一般社団法人超教育協会よりデジタル庁へ提言発表
⼀般社団法⼈超教育協会(理事長:石戸奈々子慶應義塾大学教授 http://lot.or.jp/ )は、「個別最適な学び」の実現に向けてデジタル庁へ以下を提言します。
Web公開先: https://lot.or.jp/project/8233/
Web公開先: https://lot.or.jp/project/8233/
- デジタル庁への提言 –
2022年3月
一般社団法人超教育協会
令和4年2月に発表された文部科学省の調査結果によると、高校においても令和6年度にかけて全学年での1人1台端末整備が完了する予定であり、GIGAスクール構想の環境整備に目処が立ちつつある現在、GIGAスクール構想環境をいかに効果的に活用するかを検討すべき局面を迎えている。
またデジタル教科書についても、令和6年度からの本格導入に向けて各種実証事業が進み、クラウドツールとデジタル教科書、デジタル教材の連携方法などの検討を行う有識者会議が文部科学省で立ち上がるなど、学校現場への導入を見据えた本格的な議論が始まっている。クラウド配信型のデジタル教科書は、GIGAスクール構想で整備された1人1台端末・クラウド環境を活かした「個別最適な学び」の実現を、さらに後押しするものと強く期待される。
そこで、以下10点を提言する。
1)教育データに関係するステークホルダーを明確にし、それぞれの権利や義務を明確にすること。以下のステークホルダーを明確に定義し、それぞれの立場での教育データへの取り扱いに関するガイドラインを明確にする。社会全体でのデータに対するガイドライン策定を社会制度設計として認識する必要がある。
*学習者(生徒や学生、社会人)本人及び子どもの場合はその保護者
*学習に参加する他の学習者(自分の相対的な位置付けの認識や学習姿勢の改善への活用)
*教師や教員、指導者(特に、教育成果や教育手法の科学的な分析と改善のための活用)
*当該教育機関の管理者(教育体制・環境の改善や教師の評価などへの利用)
*他の教育機関(例えば入試における過去の学習データへのアクセスなど)
*民間の教育事業者
*教育行政に携わる関係者
*一般市民(社会に公開するデータ)
2)学習者と教師の間での教育データとして、何を残すべきかの根源的な議論を行うこと。単に、どのような教材を使い、テストの成績などを残すだけではなく、より教師と学習者の間のコミュニケーションを記録したデータを取得し、ラーニングアナリティクスなどを活用して、学びや教え方を科学的な根拠を持って改善することに結びつけるための構想を国主導で明確にすること。加えて、教育データの種別による権利者の明確化と権利者の義務に関する議論を明確にすること。上記のステークホルダーごとの教育データの所有権、アクセス権(利用権、改変権など)、保管に関するセキュリティなどの義務を明確化すること。関連する法制度の制定を検討すること。
3)持続的なデータの保持に関する基本的な指針を策定すること。特に、クラウドを効果的に活用するなど個人が利用するデバイスやソフトウェアの時間的な変化に対応したデータ管理の社会的な仕組みを構築すること。読めなくなったデジタルデータほど扱いが困難なものはない。(紙の方がマシであるとならないようなアーキテクチャの構築)併せて、教育データの活用により、これまでの資格制度をデジタル化したデジタルバッジなどを超えた、個々の学びのプロセスの記録が、学習者の生涯のキャリア形成の中で明示的に生かせるような社会制度の設計を検討すること。
4)GIGAスクール構想環境におけるデジタル教科書向けプラットフォームの構築に関しては、これまで各自治体の教育委員会において教科書並びに教材の選定を行ってきたが、まずは学校や地域のネットワーク環境によって活用できないという実態に対し、関係省庁との連携によって環境整備を進めること。その上で、共通プラットフォームを活用すること。これによって、仕様についての互換性が低く相互利用しにくい状況が改善されることとなる。
5)デジタル教育を更に進化させるためにAIを導入して子ども一人一人がどこでつまずいているかを分析して導くこと。いわずもがな、卒業させることが教育本来の目的ではない。また、より幅の広い子どもの支援や全人格的な教育を推進するために教育委員会が所掌する学校内でのデータと、自治体の各部署で所掌している福祉関連などのデータを連携すること。
