CACLによる文化発信拠点が石川・能美市に2027年オープン。1400年前から続く窯業の拠点を、開かれた創造の場へ

壊れてしまった陶磁器片などのかけらを、漆塗りなどの伝統技術によってつなぎあわせ、新たな価値を見出すという文化の創造行為を行ってきた株式会社CACL。その活動の集大成であり、新しい挑戦のきっかけとして、能美市内にある自社工房をリノベーションし、2027年度内に文化発信のための複合施設をオープンします。
拠点が生まれた背景 / 1400年の創作の場を、もう一度開く
CACLが拠点を構えるこの地域では、古くから土と火を用いたものづくりの文化が営まれてきました。古墳時代の須恵器生産に始まる石川県の窯業文化は、中世の珠洲焼、近世の九谷焼へと受け継がれ、この場所はその源流のひとつです。さらに、かけらを扱う私たちの拠点からも約1400年前・7世紀前半の窯跡とされる辰口マルヤマ窯跡が見つかり、須恵器のかけらが地中から出てくるという数奇な関係性が見えてきたのです。
特徴的な素材感やディテールが数多く残るこの建物は、昭和から平成にかけて活躍した彫刻家・米林勝二氏の自邸・工房であり、長らく創作の場として息づいてきた場所でもあります。こうしたつながりをきっかけに、1400年前から続く創作の営みを蘇らせ、過去・現在・未来をつなぐ場にしたい。その思いこそが、この拠点計画の出発点でした。

施設が目指す場所 / 多様な人々のクリエイティビティが交わる、創造の拠点へ
施設の建築設計を担当するのは、永山祐子建築設計。これまでも陶磁器片をアップサイクルした玉川髙島屋S•Cのテラゾーベンチ制作や、CACL × LIXIL × 永山祐子建築設計による能登瓦の共同プロジェクトなど、CACLとのコラボレーションを重ねてきた永山氏とともに計画を進めています。
施設名にはこの場所のルーツをそのまま借用し、「米林邸(Yonebayashi-tei)」としました。館内には、漆芸工房や陶磁器片を保管・活用するラボラトリー、能美古墳群を核とした「土と火の文化」にまつわる体験型ミュージアムカフェ、就労支援(B型)事業所などを併設。焼き物文化の歴史体験や金継ぎワークショップなど、定期的なイベントやプログラムにも注力します。
この場所が目指すのは、建築家やアーティストとの協業にとどまらない、開かれた創造の場です。地域の働き手、職人の技術、障がいを持った方々、クリエイターやアーティストはもちろん、国内外の多様な人々のクリエイティビティが交わることで、この地に根ざした文化を新しい未来へとつないでいきます。

CACLについて / 私たちが「文化発信拠点」を始める意味
廃棄された陶磁器の「かけら」が、障がいのある人の姿と重なって見えた。それがCACLの出発点です。規格外として弾かれるものは、本当に価値がないのか。誰がそれを決めるのか——。そこから、株式会社CACLを設立しました。九谷焼・珠洲焼など石川県の伝統工芸では、製造過程で約1割が廃棄されます。能登半島地震の後、被災した陶磁器片が大量に集まりました。そこに輪島塗の技術をかけ合わせることで、これまで見たことのない造形が生まれました。この探求活動を「Rediscover project」と名付け、金沢21世紀美術館をはじめ国内外で発表し続けています。そのほか、廃棄素材を建材やプロダクトへと転換する「KAKERA」、伝統工芸の担い手不足と障がい者就労をかけ合わせた「CACL Factory」など、さまざまな実践を通じて、世の中に多彩な見方を問い続けています。今回構想する「米林邸(Yonebayashi-tei)」は、これらすべての活動が混在する場です。異なる立場の人とものが出会い、かけ合わさることで何が生まれるか——。答えを決めず、その問いを開いたままにしておくための拠点として位置付けています。


CACLについて / これまでの取り組みのご紹介
■Rediscover project
規格外として破棄される陶磁器片を、輪島塗の職人が漆で継ぎ合わせるプロジェクト。修復ではなく、欠けたものと欠けたものが出会うことで新たな造形、新たな美を生み出すことを目指します。

■KAKERA
震災や製造過程で生まれた陶磁器片を回収し、建材やプロダクトへと転換する取り組み。捨てられるはずだったかけらが、素材として再び世界に出ていく仕組みをつくります。

■CACL Factory
人手不足の現場と、障がいのある方の就労機会の少なさ。この2つの課題に同時に向き合うため、障害を抱える方達が、企業で働く場や工房でものをつくる場をつくっています。

