直接トロンビン阻害剤ダビガトラン エテキシラート(日本での製品名:プラザキサ®)、患者の脳卒中リスクの程度や心房細動のタイプにかかわらず有効性を示す

-新たな2つのRE-LY®試験のサブグループ解析を発表

2011年4月4日  ドイツ/インゲルハイム

新たな2つのRE-LY®試験のサブグループ解析結果が、第60回米国心臓病学会(ACC)で発表されました。これらの結果では、心房細動患者の脳卒中発症リスクの程度や心房細動のタイプにかかわらず、心房細動患者の脳卒中発症抑制において、ダビガトラン エテキシラート150 mg 1日2回投与群は、ワルファリン群に対して優越性が示されました。

RE-LY®試験はPROBE法(前向き、ランダム化、非盲検、盲検下エンドポイント評価)で、盲検化したダビガトラン エテキシラートの2用量群(110 mg 1日2回投与、150 mg 1日2回投与)と、良好にコントロールされた非盲検のワルファリン群とを比較した大規模な国際共同第Ⅲ相試験です。この試験結果から、脳卒中/全身性塞栓症の発症抑制において、ダビガトラン エテキシラート 150mg 1日2回投与群は、ワルファリン群に対して優越性を示し、ダビガトラン エテキシラート110mg 1日2回投与群は、ワルファリン群と同等であることが認められました。

今回発表されたRE-LY®試験の2つのサブグループ解析は、心房細動のタイプ(発作性、持続性、永続性)別に解析したものとCHA2DS2VASc5で評価した脳卒中リスク患者集団を解析したものです。なおCHA2DS2VAScスコアは、従来から広く使用されているCHADS2スコアを補い、より細かく脳卒中リスクを層別化する指標です。

2つのサブグループ解析結果は次の通りです:
・ CHA2DS2VAScで評価した全ての脳卒中リスク患者集団において、ダビガトラン エテキシラート150mg 1日2回投与群は、RE-LY®試験の成績と同様に、ワルファリン群に対して一貫した優越性を示しました(交互作用のp値=0.60)
・ 既に、ダビガトラン エテキシラート150 mg 1日2回投与群は、CHADS2スコアで評価した全ての脳卒中リスク患者集団[n=5,882](高リスク集団を含む)で、ワルファリン群に対する一貫した優越性が発表されています。CHA2DS2VAScスコアを用いた今回の解析結果は、これと一致するものでした
・ ダビガトラン エテキシラート150 mg 1日2回投与群と110 mg 1日2回投与群は、良好にコントロールされたワルファリン群と比較して、有効性と安全性が相対的に良好であることを示しました(CHA2DS2VAScスコアが低い集団においても同様の結果を示しました)
・ 様々なタイプ(発作性、持続性、永続性)の心房細動患者を対象に、ダビガトラン エテキシラート150 mg 1日2回投与群と、良好にコントロールされたワルファリン群(TTR中央値: 67%)とを比較しました。その結果、ダビガトラン エテキシラート150mg 1日2回は、発作性、持続性、永続性それぞれで心房細動患者の脳卒中/全身性塞栓症の発症抑制において、RE-LY®試験の成績と同様に優越性を示しました(交互作用のp値=0.16)

ウプサラ大学病院(スウェーデン)のDr. Jonas Oldgren(ヨナス・オルグレン博士)は次のように述べています。「今回発表された2つの解析結果は、これまで発表されてきたRE-LY®試験のサブグループ解析と同様の結果を示しました。発作性から永続性まで心房細動のタイプにかかわらず、幅広い非弁膜症性心房細動患者層で、ダビガトラン エテキシラートは脳卒中発症抑制において、有効で、魅力的な標準治療薬に対する代替薬であることを強く裏付けました。またダビガトラン エテキシラートには2用量あることより、医師の判断によって個々の患者に応じた、適切な治療が可能となります。」

CHA2DS2VAScは、欧州心臓病学会(ESC2010)ガイドライン改訂版に導入された新しい脳卒中リスク層別化スコアです。包括的リスク因子に基づくアプローチによって、医師は心房細動患者の脳卒中リスクをより高い精度で評価できます。ESCガイドラインは、「主要では無いが臨床的に意義のある」リスク因子を1つ以上有する(CHA2DS2VAScスコア=1)、幅広い心房細動患者層に、抗凝固療法を推奨しています。