6) 高校においても令和6年度にかけて全学年での1人1台端末整備が完了の方針は示されているものの、現時点では、小・中に比べて補助金などの財政支援が限られているため、公費で端末整備ができない自治体が多い。またそのような状況の中で、「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」で前提とされているMDM(端末管理やセキュリティ対策)の採用も見送りになっている自治体が存在する。
しかし、MDMの採用を伴わない端末のセキュリティは各家庭のセキュリティ対策に依存するものであり、端末の不正利用や、盗難・紛失に対応ができない、インシデント発生時に解決に必要なログが参照できないなどのリスクを多くはらんでいる。これを防ぎ、安心安全のICTを活用した学びを定着させるためにも、今後の高校での端末整備においては、MDMで管理された端末整備を推進するべきである。
7)ネットワーク整備・端末整備の進展と併せて、「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」(文部科学省)などを踏まえて、省庁横断的に、教育情報化に係るセキュリティ整備状況の可視化を進めること。併せて、十分な対策が講じられていない自治体、学校、家庭などに対して、可視化された整備状況に基づき、国主導で、予算措置などの必要な対策を講じること。セキュリティ整備状況の可視化と未整備の自治体、学校への対策(小学校・中学校・高校)を推進すること。
教育情報化に係るネットワーク、端末の整備により、持ち帰り学習やインターネット活用学習が拡大しているが、フィルタリングなどのセキュリティ対策に関しては、自治体間で大きな格差が生じており、これを是正すること。
8)GIGAスクール構想環境を前提とした普及の促進を図ること。デジタル教科書の普及に向けた検討は、なによりもまず、GIGAスクール構想環境を前提として行われるべきである。実際に学校現場にデジタル教科書が本格的に導入される際には、GIGAスクール構想で整備されたICT環境と共存していくことが前提となる。デジタル教科書導入の際には、児童生徒や教職員の利便性を最大限考慮し、日常的に利用されているグループウェアなどのプラットフォームとの、SSOなどの技術的連携を前向きに推し進めることが望ましい。採択する教科書会社が教科ごとに異なっても、児童生徒や教職員による円滑な運用を支えるような技術を効果的に取り入れること。これによって、デジタル教科書の普及によるGIGA環境を活かした学びの一層の進展につなげることが可能となる。既存のGIGAスクール構想環境も、デジタル教科書もどちらも使われないという由々しき事態を避けるためにも、最大限の留意をすべきである。
9)デジタル教科書利用を通したデータ利活用に向けた統一規格を策定すること。デジタル教科書は、他のデジタル教材や、グループウェアなどにおける学習履歴といった教育データと連携することで、「個別最適な学び」を実現する可能性を持っており、その連携を進めるためにも、まずは教育データ利活用に必要な標準規格整備を進めること。教科書会社間での規格統一は前項の児童生徒、教職員の利便性を考慮しても早急に進めるべきこと。そのための予算措置を行うこと。それとともに教育データ利活用に向けて、教育機関で利用されるありとあらゆるデータに関するデータ規格の標準化も、国主導のもとで各ステークホルダーを巻き込みつつ検討を進めること。
10)家庭環境や特性によって支援の必要な子どもたちが増加しており、それらの子どもたちが、学校の中で多くの友達と共に同じデジタル教科書・教材を使って学習ができ、なおかつ、学校と同じように、自宅でも病院など学校外の施設でもデジタル教科書や教材を使用できる学習環境を整備すること。併せて、デジタル教科書・教材にかかる費用は、上記の家庭環境の問題などから、国の負担で普及できるようにして、誰一人取り残さない学びの環境を構築すること。
一般社団法人超教育協会
会長:小宮山宏(株式会社三菱総合研究所理事長、東京大学第28代総長)
