コロナ影響下の消費行動レポート

~高年齢層のECサイト活用加速と変化する巣ごもり消費~

三井住友カード株式会社

三井住友カード株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:大西 幸彦、以下:三井住友カード)は、保有するキャッシュレスデータ(注1)を、データ分析支援サービス「Custella(カステラ)」を用いて集計し、新型コロナウイルスの感染拡大がもたらす消費行動の変化を、株式会社顧客時間(本社:大阪府大阪市、共同CEO 代表取締役:岩井琢磨・共同CEO 取締役:奥谷孝司、以下:顧客時間)と共同で分析いたしました。
 新型コロナウイルスによる社会経済への影響は甚大ですが、感染拡大がもたらす生活活動の制限は、自ずと私たちの消費行動を変化させています。事業者の皆様へ、キャッシュレスデータを顧客軸で着目した消費行動の変化をご提示することは、コロナ感染期(注2)の顧客行動を捉えた対策を考えるヒントに、さらにはコロナ感染収束後に発生する顧客行動の変化を捉えるヒントになるだろうと考えています。
 三井住友カードでは、今後も様々な角度から新型コロナウイルスによる経済への影響を分析し、様々な事業者の皆様及び社会に対して、世代、地域、業種などの各視点から見出せる顧客行動の変化を示してまいります。

(注1)三井住友カードが保有するクレジットカード等による取引等に関する統計データ
(注2)コロナ感染期:2月28日以降をコロナ感染期として顧客行動の変化を分析
 

・三井住友カード株式会社が発行するクレジットカードのデータを個人および利用店舗が特定されないよう個人情報保護法および関連法を順守し、三井住友カードにて適切な加工・統計化処理を実施したデータにて分析をおこなっています。
・加盟店の業種区分は三井住友カードにて分類した51区分となります。
・三井住友カードのデータのみを分析したものであるため、実態の傾向とは異なる可能性がございます。
・資料上の考察は三井住友カード及び顧客時間独自の想定見解であり、確定事項ではございません。


調査結果要旨

 今回は2020年1月〜4月15日までのデータから、キャッシュレス決済状況の全体、業種別、世代別推移に着目し、分析を行いました。
 多くの業種でコロナ感染拡大に伴い決済件数・金額が減少していく中、取引が増加している業種からは日常生活の変容による「巣ごもり消費」の顕在化と、社会情勢の変化に伴う買物の質の移り変わり、さらには高年齢層のEC利用への「デジタルシフト」の兆候など、消費行動の変化を垣間見ることができます。

1.3月以降、多くの業種で決済件数・金額が落ち込むが、買い溜めや生活変化による決済は増加
 
■コロナ直前のカード決済の伸びとコロナ感染期以降の決済状況
 三井住友カードの決済人数・件数を2019年と2020年の1〜3月で比較(図1)すると、2020年はキャッシュレス推進の影響もあり各月とも増加(※1)していますが内容に変化が生じています。
 新型コロナウイルスによる消費影響がほぼ無かった2020年1月は、利用人数114%・利用件数120%・利用金額111%と、前年を大きく上回っています(※2)。
 この2020年1月の前年同月比(※2)を「ベース増加率」と仮定し、この影響を排除したものが(図2)です。日本国内にもコロナの影響が徐々に現れ始めた2月は利用人数・件数が前年比でまだ増加(※3)していますが、コロナ自粛ムードが顕在化した3月は利用人数・件数・金額全てが減少(※4)しています。

 

 

 


 業種別の動向(図3)でも、2月はまだ多くの業種が前年同月比で増加していますが、3月はほとんどの業種で減少しています。このような状況の中で、3月に件数も金額もプラスとなった業種は「ホームセンター」「スーパー」「ペット関連」「ECモール・通販」「通信サービス」「美容品」であり(※5)、在宅時間増に伴う消費の傾向を窺い知ることができます。
 

 


