2016年度 第11回「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」受賞者発表

日本ロレアル株式会社

●物質・生命科学分野 受賞者3名
●日本特別賞は、アーティスト/マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ助教 スプツニ子!氏に決定
●「女性科学者を応援する宣言書」を発表

                                                       <報道資料>

                                           2016年7月8日

世界最大の化粧品会社ロレアルグループ(本社:パリ)の日本法人である日本ロレアル株式会社(本社:東京都 新宿区、代表取締役社長:ジェローム・ブリュア)は、本日 2016年7月8日(金)、フランス大使公邸にて、2016年度 第11回「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」の受賞者発表および授賞式を実施いたしました。
  1. 「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」:                        日本の若手女性科学者が、国内の教育・研究機関で研究活動を継続できるよう奨励することを目的として、2005 年 11 月、日本ロレアルが日本ユネスコ国内委員会との協力のもと創設しました。対象者は、物質科学または生命科学の博士後期課程に在籍または、同課程に進学予定の女性科学者です。原則、各分野からそれぞれ 2 名 (計4名) 決定し、賞状と奨学金 100 万円が贈られます。昨年までに40名の若手女性科学者が受賞しており、受賞以降は、国内外で研究をはじめ、結婚・出産、次世代の育成など多様なキャリアを切り拓いています。
  2. 「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本特別賞」※:                        2010年に創設され、科学をはじめ教育の分野への夢と希望を多くの人々に与えるとともに、社会的発信力があり、若い女性のロールモデルとなる個人または団体を表彰しています。本年度の「ロレアル‐ユネスコ女性科学者 日本特別賞」には、アーティスト/マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ助教 スプツニ子!氏に決定いたしました。スプツニ子!氏は、テクノロジーやサイエンスが人々の価値観や社会にどのような影響をもたらすのかを探求する作品を数多く制作・発表しております。理系のバックグラウンドとアーティストならではの斬新な発想を融合した作品を、ソーシャルメディアなどを通じて広く国内外に訴求し世界的に注目されており、気鋭の新世代リーダーとしてその功績を高く評価しました。     ※2016年より「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本特別賞」に改称
本年度の受賞者は下記のとおりです。 (詳細については、下記プロフィールをご参照ください)
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物質科学分野
北村 未歩 (きたむら・みほ) (32歳) [2016年4月~] 高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所
                                                    (東京大学大学院工学系研究科 応用化学専攻 藤岡研究室 卒)
田仲 玲奈 (たなか・れいな) (28歳) [2016年4月~] 大阪大学大学院理学研究科 高分子科学専攻
                                                    高分子物理化学研究室
                                                    (東京大学大学院農学生命科学研究科 生物材料科学専攻博士課程
                   製紙科学研究室 卒)  
生命科学分野
丹治 裕美 (たんじ・ひろみ)   (26歳)  東京大学大学院薬学系研究科 蛋白構造生物学教室
日本特別賞
スプツニ子!(31歳)                       アーティスト/マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ助教
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ロレアル-ユネスコ 女性科学者を応援する宣言書:デジタルキャンペーン開始!
グローバル規模で女性科学者の割合は30%にとどまっており、ロレアル財団とユネスコは、改革のペースを上げるにはさらなる努力が必要であると考え、世界規模で展開するデジタルキャンペーン「女性科学者を応援する宣言書」を発表。日本では7月8日から同キャンペーンを展開し、サイエンスにおける男女共同参画を後押しする6カ条に多くの方の賛同の一票を獲得していきます。キャンペーンの成果は9月12日から14日まで、パリで開催される第9回高等教育研究における男女機会均等に関する欧州会議で発表します。
キャンペーンサイト: http://www.fwis.fr/ja/manifesto

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         2016年度 第11回「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」―物質科学分野
                   北村 未歩(きたむら・みほ)


“科学とは、人生になくてはならないもの”


<社会と研究の接点>
物質の界面で発現する特異物性の起源を解明することでより高速な次世代デバイスの実現に貢献
<研究内容> タイトル: 異なる酸化物の界面で発現する特異な強磁性の起源を放射光を用いて解明する酸化物では、それ自体は磁石ではない物質であるにも係らず、その同士をくっつけるとその界面が磁石になるという非常に興味深い現象が現れます。この界面磁石の起源を解明することを目的とし、原子レベルの精度で構造をきちんと制御した界面の作製と、元素毎に物質中の電子の状態や磁石の状態を明らかにすることができる「放射光」という魔法の光を高いレベルで組み合わせることによって研究を行ってきました。


本研究では、酸化物を1層ずつ堆積しながら、界面で起こる異種酸化物間の電子のやりとりを放射光によって精密に評価するという独自の方法により、やりとりした電子が両者でどのように界面から広がっていくのかを決定することに成功しました。この界面において磁石になるという物性の発現には、酸化物同士の界面で起こる両物質間の電子のやりとりと、やりとりした電子が物質によって空間的に閉じ込められたり広がったりすることが重要であることを明らかにしました。


