株式会社電力シェアリングは、長野県塩尻市等で、公共交通の利用を促すデコ活・ナッジ社会実証を実施しています
脱炭素社会実現を目指す新しい国民運動「デコ活」の下、移動の脱炭素化を促す環境省ナッジ社会実証実験事業を実施
株式会社電力シェアリング(本社:東京都品川区、代表取締役社長:酒井直樹)は、脱炭素社会実現を目指す新しい国民運動「デコ活」の一環として、国民が自発的にモビリティー分野でのCO₂排出量ゼロ化の選択をできるようなナッジ実証を、環境省の委託を受けて実施しています。
「デコ活」とは、「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」の愛称であり、二酸化炭素 (CO₂)を減らす(DE)脱炭素(Decarbonization)と、環境に良いエコ(Eco)を含む"デコ"と活動・生活を組み合わせた新しい言葉です。
環境省の「デコ活」紹介サイト: https://ondankataisaku.env.go.jp/decokatsu/
当社では、デコ活の一層の主流化に貢献すべく、当社オリジナルのDSナッジモデル:移動版を用いて様々なナッジ介入手法を取り入れたwebアプリを独自に開発し、長野県塩尻市のモニターに利用いただき、公共交通機関の利用等により自家用車利用の手控えを自発的に選択していただけるような社会実証を実施しています。
2024年7月6日(土)には、塩尻市振興公社の主催する、core塩尻1周年記念イベントで「環境」ブースを出展し、塩尻市のご協力の下、塩尻市民の皆さまに、移動ナッジ実証やスマフォ・ゲームアプリ「ダブルチェックイン」の開発についてご説明し、その実用性についてのご感想やご意見を伺うとともに、ナッジモデルやスマフォ・アプリの改善策についてフィードバックをいただきました。
環境省によれば家庭でのCO2排出量の約2割はガソリン等のマイカーによるもので、その排出量をゼロにすることなしには、日本の2050年ネットゼロ目標は達成できないため、地域脱炭素ロードマップの加速化期間が終了するR8までに一定の目途を付けなければいけません。今年6月に環境省が発出した環境基本計画でも重点項目にあげられています。(以下参照)
しかしながら、こうした政府の旗振りにも関わらず、欧州では機運が高まっている、マイカーから公共交通機関へのモダルシフトは進んでいません。今回の、当社の塩尻市民との直接対話でも、「わかっているけれど、なかなか踏み切れない」という声が、シニア・家族連れ等異口同音に聞かれました。
一方で、高齢者や高校生などの「交通弱者」を地域のみんなで支えてあげたいという声も多く聞かれ、「みんなで、一緒に、頑張る仕組み」を作って、「きっかけを与えてくれれば、バスに乗るかも」という意見もありました。
当社では、環境省ナッジ実証事業での社会実験の一つとして、塩尻市の皆さまの協力を得て、「ダブルチェックイン・ゲーム」アプリの開発を進めています。このアプリは、地域に貢献したいという皆さまの気持ちに働きかけて、「みんなで一緒に、楽しく、電車・バスを利用しよう」というコンセプトで、「人流・滞留・交流(街に出て、場所にとどまり、人と人がつながる)」を促して、ハードインフラではなく、需要側からコンパクトシティを実現するという思想で設計しています。
みなさんとともに開発中の、現在のゲームのフローは以下の通りです。
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協力をいただいているバス車内や、鉄道駅構内に貼ってあるQRコードをかざしてチェックインすると「交通ポイント」が貯まります。
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一方、駅近くの目的地の施設(飲食店・商店や、図書館・公共交流施設)でチェックインすると「場所ポイント」が貯まります。
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同じ日に、「交通」「場所」の両方でチェックイン(ダブルチェックイン)すると、さらにポイントが貯まります。
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一方で、グループ登録をしている他のメンバーが、同じ日にバスまたは駅でチェックイン(グループチェックイン)すると、2人ともにさらにポイントが貯まります。さらに、もう一人チェックインすると追加ポイントが加算され、、、6人全員がチェックインするとポイントが6倍になるという設計です。
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ポイントは、集団で共有され、目標に達成する(例:3か月で全員で10,000ポイント貯める)と、みんなで選んだ特典(バーベキューやパーティ・地元学校へのスポーツ設備の贈呈など)がもらえます。
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特典の原資は、バス事業者や飲食店・商店からの集客成果報酬や、同アプリでの広告収入を考えており、各事業者とともに、社会実装時の事業計画を構想しています。
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「電車とバスに乗って、駅近の飲食店でパーティやろう」「みんなでゲームセンターに行こう」といった計画(AIによるレコメンデーション)機能も追加することを考えています
当社では、独自のナッジモデル(DS-ナッジ・オン・ナッジモデル)を構築しています。脱炭素行動(省エネやマイカー乗り控え、地産地消品の購入)という、お金と手間がかかる個人的なペインを、「みんなで一緒に頑張る仕組み」に転換することで、楽しく・やりがいを実感しながら地域脱炭素を実現することを目指しています。
とはいっても、今回も、塩尻市の皆さまからは、「いちいち車内でアプリを立ち上げてQR撮影は面倒」、「そんなに毎日出かける用事はない」、「自分の行動が他人に知られるのは不安」などといった課題も多く頂戴しており、こうした「ダメ出し」に向き合って、UI/UXを高めてアプリを完成させ、本格的な社会実証実験につなげていければと考えています。
