BPO放送倫理検証委員会、テレビ朝日『報道ステーション』「川内原発報道」に関する意見を公表。「客観性と正確性を欠き、放送倫理に違反している」
放送倫理・番組向上機構[BPO] の放送倫理検証委員会(川端和治委員長)は、審議していたテレビ朝日『報道ステーション』「川内原発報道」に関する意見(委員会決定第21号)をまとめ、2015年2月9日、記者会見して公表しました。「竜巻と火山の質問を取り違えて原子力規制委員会委員長の発言を放送したのは事実と異なる」「委員長の発言をめぐる編集についても、実際の質疑応答とは異なる印象を与え、視聴者の誤解を招いた」などとして、「客観性と正確性を欠き、放送倫理に違反している」と指摘しました。
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■ 概要
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テレビ朝日の『報道ステーション』(2014年9月10日放送)で、川内原発をめぐる原子力規制委員会の記者会見での質疑応答の内容を誤って伝えた事案。原子力規制庁から出された抗議を受けてテレビ朝日が社内調査をした結果、事実誤認と不適切な編集が判明した。テレビ朝日は原子力規制委に「あってはならない重大なミスであり、不適切な編集」と謝罪するとともに、9月12日放送の同番組でメインキャスターが訂正とお詫びをした。
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■ 委員会の判断
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本件放送において竜巻と火山の質問を取り違えて田中俊一委員長の発言をVTRで使用したことは、明らかに事実と異なる。さまざまな理由が重なったにせよ、やむを得なかったと斟酌(しんしゃく)すべき事情は見当たらない。委員会は、客観性と正確性を欠き、放送倫理に違反していると判断する。
田中委員長の発言をめぐる編集については、実際の質疑応答とは異なる内容を伝え、視聴者の誤解を招いた。取材対象の田中委員長に対してもフェアな報道姿勢とは言いがたい。2つの質問について回答を拒否したような発言をつなげたVTR原稿や編集に対し、番組関係者の大半がその不自然さに気づかなかった事態も深刻に受け止める必要があるだろう。委員会はこの不適切な編集についても、客観性と正確性、公正性を欠いた放送倫理違反と判断する。
局側の事後の対応については迅速で、適切だったと認められる。再発防止策はかなり具体的であり、実践的である。本件放送の誤りを手痛い教訓として生かそうとする真摯な姿勢がくみ取れる。
社内調査チームは本件放送の誤りを幅広い観点から検証。その結果、各番組で行われている分業体制の効果とリスクは本件放送のケースと同様であることがわかった。今後は、番組ごとに分業体制の問題点を改めて検証し、再発防止に努めるという。報道局全体で教訓を共有し、改善を図る取り組みととらえられる。
分業化の実態は局や番組によって異なるだろうが、テレビ朝日以外でも分業体制が進んでいるに違いない。それだけに、本件放送の誤りと教訓、再発防止策はひと事ではないだろう。
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■ おわりにー「萎縮」ではなく「前進」を
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委員会で個々の事案を審議(場合によっては審理)の対象とするかどうか議論する際、審議入りが当該局にどんな影響を与えるかも判断材料のひとつになることが多い。
審議入りすると、当該局は委員会からさまざまな資料の提出や関係者への聴き取りなどを求められ、コンプライアンス担当部門だけではなく、関係部署も人手と時間をそれに割かなければいけなくなる。これだけでもかなりのプレッシャーになると推察されるが、委員会が常に懸念しているのは、審議入りと委員会決定が放送の現場にある種の萎縮作用を及ぼすことである。
当委員会も含めた放送倫理・番組向上機構(BPO)の役割は言うまでもなく、「放送・報道の自由」を堅持するために、当該局はもとより放送界全体に「自主・自律」の対応を促し、番組の内容を向上してもらうことである。委員会での審議入りや委員会決定が現場の萎縮につながったとしたら、それは本末転倒と言われても仕方がないだろう。
原発再稼働の是非について、新聞などの論調や国民の意見は大きく分かれている。しかし、国際社会に衝撃を与えた福島第一原発の過酷事故を経験した今、地震や津波だけではなく、火山などのさまざまなリスクに対する原子力規制委の審査基準は適切か、国や地方自治体、電力会社の備えは万全かと、疑問や懸念を投げかけることはテレビ報道、ひいてはジャーナリズム全体の重要な役割のひとつではないか。
そういう意味で、テレビ朝日報道局の一人ひとりはこの事案で萎縮することなく、失敗から学んだ教訓を血肉化して、今後の報道に当たってほしい。
視聴者の信頼を回復する道は、前へ進むことによって開かれる。
■委員会決定の全文はこちらhttp://www.bpo.gr.jp/?p=7987&meta_key=2014
<参考資料>
「放送倫理検証委員会」運営規則 http://www.bpo.gr.jp/?page_id=903
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■ 放送倫理・番組向上機構 概要
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名称: 放送倫理・番組向上機構[BPO]
放送事業の公共性と社会的影響の重大性を踏まえて、正確な放送と放送倫理の高揚に寄与すること
を目的とした非営利・非政府の団体。言論・表現の自由を確保しつつ、視聴者の基本的人権を擁護
するため、放送への苦情や放送倫理上の問題に対応する独立した第三者機関で、民放連およびNHK
によって設置され、以下の三委員会から構成される。
