『ふるさと納税分析レポート』令和3年度ふるさと納税寄付額を「北海道の179自治体」にて分析しました。最大と最小の自治体で比較すると寄付額の差は11,000倍を超えています。

〜令和4年度ふるさと納税に関する現況調査の結果(総務省発表)を独自に分析〜

令和3年度の寄付額は北海道が全47都道府県の中で最も大きくなりました。自治体数が179と他の都道府県と比較して多いことが理由の一つですが、1自治体あたりの寄付額も全国平均寄付額より大きく上回っています。しかし、上位10自治体の合計寄付額は全北海道の合計寄付額の約50%を占めており、最大の寄付額であった紋別市と最小の寄付額であった島牧村の差は11,493倍と非常に大きな差となりました。ふるさと納税への取り組みが進んでいる自治体とそうでない自治体の格差が大きく広がっています。
分析の背景
都道府県において寄付額には大きな差があります。また、都道府県の自治体毎に分析をすることで寄付額の現状を把握し、寄付単価や寄付件数なども分析の対象とすることで、ふるさと納税の傾向を探ります。今回は北海道を分析します。北海道については、自治体の数が他の都道府県と比較して非常に多く存在し、人口が小規模な自治体も目立ちます。ふるさと納税の寄付額においては、日本一の寄付額を集めた紋別市や全国3位の根室市、4位の白糠町とふるさと納税先進自治体も揃っています。札幌市、函館市や小樽市といった地域ブランドが高い自治体も多数あり、先進化、多様化していると考えられます。では具体的に見ていきます。

北海道と全国平均との比較
1自治体あたりの平均寄付額は全国自治体の平均を大きく上回っています。平均単価は全国平均を下回っていました。北海道は主に食材が地域産品であることが主な理由と考えられます。特に農産物が中心になると寄付単価が特段減少することがあります。海産物も加工品となれば調達費用も押し下げられており、北海道の自治体は主に寄付者数にこだわっていることがわかります。
 

1位から11位
9位の別海町に焦点を当ててみます。前年の約1.5億円からの16倍と大きく寄付額を伸ばしています。根室市に隣接しており、本来返礼品の魅力が豊かな自治体です。ホタテの加工も競争力があります。返礼品数2,000、ポータルサイト数21と一挙に拡大し、シズル感のある写真と説明でコンバージョンも上がっていると思われます。もちろん、価格競争力もあります。自治体の担当者がかなり熱心に動かれたものと考えます。

11位から20位
別海町と異なった戦略でユニークなのが、19位の寿都町です。返礼品とサイトを多様化させた別海町とは対照的に寿都町ではサイトはふるさとチョイスのみ、また返礼品数も134にすぎません。しかし、北海道での19位は立派です。ふるさとチョイスのランキングではいくらで1位、ホタテで3位になっており、(2022年11月14日)チョイス限定であることのメリットがしっかり出ています。

21位から30位 
29位の余市町は元外務官僚であった齊藤町長がコネクションもフルに活用し、返礼品の付加価値を高める戦略をとっています。特にワインを戦略的な地域産品としてブランディングを強化しています。世界的に人気なピノ・ノワールという品種への集中と、リーデルという有名なワイングラス企業と連携協定の締結が挙げられます。このようにマーケットイン視点での様々な活動を行なっています。

31位から40位 
31位の秩父別町は人口2,400人であり、北海道内の面積も2番目に小さい町です。返礼品数も32と非常に少ないですが、ななつぼし、ゆめぴりかの定期便に集中することで、寄付者の囲い込みやリピーターの獲得につなげていっているイメージです。

 41位から50位
45位の砂川市は急成長している化粧品メーカー「SHIRO」の創業の地であり、主要工場があります。その返礼品が人気であり、寄付単価が高くなっています。今や世界的なブランドになりつつあり、砂川市との連携協定において多面的なまちづくりが行われています。

51位から60位
51位の仁木町がポータルサイト数が18と頑張っています。契約ポータルサイトを増やせば寄付が増えるのかという質問を多くいただきます。これに関しては、一概に増えるとは言えない一方で業務効率に関しては間違いなく悪化します。しかしながら、各ポータルサイトもそれぞれの顧客を抱えており、緩やかに寄付額と比例する傾向がありそうです。

61位から70位
69位の新冠町に注目してみました。日本有数の軽種牡馬の産地です。寄付が集まっているのは、新冠トンネルでの
熟成ワインとなっています。海外産であり、返礼品としてどうなのかという意見が出てきそうです。せっかくサラブレッドと音楽の町として売り出していますので、それらを生かした返礼品になれば楽しそうです。