 決済単価の月別前年比較(図4)からも、新しい生活需要を中心に高単価商品の動向が活性化する2月から3月にかけて、本来ならば決済単価が上がるところ、上がらずじまいとなっていることが分かります(※6) (※7) 。
 

 


■コロナ関連検索数増加と、買い溜めや生活変化による決済数の増加
 さらに、コロナ関連ワードの検索数とキャッシュレス決済件数を日別で比較すると(図5)、不要不急の外出自粛やトイレットペーパーの不足等、目に見える生活への影響が増えてきた3月3週目以降のコロナ関連ワード検索数が増加していることが分かります (※8) 。この期間は「買い溜め」や在宅勤務急増による「生活変化」関連であると思われる消費も増加しています(図11にて後述)。一方で4月以降は検索件数の高止まりと反比例するような決済件数の減少傾向が分かります(※9)。
 

 


2.業種別ではホームセンター、スーパー、EC・通販などが伸長、「巣ごもり消費」が顕在化

■生活必需品取り扱い業種や、巣ごもり消費によるEC・通販が増加
 3月の業種別決済件数・金額の前年伸び率(図6・7)では、「ホームセンター」「スーパー」など、生活必需品を取り扱う業種が決済件数・金額ともに前年から大きく伸長しています(※10)。また、「ECモール・通販」「ペット関連」「通信サービス」の伸びは、小中高校等の休校や出社・外出自粛要請等に伴う在宅時間増加により、「巣ごもり消費」と称される消費行動が窺えます。
 決済件数の増加に拘わらず決済総額が減少した5業種(「ディスカウントショップ」「家電量販店」「ドラッグストア」「家具・インテリア」「健康食品」)(※11)では、例えばテレワークのために家電量販店でPC周辺機器、家具・インテリア店舗でデスクやチェアを購入のように、日々変わる状況下、突発的に準備を要するものを都度都度頻度高く来店して購入する(従って単価も低い)消費行動が想像されます。
 一方で「レジャー施設」「旅行代理店」「美術館・博物館」「映画・劇場」「交通関連」などの落ち込み(※12)は、企業自らの営業自粛や、顧客の「三密」回避の行動変容を如実に現していると言えます。
 

 

 


3.高年齢層は実店舗よりECにシフト、消費行動が大きく変化

■世代を問わず進むキャシュレス行動も、3月に入り鈍化
 決済金額の前年比を世代別で見ると(図8)、1月は70代の伸び率が122%と高く(※13)、高年齢層も含めキャッシュレス行動の増加(※14)が進んでいましたが、3月は全世代で減少傾向(※15)となっています。
 

 


■高年齢層で加速するデジタルシフト
 新型コロナウイルスは高齢者の重症化リスクが高いとされるなか、高年齢層(60、70代)の行動がどのように変わったのかを検証しました(図9)。一つの注目するべき点は、「ECモール・通販」のシェア増加です。日常的にECモール・通販を利用しているとされる20・30代よりも、高年齢層における増加幅が大きいことが分かります(※16)。ECモール・通販の増加幅が「スーパー」を上回っていることからも、高年齢層の方たちが自らの身を守るために、外出を必要としないECモール・通販を活用している消費行動の変化が推測できます。
 

 


■“魅せる”アパレルから、機能性を重視した選択へ
 決済金額伸長業種(図10)での、20・30代の「スポーツブランド」の伸長(※17)からは、テレワーク推奨によるアパレルに対する消費行動の変化を捉えることができます。前述した(図6)(図7)などから、「紳士服」「衣服ブランド」の落ち込みは把握できますが、働き方の変化が、現実の場で人と会うことを重視したファッション性優先のアパレル選びではなく、「体に負担をかけない」「長時間座っていても楽」などの機能性重視でスポーツブランドを選ぶようなアパレルの選択基準にも影響を及ぼしている様子は、家中中心の生活においては自然な流れであると言えるでしょう。
 

