ロエベ、第1回ロエベ クラフト プライズ受賞者を発表

ドイツ生まれのエルンスト・ギャンパール氏『Tree of Life 2』が大賞を受賞

ロエベは、2017年ロエベ クラフト プライズの受賞者を発表しました。
26名のファイナリストの中からデザイン、建築、ジャーナリズム、ミュージアムのキュレターシップなどの各分野で活躍する第一人者たちで構成される審査員により受賞者として選ばれたエルンスト・ギャンパール(1965年ドイツ生まれ)氏の『Tree of Life 2』に女優のシャーロット・ランプリングよりトロフィーが贈られました。

 

 

審査員が発表した資料の中で、審査員長のアナツ・サバルベアスコア(Anatxu Zabalbeascoa)は選定に至った理由を次のように述べています。
 


「この作品の正式な価値観と社会的なメッセージとの接点の探り方が素晴らしかったからです。この作品は、美しいだけでなく、私たちにリサイクルの価値を教えてくれるオブジェです。その卓越した技量で、倒木を救い出し、自然を蘇らせるということがベースになっています。これは、スタイルとかシグネチャーといったものではなく、際立った個人としての声を育ててきた特殊な能力を持つ才能豊かな職人の作品です。」

嵐によって根元から折れてしまった樹齢300年を超えるオークから切り出したこの大きな木製コンテナは、木そのものの形、亀裂、割れ目などからデザインのヒントを得ています。フィリグリー(金銀線細工)の平行溝を慎重に彫ることで、表面に対するアルチザンとしての技が実証される一方、粘土、土壌、石の粉末を処理したものと木材の自然のタンニン酸とが組み合わされることで、オブジェにふさわしいオーガニックな仕上げがもたらされています。自然の不完全さにみちた彼の自然へのトリビュート作品は、倒れた木のストーリーを永遠のものにしています。

エルンスト・ギャンパール(Ernst Gamperl)
家具づくりの内弟子を経て、木材旋盤加工の熟練工となった後、ドイツとイタリアに自らのスタジオをオープンさせます。彼独自の木材に対する鑑賞力によって独特で特徴的なニッチを彫り出すことにより、その作品は、ヨーロッパ、アジア、アメリカで人気が高まっています。

クリエイティブ ディレクターのジョナサン・アンダーソンは次のように述べています。
「エルンスト・ギャンパール氏の作品には、独特な声を届ける何かがあり、その作品の物性がこれから何年もの時を経て行く中でますます重要になっていくと思います。」

審査員らはまた、2人のファイナリストに特別賞を贈ることを決めました。

その1人が神代良明さんです。
「審査員達は、究極的に実験的な構造であるフォルムを実現するために素材を混ぜ合わせることにより、リスクやイノベーションを受け入れるという彼のリサーチ力を高く評価しました。」

素材と人間との関係を熟考しながら、このガラスボウルは実験のトロフィーとなっています。ガラス粉末と酸化銅粉末を混ぜ合わせ、焼成工程が溶けたガラスと加熱した鉱物から発生するガスとの独特な相互作用を生み出しています。その結果、
はかない光沢が生まれ、それが永続する形の上に枯れた質感を作り出しています。ガラスの繊細さによって作り出された陶器の強さを伝えることで、深みのあるブルーのボウルがラディカルで、深遠で、神々しいまでの意思表示をしています。

神代良明(Yoshiaki Kojiro)
1968年千葉県生まれ。東京理科大学理工学部建築学科卒業後、東京ガラス工芸研究所研究科でアルチザンとしての技に磨きをかけます。彼のガラス工芸に対する統制の取れたアプローチには、自国の文化と研究に対する彼のひたむきさが吹き込まれています。


 

そしてもう1組がアステサニアス・パニクア(Artesanías Panikua)です。
審査員からの発表資料では次のように説明されています。
「2組目の特別賞は、理論的には説明のつかない気持ちの高まりを感じさせることができる作品に贈られます。また、感情的なインパクトとは別に、この作品は受け継がれてきた文化遺産全体を物語り、芸術的な志を持ったクラフトマンシップというものには材料の限界というものがなく、藁もゴールドのように重要なものになれることを実証しています。」