なお、同様の取り組みは、全国規模でも進めており、当社の調査では、少なくない方が特に地方部では200メートル以内でもマイカーで移動している実態があきらかになっていて、いかにして近距離でのマイカー移動(近所の商店への買い物や、ごみ出し等)を自転車や徒歩に転換できるかについても検証してまいります。
(参考)①第二次交通政策基本計画(R3年5月閣議決定)(当社文責でのサマリー)
現状と課題:地域におけるモビリティ危機
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人口減少等を背景として、交通サービスの維持・確保が困難となる地域が増加。
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全国の約 7 割の一般路線バス事業者及び地域鉄道事業者において事業収支が赤字。
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交通産業は長時間労働・低賃金で人手不足・高齢化は年々深刻化。
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地域公共交通が存在しない「空白地域」が、全国で拡大の一途をたどっており、年齢的理由や身体的理由等で自家用車を所有あるいは自ら運転できない「交通弱者」のモビリティの確保が極めて切迫した課題。
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新型コロナウイルス感染症の影響により、旅客の輸送需要が更に減少しており、あらゆる地域において、路線の廃止・撤退が雪崩を打つ「交通崩壊」が起きかねない状況
解決策:共助を取り入れた交通システムの再構築
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従来型の商業的手法に加え、公助、共助、自助など、あらゆる手法を合理的かつ柔軟に組み合わせ、まちづくり政策と連携しつつ地域モビリティ全体を将来的な人口動態の変化を見据えた形で再構築する
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誰もが、自ら運転しなくても自由な外出・移動が可能で、豊かな生活を享受できる、そして住む人が地域に誇りを持てる社会を創らなければならない
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また、我が国の交通が、社会・経済の急激な変革に対応し、供給者目線から真に利用者目線でのサービス展開に転換するためには、デジタル化や自動化、デジタル・トランスフォーメーション(DX)をはじめとしたモビリティの革新や、既存の制度・規制の見直しに大胆かつ迅速に取り組まなければならない
(参考)➁環境基本計画(R6.5):交通関連部分を抜粋
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持続可能で魅力的なまちづくりに向けて、都市のコンパクト化や持続可能な地域公共交通ネットワークの形成、鉄道を始めとする公共交通の利用促進、安全・安心な歩行空間や自転車等通行空間の整備等は、自動車交通量の減少等を通じて CO₂排出量の削減(脱炭素電源、燃料の効率的な利用を含む。)に寄与するとともに、中心市街地の活性化や徒歩・自転車利用の増加による健康の維持・増進、都市の維持管理コストの削減等につながることが期待される。
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(都市のコンパクト・プラス・ネットワークの推進) 市街地の拡散を防止しつつ、生活サービス機能や居住の誘導と公共交通ネット ワークの形成を連携して取り組む「コンパクト・プラス・ネットワーク」の取組を 推進していく。
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また、徒歩や自転車で安全で快適に移動でき、魅力ある空間・環境を整備するとと もに、次世代路面電車システム(LRT)/バス高速輸送システム(BRT)などを軸とし た公共交通ネットワークの形成を進めるほか、鉄道を始めとする既存の公共交通の 利用を促進することで、自動車交通量の減少等を通じて、温室効果ガスや大気汚染 物質の排出削減に寄与する。これらの施策による環境負荷の削減効果を「見える化」 していくこと等を通じ、都市のコンパクト化を推進していく。
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(地域公共交通のリ・デザイン) 地域公共交通は、地域の社会経済活動に不可欠な基盤であり、地域循環共生圏の構築に欠かすことが出来ない地域資源でもある。 また、コンパクトな都市構造の構築への寄与や公共交通分担率の向上等を通じて、 環境負荷の総量削減への貢献や先述した様々な外部経済を有するものである一方で、 人口減少等による需要減や運転手等の人手不足により厳しい状況に置かれている。 このため、法制度や予算等のあらゆる政策ツールを活用し、交通 DX・GX の推進や、 教育・医療・福祉・介護・エネルギー等を含む地域の関係者の連携・協働(共創) を通じ、利便性・生産性・持続可能性の高い地域公共交通への「リ・デザイン」を 加速化させ、「ウェルビーイング/高い生活の質」に貢献していく。
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(モビリティの脱炭素化) 電動車の導入拡大に向け、車両の購入を支援するとともに、充電・水素充てんイ ンフラの整備促進等の道路交通をグリーン化する取組を進める。
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(製品ごとの温室効果ガス排出量の「見える化」)「CFP」は、温室効果ガス排出量の「見える化」により、消費者が、脱炭素・低炭素の実現に貢献する製品やサービスを選択する上で必要な情報を提供する有効な手法であり、製品種ごとの CFP 表示に向けた業界共通ルールづくりを後押しするとともに、一定の統一的な基準に基づく認証の枠組みを整備する。また、ナッジ手法も活用した効果的な CFP 表示のあり方を実証するとともに、「デコ活」による消費者の行動変容を通じて、CFP の普及と、脱炭素の実現に貢献する製品・サービスの選択を推進する。
