フィリップス・オークション、アジア進出10周年を記念し香港でモダン&コンテンポラリーアートセールを開催
奈良美智、ザオ・ウーキー、トム・ウェッセルマンの代表作が集結。9月27日・28日のセールでジャンルを超えた卓越した作品群を披露

【2025年9月24日】― フィリップス・オークションは、アジア進出10周年を記念し、9月27日と28日に香港で「モダン&コンテンポラリーアート オータムオークション」を開催します。27日のイブニングセールでは、奈良美智、ザオ・ウーキー、トム・ウェッセルマン、草間彌生、ジョルジュ・マチュー、アンディ・ウォーホル、ルース・アサワといった世界的に著名なアーティストの作品に加え、ハオ・リャン、ロイ・ホロウェル、ルーカス・アルーダ、ジョナサン・ガードナーといった注目の若手作家による先鋭的な作品も出品されます。翌28日のデイセールには、近代の巨匠からブルーチップ作家、さらには新進気鋭のアーティストまで、幅広い作品が揃います。特に注目すべきはアジア近代美術における2つの重要な個人コレクションです。ひとつは、75年以上にわたり個人のもとで大切に守られ、これまで一度も一般公開されたことのないザオ・ウーキーの稀少作。もうひとつは、マイ・チュン・トゥによる東南アジア美術の傑作群です。一般プレビューは9月22日から28日まで、西九文化区のフィリップス・ギャラリーで開催され、来場者は実際に作品を鑑賞することができます。
フィリップス・オークション香港オークション責任者のダニエル・ソーと、同香港モダン&コンテンポラリーアート部門責任者のレベッカ・フーは次のように述べています。「今季のセールは、戦後・現代美術における最も影響力のあるブルーチップ作家の作品を入手できる、またとない機会です。イブニングセールの出品作のおよそ3分の2はオークション初登場であり、過去16年間に公開された作品はわずか9点にすぎません。アジア進出10周年を迎えるこの節目に、香港でイブニングセールとデイセールを開催できることは、当社にとっても、またこの10年を共に歩んできたコレクターの皆様にとっても特別な意味を持つものです。今回のセールでは、長年著名な個人コレクションに収蔵されてきた代表作、重要な展覧会歴を持つ作品、由来の明確な希少作が数多く出品されます。たとえば、市場初登場となる2000年の奈良美智作品、18年間にわたり同一コレクションで大切に守られてきたトム・ウェッセルマンの代表作(過去に作家のオークション記録を樹立した作品)、そして国際的に高い評価を受けてきたザオ・ウーキーによるキャンバスの大作です。さらに今季は、M+美術館で開催中の特別展『Dream Rooms: Environments by Women Artists 1950s–Now』とも呼応するかたちで、先見的な女性アーティストたちの作品も積極的に紹介いたします。」
すでに発表されているとおり、今季イブニングセールのトップロットを飾るのは、奈良美智の重要作《Pinky》です。本作はオークション市場に初めて登場するもので、作家にとって大きな転機となった2000年に制作されました。この年は、奈良が自身の最高落札記録を樹立した2点の作品が誕生した年でもあります。2000年に描かれた33点の絵画のうち、「顔と肩」の構図を持つのはわずか11点のみであり、本作はその中でも4点しか存在しない「Pinky」シリーズの最初の一点として位置づけられます。孤独をめぐる作家の生涯にわたる探求を、最も純粋な形で体現した作品といえるでしょう。

イブニングセールの注目ロットのひとつに、ザオ・ウーキーの《27.01.86》があります。本作では、濃淡や乾湿といった墨の特性を活かし、奥行きと広がりを兼ね備えた多層的な構図を築き上げています。それはまるで「生命の樹」が無限の空間へと伸びゆくかのように、生成のイメージを象徴しています。1985年から1990年にかけて、ザオは同様のスタイルで複数の作品を手がけましたが、単一パネルの構図のなかで《27.01.86》は最大規模かつ最も精緻な一作として際立っています。1988年にはソウル五輪組織委員会の依頼により、オリンピック精神を体現する抽象画を制作し、本作と様式的な共鳴を示しました。完成直後の1988年にはパリのアールキュリアル画廊での大規模個展に出品され、2004年には東京・ブリヂストン美術館での回顧展にも展示。さらに、オックスフォード大学の研究員で美術史家マイケル・サリバンの著書『20世紀中国の芸術と芸術家』にも収録されるなど、その国際的評価は特筆すべきものです。本作は、文化や地域を超えて響く力を如実に示しています。

