「女の子だから」という理由で何らかの制限を受けたことのある女子高校生は47% 「ジェンダー」に関する女子高校生調査報告書2020を公開
公益社団法人ガールスカウト日本連盟(東京都渋谷区 代表:和田照子)は、「ジェンダー」に関する女子高校生調査報告書 2020 ~声をつなぐ~ を公開しました。
調査の結果、「ジェンダー平等を実現する」社会の進むべき方向とは異なり、「女の子だから」という言葉や、メディアにおける女性の描き方によって、少女たちが何かをあきらめたり、不平等を感じたりしていることがわかりました。
調査の結果、「ジェンダー平等を実現する」社会の進むべき方向とは異なり、「女の子だから」という言葉や、メディアにおける女性の描き方によって、少女たちが何かをあきらめたり、不平等を感じたりしていることがわかりました。
■調査結果サマリー
- 「女の子だから」という理由で何らかの制限を受けたことがあると回答したのは47%。何かを「あきらめた」という声がたくさん寄せられました。
- 回答者のうち共学校に通う54%が、学校の先生は生徒の性別によって期待・声かけ・態度が異なると感じています。例えば「男子、力仕事たのむ」「女の子なんだから地元の学校行けばいい」などと言われたという声がありました。
- 96%が「女子も大学教育を受けることは重要」と考え、98%が「女子も経済的な自立が必要」と男女差なく高等教育や経済的自立が必要であることを感じています。その一方で、「男子よりも料理ができたほうが良い」44%という結果からは、彼女たち自身の中に、仕事をしても「家事は女子の役割」という無意識の偏見があることがわかりました。
- メディアで男女が平等に描かれていると感じているのはたったの8%。例えば「テレビでもっと多くの女子スポーツが放映されるとスポーツをする女の子が増える」という回答は78%いました。高校生たちは、メディアでの男女の描き方に疑問を持っています。
家庭、学校、メディア、そしてインターネットなど社会のあらゆる場面で「女の子なら~して当然だ」「女の子はこういうものだ」というメッセージを受け取り、気付かぬうちに思考や行動に制限を受けています。
少女たちは「もっと~したかった」「~できるのに」という思いを抱えています。人は、制限や限界を設定せずに挑戦や努力を重ねたり、少し難しい課題に直面した際にそれを乗り越える努力をしたりする過程で、力を伸ばし、自信を高めていきます。けれども、少女たちには最初からその機会が十分に提供されていない、という現実が垣間見えました。
自分の人生を自由意思によって選択できるようになるためには、ジェンダーに関する知識や情報、対話の機会が十分に提供されることが大切です。そうすることによって、自分に制限を加えず挑戦でき、可能性を伸ばすことができるのです。
日本で女性管理職割合が低迷する要因として、少女たちは「伝統的な性別役割分担意識」「女性が機会を与えられていないこと」「女性は非難されやすいこと」などをあげています。そして、「女性が増えてほしい分野」として72%の少女が「政治分野」と答えました。
今回の調査では、一人ひとりの少女たちの日常で起きたことや思い、変革を求める声が非常に多く寄せられました。
■調査概要
調査対象:全国の女子高校生
調査期間:2020年6月12日~2020年7月14日
調査方法:インターネット回答
回答数: 700人(ガールスカウト会員468人・一般232人)
■調査結果では?
