【調査報告書】「社会経済的要因と女性の健康に関する調査提言」を公表
調査の結果、女性の健康問題によって日本全体では約3,628億円/年の損失がもたらされており、また女性の健康に対する支援状況にも様々な格差があることがわかりました。
調査結果の概要と提言は以下の通りです。
月経随伴症状や更年期症状による困難感と受診への心理的・社会的障壁
女性回答者(N=4,950)のうち81.2%が女性の健康問題を理由に過去3か月間で日常の様々な活動に影響を感じていた。
女性回答者のうち婦人科等を定期受診しているものは5.3%であり、11.3%は月経随伴症状や更年期症状により不調を感じた際に、受診や治療が必要であると感じていたにもかかわらず「月経は我慢するもの」という認識や時間的制約により受診抑制を経験していた。
女性回答者のうち、現在産婦人科医に相談していると回答した人は16.1%であったが、今後の相談を希望すると回答した人は25.6%であった。また、受診抑制の経験がある人ほど、予防や治療・受診すべき症状について知識を得たいという希望が多かった。
月経随伴症状や更年期症状が仕事や経済に与える影響(労働生産性の損失)
月経随伴症状や更年期症状により、日本の女性労働者全体に換算した場合に、アブセンティーズム*によって約3,628億円/年の生産性損失が生じている。
女性回答者全体のうち、就業していると回答した女性では(N=3,324)79.6%が仕事の生産性への影響を感じており、平均で約1,024円/時間の損失が生まれていた。特に正規雇用者において、欠勤等による損失が大きかった。
「受診抑制」の経験者ほど、欠勤等を経験しており、労働生産性の損失が大きい。
*アブセンティーズム:健康問題による仕事の欠勤(病欠)
生理休暇制度に関する企業間、業種間等による格差、性別間での認識差
従業員数が少ない企業で働く人ほど、「生理休暇が整備されていない」という回答が多く、実際に利用する人も少なかった。
生理休暇の整備状況についての回答に地域差はあまりなかったが、回答者が正社員か否かによって整備状況の回答に大きな差があった。
生理休暇が整備されている企業においても、休暇が有給と無給の場合とで実際に休暇を取得したと回答する割合が異なっていた。
管理職の回答者は48.2%が「生理休暇制度がある」と回答していたが、一般職員、特に工場などの現場労働、販売・サービス業に就いている回答者では、制度があると回答した人はそれぞれ21.9%、17.2%であり、管理職と一般職員の間で認識に差異があった。管理職が思っているほど、一般職員の間に生理休暇の整備状況は認識されていない。
女性の健康に関する対処行動に与える親の認識の影響
自分の親の月経等に対する認識が「『月経痛は我慢するもの』『LEP(Low dose Estrogen Progestin治療用ピル)を飲むことは恥ずかしい』であると思う」と回答した人ほど、受診抑制を経験していた。
OTC 医薬品(Over The Counter: 市販薬)の使用頻度に関しては、自分の親の認識が「『月経痛は我慢するものだ』であると思う」と回答した人ほど使用頻度が高く、月経痛への対処方法として受診ではなく市販薬を使用している人が多かった。
親の月経や治療用ピル利用に対する認識が、子供の受療行動(女性特有の健康課題がある際に、医療機関を受診したりOTCを利用するか)に影響を与えていることが明らかになった。
教育機会と女性の健康に対する理解
職場研修等の形で、女性の健康に関する知識を得る機会は限られており、管理職、農林水産業従事者は、機会があると回答した人が2割程度であったが、その他の職種では1割前後であり、全体としても非常に低かった。
学校教育の場で、女性の健康に関する知識を得る機会があった、と回答した人は、全体の24.7%であった。
多くの男性回答者が、女性の健康問題を「わからない」こととしてとらえていた。一方で女性回答者の多くは、女性の健康問題について、「職場の理解があるとは思わない」と回答し、認識に差異があった。
学校教育や職場研修で女性の健康について知識を得る機会があると回答した人ほど、生理休暇は性差を考え公平だと回答していた。
自身の職場は、女性の健康に対して理解があると思うと回答した人の職場ほど、実際に生理休暇を利用したと回答する人が多かった。従業員数300人以下の企業で働く人については、生理休暇を不公平と回答する人が多かった。
本調査結果を受けた今後推進すべき4つの提言
提言1.女性の健康への取り組みは、女性のセクシャル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ推進の観点に加えて、社会経済的損失抑制の観点からも重要であることを認識する
提言2.未だ多くの女性が月経困難症や更年期による症状に悩まされており、また受診抑制が起きている現状を鑑み、医師による早期治療を受けられるよう、プライマリケア・かかりつけ産婦人科の取組を推進する
提言3.企業間、業種間、職種間での格差、性別間での認識差を是正する
提言4.学校教育の中で、包括的性教育の機会を作る。また乳幼児健診や職場研修などのタイミングで親世代への再学習の機会を提供する
*アンケート調査概要
調査方法:インターネット調査
調査時期:2022年9月
サンプル数:10,000名
(全回答者: 男女計:10,000 人(男性:5,050人、女性:4,950人、就業回答者: 男女計:7,758 人(男性:4,434 人、女性:3,324 人)
実施主体:特定非営利活動法人 日本医療政策機構
【日本医療政策機構とは】
日本医療政策機構(HGPI: Health and Global Policy Institute)は、2004年に設立された非営利、独立、超党派の民間の医療政策シンクタンク。市民主体の医療政策を実現すべく、中立的なシンクタンクとして、幅広いステークホルダーを結集し、社会に政策の選択肢を提供している。特定の政党、団体の立場にとらわれず、独立性を堅持し、フェアで健やかな社会を実現するために、将来を見据えた幅広い観点から、新しいアイデアや価値観を提供している。日本国内はもとより、世界に向けても有効な医療政策の選択肢を提示し、地球規模の健康・医療課題を解決すべく、活動している。当機構の活動は国際的にも評価されており、米国ペンシルベニア大学のローダー・インスティテュート発表の「世界のシンクタンクランキング報告書」における「国内医療政策」部門で世界2位、「国際保健政策」部門で世界3位に選出されている(2021年1月時点(最新データ)。
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