2024年3月、72歳で逝去した彫刻家・舟越桂。「彫刻の詩人」舟越桂が思い語り合った、言葉と時間が宿る森へいざなう、貴重な1冊が発売されました。

舟越桂の彫刻を見る者は、その美しい佇まいとともに、彼方に注がれるまなざしに魅了されます。本書では、独特な世界感を創りだす作家の思考の輪郭が、著者・酒井忠康の記述と、二人の語りによって見えてきます。

株式会社求龍堂

美術書専門出版社の株式会社求龍堂では、『舟越桂−森の声を聴く』を、2024年6月28日に刊行しました。本書の装幀には最後の作品《書庫の中を飛ぶ》を掲載。白をまとい凜とした女性像が美しい書籍です。


「遠くの人をみるために」、「彫刻家の内なる声」、「語り出す彫刻」 


1〜3章までは、
1985年にはじめて舟越桂の彫刻を目にして以来、40年近く作家とその創作を見続けてきた元世田谷美術館館長・美術評論家の酒井忠康による、舟越作品との出会いと驚き、文学的空気を漂わせるその魅力を探る探訪について綴られます。出会いから3年後の1988年、酒井はヴェネチア・ビエンナーレのコミッショナーとして、舟越桂の作品を世界の舞台へ紹介し、それを機に作品は世界へ広く知られることとなりました。サンパウロ・ビエンナーレにも参加し、大きく飛躍した時期の濃密な時間を知ることができます。

 一方で、1991年7月18日の雨の日、初めての作品集『森へ行く日』取材のため、舟越桂のアトリエを訪れた際の出来事も惹かれるエピソードです。父で彫刻家の舟越保武の屋敷傍らに建てた、四畳半ほどのアトリエで制作していた舟越を初めて訪れた酒井は、驚くほどの狭さのスペース内の彫刻道具、何かの木片や部品、メモやスケッチ、その傍らに埋もれるように在る作品等が、作家の思索や記憶とともに詰まった様子に心打たれます。また、舟越がアトリエで制作をする時間に流れる空気も独特なもので、その感性の豊かさに触れることができます。


・作家と語る……旅、時、美、夢へ。言葉が光り羽ばたく。


4章では、              
彫刻家・舟越桂と美術評論家・酒井忠康が語り合った4つの対談を収めています。対話のなかでは、舟越桂が人生の中で目に留めた様々なことや人々が、いかにその心に留まり、魂を震わせて創作の表現につながっていくのかが、気取りない語り口で驚くほど率直に語られています。


「森の声を聴く」、「玩具からもらった時間」から見る、作家自身のまなざし



スフィンクス・シリーズで見せた、異界から冷徹に人間社会を見つめるような作品群への酒井による論考には、それまでの心地良く静謐な佇まいの作風とは大きく異なる、その激しさへの驚きが綴られ、作家のまなざしがこの世界を見ている広さと深さが伝わってきます。遠い彼方を見つめているようなまなざしが、むしろ自身の内側を見つめているのかもしれない、と自著のなかで述べていますが、舟越のまなざしは戦争という人類の最も愚かな部分の証へ、一方で、子どもたちや近しい人のための柔らかで温かな創作にも注がれています。本書は、一人の人間が心に感じたものを創りだし、形として残す、そのシンプルで勇敢な行為に人生を捧げた時間を伝えるための一冊です。


◎舟越桂の展覧会情報

【展覧会名】

彫刻の森美術館 開館55周年記念「舟越桂 森へ行く日」

【会期】

2024年7月26日 (金) ~ 11月4日 (月・休)

【会場】

彫刻の森美術館 本館ギャラリー



◎商品情報

『舟越桂−森の声を聴く』

発売日:2024年6月28日(金)

定価:2,750円(税込)

発行:株式会社求龍堂

著者:酒井忠康

主な仕様:上製本 A5正寸 132頁

企画協力:西村画廊

印刷・製本:公和印刷株式会社


◎著者プロフィール

舟越桂 (ふなこし かつら)