バーミンガム大学循環器サイエンスセンター/バーミンガム市民病院循環器内科Prof. Gregory Lip(グレゴリー・リップ教授)は、ダビガトラン エテキシラートについて次のように述べています。「ワルファリンには様々な制限があるため、脳卒中予防治療を適切に受けている心房細動患者さんはわずか50%程度に留まっています。ダビガトラン エテキシラートは、薬物相互作用の可能性が低く、食物との相互作用もありません。また、頻回なモニタリングも必要ありません。ここにCHA2DS2VAScスコアが脳卒中リスク評価尺度として導入されることで、心房細動患者さんは効果的な治療を受けられるようになります。その結果、一人でも多くの心房細動患者さんを脳卒中から護ることができるでしょう。心房細動に関連した脳卒中リスク因子はいずれも脳卒中を発症させる可能性をはらんでいます。脳卒中発症抑制に積極的に取り組むための、最も有効な選択肢は抗凝固療法です。」

米国・カナダのガイドラインがダビガトラン エテキシラートを推奨
先ごろ改訂された、米国AHA/ ACCF/ HRSのガイドラインは、発作性から永続性に至るまでの様々なタイプの心房細動患者および脳卒中または血栓症リスク因子を有する患者の脳卒中発症抑制に、ワルファリンに代わる治療薬としてダビガトラン エテキシラートを推奨しています。なお人工心臓弁置換患者や重大な心臓弁膜症患者、重度の腎不全患者、進行した肝臓病患者は投与対象ではありません。カナダ循環器学会の新たなガイドラインでも、ダビガトラン エテキシラートが推奨されています。このガイドラインでは、心房細動患者の脳卒中発症抑制において、ワルファリンよりもダビガトラン エテキシラート(特に150 mg 1日2回投与)の投与を推奨しています。

ダビガトラン中和抗体に関する前臨床データ
ダビガトランに対する抗体の使用を検討した前臨床試験の結果がACCで初めて発表されました。これらのデータは、in vitroおよびin vivoモデルで、ダビガトラン抗凝固活性の中和について検討しているものです。ダビガトラン エテキシラートを中和させる薬剤の開発は、臨床現場でのこの薬剤の選択肢を一層広げるものになると考えられます。

CHA2DS2VAScスコア
・ 従来から使用されているCHADS2スコアと比較して、心房細動患者の脳卒中リスクをより高い精度で評価する
・ CHADS2スコアで軽度~中程度リスクとみなされた心房細動患者に特に推奨される
・ CHADS2をベースに、女性、65~75歳、血管疾患などのリスク因子が、リスク項目に追加された
・ 抗血栓療法を必要としない「真に低リスク」の心房細動患者の特定においてCHADS2より優れている。脳卒中リスク因子が1つ以上の患者は抗凝固療法の対象となり得る

心房細動のタイプについて
・ 発作性心房細動または間欠性心房細動は、異常な電気信号および頻脈が突然始まって、自然に止まるタイプの心房細動をいう。症状は軽度から重度まで幅広く、期間は数秒、数分、数時間、数日続く場合がある
・ 持続性心房細動は不整脈が続き、治療するまでその病態が続くものをいう
・ 永続性心房細動は、治療しても正常な心調律を回復できない心房細動をいう。発作性心房細動や持続性心房細動がより頻回になると、永続性心房細動に進展する可能性がある

心房細動および脳卒中について
心房細動は最も一般的な不整脈であり、40歳以上の約4人に1人14および全人口の約1%、80歳以上では10%が罹患しています。心房細動患者は血栓リスクが高く、これによって脳卒中リスクは5倍に跳ね上がります。世界各国で毎年、最大300万人が心房細動に起因する脳卒中を発症しており、重篤になると後遺症を残すことが多く、重篤な患者のうち半数が1年以内に死亡しています。心房細動に起因する脳卒中は重篤になる傾向があり、死亡率(20%)および後遺症発生率(60%)も高くなっています。心房細動に起因する脳卒中の多くは、適切な血栓症治療によって予防できます。


