VRデジタル療法のBiPSEE、東京大学の研究者らとVライバー193名を対象としたメンタルヘルス調査に協力
アバターとの関わり方に4つの統計的プロファイル―自己表現の広がりと心理的負担が異なる組み合わせで併存――東京大学の研究者らによる成果をHCI International 2026でオンライン発表

株式会社BiPSEE(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長兼CEO:松村雅代、以下「BiPSEE」)は、東京大学の研究者らによる研究プロジェクトに参画し、Vライバー事務所を運営するボンド株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役:住吉良介、以下「bond」)の協力のもと、bond所属のVライバー193名を対象とした質問紙調査の実施に協力しました。BiPSEEは本研究において、調査実施にかかるbondとの調整・支援を担うとともに、BiPSEEに所属する研究者が研究メンバーとして調査の設計から分析までに携わっています。
本研究では、アバターへの同一視、理想化されたアバター、演技(ロールプレイ)傾向、本当の自己の表現という4つの指標を用いて、Vライバーとアバターとの関わり方を分析しました。その結果、本調査サンプルには「緩衝型」「融合型」「演者型」「継承型」という4つの統計的プロファイルが見いだされ、自己表現の広がりと、役割葛藤や罪悪感などの心理的負担が、プロファイルごとに異なる形で併存していました。
本研究をまとめた論文「Latent Profiles of Avatar-Mediated Streaming and Mental Health in VTubers: A Four-Profile Typology」は、HCI(ヒューマン・コンピュータ・インタラクション)分野の国際会議「HCI International 2026(HCII 2026)」に採択され、同会議のポスタープログラム「Cluster 14: Healthcare, Well-being, and Aging」にてオンライン発表をしました。

本研究のポイント
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bond所属のVライバー193名を対象に、アバターとの関わり方と自己表現・心理的負担との関連を調査しました。
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潜在プロファイル分析により、「緩衝型」「融合型」「演者型」「継承型」の4つの統計的プロファイルが見いだされました。
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自己表現や自己開示の高さと、役割葛藤、罪悪感、抑うつ症状などの心理的負担は、単純な「恩恵かリスクか」ではなく、プロファイルごとに異なる組み合わせで併存していました。
研究の背景:アバターを介した活動に固有の心理的側面
Vライバー/VTuberは、2Dまたは3Dのアバターを介して動画・ライブ配信を行う表現者です。アバターは、匿名性を保ちながら、現実の場面では表しにくい自己を表現する手段となり得ます。一方で、視聴者から期待されるキャラクターや役割を継続して表現することに伴う心理的負担も考えられます。
配信者のメンタルヘルスについては、誹謗中傷、視聴者からの評価、ランキングやプラットフォーム上の競争圧力などが指摘されてきました。しかし、アバターへの同一視や理想化、キャラクターとしての演技、本当の自己の表現といった、バーチャル配信者に固有の心理的側面を扱う実証研究は、まだ限られています。
そこで本研究では、Vライバーとアバターとの関係を単純な「近い/遠い」という一つの軸で捉えるのではなく、4つの指標の組み合わせから活動上のプロファイルを抽出し、それぞれのプロファイルと自己表現・心理的負担・心理的資源との関連を検討しました。
調査の概要
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対象:bond所属のVライバー193名
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内訳:日本のVライバー168名、海外在住Vライバー25名
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方法:オンラインによる横断的質問紙調査
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類型化に用いた指標:アバター同一視、理想化されたアバター、演技(ロールプレイ)傾向、本当の自己の表現
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主な測定項目:自己表現、自己開示、抑うつ症状(PHQ-9)、役割葛藤、アイデンティティ葛藤、罪悪感、自己概念の明瞭性、自己効力感など
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分析:潜在プロファイル分析(LPA)、Kruskal–Wallis検定、多項ロジスティック回帰、交互作用を含む線形回帰モデル
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倫理的配慮:東京大学の倫理審査委員会の承認(承認番号:UT-IST-RE-250508_7)を得て実施。調査冒頭で研究内容、データの取り扱い等を説明し、参加者から同意を取得しました。募集は所属事務所のスタッフを介して行い、研究チームはVライバー本人へ直接接触しない形で実施しました。
※本研究は、特定の事務所に所属するVライバーを対象とした横断的質問紙調査です。因果関係やVライバー全体への一般化、支援方法の有効性を示すものではありません。4つのプロファイルは本調査サンプルにみられた集団レベルの統計的傾向であり、個人の診断、固定的な性格分類、健康度の順位付け、採用・契約等の選別に用いることを意図していません。また、PHQ-9の得点は抑うつ症状の程度を測るものであり、うつ病の診断を意味するものではありません。
Vライバーとアバターとの関わり方に4つの統計的プロファイル
潜在プロファイル分析の結果、本調査サンプルには次の4つの統計的パターンが見いだされました。

