【速報】LGBTQの子どもへのいじめをなくすSpirit Dayにあわせ、小学生への調査公開。6割が日常生活でLGBTQへの差別的言動を見聞き。多様な性に関する授業後は9割が今後は言わないと回答。

ReBitはの調査に、小学5〜6年生の849名が回答。小学生の現状と、多様な性に関する授業がもたらす教育効果を示した。

認定NPO法人 ReBit

認定NPO法人ReBitは、「小学校高学年における多様な性に関する授業がもたらす教育効果調査」を実施しました。小学5・6年生849名が授業前後に回答したアンケートやワークシートを分析し、日常的なLGBTQを取り巻く実態と、多様な性に関する授業による知識・意識の変化を、データと具体性がある自由回答に寄せられた小学生たちの声をもとに発表します。

「Spirit Day」は、LGBTQの子ども・若者へのいじめをなくし、応援の気持ちを示す、国際的な記念日です。国内では、LGBTQの約7割がいじめを経験するとの調査があります。本調査により、多様な性に関する授業は、LGBTQへの知識的な理解だけでなく、価値的・態度的側面についても変容が見られることから、授業後の行動変容につながり、子どもたちがアライ(理解者)となることが期待されるとともに、差別的言動やいじめの減少にも価値が認められると言えます。
  • 「小学校高学年における多様な性に関する授業がもたらす教育効果調査」について
<はじめに>

LGBTQの68%が学齢期にいじめを経験します(*1)。また、トランスジェンダー58%が自殺念慮を経験し、そのピークは小学校高学年からの二次性徴期であると言います(*2)。
2015年4 月、文部科学省がLGBTQの子どもへ配慮を求める通知を全国の小中高校などへ出しました。また、2020年度から小学校の教科書の一部に多様な性について記載されるなど、義務教育の中での多様な性の取り扱いは変化しつつあります。一方で、小学生に多様な性について教えることが「時期尚早なのでは」「理解できないのでは」などと不安や疑問の声が教職員や保護者などから聞かれることもあります。その一因とし、多様な性に関する教育効果を示す資料が少ないことが挙げられます。
「小学校高学年における多様な性に関する授業がもたらす教育効果調査」では、小学校5〜6年生を対象に、学校の先生が実施した多様な性に関する授業の教育効果を分析しています。この調査報告が、多様な性に関する授業を実践しようとする先生や、多様な性を取り上げようとする教科書会社など、子どもたちを取り巻く大人のみなさんにとって、意義のあるものとなれば幸いです。

*1:いのちリスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン(2014)平成25年度東京都地域自殺対策緊急強化補助事業 「LGBTの学校生活に関する実態調査(2013)」
*2:中塚幹也(2010)「学校保健における性同一性障害:学校と医療の連携」『日本医事新報』4521:60-64

<目的・対象>

多様な性に関する授業を教員が実施することで、小学5〜6年生の(1)知識的側面、(2)価値的・態度的側面にどのような効果をもたらすかを調査します。
本調査は、ReBitが制作した多様な性に関する教材キット「小学校高学年版Ally Teacher’s Tool Kit」を用いて、小学校教員が授業を実施し、授業前後で児童が回答したアンケート(選択式)とワークシート(記述式)を分析しました。調査期間は、2018年9月から2021年5月。回収した1274部のうち94部を除外し、有効回答数は849部でした。

なお、「小学校高学年版Ally Teacher’s Tool Kit」は、教職員がLGBTQの子どももすごしやすい学校をつくる「アライ先生」になり、子どもに多様な性について教えるための教材キットであり、映像教材・ワークシート・学習指導案・ワークシート等が一式となっています。

<授業概要と質問用紙について>
本授業は小学校教員がおよそ45分で実施しました。本授業は道徳の時間で実施する可能性を考慮して、文部科学省が2016年に作成した「小学校学習指導要領 解説 特別の教科道徳編」における内容のうち、「2-11 相互理解・寛容」「3-13 公正・公平・社会正義」を単元として設定しています。


