日本製鉄、USスチール社の高炉改修は健康・気候への影響を長期化

(東京、日本、2025年8月26日)日本製鉄は、USスチール社が保有する米インディアナ州ゲーリー製鉄所において最大の高炉の改修に31億米ドル(約4600億円)を投じる計画だと、日本経済新聞が報じた[1]。これを受け、スティールウォッチ、キャンペーン・ディレクター冨田沓子は次のように述べている。
「日本製鉄は、ゲーリー製鉄所のリライニング改修に数十億米ドルを投入し、将来の競争力、労働者の持続可能な雇用、周辺地域の健康を犠牲にしようとしているが、これはきわめて先見性に欠ける計画である。この高炉が改修後の寿命を迎える前に、世界はネットゼロ経済へとすでに大きく前進している。時代遅れの生産設備を抱えることになる」
ゲーリー製鉄所は米国でも最大級の高排出拠点の一つだ。改修される第14高炉の生産能力は約250万tである。スティールウォッチの試算によると、稼働率90%、20年間の稼働延長の場合、稼働期間中に累計で1億tを超えるCO2を排出することになる[2]。
ゲーリーを拠点とする地元市民団体は、日本製鉄に対し、新たに厳格化された米環境保護庁(EPA)の大気汚染規制について免除を求めないこと、規制を直ちに実施すること、そしてゲーリー製鉄所の老朽化した高炉を、低排出技術である直接還元製鉄(DRI法)に置き換えることを求めてきた[3]。今回の高炉改修計画の報道により、同社は地域住民や気候変動への影響を十分に考慮していないと評価されかねない。
「日本製鉄は『総合力世界第一位』の鉄鋼メーカーを目指し、脱炭素化への取り組みを強調する一方、そのための方針転換を求められる局面では、結局石炭を主力とする事業を維持するに留まっている。現在、同社は岐路に立っており、110億米ドルの具体的な投資計画の行方が今まさに決まろうとしている。しかし、仮に今回の高炉改修が実行されれば、地域住民を失望させ、日本製鉄の気候変動対策に関する評価を大きく損ねることになるだろう」と、冨田は述べている。
以上
参考:
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日本経済新聞「日本製鉄、USスチール最大の高炉を26年に改修 4600億円投資」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN260IA0W5A820C2000000/
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グローバル・エナジー・モニター(GEM)のデータと、世界鉄鋼協会(WSA)による平均排出原単位(粗鋼1tあたり2.3tCO2)に基づく。
https://worldsteel.org/data/world-steel-in-figures-2024/
日本製鉄が米国やアジアで拡大した事業を従来の生産水準で続けた場合、年間100万tを超える温室効果ガスを排出する可能性がある。こうした状況で、さらに20年間も石炭依存の生産体制を続けることは、気候変動への影響が極めて深刻である。この排出量は、通常の石炭火力発電所26基の稼働に相当する。https://steelwatch.org/%e5%a0%b1%e5%91%8a%e6%9b%b8/nscca2025jp/?lang=ja
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シエラクラブ「日本製鉄とUSスチールの買収を受け、環境・保健団体が説明責任を要求(英語)」
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世界の高炉の約7割が2030年までに改修時期を迎えるとされ、改修後はおよそ20年間稼働させることになる。本報道にある日本製鉄の判断は、周辺地域への健康被害を長引かせるとともに、同社が掲げる「カーボンニュートラル2050」に向けた気候への影響をさらに悪化させる恐れがある。また、USスチール社が保有する石炭依存の生産設備やコークス炉からの大気汚染は、年間で推定最大200人の早期死亡、5万5400件の喘息症状、約1万2000日の労働者や学生の欠勤・欠席に相当するとされている。
https://industriouslabs.org/archive/report-dirty-steel-dangerous-air -
日本製鉄のUSスチール買収を受け、米国の市民団体から気候や環境への影響について繰り返し懸念が示されている。https://steelwatch.org/%e8%ab%96%e8%aa%ac/uss_2025/?lang=ja
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