今後は、この研究で得られた知見に基づき適切な物質の選択や界面の形成を行うことで、界面での電子のやりとりを制御し、新規な界面磁石を設計・制御したいと考えています。これにより、この酸化物の界面磁石を用いて、エネルギーの消費を抑えながら高速な情報処理が可能な新しいデバイス(スピントロニクスデバイス)への展開が期待されます。

 

                   2016年度 第11回「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」―物質科学分野
                                                         田仲 玲奈(たなか・れいな)

 

“科学とは、探究心を与え続けてくれるもの”


<社会と研究の接点>
高性能で多機能な、環境に優しい植物由来の新素材「セルロースナノファイバー」の実用化による、循環型社会の構築に貢献
<研究内容> タイトル: 物質の流動と変形を評価するレオロジー測定を用いた、セルロースナノファイバーのアスペクト比(長さ/幅)の簡易評価法の確立
現在、環境に優しい新たな材料やエネルギーに関する研究が世界中で行われています。私は、樹木から得られる新素材「セルロースナノファイバー(CNF)」の研究を進めてきました。「髪の毛の約1万分の1の太さ」のCNFは、鋼鉄の5分の1の重さで5倍強いとも言われており、環境に優しい高性能・多機能な新素材として注目されています。これまでに、大人用紙おむつの消臭剤やゲルインクボールペンのインクに実用化されているほか、防音材・断熱材などさまざまな用途への応用が期待されています。

CNFの主原料は、山で放置され使われていない樹木です。こうした樹木を化学的に処理した後、水中で細かく解きほぐすことにより、CNF分散液(=CNFが無数に入った水)を得ることができます。私たちの生活に役立つ製品を実際にCNFから作るためには、まずCNFの性質をよく調べる必要があります。しかし、CNF入りの水は非常にドロドロしており(右図)、CNFの性質を調べることは難しいと考えられてきました。
 

本研究では、レオロジー(=物質の流動と変形を扱う学問)という別の観点を導入することで、「数億本以上」のCNFのアスペクト比(=長さ/幅)を、短時間で簡便に評価することができました。今後は、これまで接点のなかったさまざまな分野の研究者と協力することで、産業レベルでCNFを利用する際に重要な課題を解決し、さらなる実用化の促進に貢献していきたいと思います。 

                       2016年度 第11回「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」―生命科学分野
                                                         丹治 裕美(たんじ・
ひろみ)

  “科学とは、ワクワクさせてくれるもの”

<社会と研究の接点>
抗ウィルス薬や自己免疫疾患治療薬の開発に貢献

<研究内容>タイトル:自然免疫で働くセンサータンパク質がウィルス感染を感知する仕組みの解明

自然免疫系は、ウィルスや細菌などの病原体から我々の体を守る働きをしています。自然免疫系のタンパク質であるToll様受容体 (TLR) は、病原体由来の分子を検知して自然免疫を発動する機能を担っており、自然免疫系の最前線に位置しています。

TLRファミリーのひとつであるTLR8は、ウィルスの遺伝子であるRNAを検知する分子であり、エイズやインフルエンザなどのさまざまなウィルス感染の感知に関与すると考えられています。実際に、TLR8を標的とした薬剤が既に開発されています。しかし、TLR8がどのようにRNAや薬剤を検知し、自然免疫応答を引き起こしているのかは、これまで明らかになっていませんでした。

本研究では、TLR8のX線結晶構造解析に取り組み、その立体構造を世界で初めて原子レベルで可視化しました。その結果、TLR8が薬剤やRNAを検知する詳細な仕組みと、TLR8が自然免疫応答を引き起こす仕組みを明らかにすることに成功しました。TLR8は全身性エリテマトーデス(全身の臓器に原因不明の炎症が起こる)などの自己免疫疾患にも関わっていることが報告されていることから、この研究成果は抗ウィルス薬や自己免疫疾患治療薬などの創薬への応用に大きく貢献すると考えられます。

             2016年度 第11回「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本特別賞」

                        スプツニ子!
          アーティスト/マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ助教

 

                                    (C)Tomoya Uehara
1985年7月1日東京都生まれ、31歳。ボストン・東京在住
アーティスト。英国のインペリアル・カレッジ数学科および情報工学科を卒業後、英国王立芸術学院(RCA)デザイン・インタラクションズ専攻修士課程を修了。2013年よりマサチューセッツ工科大学(MIT) メディアラボ 助教に就任し、デザイン・フィクション研究室を創設。テクノロジーやサイエンスがいかに人の価値観や社会に影響していくか探求するアート作品を制作、発表している。

 最近の主な展覧会は「第三回瀬戸内国際芸術祭」(ベネッセアートサイト常設作品、2016)、「NEW SENSORIUM」(ドイツZKMアートセンター、2016)など。VOGUE JAPAN ウーマン・オブ・ザ・イヤー2013受賞。2014年FORBES JAPAN 「未来を創る日本の女性10人」選出。2016年4月より、スーパープレゼンテーションTED(NHK)のMCを務める。著書『はみだす力』(宝島社)。

