コラーゲン由来環状ジペプチド「cyclo(X-Hyp)」の高い光老化抑制作用と皮膚透過性を確認

株式会社ニッピ

株式会社ニッピは、ヒト皮膚表皮細胞を用いた研究により、ヒドロキシプロリン(Hyp)を含有するコラーゲン由来環状ジペプチド「cyclo(X-Hyp)」が、紫外線によって引き起こされる光老化反応を効果的に抑制することを見出しました。さらに、cyclo(X-Hyp)が高い皮膚透過性を持ち、肌に塗布することで効果を発揮する可能性も示されました。本研究成果は、2025年8月24日に国際学術誌「Photochemistry and Photobiology」にオンライン掲載されました。

【論文情報】

Collagen-derived hydroxyproline-containing cyclic dipeptides prevent photoaging-related inflammatory response in UVB-irradiated epidermal keratinocytes.

Kumazawa Y, Mizuno K, Taga Y.

Photochem Photobiol

URL:https://doi.org/10.1111/php.70026

本研究成果の概要図


【研究の背景】
 光老化とは、紫外線を長期にわたって浴び続けることで、シワ、たるみ、乾燥といった肌の変化が引き起こされる老化現象を指します。その主な原因は、紫外線によって肌の細胞内で過剰に産生される活性酸素種(ROS)です。過剰なROSは細胞に酸化ストレスをもたらして炎症性シグナル経路を活性化させ、コラーゲン分解酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の発現を促進します。特に、皮膚の表皮細胞から分泌されるMMP-2とMMP-9により、肌の土台となる基底膜中のIV型コラーゲンが過度に分解されると、肌の恒常性が損なわれ、光老化が加速される一因となります。したがって、皮膚表皮細胞におけるROSの生成抑制は、光老化を防ぐための有効なアプローチとなります。

 アミノ酸が鎖状に連なったものをペプチドと言い、中でも2つのアミノ酸からなるジペプチドは、両端がつながって環状構造を形成することがあります。この「環状ジペプチド」は、コーヒーやビール、パンなどにも含まれていることが知られ、様々な機能が報告されています(※1)。コラーゲンには特有のアミノ酸として、プロリン(Pro)が水酸化されたヒドロキシプロリン(Hyp)が存在し、近年の研究により、Hypを含むペプチドが高い生理活性を有することが明らかになっています(※2)。これまでに当社では、生姜酵素でコラーゲンを分解すると生理活性トリペプチドX-Hyp-Gly(Xは各種アミノ酸)が多量に生成すること、そして加熱によりX-Hyp-Glyが環状ジペプチド「cyclo(X-Hyp)」へ高効率に変換することを見出してきました(※3~5)。そこで本研究では、このコラーゲンに特有の環状ジペプチドに着目し、ヒト皮膚表皮細胞を用いて光老化への抑制効果を検証するとともに、肌への塗布を想定して皮膚透過性の評価も行いました。


【研究成果】
 光老化モデルとして紫外線B波(UVB)を照射したヒト皮膚表皮細胞に、各種cyclo(X-Hyp)を添加して培養した結果、全てのcyclo(X-Hyp)がUVB照射によって増加した細胞内ROSを減少させ、強いROS消去能を有することが明らかとなりました(図1)。またその効果は、対応する鎖状ジペプチドX-HypやPro含有環状ジペプチドcyclo(X-Pro)よりも優れていたことから、環状化とPro水酸化が相乗的に寄与していると考えられます。

図1:cyclo(X-Hyp)による細胞内ROS量の増加抑制効果(UVB照射コントロール=100%;Dunnett’s test, *P < 0.01)

 さらにcyclo(X-Hyp)は、ROSによって誘導される炎症性シグナル経路(MAPK、NF-κB)やコラーゲン分解酵素MMP-2、MMP-9の活性化を抑制し、UVB照射によって減少した細胞のIV型コラーゲン量も回復させることが明らかとなりました(図2)。

図2:cyclo(X-Hyp)によるIV型コラーゲン量の減少抑制効果(UVB照射コントロール=100%;Dunnett’s test, *P < 0.01, *P < 0.001)

 ヒト皮膚組織を用いた透過性試験の結果、cyclo(X-Hyp)はX-Hypより効率的に皮膚を透過し、24時間後には塗布量の7~10%に達しました(図3)。この顕著な皮膚透過性は、cyclo(X-Hyp)の環状構造に由来する高い疎水性度と酵素分解耐性によるものと考えられます。

図3:環状ジペプチドcyclo(X-Hyp)の皮膚透過性(Student’s t-test, *P < 0.01;対応するX-Hypとの比較)


 本研究により、cyclo(X-Hyp)がヒト皮膚表皮細胞において、光老化の引き金となるROSを消去し、炎症反応やコラーゲン分解を抑制する作用を持つことが明らかとなりました。特に、UVB照射によるIV型コラーゲンの減少を回復させた点は、cyclo(X-Hyp)が肌の恒常性を維持し、光老化を効果的に抑える可能性を示しています。さらに、cyclo(X-Hyp)が高い皮膚透過性を有することも明らかとなり、光老化にアプローチする化粧品素材や健康食品素材としての応用が期待されます。

※1:Borthwick & Da Costa, Crit Rev Food Sci Nutr, 57, 718-742, 2017

※2:Sato, J Agric Food Chem, 66, 3082-3085, 2018

※3:Taga et al., J Agric Food Chem, 64, 2962-2970, 2016

※4:Taga et al., J Agric Food Chem, 65, 9514-9521, 2017

※5:当社ウェブサイト「生姜酵素を用いた機能性コラーゲンペプチドの開発」
https://www.nippi-inc.co.jp/biomatrix/tabid/172/Default.aspx?itemid=477

【お問い合わせ先】
本記事および製品に関するお問い合わせ … https://www.nippi-inc.co.jp/tabid/140/Default.aspx

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会社概要

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業種
製造業
本社所在地
東京都足立区千住緑町1-1-1
電話番号
03-3888-5111
代表者名
伊藤 裕子
上場
東証スタンダード
資本金
-
設立
1907年04月