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③ 持続可能な地域づくりに向けた対話を通じた協働取組の推進:持続可能な地域づくりに向けた住民、民間団体、事業者、行政等による対話を通じた協働取組を促進するため、地球環境パートナーシッププラザや地方環境パートナーシップオフィスを拠点として活用し、先進事例の紹介や各主体間の連携促進のための意見交換会の開催のほか、民間団体等の政策形成機能の強化や、自立した地域づくりへの伴走支援等に取り組む。
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D.モビリティの脱炭素化:電動車の導入や充電・水素充てんインフラの整備を促進するなどの道路交通をグリーン化する取組を進める。また、いわゆる誘発・転換交通が発生する可能性があることを認識しつつ、渋滞を原因とする当該区間におけるCO2の排出削減を図る渋滞対策としての幹線道路ネットワークの強化等の道路交通を適正化する取組のほか、道路整備・管理等のライフサイクル全体の低炭素化を図り、道路施設の脱炭素化を推進する。また、相対的に低炭素な輸送モード165の利活用を促進するため、鉄道を始めとする公共交通の利用促進や、貨物輸送のモーダルシフトの促進に取り組む。
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道路交通を適正化する取組については、環境保全の観点では、自動車の利便性の拡大に伴ういわゆる誘発・転換交通(自動車による移動回数の増加、目的地の変化、鉄道等からの転換、中長期的な土地利用の変化に伴う影響等)の影響、また、電動車の普及に伴う走行特性の変化を踏まえ、総合的に CO2排出などの環境負荷の低減効果(脱炭素電源・燃料の効率的な利用を含む。)を判断していくことが重要である。
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輸送量当たりの CO2排出量は、旅客では鉄道が自家用乗用車(電気自動車は除く)の約 22%、貨物では鉄道 が営業用貨物車の約9%、船舶が営業用貨物車の約 20%となっている(2021 年度)。
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持続可能な地域づくりに向けた対話を通じた協働取組の推進:多様な主体の参加によるパートナーシップを前提とした効果的な協働取組を通じて主体同士が学び合うことにより、地域コミュニティの対応力や課題解決力を高めていくことが可能である。すなわち、パートナーシップの充実・強化は、人づくり、地域づくりにも資するものであり、持続可能な地域づくりのためには、住民、民間団体、事業者、行政等による対話を通じた協働取組が重要である。
当社の考え
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国土交通省は、R3年5月に閣議決定された第二次交通政策基本計画の中で、「地域が自らデザインする、持続可能で、多様かつ質の高いモビリティの実現」を目標に掲げており、地方自治体へ「地域公共交通計画」の策定を促している。<KPI:地域公共交通計画の策定件数:618 件(R 2)→1,200 件(R 6)>
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そこでの自治体の役割は、「多様な関係者が連携しつつ、暮らしと産業を支える移動手段を確保するとともに、利便性、快適性、効率性を兼ね備えた交通サービスの提供を実現する。」としている。
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また、同計画の策定・実施に当たっては、「移動データの把握・分析等を通じた地域ぐるみの公共交通マーケティング手法の活用、公共交通のクロスセクター効果も踏まえた定量的な目標設定と毎年度の評価、PDCA サイクルの展開を強化する。」こととしている。
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しかしながら、人口減少に悩む多くの地方小規模基礎自治体においては、交通や人流に関する現状を把握し、課題を分析し、新規の需要を開拓する能力が十全には備わっておらず、結果として民間提案型の過大なスペックな技術実証など、プロダクトアウト思考に陥り、持続可能性が伴わないリスクも懸念される。
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本事業者は複数の自治体と、エビデンスに基づく需給一体となった交通政策の立案と検証の必要性についての問題意識を共有しているところ。
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特に長野県塩尻市は、民間テック企業の地域MaaSの集積地として、自動運転・オンデマンドバス・EV化等の最先端のMaaS事業の地域での社会実装を進めている。
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当社は、これらの補完として、需要牽引型の新しい交通政策立案や官民一体型の交通インフラの整備を進める方向を提案している。
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当社としては、環境省ナッジ実証事業で得られる知見をベースに、塩尻市民をはじめとする当該手法を官民連携の「塩尻モデル」として確立し、全国で、地域公共交通計画策定の必要性に迫られている多くの基礎自治体に、ナッジ手法を組み込んだ需要喚起型の政策パッケージとして展開していきたいと考えている。
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