71位から80位
71位の栗山町の返礼品サムネイル画像には、生産事業者がたくさん写っています。さらに、ふるさとチョイスの自治体ページのヘッダーには返礼品の生産事業者が40名以上が一堂に写っています。栗山町がいかに生産者を大切にしているかが分かります。

81位から90位 
国際的なリゾート地でもあるルスツリゾートが位置する88位の留寿都村は、やはりリゾートで利用できるクーポンが人気になっています。今後、観光も復活してくると思いますので、観光地の自治体は人気になりそうです。利用できる場所が多く有効期限が長いような、利便性の高いクーポンが寄付者から求められます。

91位から100位
95位の湧別町は寄付単価が11,000円と低くなっています。サロマ湖の特産の牡蠣など手軽に寄付ができるようにと配慮されていると思いました。また、寄付の使い道では令和3年度に何を使ったのか、令和4年度に何に使うのかを明示されており、こちらにも丁寧さを感じます。

101位から110位
106位の奈井江町の寄付単価が非常に高いことが目立ちます。お米の定期便の品揃えが豊かであり、しっかりとファンを掴んでいるようです。また、自治体ホームページではお米の事業者へのリンクを貼っており、事業者の知名度を上げることになります。これは他の自治体にはあまりみられない良い取り組みと思います。

111位から120位
120位の足寄町では、ジャパンチーズアワードのグランプリに選出された、チーズ工房の返礼品が人気です。まさにその地で丁寧に職人による手作りの製品を知ることができるのはふるさと納税の良い点と感じます。

121位から130位
ししゃもで有名な128位のむかわ町ですが、使い道にもこだわっています。丁寧に使い道を記載するだけでなく、恐竜ワールド推進事業というユニークな使い道も人気になりそうです。

131位から140位
北の大地の始発駅、140位の木古内町ではポータルサイトが当初の調査時点では14だったのですが、このリリースのために再調査した際は19になっており短期間で5サイトも増加させています。返礼品も300を超えており、まだ寄付額は昨年時点では少ないものの、今年度の大きな飛躍を感じさせる内容です。

141位から150位
北海道の南西端に浮かぶ海の幸の宝庫・奥尻町は143位でした。返礼品数そのものは67とそれほど多くありませんが、厳選された魅力的なブランド食材が取り揃えられています。

 

151位から160位
昨年の伸び率が500%超、155位の苫前町は風力の町です。どの自治体においても返礼品の開発は本当に大変です。日本海北部の好漁場で苫前町はその武蔵堆に非常に近いため、甘エビを中心とした海産物を返礼品にさらに追加できれば面白いのではと思います。

161位から170位
星野リゾートトマムがある166位の占冠村は観光の町であり、コロナ禍では大変だったと思います。これからインバウンド客も増加してくると思われます。返礼品は星野リゾートの宿泊ギフト券を加えたいところです。

170位から179位
179位の島牧村は、狩場茂津多道立自然公園を擁し、奇岩や怪石の点在する海岸線、自然休養村に指定されている狩場山、日本名瀑百選随一の賀老の滝など自然に恵まれています。気候は温暖で温泉資源が豊富です。特産品はハチミツ・エビ甘漬け・生風味うに・しらす佃煮があり、道の駅もあります。このように独自性ある産品に恵まれているものの生産量に限界があるため、返礼品にするには難しい面があるのかもしれません。しかし島牧村の産品の魅力は十分に高いため、今後の展開に期待が持てそうです。

 

分析を終えて
寄付額には大変大きな差がありましたが、返礼品数とポータルサイト数で分析すると、ふるさと納税に対する考え方が各自治体で異なるのだろうな、と感じます。なかなか寄付を集めていない自治体に対してこそ、民間の支援事業者の協力を期待したいところです。別海町の寄付額16倍に伸びた例もあります。今回、寄付が比較的に集まっていない自治体でも返礼品は豊富な自治体はたくさんあります。すでに国内トップクラスの自治体がある一方で将来に大きな可能性を感じさせる自治体も多く、北海道の底力と多様性が改めて浮き彫りになった調査でした。

社名:株式会社ふるさと納税総合研究所
本社所在地:大阪府大阪市
代表取締役:西田 匡志(中小企業診断士、総合旅行業務取扱管理者)
事業内容: ふるさと納税市場における調査、研究、アドバイザリー、コンサルティング、ソリューション提供等
HP:https://fstx-ri.co.jp/

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会社概要

URL
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業種
サービス業
本社所在地
大阪府大阪市淀川区宮原1-1-1 新大阪阪急ビル3F
電話番号
06-7668-8324
代表者名
西田 匡志
上場
未上場
資本金
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設立
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