 


4.緊急事態宣言後は、家中時間充実のための消費行動へ

■4月に入り玩具・娯楽品が著しく伸びる
 4月7日の緊急事態宣言以降、4/8週の週別業種別傾向(図11)では、さらなる在宅勤務増に伴うテレワーク関連消費と呼べる「通信サービス」や「家電量販店」、「ECモール・通販」の伸長だけでなく、「玩具・娯楽品」の伸びが著しく、買物の質も変化していることが分かります (※18) 。
 

 


 世代別の決済金額伸長業種ランキング(図12)でも、玩具・娯楽品が全体及び20〜40代での伸長率1位(※19)になっています。同業種にはゲーム機・ゲームのダウンロード購入・スマホゲームの課金等も含むため、これまでの必需品中心の消費行動から、外出自粛の長期化も視野に入れた、家中での余剰時間を充実して過ごす目的への消費行動変化の現れでもあると言えます。
 

 


 これを裏付けるように、ゲーム・EC関連のワードは、4月に入り検索数が伸びています(図13)。特にスイッチ(Nintendo Switch)関連ワードは、本体やリングフィットアドベンチャーの在庫不足の背景もあり検索数が大きく増加しています。         
※Nintendo Switchは、任天堂の商標です。
 

 


調査結果要旨に対する考察と今後の検証テーマについて

 新型コロナウイルスの影響により経済活動は大きく停滞を余儀なくされていますが、そのなかでも決済データを業種別や世代別で分析することにより、従来とは異なる顧客の消費行動の変化を知ることができます。
 特に、高年齢層の「安全志向」重視の行動だと考えられるECサイト活用のデジタルシフト傾向も見逃せない行動のひとつです。この傾向を一過性の変化としてではなく、世代を問わないデジタルシフトの加速だと理解すると、ECサイトには高年齢層にも使いやすい操作性や画面構成・表現の考慮が、これまで以上に必要とされるでしょう。また、「巣ごもり消費」が外出自粛の長期化により必需品から娯楽品へ買物対象が移り変わっている状況なども含め、刻々と変わる社会情勢と決済データを時系列で追うことは、「コロナ感染期」「コロナ感染収束後」の消費行動を考える上で、大事な示唆の発見に繋がると言えます。
 今後は、段階的な緊急事態宣言の発令による消費行動の地域差についての検証や顧客インタビューなどから、消費行動変化の考察をさらに深めていきたいと考えています。


データ分析支援サービス「Custella」について

 今回の分析は、三井住友カードが提供するデータ分析支援サービス「Custella」によって実施いたしました。 「Custella」では三井住友カードが保有するキャッシュレスデータを、個人・加盟店が特定できないよう統計化された顧客属性データ(新規、リピーター、インバウンド等)や、顧客行動ごとに集計し、統計化された購買実績データ(平日、休日、時間帯、エリア等)など、様々な切り口で容易に集計し、データを「見える化」し、三井住友カード加盟店様のマーケティングを支援する分析サービスです。

 

「Custella」について詳しくはこちら
https://www.smbc-card.com/camp/custella/index.html

株式会社顧客時間について
 

 チャネルを変え、顧客とのつながりを強固にし、チャネルから事業変革を導く、「Marketing Design Network」カンパニー。
 独自メソッドを軸に、DX/D2C/OMOなどの領域で、事業会社と多領域の外部マーケティング人材との協働により、事業開発やチャネル変革を支援します。

顧客時間について詳しくはこちら
https://www.kokyaku.co.jp/
 

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会社概要

三井住友カード株式会社

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URL
https://www.smbc-card.com/index.jsp
業種
金融・保険業
本社所在地
東京都江東区豊洲二丁目2番31号 SMBC豊洲ビル
電話番号
03-6634-1700
代表者名
大西 幸彦
上場
未上場
資本金
340億円
設立
1967年12月