障害者の地域生活を支援する重度訪問介護、関西2府4県の利用格差が、最大4.8倍。
利用者”ゼロ”の市区町村は、約3割。関東よりも「利用率が約2倍」ある一方で、「平均支給時間は3/4」。
障害者介護を中心とした福祉の現場から人の「活きる」を考える土屋総合研究所(所長:吉田政弘)は、関西(2府4県)の全198自治体に対して、「重度訪問介護の地域格差に関する実態調査(第二回)」を実施しました。
※重度訪問介護とは
重度の肢体不自由または重度の知的・精神障害があり常に介護を必要とする方に対して、ホームヘルパーが自宅を訪問し、入浴、排せつ、食事などの介護、調理、家事など、生活全般にわたる援助や外出時における移動中の介護を総合的に行い、地域生活を支援するもの。(先天性の脳性まひ等、脳梗塞などの後発の脳血管性障害、事故等による脊髄頸椎損傷や遷延性意識障害、そしてALSや筋ジストロフィー、パーキンソンなどの神経筋難病疾患、知的障害者の方など)
・障害福祉サービスについて(厚生労働省 )
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/naiyou.html
■調査背景
現在では、障害のある方の施設から地域生活への移行を目指していますが、重度障害のある方の地域生活を支援する「重度訪問介護」事業の地域毎の利用格差とその可視化が問題となっています。
これを受けて、私たちは昨年の11月に、関東地方を対象とした第一回目となる「重度訪問介護の地域格差に関する実態調査」を行い、1都6県の利用格差が最大18倍であることが明らかとなりました。
そこで、今回の調査では、第一回目と同じく各自治体における重度訪問介護の利用人数や支給時間、サービス提供が可能な登録事業者数などを実際に可能な限りヒアリングしながら、関西圏の2府4県における地域格差の実態を調査いたしました。
■調査結果の要約
- ①利用人数の地域格差:全体のうち「利用者がいない」市区町村は約3割(32.7%)で、和歌山県は6割以上(66.7%)。「人口あたりの重度訪問介護利用率」が最も高い大阪府(0.052%)と最も低い滋賀県(0.013%)の差は※4倍に。
- ②支給時間の地域格差:「一人当たりの支給時間/月」が「200時間未満」の市区町村が約8割(76.9%)。平均値が最も高い「大阪府」と最も低い「滋賀県」の格差は、3.5倍に。
- ③登録事業者数の地域格差:全体のうち「利用者数よりも登録事業者数の方が多い」市区町が、約7割(71.6%)。「利用者一人あたりの登録事業者数」の格差は、最大4.8倍に。
■調査結果の概要
- ①利用人数の地域格差:全体のうち「利用者がいない」市区町村は約3割(32.7%)で、和歌山県は6割以上(66.7%)。「人口あたりの重度訪問介護利用率」が最も高い大阪府(0.052%)と最も低い滋賀県(0.013%)の差は※4倍に。
全体のうち「重度訪問介護の”利用者がいない”市区町」は約3割(32.7%)で59市区町村あったことがわかりました。また、最も「利用者がいない」市区町村の割合が多かったのは「和歌山県(66.7%)」で、33.3%の市区町村でしか重度訪問介護サービスが利用されていませんでした。一方で、滋賀県、大阪府では、約85%の市区町村で重度訪問介護サービスが利用されており、都道府県間の差が最大で2.6倍であることが明らかになりました。
また、「人口あたりの重度訪問介護利用率(重度訪問介護利用者数÷都道府県人口)」が最も高かったのは「大阪府(0.052%)」で、最も低かったのは「滋賀県(0.013%)」となり、その格差は※4倍となりました。
※計算対象の小数点第4以下を四捨五入
- ②支給時間の地域格差:「一人当たりの支給時間/月」が「200時間未満」の市区町村が約8割(76.9%)。平均値が最も高い「大阪府」と最も低い「滋賀県」の格差は、3.5倍に。
全体における重度訪問介護の「一人当たりの支給時間/月」の平均値は、5.1日分に相当する122.4時間であることがわかりました。「一人当たりの支給時間/月」の平均値が最も高かったのは「大阪府(201.2時間=8.4日)」で、最も低かったのが「滋賀県(56.7時間=2.4日)」となり、その格差は3.5倍となりました。
さらに、全体のうち「一人当たりの支給時間/月」が「50時間未満」の市区町村の割合が41.3%となっており、76.9%が「200時間未満」であることが明らかとなりました。
- ③登録事業者数の地域格差:全体のうち「利用者数よりも登録事業者数の方が多い」市区町が、約7割(71.6%)。「利用者一人あたりの登録事業者数」の格差は、最大4.8倍に。
