地方共生型高効率データセンターモデルを考案
~次世代型データセンタープロジェクト第2弾:生成AI時代のデータセンターにおける電力・立地課題への対応と、冷却システムで従来比50%超の省エネを両立する新たな取り組み~
株式会社NTTファシリティーズ(本社:東京都港区 代表取締役社長 川口 晋 以下、NTTファシリティーズ)は、生成AIの急速な発展に伴い需要が拡大するデータセンターにおいて、東京・大阪への立地の二極集中を解決し、地域循環型社会の実現へ貢献する新たなデータセンターモデルを考案しました。

概要
近年、生成AIの普及やICTサービスの高度化により、データセンターの建設需要は拡大しています。一方で、国内のデータセンターは東京・大阪近郊に立地が集中しており、用地確保の困難さや電力供給インフラ不足が深刻化し、政府はデータセンターの地方分散を方針として掲げています*1。さらに資源エネルギー庁が電力利用効率(PUE*2)1.3以下の達成を義務付ける動きが進むなど*3、データセンターの省エネ化・高効率化への要請も高まっています。
こうした諸課題を受け、NTTファシリティーズは「地方共生型高効率データセンターモデル」を考案しました。本モデルでは、サーバーから発生する廃熱を周辺の住宅やオフィス、ビニールハウス、温浴施設などへ供給し、地域のエネルギー循環に活用します。建物内部には自然通風による冷却効果を持つ大規模排気塔を設け、廃熱を中央に集約し効率的に冷却します。これにより、冷却に必要な電力を削減し、従来の冷却システムと比較して50%以上の省エネルギーと周辺環境への熱影響の低減を両立します。
さらに、再生可能エネルギー発電所や蓄電所との連携による電力需給制御、災害時の防災拠点への電源供給も視野に入れ、環境性能とレジリエンスを兼ね備えた持続的なデジタルインフラをめざします。
地方共生型高効率データセンターの概要
1.地域と共存共生するデータセンター
本モデルでは、データセンターを地域の中核施設と位置付け、廃熱利用や災害時の電力供給を軸にした共生モデルを構想しています。


(1)廃熱活用
サーバー冷却で発生した廃熱を周辺の住宅やオフィスビルの暖房・給湯やビニールハウス等へ供給し、地域全体でエネルギーを循環利用する仕組みを構想しています。IT容量36MW規模のデータセンターにおいて、戸建住宅2,300戸、オフィスビル70,000㎡、ビニールハウス約27,000㎡程度を賄うポテンシャルがあると試算しており、データセンターの廃熱を地域レベルで面的に活用します。
また、廃熱の一部はデータセンター内のサウナ施設に利用し、その動線にデータセンターのモデルルームを設置することで、来訪者にデータセンターの仕組みと地域貢献を体感していただくことを想定しています。


(2)防災拠点機能
データセンター内には停電時にも安定運用を継続できるようにするため、非常用発電機やUPS(無停電電源装置)を設置しています。災害時にはデータセンター内の電源設備の活用に加えて、周辺の再生可能エネルギー発電所や蓄電所との連携、他エリアのデータセンターへのワークロードシフト*4等により、災害時の地域の防災拠点への電源供給を可能にします。

(3)共創施設の設置
データセンターは高いセキュリティや安定した電力供給に加え、AIをはじめとする先端のICT環境を備えており、研究・開発を行う拠点として理想的です。これまで地方では、研究拠点や高度なデジタルインフラを併設した施設は、資金面や運用コスト等のハードルから実現が難しく、大学や企業が単独で設置するには負担が大きいという課題がありました。このような課題を解決するため、本モデルではデータセンター内に研究施設を併設し、地域の企業・大学との共同研究を推進していくことを構想しています。共創施設の設置により、地域投資の促進や雇用機会を創出します。

(4)周辺環境を冷却する外装デザイン
本モデルは外装システム「Multi Porous Lattice™*5」によって、周辺環境を冷却することを構想しています。建物外装の多孔質セラミックタイルに雨水を利用した散水を行い、打ち水効果でデータセンター周囲を冷却し、快適な環境を作り出します。
多孔質セラミックタイルは斜め格子状に二重に組んだ引張材(テンションロッド)で支持し、内部の機能に応じて密度を変化させています。
格子状のデザインは視覚的に軽やかで、空調機や非常用発電機の給気に必要な空気や風を通した上で、騒音抑制や日射抑制、視線制御などの多岐に渡る機能を有し、地域環境へ貢献する大規模データセンターに適した外装デザインとしています。


