海外スポーツベッティングサイトに関する調査を実施
~我が国の違法市場が6.5兆円に拡大~
一般財団法人スポーツエコシステム推進協議会(本部:東京都渋谷区、代表理事:稲垣 弘則)は、すべてのステークホルダーと共にスポーツ産業を起点とするエコシステムの形成・発展を実現すべく設立された一般財団法人であり、元アスリートやスポーツ団体関係者により構成される評議員会の下、スポーツ関連企業など合計115社の会員を擁し、また、スポーツ団体など合計8団体のパートナー団体と連携して活動を行っております。当協議会では、スポーツの価値向上とスポーツ産業の発展を目指し、「権利の明確化」「社会的価値の創出」「DX」の各ミッションを推進する中で、新たなルール整備や資金・人材が循環するシステム作りの在り方を検討してまいりました。
その活動の一つとして、この度「海外スポーツベッティングサイト に関する調査[1]」(以下「本調査」といいます。)を実施いたしましたので、その結果を公表させていただきます。
◆本調査の背景と概要
近年、日本居住者向けに運営されている海外オンラインカジノサイトへのアクセスが増加していることを受け、昨年のオンラインカジノによる賭博事件での摘発者は前年の約2.6倍の279人に急増しており、日本居住者向けに日本語のオンラインカジノサイトを運営する海外事業者やオンラインカジノサイトへ誘引するアフィリエイターの存在が社会問題として注目されています。特に、2025年3月には、警察庁が実施した実態調査の結果[2]が公表され、オンラインカジノの利用経験者が国内で約337万人、年間賭け金総額は約1.2兆円と推計されるほか、経験者の4割は「違法性を認識していなかった」と回答したことは大きな話題となりました。また、スポーツ選手によるオンラインカジノの利用も相次いで発覚しており、各スポーツ団体において対応に追われている状況にもあります。
警察庁による実態調査の対象となったオンラインカジノには、スポーツを賭けの対象とする違法なスポーツベッティング(以下「違法スポーツ賭博」といいます。)が含まれており、バカラやポーカー等の賭博とともに、違法スポーツ賭博も一つのサイトでできるオンラインカジノも複数確認されています。当協議会では、設立当初から、違法スポーツ賭博に関する調査・分析を行ってきましたが、この度、当協議会において、海外データプロバイダー等を通じて改めて独自の調査を行った結果、2024年における日本居住者が日本居住者向けに運営されている海外スポーツベッティングサイトを利用することにより形成される市場(以下「日本違法越境市場」といいます。)の規模が約6.5兆円と大きく拡大していることが判明しました。[3][4]
同時に、諸外国におけるスポーツベッティング市場の急速な拡大に伴って、日本を含む全世界において日本のスポーツを賭けの対象とするスポーツベッティング市場(以下「フリーライド市場」といいます。)も同じように拡大していることが確認されています。フリーライド市場の規模について、当協議会では2022年に推定値を公表[5]いたしましたが 、2024年におけるフリーライド市場の規模が約4.9兆円と推計されることが改めて確認されたことから、この度、主要競技別の市場規模内訳等とともに公表することにいたしました。フリーライド市場については、日本のスポーツに関するデータや映像が無断で取得・利用される「ただ乗り」(フリーライド) の事例[6]が生じています。
これに加えて、日本からアクセス可能な海外スポーツベッティングサイトの一部における権利侵害やアフィリエイト広告の実態についても調査を行いました。本調査の結果の詳細は、以下の通りです。
◆本調査の結果
1. 日本違法越境市場及びフリーライド市場の拡大
本調査の結果、日本からアクセス可能な複数の海外スポーツベッティングサイトにて、日本の野球、サッカー、バスケットボール、テニス、ゴルフ等の主要プロスポーツの試合のほか、大相撲、高校野球等の試合も賭けの対象になっており、そのほとんどが日本語でサービスを提供していることが確認されました。
加えて、当協議会では、業界最大手の海外データプロバイダー及び海外コンサルティングファームに依頼し、複数のアプローチにより日本違法越境市場及びフリーライド市場に関する市場規模の金額算定を試みました。
その結果、2024年における日本違法越境市場の規模は年間賭け金総額約6.5兆円と推計され、そのうち日本のスポーツを対象とした日本居住者による年間賭け金総額は約1兆円と推計されることが判明しました。2024年度の日本におけるスポーツくじの年間賭け金総額は約1,336億円(予想系約121億円、非予想系約1,215億円)であることを踏まえると、日本違法越境市場は日本において巨大なマーケットを形成しているといえます。
また、2024年におけるフリーライド市場の規模は年間賭け金総額約4.9兆円と推計されることが確認されました。フリーライド市場において賭けの対象となった日本のスポーツの主要競技別内訳(最下部の図)によれば、年間賭け金総額約4.9兆円の半分を超える約2.9兆円が日本のサッカーの試合に対して賭けられており、主要競技毎の国別シェア内訳(最下部の図)によれば、主に中国を中心としたアジア諸国や米国居住者が日本のスポーツを対象とした賭けを行っていることが判明しました。
日本違法越境市場及びフリーライド市場の規模の詳細は以下を、その他競技別の市場規模内訳等は最下部の図をご参照ください。

