シンガポール、2024年度における最新投資状況を発表

成長分野を含む多様なセクターが投資を拡大

シンガポール経済開発庁

シンガポール経済開発庁(EDB)は、2月初め、2024年の最新投資状況において、固定資産投資額は前年を上回り、年間総事業費は安定を維持していることを発表しました。投資は半導体、航空宇宙、人工知能(AI)、精密医療、グリーンエコノミーなど多様な分野にわたり、これらの投資コミットメントが実現すると、年間235億SGD(約2兆6,320億円)の付加価値が創出される見込みです。

多様な産業で既存企業と新規企業が積極投資

2024年、EDBが管轄する国内外の企業による固定資産投資額(設備・インフラへの投資計画額)は135億SGD(約1兆5,120億円)となっています。そのうち111億SGD(約1兆2,432億円)を占めたのが製造業で、とりわけ半導体やバイオメディカル分野が大きく貢献しました。さらに、医療技術、特殊化学、航空宇宙、デジタル分野などの主要な製造・サービス産業に加え、精密医療、人工知能(AI)、持続可能な製品・サービスといった新たな成長分野も含まれています。一方、年間総事業費(人件費や研究開発費など企業がシンガポールでの事業運営に支出する計画額)は、84億SGD(約9,408億円)と安定を維持しました。特に、テクノロジー企業の本社機能の運営費が投資を牽引しています。投資額を地域別で見ると、アメリカ、ヨーロッパ、中国の順となり、シンガポールがグローバル企業のハブ及びR&D拠点として機能していることを示す結果となりました。

全体として投資企業には、シンガポールで既存の事業を拡大する企業と、新規進出する企業の両方が含まれています。グローバル企業の本社機能、研究開発、イノベーション活動への関心も高まっており、世界中のスタートアップや起業家がシンガポールで新たなビジネスを立ち上げる動きが加速していることがうかがえます。これらの投資コミットメントが5年間で実現した場合、18,700人の雇用創出と、年間235億SGD(約2兆6,320億円)の付加価値を生み出すと見込まれます。雇用については、主にサービス業、製造業、研究開発、イノベーションの分野で創出されると予想されています。

成長分野で進む国内外企業の投資

EDBは、新たな成長分野において、本社(HQ)、研究開発(R&D)、商業化、製造分野への投資を誘致しました。

  • 人工知能(AI) :Digital Industry Singapore(DISG2)は、デジタルネイティブ企業および産業系企業の双方から、2024年に26のAIセンター・オブ・エクセレンス(CoE)を誘致し、独自の生成AI(GenAI)ソリューションの研究・開発を推進しています。また、シンガポールはAIコンピュートを支える持続可能なデータセンターのロードマップを発表し、オラクル(Oracle)やアマゾン(Amazon)との業界パートナーシップを締結。これにより、2029年までにシンガポールのAI人材を3倍の15,000人に拡大する計画の一環として、地元の労働者向けのトレーニングを実施します。

  • プレシジョン・メディシン(精密医療):EDBは、プレシジョン・メディシン分野において複数のプロジェクトを誘致しました。その中には、アストラゼネカ(AstraZeneca)によるシンガポール初のエンドツーエンド抗体薬物複合体(ADC)製造投資が含まれており、がん治療向けの革新的な精密医療の新たな能力構築を支援します。

  • グリーンエコノミー:シンガポールがカーボンサービス分野の新たな機会を獲得できるよう、EDBは「シンガポール・カーボン・マーケット・アライアンス」と「カーボン・プロジェクト・ディベロップメント助成金」を立ち上げ、パリ協定6条クレジットへのアクセスを支援しています。現在、シンガポールには140のカーボンサービスおよびトレーディング企業が存在し、2021年と比較して2倍以上に増加しています。