なお、質問は、一部の質問を除き、「それぞれの質問に対して、もっともあてはまる答えに丸をつけてください。」と教示文を示し、「そう思う」から「そう思わない」および「わからない」の5件法で回答を求めました。
調査の目的にあわせ、(1)知識的側面、(2)価値的・態度的側面についての質問項目と、小学5〜6年生の実態を把握するため、多様な性に関する実態についての質問項目を用意しました。
授業前アンケート(選択式)はおよそ5分、ワークシート(記述式)はおよそ10分、授業後アンケート(選択式)はおよそ5分で回答しました。
 
  • 小学校高学年児童の多様な性に関する実態について
<小学校高学年の約6割が、日常生活のなかで差別的な言葉に接し、約2割が自身でも発した経験が>
授業前に「今までに、家や学校、テレビやマンガなどで、オカマ・ホモ・オネエなどと言ってバカにしたり笑ったりしているところを、見たり聞いたりしたことがありますか?」と聞いたところ、59.2%が「ある」、21.5%が「わからない」と回答し、「ない」と回答したのは19.1%でした。このことから、小学校高学年の約6割が、日常生活の中で差別的な言葉に接していることがわかります。

 

なお、授業前に「今までに、家や学校で、だれかに対してオカマ・ホモ・オネエなどと言って笑ったことがありますか?」と聞いたところ、19.9%が「ある」、20.2%が「わからない」と回答し、「ない」と回答したのは59.8%でした。このことから、約2割の子どもが自身でも差別的な言葉を発した経験があることがわかります。

 


<授業後、約9割の子どもが、LGBTQへ差別的な言葉を「言わないようにしたい」と回答>
授業後は「これからは、誰かに対してオカマ・ホモ・オネエなどと言わないようにしたい。」との設問に91.8%が「はい」と回答。約9割の子どもが、オカマ・ホモ・オネエなどが差別的な言葉であることを学習し、使わないようにしたいと考えたことがわかります。

 

 

これらのことから、オカマ・ホモ・オネエといった言葉を、意識的に口にする子どもは一部であるものの、周囲から“学習”している子どもが多数いることがわかります。その背景には、周囲の人による直接的な影響のほか、正しい言葉づかいがわからない(それが正しいと思い込んでいる)可能性があり、適切な情報があれば、授業後のように差別的な言葉を使用しなくなる子どもが大多数であろうことが予想されます。
 
  • 小学校高学年児童の多様な性に関する知識について
授業前後の回答から、多様な性の授業は、多様な性に関する知識的側面において教育効果を発揮することが明らかになりました。以下、3つの設問の授業前後を比較します。

性別二元論に関する設問「性別は、男か女の2つしかない」では、授業前は34.3%だった「正解」が、授業後には91.7%と、57.4ポイント上昇しました。

 


性的指向に関する設問「男の子は女の子を好きになり、女の子は男の子を好きになるのがあたりまえだ」では、授業前は49.3%だった「正解」が、授業後には92.6%と、43.3ポイント上昇しました。

 


性自認に関する設問「男の子のからだで生まれた人はみんな自分のことを男の子だと思っていて、女の子のからだで生まれた人はみんな自分のことを女の子だと思っている」では、授業前は43.2%だった「正解」が授業後には90.8%と、47.6ポイント上昇しました。

 

 
  • 小学校高学年児童の多様な性に関する価値・態度について
「いろいろなちがいを大事にするために、あなたができる工夫はどんなことですか?」という設問への、授業後の自由記述を、以下の5つに大別し分析しました。自由記述とともに、記載します。

 


<自分らしさを大切にする、自分の「すき」や「得意」を大切にする:89%>
・今日の授業で心に残ったことは、「女の子らしく」「男の子らしく」ではなく「自分らしく」というじゅんさんの言葉が心に残りました。
・男女関係なく生きていくことはかっこいいなと思えるようになれた。次は、本当に直接そういう人に会ってみてくわしく話を聞きたいと思った。次から自分は自分らしく生きたいと思った。
・人と人のふつうはちがうから、あの人がこうならわたしもこうではなく自分じしんをだいじにする意識していきたい。自分と、ほかの人は、ちがうから、自分らしくしてもいいし、男の人が男の人を好きになってもいいし、女の人が女の人を好きになってもいいと思いました。自分は自分らしく生きればいいんだなと思いました。
・いろいろな性があってもこれが自分だよって言うのがよかったかなと思いました。
・人の悪口とかをいわないようにする。自分らしさを大切にすることだと思いました。もしもそういうことをいわれたら笑わなければいいと思いました。

