話せなくなるALS患者の”自分の声”を救う。「ALS SAVE VOICE」プロジェクトがスタート
東芝デジタルソリューションズが提供する合成音声プラットフォーム「コエステーション™」と「OriHime eye」とのコラボレーションにより、声を失ってしまうALS患者の自分の声を残すサービス開発が開始
遠隔操作型のロボット「OriHime」、ならびにALSなど難病患者を対象とした視線入力システム「OriHime eye」を開発・提供している株式会社オリィ研究所(東京都港区、共同創設者 代表取締役所長:吉藤健太朗、以下 オリィ研究所)は、合成音声プラットフォーム「コエステーション™」を提供する東芝デジタルソリューションズ株式会社(本社:神奈川県川崎市、取締役社長:錦織弘信、以下東芝デジタルソリューションズ)ならびにALS当事者団体である一般社団法人WITH ALS(東京都港区、代表理事:武藤将胤、以下 WITH ALS)と共に、声を失うALS患者の”自分の声”を合成音声として残し、失声後も自分の声を使い続けられるサービスの開発を目指す「ALS SAVE VOICE PROJECT」を発足、サービス開発を開始する。
「OriHime eye」とは、ALSなど難病患者と周囲の人との意思伝達に使われている”透明文字盤”をデジタル化し、
発話や手足を動かせない状態まで症状が進行した人でも簡単に文字入力、文字の読み上げができる意思伝達装置。
「もっとも使いやすい意思伝達装置を目指す」をスローガンに掲げて2015年から開発を続けており、2017年には幅広い地域での購入補助制度にも適応され、必要な患者は1割負担で購入できるようになり、日本全国の難病患者の方々に導入され、高い評価を受けている。
「OriHime eye」はユーザーの視線を検出し、慣れれば1分間に30~40文字前後の入力が可能(実際はATOKの予測変換機能により実際の文字入力数は更に多くなる)。ALS患者の多くが使っているアナログな”透明文字盤”の使い勝手を再現した特許技術により、初めて使う方でも感覚的、直観的に操作ができるのが特徴だ。
このシステムの導入により、ALSなどの神経難病の症状が進み発話が困難になった人であっても本人の意思をヘルパーなしで発話が可能になっている。しかし、多くの当事者や家族から「本人に似た声で話せないだろうか」「もう主人の声を忘れてしまった」「自分の声は自分の顔や身体の一部のようなもので、無くなる事はとても寂しい」といった声を受けていた。
本人の声を残す技術はこれまでに存在していたが、どうしても質の高い合成音声の生成には十数万円~十数万円ほどの費用がかかり、病気進行すると仕事を辞めざるを得なくなる人が大半のALS患者の経済的な事情で声を残せる人が限られているのが現状だった。
そこで、ALS支援団体であるWITH ALSと共に”本人の声を簡単に残せて、かつ患者さんに大きな費用がかかる事なく、利用できるサービスを届ける方法”を模索。この度、”自分のコエ”を生成できる合成音声プラットフォーム「コエステーション™」を提供する東芝デジタルソリューションズから技術提供を受ける形で、「ALS SAVE VOICE」プロジェクトが発足した。
このシステムが完成したとき、ALSの患者さんが必要なステップは以下の通り、
1.まだ声が話せるうちに、アプリ「コエステーション™」により自分の声を作成する
2.病気が進行し、話す事が困難になり、手も動かせなくなった時点で意思伝達システム「OriHime eye」を導入
3.OriHime eyeの設定から、コエステーションのIDとpasswordを入力する
4.OriHime eyeの会話モード、講演スピーチモード、OriHime操作モードを起動し、文字を入力、発話させる
これにより、患者は自分の声を使い、周囲や遠隔の人とのコミュニケーションが可能になる。
現在開発を開始しており、今年の秋までのサービス開始を目指している。
また、オリィ研究所では120cmの大きなOriHime、「OriHime-D」も開発しており、このロボットを使って外出困難者がお店で接客をする実験「分身ロボットカフェ」では、視線入力でALS患者が接客を行える実証試験も行った。(参考:http://www.news24.jp/articles/2018/12/07/07411142.html)
「ALS SAVE VOICE」プロジェクトが進む事で、ゆくゆくは、ALSが進行した患者がこうした場で自分の声で接客し、様々な職業で自分らしく生きていける未来の実現を目指していきたい考えだ。
すべての画像