豊富な天然資源、もみ殻を使った安全・高機能な活性炭
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
秋田県立大学 システム科学技術学部
~灯油中の残留硫黄化合物などを効率的に除去~
秋田県立大学 システム科学技術学部
~灯油中の残留硫黄化合物などを効率的に除去~
秋田県立大学システム科学技術学部(秋田県由利本荘市)の熊谷誠治助教は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)のもと、もみ殻に由来する高機能活性炭の開発に成功しました。
開発した高機能活性炭は、今まで除去の難しかった燃料油中の硫黄化合物を効率的に除去できます。環境対策の面から普及が期待されている灯油を用いた家庭用燃料電池の場合、ppbレベル迄、灯油中の硫黄分を下げる必要が有ります。今回の開発により、灯油中の硫黄をppbレベル迄低コストで除去するというブレークスルーが見込まれます。この開発は、株式会社ジャパンエナジーと産学連携で実現しました。
これ以外にも、軽油の低硫黄化による自動車排出ガスのクリーン化や、自然由来の安全性の高い吸着剤として、食品や医薬品の精製過程での色素や臭気源等不純物の除去など、様々な用途への展開が可能になります。
1.背景及び研究概要
稲作地域では毎年米の収穫に伴い多量のもみ殻が発生します。かつては野焼きにより大部分土壌に返還することができた籾殻も、大気汚染の原因として野焼きが多くの地域で行われなくなった今日では、処分に困る状態です。又、一方で、食糧資源と競合しないバイオマス資源の利用促進は社会的な課題であります。
気体液体を問わず精製浄化等に使用される活性炭の消費量が世界的に増大しています。今回、秋田県立大学システム科学技術学部は、株式会社ジャパンエナジーと共同で、もみ殻に天然に含有されるシリカを細孔骨格とし、安全性の高い糖類を細孔発達および成形性向上に利用することにより、これまで除去の難しかった不純物を、安全かつ効率的に除去できる活性炭を開発しました。
燃料油中に残留する硫黄化合物の吸着除去の用途以外にも、食品や医薬品の精製過程における色素や臭気源除去への応用が見込まれます。高い安全性を要する食品や医薬品の用途では、植物由来のヤシ殻系活性炭など、使用される種類が限定されていました。開発された活性炭は、既存の活性炭で除去の難しい不純物、例えば、分子量の大きいフミン質(注1)などを効率的に除去できるものです。
(注1)植物などが微生物によって分解されるときの最終分解生成物。殺菌・消毒処理に添加した塩素と化学反応し、有害物質やアルデヒド等を生成するフミン酸などがこの中に含まれる。
2.訴求点・競合技術への強み
新たに開発した「もみ殻由来の活性炭」の特徴は以下の通りです。
1. 図2はもみ殻由来活性炭中に存在する細孔の幅とその細孔が有する容積の関係を示すものです。幅2~50 nmのメソ孔の容積が、ヤシ殻系活性炭と比べて2~4倍大きくなります。これにより、分子量が大きく、幅2 nm未満のマイクロ孔を主体とするヤシ殻系活性炭では除去の難しかったフミン質などの不純物を効率的に除去することができます。
2. メソ孔が多いと通常活性炭の充てん密度は低下しますが、ヤシ殻系活性炭と同等以上の充てん密度(粒状で約0.5 g/cm3)を実現します。また、1ページ目に示したように高い成形自由度も有します。
3. もみ殻を主原料として、上述レベルの充てん密度と細孔特性を有する活性炭を製造したのは、世界で初めてです。
4. 植物由来のもみ殻と糖類から製造しており、高い安全性を有します。
3.今後の展望
製造プロセスを簡略化しながら、活性炭としての機能を向上させます。また、実用化研究への展開および多くの精製や浄化プロセスへの応用を視野に入れ、量産化に関する研究を行います。
開発した高機能活性炭は、今まで除去の難しかった燃料油中の硫黄化合物を効率的に除去できます。環境対策の面から普及が期待されている灯油を用いた家庭用燃料電池の場合、ppbレベル迄、灯油中の硫黄分を下げる必要が有ります。今回の開発により、灯油中の硫黄をppbレベル迄低コストで除去するというブレークスルーが見込まれます。この開発は、株式会社ジャパンエナジーと産学連携で実現しました。
これ以外にも、軽油の低硫黄化による自動車排出ガスのクリーン化や、自然由来の安全性の高い吸着剤として、食品や医薬品の精製過程での色素や臭気源等不純物の除去など、様々な用途への展開が可能になります。
1.背景及び研究概要
稲作地域では毎年米の収穫に伴い多量のもみ殻が発生します。かつては野焼きにより大部分土壌に返還することができた籾殻も、大気汚染の原因として野焼きが多くの地域で行われなくなった今日では、処分に困る状態です。又、一方で、食糧資源と競合しないバイオマス資源の利用促進は社会的な課題であります。
気体液体を問わず精製浄化等に使用される活性炭の消費量が世界的に増大しています。今回、秋田県立大学システム科学技術学部は、株式会社ジャパンエナジーと共同で、もみ殻に天然に含有されるシリカを細孔骨格とし、安全性の高い糖類を細孔発達および成形性向上に利用することにより、これまで除去の難しかった不純物を、安全かつ効率的に除去できる活性炭を開発しました。
燃料油中に残留する硫黄化合物の吸着除去の用途以外にも、食品や医薬品の精製過程における色素や臭気源除去への応用が見込まれます。高い安全性を要する食品や医薬品の用途では、植物由来のヤシ殻系活性炭など、使用される種類が限定されていました。開発された活性炭は、既存の活性炭で除去の難しい不純物、例えば、分子量の大きいフミン質(注1)などを効率的に除去できるものです。
(注1)植物などが微生物によって分解されるときの最終分解生成物。殺菌・消毒処理に添加した塩素と化学反応し、有害物質やアルデヒド等を生成するフミン酸などがこの中に含まれる。
2.訴求点・競合技術への強み
新たに開発した「もみ殻由来の活性炭」の特徴は以下の通りです。
1. 図2はもみ殻由来活性炭中に存在する細孔の幅とその細孔が有する容積の関係を示すものです。幅2~50 nmのメソ孔の容積が、ヤシ殻系活性炭と比べて2~4倍大きくなります。これにより、分子量が大きく、幅2 nm未満のマイクロ孔を主体とするヤシ殻系活性炭では除去の難しかったフミン質などの不純物を効率的に除去することができます。
2. メソ孔が多いと通常活性炭の充てん密度は低下しますが、ヤシ殻系活性炭と同等以上の充てん密度(粒状で約0.5 g/cm3)を実現します。また、1ページ目に示したように高い成形自由度も有します。
3. もみ殻を主原料として、上述レベルの充てん密度と細孔特性を有する活性炭を製造したのは、世界で初めてです。
4. 植物由来のもみ殻と糖類から製造しており、高い安全性を有します。
3.今後の展望
製造プロセスを簡略化しながら、活性炭としての機能を向上させます。また、実用化研究への展開および多くの精製や浄化プロセスへの応用を視野に入れ、量産化に関する研究を行います。
すべての画像