VRデジタル療法のBiPSEE、特定臨床研究を完了し、治験準備開始
うつ病に対するVRデジタル療法の探索的試験で、うつ病スコアが減少する結果を確認
株式会社BiPSEE(本社:東京都渋谷区、代表取締役 CEO 松村 雅代)は、高知大学医学部附属病院との共同研究として実施していた、うつ病に対するVRデジタル療法(VRx)に関する特定臨床研究(ランダム化比較試験)にて、対象患者のうつ病スコアが大きく減少したことを確認しました。今後、治験に向けた準備を進めて参ります。

■本研究の背景と目的
世界では3億人以上がうつ病に悩んでおり、経済損失は約250兆円に達するとされています[1]。
うつ病治療においては薬物療法が一般的ですが、最初の抗うつ薬で寛解に至るのは3人に1人にすぎず、再発率は60%を超えます[2]。また、薬剤調整が頻繁に必要となるため副作用リスクも高まります。特に、Default Mode Networkの過活動により引き起こされる「反すう(ネガティブで反復的な自己注目)」が関連するうつ病(MDD)は、抗うつ薬が効きにくいとされ、新たな治療法が求められています[3]。
薬物以外の治療法として認知行動療法(CBT)をはじめとした精神療法がありますが、プロトコル遵守や治療時間の長さが課題となり、保険診療としての普及は限定的であり、日本の精神科クリニックでの実施率は6.2%にとどまります。
当社が開発するうつ病向けVRデジタル療法(VRx)は、反すう症状の軽減を足掛かりとして、抑うつの改善を目指したデジタル治療プログラムです。本プログラムは、以下の3点の特徴を有しています[4]。
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メタ認知療法や反すう焦点化認知行動療法に基づいたスキル習得
本プログラムは、認知行動療法において用いられるメタ認知療法や焦点化認知行動療法を中心とした8週間のプログラムとして構成されています。 -
VRとスマホアプリを活用した没入的エクササイズとアクティブラーニング
VRとスマホアプリを組み合わせた独自プログラムにより、
①没入感・第三者視点・イマジネーションを活用したインタラクティブな体験を通じた、反すうや抑うつ症状の背景にある感情や行動と心理的距離の確保
②反すうのきっかけとなる感情や行動、反すうの頻度と影響の同定
③VRで体得したスキルのより効果的な活用の促進
が可能となり、行動変容・認知変容を実現します。 -
自律的学習と家庭での継続利用
臨床現場の負担を減らし、医師が重要な判断やフィードバックに集中できるよう、患者が自宅で自律的にスキルを学べる設計としています。これにより、治療の空白となっていた自宅時間が新たな治療のタッチポイントとなります。
本研究では、このVRxが、うつ症状の軽減へとつながるか、について評価しました。
■研究の概要
本研究は、高知大学の医師主導の特定臨床研究として、臨床研究法に基づき実施されました。主な概要は以下の通りです。

研究名称 |
標準的な治療で効果不十分な大うつ病性障害患者における反すう症状を対象としたVRデジタル療法の有効性及び安全性を評価するランダム化比較試験 (臨床研究実施計画番号:jRCTs032220713) |
被験者数 |
50(実施症例数 47) |
対象疾患 |
大うつ病性障害(Major Depressive Disorder) |
研究目的 |
反すうを伴う中等症以上のMDD患者に対して、標準治療である薬物治療(対照群)に比べて、VRデジタル療法を付加した治療(介入群)の有効性の推定及び安全性をランダム化比較にて次相試験のために探索的に確認する |
概要 |
介入群及び対照群の2群にランダム割付し、治療期間8週間及び4週間の追跡調査を行う.有効性に関する評価は、セントラルブラインド担当者が行う |
主要評価項目 |
8週時におけるHAM-D総スコアのベースラインからの変化量 |
※今後、研究発表を予定しているため、一部については実施時点の情報としております。
■今後の展望
2025年中の治験開始を目指し、現在当局と共に準備を進めております。
治験後は医療機器としての承認を目指してまいります。
なお、本研究の結果については今後論文での発表を計画しております。
■ 高知大学医学部 神経精神科学講座 數井裕光 教授
近年、デジタルツールの開発が進み,精神科診療分野においても非薬物療法に活用されるようになりました。デジタルツールの活用は、本人自らの意志で治療を行うという能動的姿勢を支援し、同時に従来の非薬物療法では避けがたい治療者による心理的侵襲を低減させる可能性があります。またVRの活用によって没入感が増し、効果が大きくなる可能性もあると思います。当科通院中の患者さんも参加した今回の研究では、患者の時間的・経済的な負担の軽減も目指し、VR視聴は自宅で行われました。近い将来、VRデジタル療法が、うつ病治療の新たな選択肢となることを期待しています。
【株式会社BiPSEEについて】
BiPSEEは、「こころに寄り添う、新しい医療のかたちを」創り出すことを目指し、医学的根拠に基づきVRやAIを用いたメンタルケアソリューションを開発・提供する企業です。
第一弾として開発中のうつ病向けVRデジタル療法(VRx)は現在治験準備中であり、厚生労働省より「プログラム医療機器に係る優先的な審査等の対象品目」に選ばれております。また、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)より「ディープテック・スタートアップ」、東洋経済社より「すごいベンチャー100」に選ばれるなどの採択実績があります。
一人ひとりに寄り添い、 一人ひとりの回復を支えるため、大学での研究、企業との連携、 そして医療現場での実践を通じて、社会に新たな価値を提案します。
高騰する医療費や医療格差問題など我が国が抱える医療課題に対するソリューションを生み出し、世界的にも黎明期であるデジタルヘルス分野において、世界をリードすることが可能であると私たちは信じています。
会社概要
所在地:〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂1丁目10番8号渋谷道玄坂東急ビル2F−C
設立:2017年7月
代表者:代表取締役CEO 松村 雅代
URL:https://bipsee.co.jp
参考リンク
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BiPSEEのVRうつ病治療システム(仮)が「プログラム医療機器に係る優先的な審査等の対象品目」に指定、合わせて第二種医療機器製造販売業を取得
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VRデジタル療法のBiPSEE、2023年度 NEDO「ディープテック・スタートアップ支援基金/ディープテック・スタートアップ支援事業」に採択
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「すごいベンチャー100」2024年最新版・全リスト

[1] WHO. Depression and Other Common Mental Disorders: Global Health Estimates. Geneva: World Health Organization; 2017.
[2] Thase ME, Rush AJ. When at first you don't succeed: sequential strategies for antidepressant nonresponders. J Clin Psychiatry. 1997;58 Suppl 13:23–29.
[3] Williams LM. Precision psychiatry: a neural circuit taxonomy for depression. Lancet Psychiatry. 2016 May;3(5):472–480., Williams L. Defining biotypes for depression and anxiety based on large-scale circuit dysfunction: a theoretical review of the evidence and future directions for clinical translation. Depress Anxiety. 2017 Jan;34(1):9–24.
[4] 高橋 史. 日本の精神医療における認知行動療法提供の実態調査 [Investigation on the actual provision of cognitive behavioral therapy in Japanese psychiatry]. 科研研究成果報告書; 2018.
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