委員会:放送倫理検証委員会
放送と人権等権利に関する委員会(放送人権委員会)
放送と青少年に関する委員会(青少年委員会)
住所 :東京都千代田区紀尾井町1-1 千代田放送会館
理事長:飽戸 弘
URL :http://www.bpo.gr.jp/
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■ 概要
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テレビ朝日の『報道ステーション』(2014年9月10日放送)で、川内原発をめぐる原子力規制委員会の記者会見での質疑応答の内容を誤って伝えた事案。原子力規制庁から出された抗議を受けてテレビ朝日が社内調査をした結果、事実誤認と不適切な編集が判明した。テレビ朝日は原子力規制委に「あってはならない重大なミスであり、不適切な編集」と謝罪するとともに、9月12日放送の同番組でメインキャスターが訂正とお詫びをした。
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■ 委員会の判断
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本件放送において竜巻と火山の質問を取り違えて田中俊一委員長の発言をVTRで使用したことは、明らかに事実と異なる。さまざまな理由が重なったにせよ、やむを得なかったと斟酌(しんしゃく)すべき事情は見当たらない。委員会は、客観性と正確性を欠き、放送倫理に違反していると判断する。
田中委員長の発言をめぐる編集については、実際の質疑応答とは異なる内容を伝え、視聴者の誤解を招いた。取材対象の田中委員長に対してもフェアな報道姿勢とは言いがたい。2つの質問について回答を拒否したような発言をつなげたVTR原稿や編集に対し、番組関係者の大半がその不自然さに気づかなかった事態も深刻に受け止める必要があるだろう。委員会はこの不適切な編集についても、客観性と正確性、公正性を欠いた放送倫理違反と判断する。
局側の事後の対応については迅速で、適切だったと認められる。再発防止策はかなり具体的であり、実践的である。本件放送の誤りを手痛い教訓として生かそうとする真摯な姿勢がくみ取れる。
社内調査チームは本件放送の誤りを幅広い観点から検証。その結果、各番組で行われている分業体制の効果とリスクは本件放送のケースと同様であることがわかった。今後は、番組ごとに分業体制の問題点を改めて検証し、再発防止に努めるという。報道局全体で教訓を共有し、改善を図る取り組みととらえられる。
分業化の実態は局や番組によって異なるだろうが、テレビ朝日以外でも分業体制が進んでいるに違いない。それだけに、本件放送の誤りと教訓、再発防止策はひと事ではないだろう。
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■ おわりにー「萎縮」ではなく「前進」を
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委員会で個々の事案を審議(場合によっては審理)の対象とするかどうか議論する際、審議入りが当該局にどんな影響を与えるかも判断材料のひとつになることが多い。
審議入りすると、当該局は委員会からさまざまな資料の提出や関係者への聴き取りなどを求められ、コンプライアンス担当部門だけではなく、関係部署も人手と時間をそれに割かなければいけなくなる。これだけでもかなりのプレッシャーになると推察されるが、委員会が常に懸念しているのは、審議入りと委員会決定が放送の現場にある種の萎縮作用を及ぼすことである。
当委員会も含めた放送倫理・番組向上機構(BPO)の役割は言うまでもなく、「放送・報道の自由」を堅持するために、当該局はもとより放送界全体に「自主・自律」の対応を促し、番組の内容を向上してもらうことである。委員会での審議入りや委員会決定が現場の萎縮につながったとしたら、それは本末転倒と言われても仕方がないだろう。
原発再稼働の是非について、新聞などの論調や国民の意見は大きく分かれている。しかし、国際社会に衝撃を与えた福島第一原発の過酷事故を経験した今、地震や津波だけではなく、火山などのさまざまなリスクに対する原子力規制委の審査基準は適切か、国や地方自治体、電力会社の備えは万全かと、疑問や懸念を投げかけることはテレビ報道、ひいてはジャーナリズム全体の重要な役割のひとつではないか。
そういう意味で、テレビ朝日報道局の一人ひとりはこの事案で萎縮することなく、失敗から学んだ教訓を血肉化して、今後の報道に当たってほしい。
視聴者の信頼を回復する道は、前へ進むことによって開かれる。
■委員会決定の全文はこちらhttp://www.bpo.gr.jp/?p=7987&meta_key=2014
<参考資料>
「放送倫理検証委員会」運営規則 http://www.bpo.gr.jp/?page_id=903
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■ 放送倫理・番組向上機構 概要
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名称: 放送倫理・番組向上機構[BPO]
放送事業の公共性と社会的影響の重大性を踏まえて、正確な放送と放送倫理の高揚に寄与すること
を目的とした非営利・非政府の団体。言論・表現の自由を確保しつつ、視聴者の基本的人権を擁護
するため、放送への苦情や放送倫理上の問題に対応する独立した第三者機関で、民放連およびNHK
によって設置され、以下の三委員会から構成される。
委員会:放送倫理検証委員会
放送と人権等権利に関する委員会(放送人権委員会)
放送と青少年に関する委員会(青少年委員会)
住所 :東京都千代田区紀尾井町1-1 千代田放送会館
理事長:飽戸 弘
URL :http://www.bpo.gr.jp/
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