重度訪問介護の「利用者数よりも登録事業者数の方が多い」市区町は、全体で71.6%あることがわかりました。また、その割合が最も高かったのは「大阪府(87.8%)」で、最も少なかったのが「和歌山県(45.8%)」となりました。
続いて、具体的な「利用者一人あたりの登録事業者数」については、全体では0.7事業者となっており、全体的に登録事業者が不足している現状がうかがえます。一方で、「奈良県(2.4事業者)」と「滋賀県(1.4事業者)」においては、利用者数よりも登録事業者数が多い実態が明らかとなり、都道府県間の最大格差が4.8倍となりました。
■総括:「関東」と「関西」における利用格差の比較
◎類似点
今回の調査では、昨年の11月に発表した関東での調査結果と同じように、各都道府県別に数値のバラつきがあり、重度訪問介護の利用格差がうかがえる結果となりました。加えて、両地域に共通した課題としては、「重度訪問介護の利用者がいない市区町」が約3割を占めていることや「利用者数より登録事業者数の方が多い市区町村」が71.5%と多い点が挙げれます。
◎相違点
一方で、関西ではそもそもの回答率が高く、利用者数の回答率は関東の1.15倍(92%)でした。また、「人口あたりの重度訪問介護利用率」は、関東が0.015%に対して約2倍となっており、大阪府も東京都(0.025%)の約2倍の水準でした。しかし、「一人当たりの支給時間/月」の平均値は、関東(162.2時間)の0.75倍となっており、「200時間未満」の市区町村の割合が関東(68.8%)よりも8.1%多い結果となりました。
・前回調査の詳細:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000084582.html
■関係者コメント
- 土屋総合研究所 所長 吉田政弘
前回の関東圏における調査と今回の関西圏における調査を比較すると、関西圏の方が関東圏よりも「広く」利用されているが、1人あたりの支給時間は「短い」という状況が窺えます。
関西圏では比較的広く利用されていることもあり、1人当たりの事業者数が1事業所を下回っていることから、サービス提供事業者の確保がより困難な状況も推測されます。重度訪問介護の利用のしやすさと併せ、サービス提供事業者の確保のしやすさも視野に入れて検討していく必要があると言える結果となりました。
■調査概要
調査実施期間:2022年12月18日〜2023年2月10日
調査対象:関西地区の全ての市町村(2府4県:198市町村)
有効回答数:項目によるため詳細は各グラフを参照
調査方法:電話調査及び各自治体の公式発表データから収集・分析
※調査方法に関する補足
・原則として令和3年度のデータを使用しておりますが、電話調査にて収集が不可能だった場合のみ、各自治体の公式発表データから令和元年〜令和2年のデータを収集しています。
・上記の調査段階を経てもなおデータが揃わなかった場合に「無回答」としています。
・必ずしも同年度のデータではありませんが、課題の全体像を掴んでいただければ幸いです
■株式会社土屋とは
日本最大級の重度訪問介護事業所「ホームケア土屋」を運営。 住み慣れたご自宅や地域で自分らしく生き、暮らすことができるよう、現在北海道から沖縄まで、42都道府県にて、訪問介護、訪問看護、ならびに資格研修事業を展開し、主に在宅生活される障害をお持ちの方々、ご高齢の方々、約750名のクライアントの皆様の在宅生活を24時間365 日サポートしています。
■株式会社土屋の詳細
・会社名 :株式会社土屋
・所在地 :岡山県井原市井原町192-2 久安セントラルビル2F
・代表取締役:高浜 敏之
・HP :https://tcy.co.jp/
・従業員数 :2076名(2022年9月末現在)
・設立 :2020年8月
・事業内容 :
障害福祉サービス事業及び地域生活支援事業、
介護保険法に基づく居宅サービス事業、
講演会及び講習会等の企画・開催及び運営事業、研修事業、訪問看護事業
土屋総合研究所
https://tcy-ri.com/
【本件に関するお問い合わせ先】
PR:MAIL:akio.kusuhashi@ako-inc.com 担当 楠橋(くすはし)
研究関係者からのお問い合わせ:MAIL:souken@care-tsuchiya.com 担当 吉田
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