成長に向けたEDBの今後の取り組み

地政学的な対立に加え経済の不安定要因により、世界情勢は不透明さを増しています。こうしたなか、各国が自国の産業を優先する政策を進めることで、企業は国際的な投資判断がますます難しくなっています。一方で、シンガポールはアジア経済の成長の恩恵を受けることが期待されます。 現在、アジアは世界のGDPの約50%を占めていますが、2030年までに約60%に拡大すると予測されています。また、東南アジア圏内の企業の経営統合が進めば、貿易や投資が活発化し、企業のサプライチェーンの効率向上にもつながり、その結果、シンガポールは、東南アジアの成長市場へのアクセス拠点として、さらに重要な役割を担うようになると考えられます。このような状況を踏まえ、EDBは、引き続き成長機会を確保するため海外からの投資誘致に注力し、具体的には以下の取り組みを推進します。

  • 既存企業との連携による変革の推進

EDBはグローバル企業と協力し、AIやデジタル化を活用した生産性向上を支援します。 また、企業のエネルギー効率向上や再生可能エネルギー、新たな技術の実証実験などを推進し、脱炭素化の加速を図ります。

  • イノベーションのグローバルハブとしての強化

高付加価値なイノベーションプロジェクトを誘致し、持続的な成長を促進。 多国籍企業だけでなく、テクノロジー分野のスタートアップや起業家を積極的に誘致し、シンガポール科学技術研究庁(A*STAR)や企業庁などの政府機関と連携して研究・イノベーションのエコシステムを強化します。

  • シンガポールの人材の育成とグローバルリーダーの輩出

企業や政府と連携し、シンガポールの人材がリスキリングやアップスキリングを通じて、技術、デジタル、ビジネススキルを習得できるよう支援し、企業が質の高い人材の確保と、競争力の強化ができるよう、実践的なスキル開発の機会を提供します。また、Singapore Leaders Network(SGLN)やGlobal Business Leaders Programme(GBLP)といった既存のリーダー育成プログラムを拡充し、シンガポール人材のグローバル企業での活躍を後押しします。

  • 地域協力とエコシステムの強化

多国籍企業や地元企業、研究機関との連携を強化し、地域内でのビジネス機会を創出。 また、新設される経済特区「ジョホール・シンガポール経済特別区(JS-SEZ) 」を活用し、製造、物流、デジタル経済分野での協力を深化させ、越境ビジネスの円滑化を図ります。

EDB長官のプン・チョンブーン(Png Cheong Boon)は、2024年の投資動向とシンガポールの経済成長に向けた戦略について次のように語りました。「EDBが2024年に確約したプロジェクトは、良質な雇用とビジネス機会を創出するだけでなく、シンガポールがより多様かつ強靭な経済を構築するという国家的な取り組みを支えるものです。高業績企業の拠点として選ばれ続けるために、私たちは地域エコシステムを強化し、労働力の育成を進めることで、新たな雇用機会やリーダーシップの創出に取り組んでいきます。シンガポールがグローバルバリューチェーンにおいて重要な役割を果たし続けることで、長期的に経済、企業、そして多くの人々に利益をもたらす投資を誘致し、定着させることができるのです」

*1シンガポールドル(SGD)= 約112円(2025年2月10日時点)

シンガポール経済開発庁(EDB)とは         

EDBは1961年に設立された貿易産業省傘下の政府機関で、シンガポールの産業育成、投資誘致を担っています。「外資系企業誘致のワンストップセンター」として、海外20カ所以上に事務所を持ち、外国企業に投資先としてのシンガポールの情報を提供するだけでなく、世界の経済、技術、市場動向を把握することで、シンガポールで競争力を持ちえる産業や分野を育成するための経済戦略を立案しています。日本では、東京に事務所を構え、日本企業のシンガポール投資をサポートしています。

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会社概要

シンガポール経済開発庁

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URL
https://www.edb.gov.sg/ja.html
業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
#28-00 Raffles City Tower, 250 North Bridge Road, Singapore 179101
電話番号
065-6832-6832
代表者名
Png Cheong Boon
上場
未上場
資本金
-
設立
1961年08月