代表コメント
廃棄された陶磁器のかけらと、障がいのある人たちが社会から向けられるまなざしが、私にはどこか重なって見えました。傷がある、形が揃っていない、一般的な基準から外れている。そうした理由によって、「価値がない」「役割がない」と判断されてきたものの中に、まだ誰も気づいていない可能性があるのではないか。その価値を、別の視点から見つめ直すことはできないか。そんな問いから、CACLの活動は始まりました。
私たちはこれまで、規格外となった九谷焼や、能登半島地震によって壊れた器、役目を終えた陶磁器のかけらを集め、障がいのある人たちや職人、アーティスト、建築家、企業など、さまざまな人たちとともに、新たな表現や素材へとつなぎ直してきました。そこで感じてきたのは、失われたように見えるものも、異なる人や技術、まなざしと出会うことで、これまでにはなかった価値を持ち始めるということです。それは単なる再利用ではなく、ものの背景にある記憶や時間を受け継ぎながら、新しい関係を生み出していく営みだと考えています。
私たちの工房のすぐそばから、約1400年前につくられた須恵器のかけらが見つかったことも、私には偶然とは思えませんでした。この土地では、はるか昔から人々が土や素材と向き合い、手を動かし、暮らしの中から文化を生み出してきました。古代の須恵器から現在の九谷焼へと続く長い時間の中で、形あるものは壊れ、ときに土へと還りながらも、人の技術や記憶、精神は次の世代へ受け継がれてきました。私たちの活動もまた、その大きな時間の流れの一部なのだと思います。
米林邸では、過去の文化を展示し、保存するだけではなく、障がいのある人、職人、アーティスト、研究者、地域の人、そして国内外から訪れる人が出会い、ともに手を動かし、対話しながら、次の文化を生み出していく場所をつくりたいと考えています。見る人とつくる人、支える人と支えられる人を分けるのではなく、一人ひとりがそれぞれの経験や感性を持ち寄り、誰もが文化の担い手になれる場所です。
一度は価値を失ったとされたものが、もう一度誰かの心を動かすものになる。見過ごされてきた人の力が、社会に新しい視点をもたらす。米林邸を、1400年にわたるこの土地の創造の記憶を受け継ぎながら、過去と現在、そして未来をつなぐ拠点へと育てていきます。ここから生まれる出会いや営みが、能美という土地を越え、これからの文化や社会のあり方を考える小さなきっかけになればと願っています。
奥山純一・CACL代表
関係者コメント

永山祐子
有限会社永山祐子建築設計代表 / 建築家
奥山さんとはじめてお会いしたとき、大量に集められた陶磁器のかけらの話を聞き、「建材として使えばまとまった量を有効活用できるのでは」と思ったことをよく覚えています。そこから九谷焼のかけらを使ったテラゾーや、能登の黒瓦とLIXILの技術を掛け合わせた建材など、CACLとはさまざまな実験を重ねてきました。CACLの面白さは、人をつなぐことで、失われかけたものをただ再利用するのではなく、異なる素材や技術、そこに潜んでいた美しさや可能性を発見していくところにあると思います。私たちも、その予想を超えていくものづくりにいつも刺激を受けています。これまでは素材を通してともに試行錯誤してきましたが、米林邸ではその試みが「場所」そのものへと広がります。建物に残る時間、地域の文化、職人の技術、福祉やアート、そしてここを訪れる人たちが思いがけず出会い、次の創造につながっていく。そんなCACLらしい場をつくりたいと思っています。

北野広記
石川県陶磁器商工業協同組合 副理事長 / 株式会社北野陶寿堂 代表取締役
CACLが事業を立ち上げられた当初から、CACL Factoryを通じて、産地の人手不足という課題に対して大変多くのご支援をいただいております。そうした課題解決の一方で、産地には未来への挑戦も同時に求められています。九谷焼は古くから新しい表現や技術を取り入れて進化してきたやきものです。製造過程や震災で生じた陶片や規格外品を新たな価値へと高めるCACLの取り組みは、現代の課題に応えながらも、その先に続く九谷焼の未来にとって大変意義深い挑戦だと感じています。この開かれた拠点から、多様な人々が交わることによって、新たなものづくりの物語が広がることを心から期待しております。また、地域社会の新しい価値の創造を楽しみにしながら、ともに未来を築いていければと願っております。

羽賀豊
株式会社LIXIL常務役員、DESIGN & BRAND JAPAN リーダー
能登瓦を使ったアップサイクルに取り組んだ際に、能登にも訪問させていただき、これは廃材の再利用ではなく、文化や歴史、思い出を含め、次につなげていく活動であると強く感じました。モノには全て、このように文化や歴史、作り手の工夫や想い、使う人の体験や思い出がつながっています。また、創造性は多様な異なる人が交わることで生まれると言われています。この新たな施設では、1400年の歴史を感じつつ、創造的な人、深く追求する職人のような人、地域を支える人、障がいのある人もない人も、多様な人が集まり、未来の創造とあらたな歴史が生まれる場所になることを期待しています。
今後について

本プロジェクトの一部は、文化庁 令和8年度「文化資源活用事業費補助金(全国各地の魅力的な文化財活用推進事業)」 に採択され、補助を受けて開業に向けて事業を進めていく予定です。まずは2027年2月頃に施設名称や空間などの概要をまとめた公式サイトをローンチする予定です。その後、2027年末までに複合施設の開業を目指します。今後の施設に関する最新情報は、インスタグラム公式アカウントにて随時発信していく計画です。
複合施設公式アカウント:https://www.instagram.com/yonebayashi__tei
文化庁「文化資源活用事業費補助金(全国各地の魅力的な文化財活用推進事業)」 について
文化庁が主導する補助金事業で、国指定等文化財(世界文化遺産、日本遺産を含む。)を核として当該文化財を高付加価値化し、活用から保存への再投資を図ることによって、持続可能な保存・活用の好循環の創出を目指しています。文化庁(本質的価値との両立等の観点)や専門家(具体的な活用プランや資金調達等の観点)が伴走支援を行います。
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像