<その人らしさを大切にする、尊重する:88%>
・そのいろいろな性を持っている人のことを、大切にして、その人と楽しく、交流や生活をすればいいと思う。
・いろいろな違いを当たり前だと感じる。そして、その人達がどう思うかを考える。
・もし、友達がなったとして相談して来たら、「いろいろな性があって私は良いと思うよ」と声をかけてあげて、その子が、私は私でいいんだと思えるように接してあげたり、前みたいに気持ち悪いとか思わずに逆に良いなと思えるようにしたいです。
・ふつうはみんなちがうからその人がやりたいとかすきになったらその人がやりたいようにすすめたい。
・女の子でも男でも一人一人好きなもの、好きなことはちがうし女の子なんだからとか男の子何だからと決めつけないとが大事だと思います。また相手と関わって相手に寄り添い相手の立場になって考えることも大事だと思いました。もし社会に出てそういう人、心が苦しくて自殺だとかそういうさべつも起こらないためにもこの今日学んだことを心に入れて接してあげようと思いました。

<「普通」や「あたりまえ」を決め付けない、押し付けない:80%>
・あたりまえというのをつくらず、人それぞれのことを大切にすること。また、少数派の気持ちも考え、それぞれの気持ちを尊重すること。
・自分の中のふつうを周りの人(多数派)のふつうにあわせようとせずみんなが違うふつうをもって人々と接することができれば、自分は多数派と違うと思っている人が生活しやすくなる。
・人をバカににしない、じょうしきにとらわれないで、人の気持ちをかんがえる。みんなが同じ考えではない。
・性を男・女とどちらかにきめつけるのでなく自分じしんの気持ちとして考えてあげたい。
・体が男だからこの人は男、体が女だからこの人は女とかってにその人の性別をきめつけないように、きちんとその人のことを理解するように工夫したい。

<「ちがい」を受け入れる、優しくする:63%>
・性がちがっても同じ性別の人が好きでもそれが自分できめたことだし、そう思ったのは自分なんだから自信を持って生きればいいよ、と言ってあげたいです。
・その、友達になやんでいるのなら、見たえい像のように、「自分なりに〜」「自分自身〜」というかんじで、なぐさめてあげたいし、自分だったら、「もし、そういうことがあったらすぐに、相談してね!」っていって、気を楽にさせてあげたい。「見ためなんかかんけいないよ!自分を大切にして!」って安心させてもあげたい。
・自分の「あたりまえ」や「ふつう」を人に押し付けないようにする。人の「考え」や「思い」を受け入れてあげる。
・ちがいがある人とかがこまっていたらたすける。
・もし、そういう人がいても責めたりせず、共感したり、やさしい言葉をかけてあげたいです。「ふつう」は1人1人ちがって自分のふつうと相手のふつうがちがうのが当たり前という気持ちを持って接したいです。

<否定的な言動をしないようにする(悪口をいわない、差別しない、排除しない、等):57%>
・私は、どんな性をもっている人にもやさしくして、傷つく言葉はいわないようにしたらいいと思います。そして、相手を見た目だけではんだんしないことと、いろいろな性があることをわすれないで自分とちがう性をもっていても、悪口をいわないように気をつける。
・こころの性とからだの性がちがうからといって、からかったり、ばかにしたり気持ち悪いなど、しないようにすること。心の性とからだの性がちがうひとなどがいたとしたら、その人が生きにくい環きょうを作らないように気を付けること。
・まわりとちがうからとばかにしないで、自由にはつげんできる場をつくりたい。
・できるだけ人の悪口を言わないようにする。「あたりまえ」を意識しすぎない。
・もし、心が女性で体が男性でも、笑ったりバカにしたりしないようにしたいと思いました。性は男と女2つだけじゃないんだなと思いました。
  • 結果・考察(今後に向けて)
・多様な性の授業は、小学校高学年においても、知識的側面において教育効果を発揮します。また、価値的・態度的側面についても変容が見られます。「相互理解・寛容」については、相手のことを理解したい、受け止めたいという感想だけでなく、自分のことも受け入れたいという感想があり、他者受容のみならず自己受容にもつながっているといえます。また、「公正・公平・社会正義」については、悪口をいわない、馬鹿にしないという決意があらためて言語化されています。
・このように、多様な性に関する授業は、知識的側面だけでなく価値的・態度的側面についても変容が見られることから、授業後の行動変容につながり、子どもたちがアライ(LGBTQの理解者)となっていくことが期待できます。また、セクシュアリティのちがいのみならず、全般的な「ふつう」 「あたりまえ」 などに言及していることから、「多様な性」はもちろんのこと、「多様性」に対する意識を高める教育効果があると考えられます。
・小学校において、多様な性に関する教育が、これからも広がっていくことを願います。
 
