【データ】最も検索された言葉は「死にたい」「いじめ」「自殺」。1人1台端末から見えてくる、子どもたちの“心の悩み”

自殺対策を目的とした1人1台端末向けブラウザ拡張機能「SOSフィルター」のデータを公開

特定非営利活動法人OVA

NPO法人OVAは7月17日、自殺対策を目的とした1人1台端末向けブラウザ拡張機能「SOSフィルター」に関する2025年1~3月のデータを公開いたしました。

約7万台の利用データを集計したところ、SOSフィルターが表示されたユーザー数は1か月あたり平均1,206。約58人に1人の児童生徒が、深刻な悩みに関する検索をしていることが分かりました。

2024年に自殺で亡くなった児童生徒は529人と、日本全体の自殺者数は減少傾向かつ少子化が進んでいるにも関わらず、統計を取り始めてから過去最多となりました。

近年では学校で配布される1人1台端末を、教育だけでなく「心の健康推進観察」や「自殺リスクの把握」に活用することが、政策でも求められています。

また、2025年6月に衆院本会議で可決・成立された自殺対策基本法においても、子どもの自殺対策に取り組むことは「国や学校の責務」ということが明記されました。OVAとしては、SOSフィルターをはじめとした事業活動を通して、引き続き若年層の自殺対策に注力をしてまいります。

児童生徒はどんな悩みを検索したか

SOSフィルターとは、「GIGAスクール構想」に基づき、児童生徒に1人1台への配布が整備されている1人1台端末で深刻な悩みに関するワードを検索した際、相談窓口やセルフケアに関する情報をプッシュ型で届けられる無償のブラウザ拡張機能です。

検索キーワードは、「自殺」「学校での人間関係(いじめ等)」「家庭での人間関係(虐待等)」「性暴力」「自傷」「精神疾患」と計6つのカテゴリーで、約5000個を設定。2025年7月現在、「GoogleChrome」と「Microsoft Edge」ブラウザに対応しています。

今回、カテゴリー別の検索結果や、どのキーワードが多く検索されたかといったデータを公開いたしました。カテゴリー別の検索ユーザー数を見ると、「精神疾患」が40.1%(1543)、「自殺」が22.0%(846)、「学校での人間関係」が19.0%(731)、「性被害」が7.2%(277)、「自傷行為」が6.3%(244)、「家庭での人間関係」が5.3%(204)となっています。

検索したキーワード別のデータからは、「死にたい」「いじめ」「自殺」といった言葉が上位を占めていることが分かります。その他、「オーバードーズ」「助けて」「リスカ」「うつ病」「自律神経失調症」といった言葉が多く検索されています。

また、SOSフィルターが表示され、外部リンクをクリックしたユーザーのうち、20.3%が「しんどい気持ちを抱えた人向けのWEB空間」、14.7%が「チャット相談窓口」、11.7%が「気持ちを吐き出せる掲示板」を利用していることが分かりました。

その他、特設サイトでは、SOSフィルタートップページの最下部まで読まれた割合、情報を2ページ以上読んだ割合等をご紹介しています。

https://sos-filter.ova-japan.org/data/

専門家コメント:山口有紗様

「周りの大人が忙しそうだった」「たいしたことないって言われた」「お金かけてもらってるのに申し訳ないと思った」――だから、ひとりでなんとかするしかないと思った。

死にたい気持ちや自分を傷つけていることを伝えてくれた子どもたちの声です。

ひとりで端末に向かい、検索する子どもたちは、どんな想いでいたのでしょうか。その画面の向こうに、本当は何を求めていたのでしょうか。

私たちには、端末のもっと手前で声を受け止める仕組みを整えると同時に、そうした子どもたちを今度こそ「ひとり」にしないために、検索を通じて届いた心の声に、真摯に応える責任があります。