RE-LY®試験について
RE-LY®(Randomized Evaluation of Long term anticoagulant therapY)は日本を含む44カ国、900施設以上で18,113名を登録して実施された、大規模な国際共同第Ⅲ相試験です。PROBE法(前向き、ランダム化、非盲検、盲検下エンドポイント評価)で、盲検化したダビガトラン エテキシラートの2用量群(110 mg 1日2回投与、150 mg 1日2回投与)と、良好にコントロールされた非盲検のワルファリン群(目標INR: 2.0~3.0)とを比較検証したものです。なお、対象患者は少なくとも1年間、中央値で2年間追跡調査されています。

本試験の主要評価項目は脳卒中(出血性を含む)または全身性塞栓症の発症率です。副次評価項目は全死亡、脳卒中(出血性を含む)、全身性塞栓症、肺塞栓症、急性心筋梗塞の発症、血管死(出血死を含む)です。

ダビガトラン エテキシラートについて
ダビガトラン エテキシラートは、急性および慢性の血栓塞栓症の予防と治療において、未だ満たされていない大きな医療ニーズに対応することが期待され、注目されている新世代の経口抗凝固薬/直接トロンビン阻害剤です。

直接トロンビン阻害剤は、血餅(血栓)形成プロセスにおいて中心的な役割を果たす酵素であるトロンビン(遊離トロンビンならびにフィブリン結合トロンビン)の活性を特異的に阻害することにより、強力な抗血栓作用を示します。さまざまな凝固因子を介して可変的に作用するビタミンK拮抗薬とは異なり、ダビガトラン エテキシラートは予測可能な一貫した高い有効性を示します。薬物相互作用の可能性が低く、食物との相互作用もありません。また、定期的な血液凝固モニタリングや投与量の調節も必要ありません。

ダビガトラン エテキシラートは、心房細動患者の脳卒中発症抑制を適応に、日本や米国、カナダ、韓国、インドネシア、ニュージーランド、コロンビア、ナミビアで承認されています。

ダビガトラン エテキシラートは、日本での製品名 プラザキサ®で、「非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制」を効能・効果として本年1月21日に承認され、3月14日に発売が開始されました。

また、人工股関節全置換術または人工膝関節全置換術後の成人患者の静脈血栓塞栓症(凝血)の一次予防を適応として、日本を除く現在83カ国で承認されています(本邦未承認)。

当プレスリリースについて
当資料は、ドイツのベーリンガーインゲルハイム(Boehringer Ingelheim GmbH)が4月4日付でグローバルに配信したプレスリリースの日本語版であり日本国内の状況と異なる情報が含まれる場合があります。内容および解釈は、オリジナルである英文が優先します。下記をご参照ください。
http://www.boehringer-ingelheim.com/news.html

ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムグループは、世界でトップ20の製薬企業のひとつです。ドイツのインゲルハイムを本拠とし、世界で145の関連会社と42,200人以上の社員が、事業を展開しています。1885年の設立以来、株式公開をしない企業形態の特色を生かしながら、臨床的価値の高いヒト用医薬品および動物薬の研究開発、製造、販売に注力してきました。

2010年度は126億ユーロの売上を示しました。革新的な医薬品を世に送り出すべく、医療用医薬品事業の売上の約24%相当額を研究開発に投資しました。

日本では、ベーリンガーインゲルハイムは半世紀にわたり企業活動を展開しています。ベーリンガーインゲルハイム ジャパン株式会社が、持ち株会社として、その傘下に、完全子会社である日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社(医療用医薬品)、エスエス製薬株式会社(一般用医薬品)、ベーリンガーインゲルハイム ベトメディカ ジャパン株式会社(動物用医薬品)、ベーリンガーインゲルハイム製薬株式会社(医薬品製造)の4つの事業会社を統括しています。日本のグループ全体で約3,000人の社員が、革新的な医薬品の研究、開発、製造、販売に従事しています。

日本ベーリンガーインゲルハイムは、呼吸器、循環器、中枢神経などの疾患領域で革新的な医療用医薬品を提供しています。また、グローバルな研究・開発の一翼を担う医薬研究所を神戸に擁しています。

詳細は下記をご参照ください。 http://www.boehringer-ingelheim.co.jp


会社概要

URL
http://www.boehringer-ingelheim.co.jp
業種
製造業
本社所在地
東京都品川区大崎2-1-1 ThinkParkTower(17階)
電話番号
03-6417-2200
代表者名
ヤンシュテファン・ シェルド
上場
未上場
資本金
-
設立
1961年06月