これからの地域社会に必要な要素は、「傾ける耳」「涙する目」「差し伸べる手」!
~エコノミストの浜矩子氏をはじめ地域活性化に取り組む専門家が議論を展開~
全労済グループのシンクタンク事業を担う全労済協会(一般財団法人 全国勤労者福祉・共済振興協会 理事長:髙木 剛)では、去る2015年10月31日(土)、東京・有楽町の朝日ホールにおいて、「都市と地方の『地域の活性化』~コミュニティ再生と地方創生~」をメインテーマにシンポジウムを開催いたしました。
この度のシンポジウムには、同志社大学大学院ビジネス研究科教授でエコノミストの浜矩子氏のほか、地域の活性化に取り組み、最前線で活躍されている方々にご参加いただき、政府の掲げる「地方創生」と全国の自治体で進行する「地方創生総合戦略」などが抱える課題とともに、今後さらに高齢化が進む日本において、「地域」で暮らす私たち一人ひとりができることなどを中心に議論が展開されました。
当日は、約500名もの多くの聴講者が来場し、都市と地方の「地域の活性化」について皆様にも考えていただくシンポジウムとなりました。
基調講演で浜矩子氏は、“「国家」の存在感が希薄になっている今、グローバル
社会が進行するなかを生き抜くためには、地域社会や地域共同体がもっと前面に出ていくべきである。今の地域社会は、多くの権限を国家に委譲しすぎており、それらを市民の手に取り戻していくことが必要だと感じる。”また、“高齢化社会とは賢い大人の社会であるはずだと思う。そして「大人の感性」を持つことが
大切。経済社会を真っ当な方向に持っていくために必要な道具は『傾ける耳』、『涙する目』、『差し伸べる手』。この3つが成熟した社会に必要な要素
であり、これからの地域社会を創る大きなポイントである。”と語られました。
ディスカッションの冒頭で岩本悠氏は、島根県でご自身が関わられた例を挙げ、“地域のまちづくりについて、原点となるのはその地域の人たちの覚悟。今後は、グローバルな視点を持ちながら、地域にあるものを活かし、なりわいや事業をつくることのできる次の世代を育てていくことが肝要になってくる。”と語られ、都市部の子どもの地方留学や、子育て世代の教育移住といった新たな人の流れもつくっていきたいという展望について話されました。
次に、岩手県紫波町で公民連携事業に関わっている岡崎正信氏は“人口が減少する社会にあり、人が減れば地域の税収は減る。そのためこれからは稼ぐプロである民間に委ねて稼いでいけるような仕組みづくりを考えなければならない。”と述べられました。そして、“いろいろな価値観、多様性がある成熟社会に必要なのは、個人個人がどう幸せを感じていくかであり、これは時代とともに変化していくものである。オガールプロジェクトの活動でつくった広場などの施設も、その時々のニーズにあわせて新しい使い方を探ってほしい。”と語られました。
最後に発言された法政大学教授の保井美樹氏は、“地方でも都市部でも、公共施設を民間で管理する例が増えており、こうした空間を通じて地域経済の発展や生活の質の向上を実現させるためにも、地域住民、事業者、地権者などそのエリアに直接利害を有する人がつながりを持って、空間の使い方を決めていくことが大切である。”と述べられました。また、“若い人たちの地域で新しいなりわいをつくるチャレンジを高齢者が地域組織から支援する、そういった地域づくりができればよい。”とも提言されました。
パネルディスカッションは、法政大学名誉教授の岡﨑昌之氏のコーディネイトのもと、岩本氏、岡崎氏、保井氏より、それぞれの活動や研究に基づく大変貴重な意見や提言がされ、そこに浜氏と岡﨑氏がエッセンスを加える形で、これからの日本、そして地域社会のあり方について議論を展開し、約100分が瞬く間に過ぎたひと時でした。
*このシンポジウムの詳しい内容は、全労済協会ホームページに掲載する予定です。
http://www.zenrosaikyokai.or.jp/think_tank/
<開催されたシンポジウムの概要>
タイトル: 「都市と地方の『地域の活性化』~コミュニティ再生と地方創生~」
日 時: 2015年10月31日(土)13:00~16:30
会 場: 有楽町朝日ホール
参加人数: 約500名
開催内容: <基調講演>
演 題: 「超高齢社会における地域社会のあり方」
講 師: 浜 矩子 氏(同志社大学大学院ビジネス研究科教授)
<パネルディスカッション>
演 題 : 「地域は消えない ~地方と都市のコミュニティ再生」
パネリスト: 岩本 悠 氏(島根県教育魅力化特命官)
岡崎 正信 氏(岩手県紫波町オガールプラザ株式会社代表取締役)
保井 美樹 氏(法政大学現代福祉学部・大学院人間社会研究科教授)
浜 矩子 氏
コーディネーター: 岡﨑 昌之 氏(法政大学名誉教授)
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