【「女の子だから」という理由で何らかの制限を受けたことがあると回答したのは47%】
- 力仕事は男子の仕事なのでやらなくていいと言われた。
- 生物の授業で「男子ならわかると思うけど」「女子にはわからないか」と言われた。
【共学校に通う54%が、学校の先生は生徒の性別によって期待・声かけ・態度が異なると感じている】
- 「女の子なんだから地元の学校行けばいい」
- リーダーシップをとるのは男子だと思っているので、 女子がすると驚かれる。
- 女だから出来ないだろうという考えをなくしてほしい。
【「女子も大学教育を受けることは重要」96%、「女子も経済的な自立が必要」98%、「男子よりも料理ができたほうが良い」44%、「男子よりも理系の能力が低い」48%】
- 理系に男子が多いから、男子は理数系が得意だと思い込んでいる。
- 理系の先生(数学や理科)は男性のほうが多い。
- リケジョという名称は差別的な響きがある。
【「メディアで男女が平等に描かれていると感じている」8%、「テレビでもっと多くの女子スポーツが放映されるとスポーツをする女の子が増える」78%】
- 女社長、女子アナなどと女性であることを強調する言葉が使われる。
- 男の司会者ばかり見かけるので「司会というと男性」というイメージがテレビ番組を見ている人にはある。
- 女性が性被害にあったとき、女性側に非があるコメントを目にする。被害者なのに女性が悪いと言われるのはおかしいと思う。
■調査背景
持続可能な社会を作るために、日本政府は「国民一人ひとりが、その個性に応じた多様な能力を発揮できる社会の構築が不可欠」であり、「特に女性の能力を活かすことが不可欠である」として女性活躍の推進を掲げ、さまざまな取り組みを進めています※1。
しかしながら、2020年のジェンダーギャップ指数121位※2が示す通り、日本のジェンダー格差解消に向けた歩みは一向に前に進んでいません。
女子高校生のジェンダー観や現状がわかるデータを収集することで、日本における女性への差別や暴力の現状をとらえ、適切な対策に役立てるために、ガールスカウト日本連盟では2019年から調査を実施しています。
※1 「女性活躍加速のための重点方針2020」
※2 153カ国中 Global Gender Gap Report 2020(世界経済フォーラム) 2021年は156カ国中120位
■2020年度調査の目的
前回の調査では、女子高校生たちが、ジェンダーについて考える機会を与えられていないことがわかりました。そこで今回は、「隠れたカリキュラム※3」や身体的性別に基づく声かけがどのようにされているかを把握しようと、「女の子だから」という言葉をキーワードに、日常でどんな制限を受けているのかを可視化しました。それとともに、ジェンダー平等実現に向けた女子高校生の問題意識を理解することもねらいとしました。
※3 「教育する側が意図する、しないに関わらず、学校生活を営むなかで、児童生徒自らが学び取っていく全ての事柄」を指す (文部科学省ウェブサイト 人権教育の指導方法等に関する調査研究会議 人権教育の指導方法等の在り方について[第二次とりまとめ]より
■調査報告書にかかわる参考情報
1.高校生による分析と報告会(動画・ガールスカウト日本連盟公式Youtube)
2020年度女子高校生調査アンケートの回答結果について、有志の高校生たちが分析をおこない、2020年10月に報告会をおこないました。
2.調査報告書のダウンロード・ご購入
「ジェンダー」に関する女子高校生調査報告書2020 ~声をつなぐ~
価格:1,100円(税込)
お申し込みはガールスカウト連盟ウェブサイトから
https://www.girlscout.or.jp/report/
■ガールスカウト日本連盟について
・ガールスカウト日本連盟のリサーチのページ
これまで本連盟が実施してきたジェンダー関連の調査報告をご覧いただけます。
https://www.girlscout.or.jp/activities/project/research/
・ガールスカウトのジェンダー教育プログラムのページ
内閣府とともに作成した中高校生向けのオンラインプログラム「me and them」ほかを掲載しています。
https://www.girlscout.or.jp/activities/project/sdg5/
【ガールスカウト日本連盟とは】
ガールスカウト運動は152の国と地域に広がる世界最大の女性のための社会教育団体です。
少女と女性が自分自身と他の人々の幸福と平和のために、自ら考え、行動できる人材を育成することを目的に活動しています。日本では2012年から少女と女性へのジェンダー差別について考える教育プログラムを展開しています。
【取材・お問い合わせ】
公益社団法人ガールスカウト日本連盟 宮岡、篠宮
https://www.girlscout.or.jp/
Tel:03-3460-0701
Fax:03-3460-8383
E-mail:gsj_pr@girlscout.or.jp
〒151-0066 東京都渋谷区西原1-40-3
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