ベイズ推定に反応速度論を導入した解析法を開発 - 機能性材料の実用化に向けダイナミクス解析を高度化 -
【概要説明】
高輝度光科学研究センター(JASRI)と熊本大学は共同で、機械学習の1つであるベイズ推定に反応速度論等の反応の進み方に関するモデルを導入した解析法を開発しました。この手法を、多孔性材料が気体を取り込む際の動的過程(ダイナミクス)に適用し、従来法では困難とされていた「ダイナミクス開始時刻の推定」「データに基づく反応モデルの選択」「推定精度の正確な評価」が可能になることを実証しました。
無数の小さな穴をもつ多孔性材料は、気体の分離・貯蔵を通じて環境問題やエネルギー問題を解決するための機能性材料として注目されています。実用化に向けた材料開発において、材料が機能を発現する際のダイナミクスを理解することが重要です。今回開発した解析法では、従来法よりも遥かに多くのダイナミクスに関する情報を実験データから引き出せるようになります。これらの情報を活用することで、ダイナミクスへの理解が深まり、材料開発の加速が期待されます。開発した手法は、気体の貯蔵に限定されるものではなく、化学反応等の様々なダイナミクスの解析に適用することが可能です。物質科学の幅広い領域での活用が期待されます。今回の研究成果は、JASRI 横山優一 研究員、河口彰吾 主幹研究員、熊本大学 水牧仁一朗 教授らのグループの共同研究によるもので、2023年9月12日(日本時間)にSpringer Nature社の科学誌 「ScientificReports」のオンライン版に掲載されます。
【今後の展開】
開発した手法は、気体の貯蔵プロセスに限定されるものではなく、酸化還元反応をはじめとした化学反応等の様々なダイナミクスへの拡張が可能で、物質科学の幅広い領域での活躍が期待されます。
【論文情報】
題名:Bayesian framework for analyzing adsorption processes observed via time-resolved X-ray diffraction
日本語訳:時分割X線回折によって観測された吸着過程に対するベイズ推定の解析フレームワーク
著者:Yuichi Yokoyama, Shogo Kawaguchi and Masaichiro Mizumaki
ジャーナル名:Scientific Reports
DOI:10.1038/s41598-023-40573-z
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