2.スポーツベッティングサイトやその広告上での権利侵害の可能性
違法越境市場及びフリーライド市場のいずれにおいても、海外スポーツベッティングサイトを利用した賭けが行われておりますが、本調査の結果、日本からアクセス可能な海外スポーツベッティングサイトの一部において、著作権、肖像権・パブリシティ権等の権利を侵害する可能性のある態様でサービスを提供している例が散見されました。
具体的には、下記のような態様でのサービス提供が見受けられました。
①スポーツベッティングサイトのベッティングページにおいて、画面上部に日本のプロスポーツの試合映像をライブ配信し、画面下部からベッティングが可能となるサービスを提供している例(ベッティングをしなくともライブ配信の視聴は可能)
②スポーツベッティングサイトの日本のプロスポーツの試合トップページにおいて、チームのロゴを使用している例
③SNSを含むスポーツベッティングサイトの広告において、様々なスポーツの選手のユニフォームを着用した肖像等を使用している例
上記のような態様でサービス提供を行う海外スポーツベッティング事業者は、日本居住者向けの違法なサービスを提供しているだけでなく、著作権、肖像権・パブリシティ権等の権利に対する極めて重大な権利侵害を行っている可能性があると言わざるを得ません。また、選手の肖像等が海外スポーツベッティングサイトの広告宣伝等に用いられることにより、選手が海外スポーツベッティング事業者による日本居住者向けの違法なサービスを積極的に勧めているかのように受け取られる可能性があります。
3.アフィリエイト広告の増加
本調査の結果、オンラインカジノと同様に、日本違法越境市場において、ブログやSNS等を利用して日本居住者向けに運営されている海外スポーツベッティングサイトの広告宣伝を行い、その成果に応じて報酬を受け取るアフィリエイターが多数存在することも確認されました。
アフィリエイターは、海外スポーツベッティング事業者又は仲介事業者から、紹介したユーザーの毎月の負け金総額から約20~30%に相当する金額を継続的に受け取る仕組みになっていることが多く(下図)、日本違法越境市場の約6.5兆円という市場規模を前提とした場合には、年間約1,000億円規模の金銭がアフィリエイターに対して支払われている可能性があると考えられます。
上記の収益性の高さから、アフィリエイト広告の増加に歯止めがきかない状況になっていると考えられます。近時、アフィリエイト広告によりユーザーをオンラインカジノに誘導した日本居住者が常習賭博罪の幇助の疑いで逮捕される事例が出てきていますが、スポーツベッティングのアフィリエイト広告に関しても同様の摘発が行われる可能性があります。