2.地域環境と共生する、業界トップクラスのPUE1.14を実現する省エネ冷却モデル
本モデルでは、AI専用データセンターとして1ラックあたり200kWの高発熱サーバーを有するデータホールを想定し、周辺環境への影響を抑えつつ、高効率にサーバーの冷却を実現する独自システムを考案しました。
(1)自然通風を活かした冷却塔システム
建物中央部に廃熱を集約し、建物1階部分の免震層に生じる空間から気流を生み出す「ヴォイド空間(Hyperbolic Void™*6)」を構築することで、自然通風により廃熱を冷却しながら放出します。また、自然通風により生み出された上昇気流を活用し、散水と組み合わせて液冷サーバー用の冷却液供給に利用します。液冷サーバー用の冷却水の供給は、従来冷却塔等の熱源機器が担ってきましたが、この熱源機器としての機能を、設備ではなく建築の一部分として再構築する新たな取り組みです。

(2)直接蒸発式外気冷房(DEC)の採用
生成AIデータセンターの冷却は、一般にサーバーへ冷却液を送り込む「液冷」と、室内へ冷却された空気を送り込む「空冷」を組み合わせて行います。この空冷空調機について、空気を循環させる従来の空調機(AHU:Air Handring Unit)ではなく、室内に外気を取り入れる直接蒸発式外気冷房(DEC:Direct Evaporative Cooling)を採用することで、AHUと比較して約70%の省エネルギーを実現します。

冷却塔システムの採用、DECの採用のほか、銅管を建物外周に張り巡らせ、外気による自然冷却を行うプレクールコイルウォール®*7技術の採用や、IT用電力関連設備の屋外化、直流給電の採用による電力変換ロス低減等の対策により、PUE=1.14、50%超の省エネを実現します。
今後の計画
今後、本モデルを一つの参考例として、地方共生型データセンターの実現に向けて、データセンター事業者や自治体、関係機関と意見交換を重ねてまいります。また、AI需要の更なる高まりを見据え、NTTが開発を進めるIOWN技術と組み合わせることで、再生可能エネルギーを活用した地方共生型のデータセンターの実現に向けたさまざまな検討を進めていきます。
NTTファシリティーズは、データセンターの高発熱・高密度化への対応、カーボンニュートラルの実現、地域との調和など複数の視点から理想的なデータセンター像を提示し、設計・構築から空調や電力機器の販売、保守*8まで一貫して取り組むことで、ICTサービスを支えながら、地域循環型社会の実現に、サステナブルな未来づくりに挑戦し、貢献してまいります。
注釈・用語説明
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*1 ワットビット連携官民懇談会取りまとめ1.0、統合イノベーション戦略2024およびデジタル田園都市国家構想総合(令和5年改訂版)戦略による
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*2 PUE: Power Usage Effectivenessの略称、データセンターにおける設備のエネルギー効率を示す指標の一つ。データセンター全体で消費される電力を、データセンター内のIT機器で消費される電力で割った数字で示される。1.0に近いほど、IT機器以外に消費している電力が少ないことから、データセンターとして理想的であることを示している。
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*3 資源エネルギー庁2025年度第2回 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 省エネルギー小委員会 工場等判断基準ワーキンググループ 「資料3省エネ法に関する措置について」(2025/5/14)による
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*4 ワークロードシフト: 災害や障害の発生時に、データセンターで処理しているシステムや業務(ワークロード)を、他地域のデータセンターへ自動的または迅速に切り替える仕組み。事業継続性(BCP)を高める重要な技術のひとつ。
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*5 Multi Porous Lattice™:「Multi Porous Lattice™」は商標登録出願中です
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*6 Hyperbolic Void™:「Hyperbolic Void™」は商標登録出願中です
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*7 プレクールコイルウォール®:「プレクールコイルウォール®」はNTTファシリティーズの登録商標です
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*8 データセンターの保守業務はNTTアノードエナジー社により行います。
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