理事長:石戸奈々子(慶應義塾大学教授、特定非営利活動法人CANVAS 理事長)
公式サイト:http://lot.or.jp/
公式Facebookページ :https://www.facebook.com/LearningofTomorrow/
2022年3月
一般社団法人超教育協会
令和4年2月に発表された文部科学省の調査結果によると、高校においても令和6年度にかけて全学年での1人1台端末整備が完了する予定であり、GIGAスクール構想の環境整備に目処が立ちつつある現在、GIGAスクール構想環境をいかに効果的に活用するかを検討すべき局面を迎えている。
またデジタル教科書についても、令和6年度からの本格導入に向けて各種実証事業が進み、クラウドツールとデジタル教科書、デジタル教材の連携方法などの検討を行う有識者会議が文部科学省で立ち上がるなど、学校現場への導入を見据えた本格的な議論が始まっている。クラウド配信型のデジタル教科書は、GIGAスクール構想で整備された1人1台端末・クラウド環境を活かした「個別最適な学び」の実現を、さらに後押しするものと強く期待される。
そこで、以下10点を提言する。
1)教育データに関係するステークホルダーを明確にし、それぞれの権利や義務を明確にすること。以下のステークホルダーを明確に定義し、それぞれの立場での教育データへの取り扱いに関するガイドラインを明確にする。社会全体でのデータに対するガイドライン策定を社会制度設計として認識する必要がある。
*学習者(生徒や学生、社会人)本人及び子どもの場合はその保護者
*学習に参加する他の学習者(自分の相対的な位置付けの認識や学習姿勢の改善への活用)
*教師や教員、指導者(特に、教育成果や教育手法の科学的な分析と改善のための活用)
*当該教育機関の管理者(教育体制・環境の改善や教師の評価などへの利用)
*他の教育機関(例えば入試における過去の学習データへのアクセスなど)
*民間の教育事業者
*教育行政に携わる関係者
*一般市民(社会に公開するデータ)
2)学習者と教師の間での教育データとして、何を残すべきかの根源的な議論を行うこと。単に、どのような教材を使い、テストの成績などを残すだけではなく、より教師と学習者の間のコミュニケーションを記録したデータを取得し、ラーニングアナリティクスなどを活用して、学びや教え方を科学的な根拠を持って改善することに結びつけるための構想を国主導で明確にすること。加えて、教育データの種別による権利者の明確化と権利者の義務に関する議論を明確にすること。上記のステークホルダーごとの教育データの所有権、アクセス権(利用権、改変権など)、保管に関するセキュリティなどの義務を明確化すること。関連する法制度の制定を検討すること。
3)持続的なデータの保持に関する基本的な指針を策定すること。特に、クラウドを効果的に活用するなど個人が利用するデバイスやソフトウェアの時間的な変化に対応したデータ管理の社会的な仕組みを構築すること。読めなくなったデジタルデータほど扱いが困難なものはない。(紙の方がマシであるとならないようなアーキテクチャの構築)併せて、教育データの活用により、これまでの資格制度をデジタル化したデジタルバッジなどを超えた、個々の学びのプロセスの記録が、学習者の生涯のキャリア形成の中で明示的に生かせるような社会制度の設計を検討すること。
4)GIGAスクール構想環境におけるデジタル教科書向けプラットフォームの構築に関しては、これまで各自治体の教育委員会において教科書並びに教材の選定を行ってきたが、まずは学校や地域のネットワーク環境によって活用できないという実態に対し、関係省庁との連携によって環境整備を進めること。その上で、共通プラットフォームを活用すること。これによって、仕様についての互換性が低く相互利用しにくい状況が改善されることとなる。
5)デジタル教育を更に進化させるためにAIを導入して子ども一人一人がどこでつまずいているかを分析して導くこと。いわずもがな、卒業させることが教育本来の目的ではない。また、より幅の広い子どもの支援や全人格的な教育を推進するために教育委員会が所掌する学校内でのデータと、自治体の各部署で所掌している福祉関連などのデータを連携すること。