  • 学校で多様な性について教えたい先生を応援する、教材/サービス
認定NPO法人ReBitは、LGBTQを含めた全ての子どもがありのままで大人になれる社会を目指し、「学校で多様な性について教えたい」そんな教職員を応援するための、さまざまな教材やサービスを提供しています。
 

<小中学校版「Ally Teacher's Tool Kit」(無料)>
先生がLGBTQの子どもたちにとってもすごしやすい学校をつくり、子どもたちに多様な性について教えるための教材キットを制作しました。15分間の映像教材と配布資料・ワークシート、それらを活用した指導案などがセットになっていて、はじめて授業をする先生も安心です。小学校高学年版と、中学校版の2種があり、オンラインでのダウンロードも、キットの郵送も、無料で承っています。2019年、グッドデザイン賞を受賞。
小学校高学年版:https://rebitlgbt.org/project/kyozai/shougakko
中学校版:https://rebitlgbt.org/project/kyozai/chugakko


<教職員研修版「Ally Teacher's Tool Kit」(無料)>
先生自身がLGBTQについて学ぶための教材キット。40分間の映像研修、ワークシート・配布資料、研修計画書がセットになっていて、個人のeラーニングにも、教員研修にも活用できます。オンラインでのダウンロードも、キットの郵送も、無料で承っています。
なお、修了すると、修了証が発行でき、教職員同士のオンラインコミュニティに参加し、定期的な勉強会や交流会にも参加できます。
教職員版:https://rebitlgbt.org/project/kyozai/teacher/


<教職員向けLGBTオンライン情報センター「Ally Teacher's School」(無料)>
先生たちの授業づくり・学校づくりを応援する情報センターでは、
①対象年齢や使用目的にあわせて、数百種類の教材や書籍のデータベースから、ほしい資料を検索できます。
②「アライ先生」へのインタビューや実践事例を多数掲載しています。
③先生をつなぐオンラインコミュニティ「にじいろ子ども応援団」では、定期的な勉強会や交流会を開催。全国の「アライ先生」と情報交換ができます。
他にも、地域の相談先の検索、LGBTフレンドリーであることがわかるレインボーグッズの購入など、便利な機能が満載です。
詳細:https://allyteachers.org


<児童向け出張授業/教職員向け研修(有料)>
これまで小中高大学/教育委員会等で生徒/教職員向け、全国で1300回の授業/研修を提供してきました。LGBTQが講師を務め、多様な性を通じて多様性について考えます。オンラインでの実施も承っています。
詳細・ご依頼:https://rebitlgbt.org/project/education
 
  • 認定NPO法人ReBitについて

LGBTの子ども・若者特有の困難解消と、多様性を包摂する社会風土の醸成を通じ、LGBTを含めた全ての子どもがありのままで大人になれる社会の実現を目指す、認定NPO法人(代表理事 藥師実芳、2014年3⽉認可)。
企業・行政・学校などで約1300回・16万人以上に向け、LGBTやダイバーシティに関する研修を実施。
また、マイノリティ性をもつ就活生/就労者等、約3500名超のキャリア支援を行う。2016年より、ダイバーシティ&インクルージョン推進をテーマとした国内最大級のキャリアカンファレンス「DIVERSITY CAREER FORUM」を運営する。2021年度には、精神・発達障害があるLGBTを主な対象とした障害福祉サービス(就労移行支援)事業を開始予定。
団体サイト:http://rebitlgbt.org

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設立
2009年12月