◆今後の方針
当協議会はこれまで、日本違法越境市場及びフリーライド市場の規模が拡大することに伴い、八百長を含む不正操作・腐敗のリスクをはじめ、あらゆるリスクから選手を守るために情報発信を行ってまいりました。
本調査の結果、上記1.の通り、日本違法越境市場の規模は年間賭け金総額約6.5兆円、フリーライド市場の規模は年間賭け金総額約4.9兆円と推計されることが確認されました。また、上記2.の通り、海外スポーツベッティングサイトの中には、著作権、肖像権・パブリシティ権等の権利を侵害する可能性のある態様でサービスを提供している例が散見されました。
諸外国においては、欧州評議会を中心に、マコリン条約[7]に基づいて「ナショナル・プラットフォーム」と呼ばれる情報集約・連携組織が各国で組成され、ナショナル・プラットフォーム・ネットワーク(コペンハーゲングループ)を通じた国際的な連携が進められています。これにより、各国における情報連携体制のもと、違法スポーツ賭博対策を含む不正操作・腐敗防止に関する先進的な対応・取組が行われていますが、日本においては、こうした体制構築、対策等が遅れているのが現状です。
このような状況を受けて、当協議会では、主要なスポーツ関連団体と法律専門家を中心とした勉強会を組成し、欧州評議会をはじめとした海外関係機関や海外スポーツ関連団体とともに、日本違法越境市場の問題を含めた違法スポーツ賭博対策、フリーライド市場対策等に関する議論を進めております。当協議会は、引き続き情報発信や関係省庁に対する情報提供を行いながら、違法スポーツ賭博やフリーライド市場に関する調査、対応策の検討等を行ってまいります。
① 日本違法越境市場
(1)賭けの対象となった日本のスポーツの主要競技別内訳(2024年)

(2)賭けの対象となった全世界のスポーツの競技リーグTOP10(2024年)

② フリーライド市場
(1)賭けの対象となった日本のスポーツの主要競技別内訳(2024年)

(2)賭けの対象となった日本のスポーツの主要競技毎の国別シェア内訳(2024年)


③ その他
(1)海外スポーツベッティングサイトにおいて賭けの対象となったスポーツの競技別内訳、及び海外スポーツベッティングサイトが利用された国/地域別内訳(2024年)

◆協議会ホームページ
◆本件の問い合わせ先 広報窓口
mail: pr@council-sep.org
■注釈
[1] スポーツ競技の不正操作の問題に取り組む国際的な協力体制を推進する法的枠組みを世界で初めて提示した条約
[2] 一般財団法人スポーツエコシステム推進協議会「スポーツ DX ファクトブック」(2022年4月)(https://council-sep.org/resource/pdf/documents/share/スポーツDXファクトブック.pdf)。
[3] 具体的な態様としては、ライツホルダーから権利許諾を受けていない第三者が試合会場に観客として入場し、インカムの使用や動画撮影により、試合情報を即時に外部に送信・伝達しているケースが見受けられます。
[4] 株式会社シード・プランニング「令和6年度警察庁委託調査研究 オンラインカジノの実態把握のための調査研究の業務委託報告書」(2025年1月)。
[5] 警察庁が実施した実態調査の結果とは金額を異にしますが、当該調査結果ではアンケート調査結果に基づく推計値を算出しており、当協議会が実施した調査とは調査方法が異なることが理由となりますので、当協議会の調査結果は警察庁の調査結果を否定するものではございません。
[6] 上記の通り、本調査の対象は、海外において事業を行うことを認められた事業者が運営するサイトに限定しており、いかなる国においてもライセンス等を取得していない事業者が運営するサイトを利用するケースは多いと想定されるものの網羅できていないことから、日本においては、約6.5兆円の日本違法越境市場を超えるさらなる甚大な規模の違法市場が拡大している可能性がございます。
[7] 本調査では、海外スポーツベッティングサイトのうち、少なくとも海外においては合法的にライセンスを取得するなどして事業を行うことを認められたスポーツベッティング事業者が運営するサイトに限定して調査を実施しております。
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像