圭⼀
Webサイト:https://kddi-agile.com
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