【受賞理由】“未来を創造するサイエンス”を独自の視点で多様なソーシャルメディアを通じてグローバルに発信
生理マシーン、タカシの場合。》(2010)、《ムーンウォーク☆マシン、セレナの一歩》(2013)をはじめ、
2016年には、瀬戸内国際芸術祭2016(豊島・瀬戸内)にて、初の大規模な常設施設「豊島八百万ラボ」をオープンし、《運命の赤い糸をつむぐ蚕–タマキの恋》を展示。
好きな人にその気持ちを伝えることができない不器用な理系女子の主人公が、自ら研究する遺伝子組み換え蚕によって「運命の赤い糸」を創作する映像インスタレーション。

国立研究開発法人農業生物資源研究所とのコラボレーションにより、恋におちる成分と言われるオキシトシンと、赤く光る珊瑚の遺伝子を導入した蚕から「運命の赤い糸」を完成。

アーティストの斬新な発想と最先端の生物工学を融合したユニークな取り組みが国内外で注目される。未来を創造するサイエンスへの関心を高めるべく、これらの作品をソーシャルメディアを通じて広く訴求し、新世代のリーダーとして世界的に高い評価を得ている。

科学の進歩や未来の創造に関わる人に多様な視点(ダイバーシティー)があるのはとても大事と考える。研究室では4人中3人が女性であり、とても面白い視点で作品制作している才能ある学生であると、女性の活躍に高い期待を寄せる。

[Website]         http://sputniko.com/
[Twitter]          https://twitter.com/5putniko
[Facebook]       https://www.facebook.com/pages/Sputniko/125260300663

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「ロレアル‐ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」選考委員会

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ロレアルグループについて (www.loreal.com)

1909年にパリで化学者ウージェンヌ・シュエレールによって設立され、世界130 カ国・地域で事業を展開し、82,900人の従業員を有する世界最大の化粧品会社です。「ランコム」「シュウ ウエムラ」「キールズ」「イヴ・サンローラン」「ロレアル パリ」「ロレアル プロフェッショナル」「メイベリン ニューヨーク」など、32ブランドをグローバル規模で展開しています。創立当初から研究活動を最重要視し、化粧品科学を一つの独立した科学分野へと育て上げてきました。また、女性研究者を積極的に登用しており、3,870名の研究者のうち、女性が占める割合は70%に上ります。
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日本ロレアルについて www.nihon-loreal.jp

1963年から事業を開始し、1996年に日本法人である日本ロレアル株式会社が設立されました。2,500人の従業員を有し、化粧品の輸入、製造、販売、マーケティングを行っています。現在、上記のブランドを含め22のブランドを取り扱っています。1983年に日本に研究開発拠点を置き、現在、日本ロレアルリサーチ&イノベーションセンター(川崎市・溝の口)として、日本をはじめ、アジアの研究開発の中心的な役割を担っています。220名以上の研究者を有し、うち女性研究者は58%超を占めています。2005年から生命・物質科学分野における博士後期課程在籍または進学予定の若手女性科学者を支援する奨学金 「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」を推進しています。2016年を含め、43名の若手女性科学者が受賞しています。

●デジタルキャンペーン「女性科学者を応援する宣言書」は、当サイトからもご署名いただけます。

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ユネスコについて (www.unesco.org)

ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)は、諸国民の教育、科学及び文化の協力と交流を通じた国際平和と人類の共通の 福祉の促進を目的とした国際連合の専門機関です。本部はフランス・パリにあり、2014年4月現在の加盟国数は195カ国です。科学においては、技術、イノベーションや教育の発展に注力しているほか、海洋資源や生物多様性の保全、科学的知識に 基づく気候変動や自然災害への対応策に取り組んでいます。とりわけ研究において、あらゆる人種差別の撤廃と男女共同参画を推進しています。

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日本ユネスコ国内委員会について (www.mext.go.jp/unesco/index.htm)

日本では「ユネスコ活動に関する法律」に基づき、文部科学省に置かれる特別の機関として日本ユネスコ国内委員会が設置 されています。日本ユネスコ国内委員会は、教育、科学、文化等の各分野を代表する60名以内の委員で構成され、我が国におけるユネスコ活動の基本方針の策定、ユネスコ活動に関する助言、企画、連絡及び調査等を行っています。日本ユネスコ 国内委員会事務局は文部科学省に置かれ、文部科学省国際統括官が日本ユネスコ国内委員会事務総長を務めています。

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・報道機関からのお問い合わせ先   日本ロレアル株式会社  コーポレート・コミュニケーション本部 船津
                    TEL: 03-6911-8104    EMAIL: lisa.funatsu@loreal.com
・応募に関するお問い合わせ先     「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」事務局
                          EMAIL: fwis-japanfellowships@loreal.com

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会社概要

日本ロレアル株式会社

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URL
https://www.loreal.com/ja-jp/japan/
業種
商業(卸売業、小売業)
本社所在地
東京都新宿区西新宿3-7-1 新宿パークタワー
電話番号
-
代表者名
ジャン-ピエール・シャリトン
上場
未上場
資本金
-
設立
1996年07月