アステサニアス・パニクア(Artesanías Panikua) 
メキシコ・ミチョアカン地区の先住民プレペチャ族の末裔であるこの家族の工房では祖先伝来のクラフトマンシップと神話がすべての作品へと織り上げられます。農作業と魚釣りの合間に、アントニオ・コルネリオ(Antonio Cornelio)さんと妻のヴェロニカ(Verónica)さん、そして2人の娘、ガブリエラ(Gabriela)さんとベルタ(Bertha)さんは、自分たちの家族をはるかに超えるレガシーを発展させています。
何百本もの小麦繊維の撚糸がまとめて織られ、戦いと火を意味するプレペチャ族の太陽神を作り上げています。星とさえずる小鳥の2つのモチーフで飾られることで、クラフトと古代の農業技術とのつながりも示されています。複雑にデザインされた作品は、知識や技術が世代を超えて伝えられてきたこと、昔からのやり方が途切れることなく守り育てられてきたことを実証しています。
 

ロエベ クリエイティブ ディレクターであるジョナサン・アンダーソンに加え、審査員のメンバーには、ハイス・バッカー(ジュエリーアーティスト、ドローグ デザイン共同設立者)、ロルフ・フェールバウム(ヴィトラ創業者、元CEO)、深澤直人(デザイナー、日本民藝館館長)、エンリケ・ロエベ(ロエベ財団名誉プレジデント)、ディヤン・スジック(エッセイスト、デザイン・ミュージアム(ロンドン)館長)、ベネデッタ・タリアブーエ(建築家、プリツカー賞審査員)、ステファノ・トンチ(『W Magazine』編集長)、パトリシア・ウルキオラ(建築家、工業デザイナー)、アナツ・サバルベアスコア(『El País』紙建築・デザイン特派員)らが名を連ねました。
 

 

本日、マドリードで行われたスペシャルセレモニーの際に、名女優シャーロット・ランプリングによって発表された受賞作の作者には、シルバーのトロフィーと賞金5万ユーロが贈られました。
全ファイナリストの作品と共に、受賞者の作品は、2017年4月11日にマドリードでスタートし、その後、ニューヨーク(チャンバー・ギャラリー(Chamber Gallery)2017年5月30日~6月6日)、東京(2017年11月)、ロンドン(サーチ・ギャラリー(Saatchi Gallery)2018年2月22日~26日)と巡回するエキシビションで展示されます。 

ロエベ財団は、現代に生きる職人たちの新規性、卓越性、芸術的価値を世に示し、称えるため、国際的に展開され、1年ごとに受賞者が決まる「ロエベ クラフト プライズ」を2016年に立ち上げました。現在の文化におけるクラフト(工芸)の重要性を認め、その才能、ビジョン、革新への意欲が未来の新しい基準を設定するであろう優れた現役のアルチザンたちを表彰することを目指し、ジョナサン・アンダーソンが1846年にクラフトの協働工房としてスタートしたロエベの創業形態にインスパイアされて発案しました。
「クラフトはロエベの真髄です。メゾンとして私たちは『クラフト』という言葉が持つ最も純粋な意味でモノづくりをしようとしています。そこにこそ私たちの考えるモダニティがあり、クラフトは常に私たちとつながっているのです」とアンダーソンは語ります。
 


日本人ファイナリスト日本人ファイナリスト 井川 健氏
1980年生まれ。京都市立芸術大学大学院美術研究科博士課程修了。佐賀大学文化教育学部美術・工芸講座准教授。‘Line and Surface: VI’, urushi japanese lacquer linen urethane form, 170 x 49 x 32 cm. 2013


日本人ファイナリスト日本人ファイナリスト中川 周士氏の作品
1968年生まれ。伝統的な京都の木工芸を受け継ぐ職人であり作家。有名な桶職人である父・清司氏の手ほどきを受ける。京都精華大学造形学部立体造形卒。-‘Big Trays of parquetry’, wood japanese cedar, 20 x 20 x 1 cm. 3 pieces. 2015



「工芸技法の斬新な適用と芸術性あふれるオリジナルコンセプトを組み合わせること」を唯一の応募資格として、18歳以上のプロのアルチザンから作品が募られました。2017年2月、専門委員会(Experts Panel)が、5大陸75か国に住むあらゆる年齢層(20代から80代まで)の4,000点近い応募作品の中から26名のファイナリストを選出しました。多岐にわたる領域の応募作品には多彩な技法、媒体、表現方法が駆使されていました。

