ジュロン島設立25周年 、エネルギー・化学産業の低炭素イノベーションをけん引
シンガポールでの2050年までのネットゼロ達成に向け、新エネルギーと先駆的な低炭素技術の規模拡大のための新たな取り組みを行ないます。

注:本リリースは10月27日に発表された“Jurong Island celebrates 25 years with focus on powering the future of low-carbon innovation in Energy and Chemicals”を編集・翻訳したものです。
1. シンガポールのエネルギー・化学産業の礎で、7つの島を埋め立て1つの島にしたジュロン島(面積3000ヘクタール)は、2025年に25周年を迎えます。島内にはエクソンモービルや独BASF、シェブロンオロナイト、三井化学など100社以上のグローバルなエネルギー・化学企業が拠点を構えています。
2. ジュロン島に拠点を置く企業は、シンガポールの整備されたビジネス環境、強力な連携、全長100キロを超えるパイプライン網を活用しています。こうした共有インフラにより世界中の顧客にサービスを提供することが可能になっています。
3. エネルギー・化学産業はシンガポールの多様な産業の中でも第2位の規模を誇る分野であり、2024年のGDP(国内総生産)の約3%、製造業生産高の約4分の1を占めています[1]。グローバルなエネルギー・化学企業は、地域統括本部から貿易業務、研究開発施設まで相互補完的な事業を展開しています。
エネルギー・化学産業では、バイオものづくり・産業バイオテクノロジー、炭素・エネルギー管理、持続可能性製品、研究開発、グリーン調達、脱炭素化などの新分野で2万5000人以上[2]を雇用しています。
シンガポールのエネルギー・化学産業、低炭素転換を加速
4. 世界中でエネルギー・化学産業がより環境に配慮した未来へと転換する中、ジュロン島は脱炭素ソリューション、スペシャリティケミカル、サステナブル素材、循環型原料、新エネルギーへの需要の高まりに対応することに軸足を移しています。
5. 2021年には、既存事業の高度化と脱炭素化のため政府が実績ある企業と密接に協力し、 ジュロン島を持続可能なエネルギー・化学産業のハブに転換することを目的とした「the Sustainable Jurong Island plan(持続可能なジュロン島計画)[3]」が開始されました。
6. ジュロン島は「the Sustainable Jurong Island plan」の下、エネルギー・化学産業に設定された2030年目標に向け順調に進んでいます。同産業の持続可能な製品の生産を2030年までに1.5倍とする目標を掲げており、2019年から1.4倍に増加しています。政府もシンガポールから少なくとも年間250万トンの越境二酸化炭素回収・貯留(CCS)プロジェクトの実現可能性を検討しています。
7. 2021年以降、シンガポール経済開発庁(EDB)は、温室効果ガス排出を削減し資源効率性を改善する革新的なソリューションに対して企業に資金提供を行う「REG(E)=Resource Efficiency Grant(エネルギー資源効率化助成金)」により35事業を助成しています。対象プロジェクトの多くはジュロン島で行われており、代替燃料や廃水の生物処理、CCUS(炭素回収・利用・貯蔵)などエネルギー効率や新たな脱炭素化方法などについての調査・研究が含まれています。
これらのプロジェクトは英リンデや独エボニック、エクソンモービル、仏エア・リキードなどによるもので、完了時には340キロトンの二酸化炭素削減効果が期待され、これは自動車8万台分の排出量削減に相当します。
ジュロン島:低炭素イノベーションの未来をけん引
8. EDBとJTCは今後、ジュロン島のグローバルな目標の発展のため、以下の2分野に注力します:
a. スペシャリティケミカルとサステナブル素材
2021年以降、仏アルケマ、韓国カリフレックス、クラレなどによる新たなスペシャリティケミカルプロジェクトが30件以上立ち上がり、多くがジュロン島で行われています。
スペシャリティケミカルは、化学産業の付加価値成長をけん引すると期待され、2025~2030年のCAGR(年平均成長率)が4~5%と[4]、化学産業全体のCAGR2.5~3.5%を上回る見込みです[5]。
この成長は、アジアの中間層の拡大で、消費財、医薬品、エレクトロニクス、先端材料分野での高品質な製品への需要が高まっている傾向に後押しされています。
世界的な持続可能性目標も、バイオポリマー、低炭素コーティング、環境対応型溶剤などの革新的なソリューションへの需要を押し上げています。
ジュロン島のエコシステムは、関連する産業間での提携を促進し、革新的な材料を共同開発する機会を創出しています。シンガポールの強力な研究開発能力、人材基盤、域内各国との結びつきは、高まる需要に応えるためにサステナブル素材やスペシャリティケミカルの生産規模を拡大する企業をさらに支援します。
b. 新エネルギーと低炭素技術の世界的なテストベッド
ジュロン島は新エネルギーと低炭素技術の開発、実証実験、規模拡大のテストベッドとして有利な位置にあります。
i. 新エネルギーソリューション
新エネルギーソリューション開発を支援するため、ジュロン島の約300ヘクタール近くの敷地が確保されています。企業はすでにジュロン島で持続可能な航空燃料(SAF)や水素、アンモニアなどの次世代燃料について産業現場での実証実験を行っており、共有パイプラインや貯蔵、施設を利用することで費用や複雑性を削減しています。
IHIとA*STAR(科学技術研究庁)は2025年、水素と二酸化炭素からSAFを製造するベンチスケール試験装置の稼働開始を発表しました。
ii. 低炭素技術
ジュロン島では、CCUS、電化、エネルギー効率から循環プラスチックまで、低炭素ソリューションの実証実験や規模拡大が行われています。A*STARは6250万シンガポールドル(以下ドル、約74億円)を投じ、ジュロン島にLow Carbon Technologies Translational Testbed(低炭素技術試験用テストベッド施設)を開設予定です。この施設では企業に、商用開発向けに規模拡大可能な新興低炭素技術の費用対効果が高いモジュラー式テストベッドを提供します。
