3Dプリントで実現するサイトスペシフィック・アート
― 積彩、「Whispering Pulse -鼓動のささやき-」を麹町弘済ビルディングに設置 ―
株式会社積彩（代表取締役 大日方 伸、[本社:東京都荒川区]、以下「積彩」）は、
公益財団法人 鉄道弘済会が新築する「麹町弘済ビルディング」のエレベーターホールに、3Dプリントによるアートウォール「Whispering Pulse -鼓動のささやき-」を制作しました。
建築空間に呼応して生まれるサイトスペシフィックアート
設置場所となった麹町弘済ビルディングは、四季折々の植栽がもたらす風景の美しさが大きな魅力です。積彩は、その風景や季節の移ろいを、外と内をつなぐエレベーターホールに映しとることで、室内にいながらも自然の気配を感じられる空間を目指しました。
建物は新宿通りのカーブが交わる交差点の頂点に位置し、街の動きや風の流れが交わる地点でもあります。「Whispering Pulse」のフォルムは、そこに集まり内部へと流れ込むエネルギーを可視化するように、緩やかな曲線と曲面を重ねています。
「働く人、訪れる人、ここに集う人々同士が繋がり、新たな発見、新たな価値を創造する場」。
このビルが掲げるコンセプトと共鳴して生まれた「Whispering Pulse」は、まさにこの場所だからこそ成立したサイトスペシフィック・アートです。
対話と試作を繰り返す、実験を重視したプロセス
作品制作は、表現の実験から始まりました。素材の組み合わせや形状の方向性を探るために、様々な表現の試作を行い、その過程を経て今回のコンセプトが導き出されました。また、コンセプト確定後も、3Dプリントによる実寸試作を繰り返し、クライアントや設計チームとの対話を重ねながら制作が進行しました。
3Dプリントの強みは、試作を細かく、さらに本番と同じ装置・材料で行えること。常に最終品と同じクオリティで形や質感を確認しながら、一歩ずつ完成形に近づけて行きます。
今回の制作でも、サンプルを何度も出力し、フィードバックを重ね、建物や空間のコンセプトを丁寧に可視化することで、その場所だからこそ生まれる一点ものを形にしていきました。 ひとつひとつの要素を丁寧に検証しながら形を見つけていくプロセスは、“実験の延長線上に完成がある”という大日方の制作姿勢を体現しています。
小型3Dプリンタでつくるダイナミックな大型曲面
「Whispering Pulse」は、積彩がこれまでに手がけた中でも最大規模の3Dプリントアート作品です。横幅2.5m 高さ3.6mほどの壁面を埋め尽くす300枚のパネルは、約30台の小型3Dプリンタを同時に稼働させることで製造されました。
形状と色をわずかに変えながら設計したパーツを連ねることで、個々のパーツが持つ微細な差異が重なり合い、多様な表情を持つダイナミックなフォルムが生まれています。
すべてのパーツを異なる形で制作できる3Dプリントの特性を活かすことで、小さなプリンタからでも今回のようなスケールの作品が実現しました。
このプロセスは、3Dプリント表現の領域をより自由で豊かなものへと拡張しています。
研究と実践から生まれる新しい表現
積彩は、日々の研究とプロジェクトごとの実験を通し、その場所に最もふさわしい表現を探り続けています。3Dプリントで着色まで一体的に行う独自の手法によって、同じ素材と装置から無数の表現を生み出し、積彩でしか到達できない全く新しい視覚表現をつくり出しています。
実験から生まれる多様な表現は、建築や空間の文脈に合わせて再構築され、空間体験の価値を高めます。
「Whispering Pulse」では、透明材を含む三色の樹脂を同時に積層することで、見る角度や光の当たり方によって色が変化する壁面を作り出しています。ビルを訪れるたびに異なる印象を与え、まるで室内にいながら自然の変化を鑑賞しているような体験をもたらします。彫刻的な立体感と、積層によって生まれる繊細な表情が共存するその造形は、積彩が長年続けてきた研究の積み重ねから生まれたものです。
これからも積彩は、研究と実践を積み重ね、3Dプリントがもたらす表現の可能性を探り続けていきます。
作品概要
「Whispering Pulse -鼓動のささやき-」
風景を構成する自然や生命の息づき。
そのエネルギーの源泉となるミクロの世界に目を向け、鼓動が起きるその瞬間をフレーミングした、生きる彫刻作品。
また建物自体の特徴でもある、ゆるやかに湾曲したファサード面のカーブを作品にも取り入れ、この場所に集まり、流れ込んでくるエネルギーの集合体を表現した。
2025
PLA樹脂、アクリル、ラッカー塗料、合板
3,598×2,498mm
制作 : 大日方伸 （株式会社積彩）
アートディレクション：アートプレイス株式会社 https://www.artplace.co.jp/
建築設計：株式会社日建設計
設置場所：公益財団法人 鉄道弘済会 麹町弘済ビルディング エレベーターホール
（東京都千代田区）
撮影：加藤健
大日方 伸について
1996年東京生まれ。
慶應大学を修了後、東京藝術大学の助手勤務を経て、2022年に株式会社積彩を創業。
3Dプリントとデザインの専門家として、「一点ものがあふれる社会」の実現を目指す。
【受賞歴】
2019 CSデザインアワード学生部門金賞受賞
2020 クマ財団クリエイター奨学生選抜
2020 富山デザインコンペティション・グランプリ受賞
2021 慶應義塾大学SFC STUDENT AWARD 受賞
2022 Innovative Technologies 2022 受賞
2024 Design Shanghai Picks AWARD 受賞
2024 未踏アドバンスト・イノベーター認定
2025 三井みらいチャレンジャーズ認定
2025 Forbes Culture-preneurs 30 受賞
株式会社積彩について
積彩は、3Dプリンティングを専門とするデザイン・ファブリケーションスタジオです。
コンセプト設計からデザイン、製造までを一貫して手がけ、3Dプリンティング技術を駆使して、多様なシーンに対応する唯一無二の空間体験を創出します。
特に、独自開発の3Dプリント着色技法によるサーフェスデザインは、光や視点の変化に応じて多彩な表情を生み出す魔法のような意匠効果を実現。その革新的な表現は、国内外で高く評価され、富山デザインコンペティション2020 グランプリ受賞、Innovative Technologies 2022 受賞、Design Shanghai Picks 2024 受賞など、数々のアワードを受賞しています。
Webサイト：https://sekisai.com
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