ロエベ クラフト プライズによって、ロエベは、あらゆる形態、あらゆる分野における創造性に長年にわたり取り組んできたことを改めて強く主張しています。ファッションが文化、そして創業以来、ロエベの特徴となっている専門的でかつ最新技術の導入と重要なつながりを持っていることを反映し、アート、クラフト、デザインは、ジョナサン・アンダーソンが指揮するメゾンの今の時代の基礎を成す重要な足場となっています。

第2回ロエベ クラフト プライズの応募は6月にスタートし、受賞者は2018年パリで発表されます。 

審査員講評
ロルフ・フェールバウム(ヴィトラ創業者、元CEO)
「私たちは、現代社会におけるクラフトの意味について非常に深い話し合いを行うことができました。このイベントはそうした話し合いの扉を開くものになるでしょう。」

深澤直人(デザイナー、日本民藝館館長)
「ラディカルなテクニックからハンドクラフト作品の美しさ、素材への畏敬の念まで、かなりのコントラストを選びました。受賞した3作品はいずれも伝統的な職人技というものを再評価するきっかけになるものだと思います。」

ディヤン・スジック(エッセイスト、デザイン・ミュージアム(ロンドン)館長)
「クラフトとは何であるかという伝統的な考え方から、今までとは異なる方向へとクラフトを推し進めて行こうとする試みまで、あらゆるタイプの作品がありました。」
「受賞者の作品には極めて特別なものがあります。それはこの世界に対する責任感で本当の美しさを実証するというものです。」
「クラフトには、祖先の業績の上に何世代にもわたって築かれてきたものから、そしてもう一方では、これまで誰もやってきたことのない何かを新たに創造するというものまで、様々に異なる意味合いが可能です。私たちはそうした両方の可能性に対してオープンな態度で審査に臨みました。」

ベネデッタ・タリアブーエ(建築家、プリツカー賞審査員)
「このエキシビションに展示されているあらゆる作品が驚くべきものでした。受賞作には、木材に新しい命を吹き込むことで、命を失った素材をオブジェへと変貌させる受賞者の類稀なる能力が反映されています。今の時代のクラフトは、様々な方法で解釈することができ、このエキシビション全体がまさにそういった考え方を反映しています。」

ステファノ・トンチ(『W Magazine』編集長)
「私たちは、過去を尊重しながら、クラフトマンシップの未来に貢献するという考え方をとらえたいと望んでいました。」

パトリシア・ウルキオラ(建築家、工業デザイナー)
「私たちは、私たちが今生きている時代というものを考えさせるクラフトを称えたいと思っていました。それは、デジタルとアナロジカルのこの収束だけでなく、素材とフォルムの融合、クラフトマンシップの未来を豊かにしようという態度でもあります。」
        
専門委員会(Experts Panel)
ジョン・アレン(John Allen)テキスタイルデザイナー
クラウディ・カサノバス(Claudi Casanovas)陶芸家
サラ・ディエ・トリル(Sara Die Trill)ロエベ アクセサリー デザイナー
ラモン・プィ・クヤス(Ramón Puig Cuyàs)ジュエリー アーティスト
マルック・サロ(Markku Salo)ガラス アーティスト
アナツ・サバルベアスコア(Anatxu Zabalbeascoa)建築家『El País』紙建築・デザイン特派員

ロエベ財団
ロエベ財団は、1988年、文化財団として、ロエベ創業者ファミリーの第4世代に当たるエンリケ・ロエベ・リンチによって設立されました。
ロエベ財団は、創造性、教育プログラムを促進し、詩歌、舞踏、デザイン、工芸、写真、および建築の各部門の遺産を保護し続けて
います。ロエベ財団は、2002年、スペイン政府による最も権威の高い褒賞であるメリット・ファインアート部門金メダルを受賞しました。

ロエベと文化
ロエベ クラフト プライズは、ロエベがあらゆる形態、あらゆる分野における創造性に長年にわたり取り組んできたことを改めて強く主張するものです。文化はロエベというブランドの中心となる柱です。ファッションの現代生活との欠かすことのできない絆を反映し、アート、デザイン、クラフツマンシップを重視することは、ロエベの再構築に取り組むジョナサン・アンダーソンの基軸となっています。過去3年にわたり、ロエベは、ブランドの価値観を新たに解釈し、拡大させるアーティストやアルチザンたちとの重要なコラボレーション シリーズを展開してきました。ロエベの多彩な側面を示すことに加え、こうした文化的プロジェクトには、創業以来ロエベの特徴となっている知識の移転や協調的精神が反映されています。

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