すでにCRecTechやFlueVault、Metha8、Turnover Labsなどの企業が、自社ソリューション規模拡大のため同施設を活用することに関心を示しています。
政府も各分野にわたる低炭素技術の推進に向け、1億8000万ドル以上をLow Carbon Energy Research(低炭素エネルギー研究、LCER)プログラムに拠出することを確約しました。
ジュロン島の約20ヘクタールの敷地がシンガポール最大規模となるデータセンターパーク開発向けに確保されており、データセンター向けに最大700メガワット(MW)の電力容量を確保できる可能性があります[6]。データセンター事業者は、ジュロン島の共有エネルギー貯蔵インフラと公共設備、新たに進められている低炭素開発などの島内のエコシステムを活用できます。
9. JTCのジャクリーン・ポー最高経営責任者(CEO)は「ジュロン島は強固なインフラと緊密に連携したエコシステムを通じて、域内の主要なエネルギー・化学産業ハブへと成長しました。いまこそ、ジュロン島を新エネルギーと低炭素イノベーションの中心地へと転換するため大胆な一歩を踏み出す時です。インフラ強化と業界提携の深化、シンガポールの次の成長段階を支える持続可能なソリューションを構築します。企業の皆様には、刺激的な新しい章を共に創ることにご参加いただきたいと思います」と語っています。
10. EDBのジャーメイン・ロイ次官は「ジュロン島で進行中の変革は、そこに拠点を構えるグローバルなエネルギー・化学企業がより革新的で持続可能になることを支援し、よりクリーンなエネルギーへと世界的に転換することから新たな機会をとらえることを可能にします。エネルギー・化学産業はシンガポールの多様な製造業の主要な柱であり続けており、先進持続可能ソリューションや低炭素技術、環境対応製造業でシンガポールと地域の次の成長を形作るため、未来志向の企業との提携を歓迎します」と述べました。
REG(E)助成金による資金提供を受けた企業およびプロジェクト、スペシャリティケミカル投資、新エネルギー試験事業に関する追加情報は、こちらをご参照ください。
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JTC
JTCはシンガポール貿易産業省傘下の政府機関です。ワン・ノースやセレター・エアロスペース・パーク、ジュロン・イノベーション地区、プンゴル・デジタル地区などの持続可能で環境に優しいスマートな工業地区のマスタープラン策定、開発、管理を行っています。
JTCの工業団地は新たな投資を呼び込み、先進製造業ハブとしてのシンガポールの地位を強化する協力的なエコシステムを育成しています。また、新しい建設技術の実証実験で、建設環境分野のイノベーションも推進しています。詳細についてはwww.jtc.gov.sg(英文)をご覧ください。
シンガポール経済開発庁(EDB)
シンガポール経済開発庁(EDB)は貿易産業省傘下の政府機関で、事業やイノベーション、人材のグローバルセンターとしてのシンガポールの地位を強化する戦略を担当しています。EDBは投資促進と産業開発を行い、国内外の世界的な企業と協力し、情報提供、提携先との橋渡し、投資に対する政府の助成金へのアクセスを提供しています。EDBの使命は、シンガポールとシンガポール国民向けに活気あるビジネスと良質な雇用機会を伴う持続可能な経済成長を創出することです。詳細についてはhttps://www.edb.gov.sg/ja.htmlをご覧ください。
[1] Singstat: 2024 Principal Statistics of Manufacturing by Industry Cluster - Total Output/Value Added. Chemicals accounted for ~23% of Singapore’s manufacturing output of S$423.6 billion, ~16% of Singapore’s manufacturing value added of S$114 billion in 2024
[2] Singstat: 2024 Principal Statistics of Manufacturing by Industry Cluster – Employment
[3] Sustainable Jurong Island: www.edb.gov.sg/en/business-insights/market-and-industry-reports/sustainable-jurong-island.html
[4] Specialty Chemicals CAGR is based on projections from S&P Global Commodity Insights (between 4-5%), Fortune Business Insights (5%), and MarketsandMarkets (5%).
[5] Overall chemicals CAGR is based on recent global chemical production growth projections of 3.4–3.5% (ACC, Deloitte) and market value growth of 2.3% (MarketsandMarkets 2024–2025).
[6] Jurong Island Data Centre Park will be able to support a mix of new and existing data centres capacity.
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