子どもの自殺を防ぐためには、多層的な取り組みが欠かせません。すべての子どもが心の健康とウェルビーイングを保障され、ちょっと困ったときや不調があるときに、それに気がついて誰かに話せる力と環境を整えること。そして、子どものしんどさのさまざまな発信に丁寧に気がついて、真摯に対応できるネットワークをつくること。家庭、学校、地域、民間、行政、それぞれの立場から知恵と力を集め、子どもたちの苦しみに確かに応えていく社会が、いま強く求められていると感じます。

<山口有紗様 プロフィール>
小児科専門医・子どものこころ専門医、公衆衛生学修士:

高校中退後、イギリスでの単身生活や中卒での就労、国際関係学部での学びを経て医師となる。ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生学修士。現在は子どもの虐待防止センターに所属し、地域の児童相談所などで相談業務に従事しながら研究や講演、行政などへのアドバイザー業務を行う。国立成育医療研究センター共同研究員、こども家庭庁アドバイザー。近著は「子どものウェルビーイングとひびきあう――権利、声、「象徴」としての子ども」(明石書店)、「きょうの診察室: 子どもたちが教えてくれたこと」(南山堂)、「医師・医療者が知っておきたい子ども虐待」(金芳堂、編著)。

SOSフィルターを開発した理由

現状の1人1台端末は、キーワードのフィルタリングが強く設定され、特定の内容で検索をすると結果が表示されない場合があります。有害な情報に触れさせないことは自殺予防の観点からも大切ですが、「死にたい」といった感情の吐露ともいえる検索行動を制限されると、生徒は抱える悩みや感情を否定されているように感じる可能性があります。

また、SOSを早期に把握するツールはありますが、深刻な悩みに関するキーワードで検索をすると事前の同意なく学校に自動で通知が届くものや、検索結果を出ないようにするものがあり、児童生徒が安心して利用することができません。さらに、その多くが有償であり、予算を確保できる教育機関しか導入できず、地域差が生じるという課題があります。

そこで、SOSフィルターは無償、かつ検索した生徒個人を特定したり、学校に通知が届く設計はあえて行わないようにしました。検索内容によっては学校や児童相談所が介入すべきケースもありますが、1人1台端末で深刻な悩みに関する検索行動が行われており、多く対処されていない、対処されている場合でも監視・制限的な対応をしている現状を考え、まずは「児童生徒が安心して利用でき、援助要請・セルフケアの能力を高められる無償ツールを全ての教育機関に提供したい」と、開発を決めました。

2025年7月現在、SOSフィルターは8つの教育委員会および1つの私立中高一貫校で導入されており、約14万台の1人1台端末にインストールされております。ご関心のある教育委員会の皆さま、学校関係者の方は、下記の特設サイトからお問い合わせください。

https://sos-filter.ova-japan.org

NPO法人OVAについて

主に検索エンジンにて自殺関連用語を調べるリスクの高い方々に対し、検索連動広告でアウトリーチとインターネット相談を実施。2025年7月現在、約40の自治体・非営利活動法人で、検索連動広告を活用した自殺対策事業を展開しています。

児童生徒は1人1台端末を活用してさまざまな検索行動をしており、自殺に関連したワードが調べられているという報告もあります。当法人はこれまでの事業展開で培ったノウハウを活用することで、「リスクの高い生徒にアプローチができないか」と考え、1人1台端末向けのブラウザ拡張機能「SOSフィルター」を開発しました。

<団体概要>

設立:2014年7月18日

代表理事:伊藤次郎

本部所在地 : 東京都新宿区西新宿7丁目17番7号 廣田ビル401号室

事業内容 : 自殺リスクが高い人々への直接的・間接的な支援、また自殺予防の啓発、支援ネットワーク構築、社会に対する提言など、自殺予防に関するあらゆる取り組みを行う。

URL:https://ova-japan.org/

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会社概要

特定非営利活動法人OVA

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URL
https://ova-japan.org/
業種
医療・福祉
本社所在地
東京都新宿区西新宿7丁目17番7号 廣田ビル401号室
電話番号
03-4233-0771
代表者名
伊藤次郎
上場
未上場
資本金
-
設立
2014年07月