1951年、戦後日本を代表する彫刻家・舟越保武の長男として、岩手県盛岡市に生まれる。1975年、東京造形大学彫刻科を卒業。1977年、東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻を修了。1986年、文化庁芸術家在外研究員として1年間ロンドンで過ごす。1988年、ヴェネチア・ビエンナーレへ出品され、高い注目を集める。翌年にはサンパウロ・ビエンナーレへも出品。国内外で数多くの展覧会を開催する。1997年、第18回平櫛田中賞を受賞。2003年、第33回中原悌二郎賞受賞。2009年、第50回毎日芸術賞を受賞。2011年、紫綬褒章を受章。2023年、第11回円空賞を受賞。2024年3月29日、肺癌のため死去(72歳)


酒井忠康(さかい ただやす)

1941年、北海道余市郡に生まれる。慶應義塾大学文学部卒業。1964年、神奈川県立近代美術館に勤務。同美術館館長を経て、2004年より2024年まで世田谷美術館館長。『海の鎖 描かれた維新』(小沢書店)と『開化の浮世絵師 清親』(せりか書房)で注目され、その後、美術評論家としても活動。主な著書に『若林奮 犬になった彫刻家』『鞄に入れた本の話』『芸術の海をゆく人 回想の土方定一』(以上、みすず書房)、『早世の天才画家』(中公新書)、『ダニ・カラヴァン』『ある日の画家 それぞれの時』『彫刻家との対話』『風雪という名の鑿(砂澤ビッキ)』(以上、未知谷)、『覚書 幕末・明治の美術』(岩波現代文庫)、『鍵のない館長の抽斗』『片隅の美術と文学の話』『美術の森の番人たち』(以上、求龍堂)、『展覧会の挨拶』(生活の友社)、『横尾忠則さんへの手紙』(光村図書出版)『余白と照応 李禹煥ノート』(平凡社)などがある。


◎目次

第1章 遠くの人をみるために

第2章 彫刻家の内なる声

第3章 語り出す彫刻

第4章 作家と語る

1 旅について

2 時について

3 美について

4 夢について

第5章 森の声を聴く

第6章 玩具からもらった時間

第7章 作家を語る―あるべきところを通る線

あとがきにかえて

舟越桂  略歴


◎編集者より

舟越桂氏の作品の佇まいやまなざしには、社会の様々なことにじっと耳を傾けて、見つめることの役目に徹しているような、ユラユラとする心持ちを受け止めてほしいと依存できないような、厳しさや強さが見えるような気がします。と同時に、その強さの軸によって支えられた大きな優しさが、木目の透ける彩色がほどこされた姿に漂っている気もして、作品を見ているうちに、澄んだ気持ちになれます。


◎求龍堂について

求龍堂は1923年創業、昨年2023年、100年を迎えた美術書出版社です。社名の求龍(きゅうりゅう)はフランス語の「CURIEUX」からとったもので、「芸術的あるいは知的好奇心を求める」「常に新しきを求める」ことを意味し、名付け親は画家の梅原龍三郎です。東洋の「龍」に理想を求め、時代という雲間を縦横無尽に飛び交いながら、伝統美からアート絵本まで、常に新たな美の泉を発掘すべく出版の旅を続けています

【会社概要】

社名:株式会社 求龍堂

本社所在地:東京都千代田区紀尾井町3-23 文藝春秋新館1階

代表取締役:足立欣也

創業: 1923年

事業内容: 美術品・生活文化関連図書の出版、美術印刷物の企画製作、美術品売買

HP:https://www.kyuryudo.co.jp/

このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります

メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。

すべての画像


ダウンロード
プレスリリース素材

このプレスリリース内で使われている画像ファイルがダウンロードできます

会社概要

株式会社求龍堂

5フォロワー

RSS
URL
-
業種
商業(卸売業、小売業)
本社所在地
東京都千代田区紀尾井町3-23 文藝春秋ビル新館1階
電話番号
03-3239-3381
代表者名
足立欣也
上場
未上場
資本金
-
設立
1950年12月