6) 高校においても令和6年度にかけて全学年での1人1台端末整備が完了の方針は示されているものの、現時点では、小・中に比べて補助金などの財政支援が限られているため、公費で端末整備ができない自治体が多い。またそのような状況の中で、「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」で前提とされているMDM(端末管理やセキュリティ対策)の採用も見送りになっている自治体が存在する。
しかし、MDMの採用を伴わない端末のセキュリティは各家庭のセキュリティ対策に依存するものであり、端末の不正利用や、盗難・紛失に対応ができない、インシデント発生時に解決に必要なログが参照できないなどのリスクを多くはらんでいる。これを防ぎ、安心安全のICTを活用した学びを定着させるためにも、今後の高校での端末整備においては、MDMで管理された端末整備を推進するべきである。
7)ネットワーク整備・端末整備の進展と併せて、「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」(文部科学省)などを踏まえて、省庁横断的に、教育情報化に係るセキュリティ整備状況の可視化を進めること。併せて、十分な対策が講じられていない自治体、学校、家庭などに対して、可視化された整備状況に基づき、国主導で、予算措置などの必要な対策を講じること。セキュリティ整備状況の可視化と未整備の自治体、学校への対策(小学校・中学校・高校)を推進すること。
教育情報化に係るネットワーク、端末の整備により、持ち帰り学習やインターネット活用学習が拡大しているが、フィルタリングなどのセキュリティ対策に関しては、自治体間で大きな格差が生じており、これを是正すること。
8)GIGAスクール構想環境を前提とした普及の促進を図ること。デジタル教科書の普及に向けた検討は、なによりもまず、GIGAスクール構想環境を前提として行われるべきである。実際に学校現場にデジタル教科書が本格的に導入される際には、GIGAスクール構想で整備されたICT環境と共存していくことが前提となる。デジタル教科書導入の際には、児童生徒や教職員の利便性を最大限考慮し、日常的に利用されているグループウェアなどのプラットフォームとの、SSOなどの技術的連携を前向きに推し進めることが望ましい。採択する教科書会社が教科ごとに異なっても、児童生徒や教職員による円滑な運用を支えるような技術を効果的に取り入れること。これによって、デジタル教科書の普及によるGIGA環境を活かした学びの一層の進展につなげることが可能となる。既存のGIGAスクール構想環境も、デジタル教科書もどちらも使われないという由々しき事態を避けるためにも、最大限の留意をすべきである。
9)デジタル教科書利用を通したデータ利活用に向けた統一規格を策定すること。デジタル教科書は、他のデジタル教材や、グループウェアなどにおける学習履歴といった教育データと連携することで、「個別最適な学び」を実現する可能性を持っており、その連携を進めるためにも、まずは教育データ利活用に必要な標準規格整備を進めること。教科書会社間での規格統一は前項の児童生徒、教職員の利便性を考慮しても早急に進めるべきこと。そのための予算措置を行うこと。それとともに教育データ利活用に向けて、教育機関で利用されるありとあらゆるデータに関するデータ規格の標準化も、国主導のもとで各ステークホルダーを巻き込みつつ検討を進めること。
10)家庭環境や特性によって支援の必要な子どもたちが増加しており、それらの子どもたちが、学校の中で多くの友達と共に同じデジタル教科書・教材を使って学習ができ、なおかつ、学校と同じように、自宅でも病院など学校外の施設でもデジタル教科書や教材を使用できる学習環境を整備すること。併せて、デジタル教科書・教材にかかる費用は、上記の家庭環境の問題などから、国の負担で普及できるようにして、誰一人取り残さない学びの環境を構築すること。
一般社団法人超教育協会
会長:小宮山宏(株式会社三菱総合研究所理事長、東京大学第28代総長)
理事長:石戸奈々子(慶應義塾大学教授、特定非営利活動法人CANVAS 理事長)
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