さらに今季イブニングセールを彩るもうひとつの大作が、トム・ウェッセルマンの代表的な「Smoker」シリーズの一点《Smoker #17》です。本作は2007年5月にオークションへ出品された際、作家のオークション価格世界記録を樹立しました。アメリカン・ポップアートを代表するウェッセルマンは、1967年に「Smoker」シリーズを開始し、官能性、フォルム、絵画的ディテールの探求において大きな進展を遂げました。《Smoker #1》がMoMAのコレクションに収蔵されていることからも、このシリーズが作家のキャリアにおいていかに重要であるかがうかがえます。口元を描いたシリーズの研究過程で生まれた一瞬の着想から、煙草の火と立ち上る煙を加えることで、官能性と視覚的複雑さが格段に高まりました。《Smoker #17》では、艶やかな赤い唇、しなやかな手、漂う煙が絶妙に調和し、映画的な魅力と心理的な強度を併せ持つ構図を成しています。
現代アートを切り拓く女性アーティストたち
女性アーティストの作品が世界的に注目を集め続けるなか、フィリップス・オークションはイブニングセールとデイセールを通じて、現代美術における最も評価の高い女性作家たちの作品を一堂に紹介します。ハイライトのひとつは、草間彌生による多彩な作品群であり、代表的な《無限の網》のキャンバス作品から、手描きによるデニムジャケットまで幅広いラインナップが揃います。さらに、日本とアメリカにルーツを持つアーティスト、ルース・アサワの作品が香港のオークションに初登場する点も大きな注目を集めています。昨秋に香港で開催された個展の成功を受けて、今回の出品はその評価をさらに確固たるものとするでしょう。美術史において重要な位置を占めるアサワは、これまでに数々の美術館で大規模な回顧展の対象となってきました。2025年10月にはニューヨーク近代美術館(MoMA)で記念碑的な展覧会が予定されており、その影響力は一層強固なものとなるはずです。
ルース・アサワによる金属ワイヤーの編み込みは、彫刻とクラフト、洗練と大衆性との境界を揺るがす表現です。第二次世界大戦中、日系人として収容所に送られた経験から、有刺鉄線の影が幼少期の記憶に刻まれました。その後の創作では、この抑圧の象徴を「つながり」のメタファーへと昇華させています。今季イブニングセールに出品される《Untitled S.013》では、メキシコの伝統的な技法に着想を得た編み込みを用い、透過性と密度のバランスを保ちながら光や空気を取り込み、独自の彫刻的体験を生み出しています。
ロイー・ホロウェルの《Hung (Down)》は、幾何学的抽象と身体的象徴を融合させた彼女独自の表現を鮮烈に示す重要作です。鮮やかな色彩と対称的なフォルムを通じて、女性性、セクシュアリティ、さらには政治的緊張といったテーマを喚起しています。特に、2016年のアメリカ大統領選挙とヒラリー・クリントンをめぐるメディア報道への応答が込められています。本作は完売を記録した個展「Mother Tongue」で発表され、絵画に彫刻的要素を取り入れるハイブリッドなアプローチの始点となりました。また、アグネス・ペルトンやジョージア・オキーフといった先駆的女性アーティストの遺産を受け継ぎ、スピリチュアルな象徴や官能的なフォルムを取り込みつつ、その象徴的なビジュアル言語を現代へと響かせています。


ポップアートの先駆者たち——ウォーホルから村上隆まで
1979年初頭、アンディ・ウォーホルはバレンタインデーのモチーフに着想を得て、小規模なハートのペインティング・シリーズを制作しました。当初はスタジオ54で親しい友人たちに贈るために構想されたものです。ウォーホルは1950年代にも断片的にハートのイメージを取り入れていましたが、本格的かつ継続的にこのテーマに取り組んだのは1980年代に入ってからでした。今回イブニングセールに出品される《Hearts Pink》は、髑髏やドル記号といった普遍的なシンボルを、大胆な色彩と視覚的に強烈な構成で描き出した後期の代表作に属します。単なるハートの表象にとどまらず、文化批評と美的革新を通じて感情的シンボルを解体・再構築するという、ウォーホルの典型的なポップアート戦略を体現しています。
2000年前後に「スーパーフラット」ムーブメントを牽引した村上隆は、アニメやマンガに着想を得た鮮烈な作品によって、美術とポップカルチャーを融合させながら、消費社会や歴史、アイデンティティを批評してきました。今季のデイセールに出品される《I stare into your eye》は、その代表的なアプローチを示す重要作であり、スーパーフラットの多層的な視覚言語と日本陶芸の伝統的影響を再解釈したものです。鮮やかな同心円が織りなす画面は、表層的でありながら内省的な思索を促す逆説的な空間へと観者を誘います。


20世紀モダンの巨匠たち
今回の香港セールでは、ザオ・ウーキーの《27.01.86》に加え、20世紀東西のモダンアートを代表する巨匠たちの優れた作品が多数出品されます。ピエール・スーラージュ、サルバドール・ダリ、ジョルジュ・マチュー、朱徳群(シュ・テーシュン)といった作家の作品に加え、ザオ・ウーキーとマイ・チュン・トゥによる希少な作品群を含む、アジア近代美術の傑出した2つの個人コレクションも披露されます。
d132287-24-118cc65bc125d1543405a31b58d44e98.pdfモダン&コンテンポラリーアート 香港イブニングセール
日時:2025年9月27日(土)19:00(HKT)
モダン&コンテンポラリーアート 香港デイセール
日時:2025年9月28日(日)14:00(HKT)
香港プレビュー:9月22日〜28日、11:00〜19:00|フィリップス・オークション 香港ギャラリー
住所:九龍西九文化区 オースティンロード・ウエスト8号 WKCDAタワー1階
フィリップス・オークションについて
フィリップス・オークション:世界中の好奇心と冒険心が、アート、デザイン、高級品と結びつき、インスピレーションを与えてくれる場所です。20・21世紀の作品を売買するグローバルなプラットフォームとして、フィリップスは近・現代アート、デザイン、写真、エディション、時計、ジュエリーの分野において専門知識を提供しています。オークションと展覧会は主にニューヨーク、ロンドン、ジュネーヴ、香港で開催され、更に、ヨーロッパ、アメリカ、東京を含むアジア各地に代表オフィスが置かれています。フィリップスでは、ライブ及びオンラインオークションを定期的に開催しています。また、プライベートセール、鑑定、査定、ファイナンシャルプランニングに関するサポート含め、収集に関する幅広いサービスとアドバイスも提供しています。詳細につきましては、ホームページをご覧ください。
<本件に関するお問い合わせ先>
東京:Tokyo@phillips.com +81-3-6273-4818
〒106-0032 東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル4F フィリップス・オークション東京
香港:Ingrid Hsu, Head of Public Relations & Corporate Communications, Asia Ingridhsu@phillips.com
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