緩衝型(Buffered Self):42名
アバターへの同一視、理想化、演技傾向が低く、「本当の自己の表現」は平均付近だったプロファイルです。役割葛藤や罪悪感などの負担指標は相対的に低い一方、自己表現・自己開示も相対的に低い結果となりました。
融合型(Fusion):43名
アバターへの同一視、理想化、演技傾向がいずれも高いプロファイルです。自己表現は4プロファイルの中で最も高く、自己開示も高い一方、役割葛藤は4プロファイルの中で最も高い結果となりました。PHQ-9で測定した抑うつ症状得点は緩衝型・継承型より高く、罪悪感も緩衝型より高い結果でした。
演者型(Puppeteer):31名
演技傾向が突出して高く、アバターへの同一視と「本当の自己の表現」が低いプロファイルです。活動を通じた自己表現は継承型と同程度でしたが、自己開示は低く、役割葛藤・罪悪感は緩衝型より高い結果となりました。
継承型(Inherited Self):77名
「本当の自己の表現」が最も高かったプロファイルです。自己開示は融合型と同程度に高い一方、心理的負担がないことを意味するものではなく、役割葛藤・アイデンティティ葛藤・罪悪感は緩衝型より高い結果となりました。
自己表現の広がりと心理的負担は異なる形で併存
プロファイル間の比較から、アバターを介した活動における自己表現上の恩恵と心理的負担は、単純に「良い/悪い」で分けられないことが示されました。
融合型では自己表現が最も高く、自己開示も高かった一方、役割葛藤、抑うつ症状得点、罪悪感などの負担指標も相対的に高くなっていました。演者型では一定の自己表現がみられた一方、自己開示は低く、役割葛藤・罪悪感が緩衝型より高い結果となりました。継承型でも、高い自己開示と一部の心理的負担が併存していました。
なお、配信活動開始前と比べた主観的・回顧的なメンタルヘルス改善感については、4プロファイル間で統計的に有意な差は確認されませんでした。
心理的資源との関連
「自己概念の明瞭性」、すなわち自分がどのような人間であるかについての認識が明確であることは、全体として、抑うつ症状、役割葛藤、アイデンティティ葛藤、罪悪感などの心理的負担の低さと関連していました。抑うつ症状との負の関連は緩衝型・演者型・継承型で確認されましたが、融合型では明確な関連を確認できませんでした。
また、「自己効力感」は、全体として自己表現・自己開示・主観的な改善感と正の関連を示しました。融合型の中では、自己効力感と主観的な改善感に正の関連がみられました。ただし、この関連の強さがプロファイルによって異なることを示す交互作用は、通常の統計的有意水準にわずかに達しておらず、追加検証が必要です。
基本属性との関連
本調査サンプルでは、年齢、生物学的性別、活動期間、国籍は、プロファイル所属を統計的に有意に予測しませんでした。ただし、これは基本属性とプロファイルが無関係であることを証明するものではなく、異なる事務所・活動形態・文化圏を含む追加研究が必要です。
本研究の意義と今後の展望
本研究は、Vライバーのメンタルヘルスを考える際に、アバターとの関係を一つの尺度や「リスク/恩恵」の二分法だけで捉えず、自己表現上の利点と心理的負担の組み合わせとして捉える必要性を示しています。
本知見は、特定のプロファイルをリスク群として選別するためのものではありません。本人が感じている自己表現上の利点と心理的負担の双方を確認し、本人の希望に基づく支援や活動環境を検討するための研究上の手がかりです。具体的な支援方法の有効性については、今後の介入研究で検証する必要があります。
国際会議での発表情報
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会議名:HCI International 2026(28th International Conference on Human-Computer Interaction/HCII 2026)
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会期:2026年7月26日~31日
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開催地:Montréal Convention Centre(カナダ・モントリオール)
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発表形式:オンライン・ポスター発表
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プログラム:Cluster 14: Healthcare, Well-being, and Aging
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発表番号:1451
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論文タイトル:Latent Profiles of Avatar-Mediated Streaming and Mental Health in VTubers: A Four-Profile Typology
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著者・所属:小柳陽光(東京大学)、小松尚平(東京大学/株式会社BiPSEE)、廣瀬通孝(東京工科大学)
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公式プログラム:https://2026.hci.international/poster-presentations.html
研究者コメント
東京大学 特任研究員 小柳 陽光
「バーチャル配信者の方が、メンタルヘルス上の理由から活動休止や引退を発表する事例をたびたび目にします。その背景には、誹謗中傷や視聴者からの評価、プラットフォーム上の競争圧力など、配信者に共通する要因がある一方、アバターを介して活動することに固有の心理的側面については、実証的な検討がまだ限られていました。そこで本研究では、アバターへの同一視や理想化、演技傾向、本当の自己の表現に着目しました。調査からは、アバターを通じた活動が自己表現を広げる可能性がある一方、期待されるキャラクターや役割を維持することに伴う葛藤や罪悪感などの負担も、アバターとの関わり方によって異なる形で併存し得ることが示されました。
本研究が、バーチャル配信者の方々が自己表現の可能性を損なうことなく、心理的負担を軽減できる支援や環境づくりにつながることを願っています。」
株式会社BiPSEE 取締役CPO 小松 尚平
「うつ病に対するVRデジタル療法の開発に取り組む中で、アバターが持つ治療的な可能性と、その裏側にある心理的負担の両面を実証的に理解することは不可欠だと考えてきました。本研究が、Vライバーをはじめアバターを介して活動するすべての方々のウェルビーイング向上の一助となれば幸いです。」
ボンド株式会社 代表取締役 住吉 良介
「所属ライバーのメンタルヘルスは、事務所として最も大切にすべきテーマの一つです。今回、東京大学の研究者の皆さま、BiPSEE社とともに、当社所属ライバー(日本、アメリカ含む)193名の協力のもと、業界でも類を見ない規模の調査を実現できたことを誇りに思います。本研究で得られた知見を、ライバー一人ひとりが安心して長く活動を続けられる環境づくりに活かしてまいります。」
ボンド株式会社(bond Inc.)
配信プラットフォームにてVTuber事業を展開し、日本および英語圏に向けたコンテンツを提供しています。
株式会社BiPSEE
「こころに寄り添う、新しい医療のかたちを」を掲げ、うつ病患者向けVRデジタル療法をはじめ、VR・AIを活用した心のケアと医療XRの研究開発に取り組むヘルステックスタートアップです。
本件に関するお問い合わせ
株式会社BiPSEE お問い合わせフォーム:https://bipsee.co.jp/contact
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