政治フェイクニュース、80%以上が嘘と見抜けていない実態――国際大学GLOCOM、withコロナ時代のフェイクニュースの実態について研究成果を発表
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(東京都港区、所長:松山良一、以下国際大学GLOCOM)は、15~69歳の男女5,991名へのアンケート調査データをベースとした調査研究レポート「フェイクニュース―withコロナ時代の情報環境と社会的対処―」を発表しました。
※ レポートのダウンロードはこちらから https://www.glocom.ac.jp/activities/media/7119
- レポートサマリー
■ 政治フェイクニュースに接触した人の81.2%が偽情報だと見抜けていない
■ マスメディアに不満がある人は政治フェイクニュースに騙されやすい
■ 新型コロナウイルスフェイクニュースを偽情報と見抜くには情報リテラシー向上が有効
■ フェイクニュース拡散手段として最も多いのが「家族・友人・知り合いに直接話した」
■ 全体の1%以下のスーパースプレッダーがフェイクニュース拡散の約95%を占める
- 調査概要
実査期間:2020年9月2日~9月6日
調査方法:インターネット調査
調査設計:2020年1月~2020年7月の間にファクトチェックされた、新型コロナウイルス関連10件、国内政治関連10件の、合計20件の実際のフェイクニュースについての行動を調査する。政治フェイクニュースについては、リベラル派にポジティブなものを5件、保守派にポジティブなものを5件とした。
- 51.7%の人は20件のフェイクニュースの内1つ以上に接触
全体では51.7%の人が20件中1件以上のフェイクニュースに接触しており、私たちの身近にフェイクニュースが存在することが分かりました。
- 政治フェイクニュースに接触した人81.2%が偽情報だと見抜けていない
新型コロナ関連フェイクニュースで比較的少なくなったのは、元より疑わしいものが多かったことと、マスメディアやネットメディアで幅広くファクトチェック結果が報じられたことが要因と考えられます。
- フェイクニュース真偽判定能力に影響を与える要素
■ リテラシー
情報リテラシーが高いことが、新型コロナ関連フェイクニュースの真偽判定能力を大きく高めていました。ここでいう情報リテラシーとは、「筆者の意見が入った文章かわかる」「文章から確実に言えることが何かわかる」といった能力のことであり、端的にいうと読解力・国語力に近いものです。
■ メディア接触・信頼
ソーシャルメディアで情報・ニュースに接触することは、フェイクニュース真偽判定能力を弱めておらず、むしろ多様な情報源から情報を摂取する人は真偽判定能力が高いという結果になりました。ただし、ソーシャルメディアやメールへの信頼度が高いとフェイクニュース真偽判定能力が低い傾向がありました。
■ マスメディアへの不満・生活への不満
マスメディアへの不満や自分の生活への不満が大きいと、フェイクニュース真偽判定能力が低い傾向がありました。特に、政治関連フェイクニュースの真偽判定能力には、マスメディアへの不満が最も大きな影響を与えており、不満が大きいほど偽情報と見抜けない傾向が顕著に見られました。
式1 フェイクニュース真偽判定決定要因モデル(ロジットモデル)
- フェイクニュース拡散手段として最多は「家族・友人・知り合いに直接話した」
「Twitter」は3位の4.3%であり、SNSの投稿だけでなく、家族・友人・知り合いからの情報にもフェイクニュースが少なくないことが分かりました。
- 全体の1%以下のスーパースプレッダーがフェイクニュース拡散の約95%を占める
複数のフェイクニュースを偽情報と気づかずに拡散する行動が見られ、ごく一部の拡散者がフェイクニュース拡散の大部分を担っていることが分かりました。
※家族・友人・知人へのスーパースプレッダー:家族・友人・知り合いに対して偽情報だと気づかずに100人以上に拡散した
※ソーシャルメディアでのスーパースプレッダー:ソーシャルメディアで偽情報だと気づかずに10,000人以上に拡散した人(ただし拡散人数はフォロワー数であり、実際に見た人数ではない)
- 導かれる政策的含意
2. ファクトチェック:特に政治関連のファクトチェックを推進し、幅広いメディアによって行き届かせることが必要
3. ファクトチェック:拡散数の多い人(スーパースプレッダー)にファクトチェック結果が届きやすい設計を検討する
4. ファクトチェック:ファクトチェックをより活発にし、ファクトに辿り着きやすいようなアーキテクチャ上の工夫をさらに進める
5. 教育・啓発:フェイクニュース対策に有効な情報検証行動を啓発する(それはジャンル別に異なる)
6. 教育・啓発:身近な人からの情報であっても時には誤っていることもあることを啓発する
7. 教育・啓発:体系的で多元的なメディア・情報リテラシー教育を実施する
8. メディア:生活者がマスメディアへの理解を深められるような施策を講じる
- 本調査研究担当者
1986年生まれ。博士(経済学)。専門は計量経済学、ネットメディア論、情報経済論等。NHKや日本経済新聞等のメディアに多数出演・掲載。主な著作に『正義を振りかざす「極端な人」の正体』(光文社)、『なぜ、それは儲かるのか』(草思社)、『炎上とクチコミの経済学』(朝日新聞出版)等がある。他に、東京大学客員連携研究員、シエンプレ株式会社顧問、日本リスクコミュニケーション協会理事等を務める。
- 組織概要
とくに近年では、データの利活用における戦略と政策の研究を基点に、まちづくりから教育、災害対応、文化振興に至るまで、あらゆる社会のデジタル化を対象に、学際的かつマルチセクターでの共創・共進に取り組んでいます。
〈GLOCOMの四つの活動理念〉
- 情報社会論・情報通信領域を基礎とする研究展開
- 情報社会のグローバル・ローカルな諸課題への先端的取り組み
- 産官学民をつなぐユニークな研究ネットワークハブを志向
- 調査研究・提言活動・実践活動の一体的推進
所在地:東京都港区六本木6-15-21 ハークス六本木ビル 2F
設 立:1991年7月
所 長:松山良一
https://www.glocom.ac.jp
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